ナイキなどの大手スポーツメーカーや、ワークマンなどが楽天やAmazonなどの大手ECプラットフォームから離脱したのは、Web業界にいる人であれば記憶に新しいのではないでしょうか。そこで注目されているのが、自社で簡単にECサイトを展開できるShopify(ショッピファイ)です。しかし、Shopifyの概要や基本的な機能が分からない人は少なくありません。
そこで本記事では、Shopifyの概要や基本的な機能、利用するメリット・デメリットを紹介します。また、Shopifyの料金プランや手数料、成功事例を解説しますので、Shopifyの導入を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
Shopifyとは?
まずは、Shopifyの概要から解説します。Shopifyとは、ECサイトの運営から出店における機能が網羅的に搭載されているECプラットフォームのことです。Shopifyはカナダの企業であり、世界100万ショップ以上に導入されている世界最大級のプラットフォームです。
ShopifyなどのECプラットフォームが登場する以前は、ECサイトを出店するとなった場合、自社でサーバーの契約をしたり、ドメインを取得したりする必要がありました。そのため、実際にECサイトを制作する工数が発生し、カスタマイズも加えるとなると出店までに数ヶ月以上の時間を要することも珍しくありませんでした。
しかしShopifyであれば、サーバーやネットワークの管理を一任できます。運営者は、Shopifyの簡便な管理画面を操作するだけで簡単にECサイトを出店できます。この手軽さこそがShopifyが評価されている理由です。また、Shopify側でテーマも用意されており、導入すれば自作する場合と同等程度のデザインを実現することも可能です。
関連記事:
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Shopifyの代表的な機能
ここまで、Shopifyの概要を解説してきました。ここからは、Shopifyの代表的な機能を紹介します。
● 基本機能
● デザインテンプレート
● カスタマイズ機能
それぞれ順番に見ていきましょう。
基本機能
はじめに、基本機能です。基本機能には、ECサイトを出店するための機能の大半が搭載されており、代表的な例としては以下が挙げられます。
● 決済画面
● 決済の統合機能
● 問い合わせフォーム
● 商品登録機能
上記のように、商品を登録し、実際にECサイトを公開してから決済に至るまでのあらゆる機能が搭載されていることが特徴です。また、決済に関してもクレジットカード、振り込みなど、ビジネスパーソンから一般消費者までが決済できるように複数の決済方法に対応がされています。
どこまでデザインにこだわるかによるものの、早い場合はShopifyに登録してから3日前後で公開可能です。このスピード感を実現できることが、Shopifyの魅力だと言えるでしょう。
デザインテンプレート
Shopifyにはデザインのテンプレートも用意されています。デザインテンプレートは数十種類以上用意されており、アパレルブランドの販売に強みを持っていたり、化粧品の販売に強みを持っていたりするデザインが存在します。
カスタマイズ機能
Shopifyには5,000を超えるカスタマイズ機能が搭載されています。代表的なカスタマイズ機能としては、サブスクリプション決済に対応させたり、翻訳機能を追加できたりする機能が挙げられます。
特にBtoCの領域でECサイトを公開するのであれば、サブスクリプション決済の対応は必須だと言えます。近年、ビデオオンデマンドやサブスクリプションサービスも普及しているため、サブスクリプション決済への抵抗感がないユーザーも多いです。
サブスクリプションで月額課金をしてもらえれば、数ヶ月先の売上まで見込めるため、ECサイトの拡大や事業への先行投資も検討できるようになります。
Shopifyには、あらゆるカスタマイズ機能が揃っています。導入当初の機能は最小限に抑えられているので、自社が実現したい機能に合わせて追加できます。季節や状況に応じて、クーポンを掲載することも可能です。
まずはShopifyに登録し、どのようなカスタマイズ機能があるかを確認した上で、導入する機能を検討してみるとよいでしょう。
関連記事:サブスクリプションの意味を解説します!いまさら聞けないモデルや代表的なサービスをご紹介!
Shopify paymentとは
Shopify paymentとは、Shopifyが公式に提供しているオンライン決済サービスです。Shopify paymentを利用すれば、顧客はオンラインで支払いを行えるようになります。Shopifyが公式に提供しているサービスのため、住所や電話番号などの個人情報を都度顧客に入力させる手間を省けます。
ストアを作成後に主要な決済方法がすぐに利用できるように、設定が自動的に行われます。「Visa」や「Mastercard」、「JCB」「American Express」といったよく利用されるクレジットカードには全て対応しています。
その他の便利なShopifyのオプションサービス
その他の便利なShopifyのオプションサービスとしては以下があります。
● Shopifyメール
● Shopify POS Pro
Shopifyメール
Shopifyメールは、Shopifyでオンラインストアを構築すれば無料で利用できるメール送信システムです。このShopify独自のメールマーケティングツールを利用すれば、別でメール配信システムを導入せずに済みます。
利用は非常に簡単で、すでに作成済みのメールテンプレートの中から好きなテンプレートを選び、文章を入力して送信するだけで会員登録済みの顧客に対してメールが配信されます。手動での送信作業が面倒な場合は、オートメーション機能を使うことでメール送信作業が自動化されます。
Shopifyメールで配信された全てのメールは、開封率や販売状況などのデータが蓄積されていくため、ストア分析を行うことができます。これらの分析結果から、キャンペーンのパフォーマンスを改善していくこともできます。
Shopify POS Pro
Shopify POS Proは、高度な在庫管理が行えるPOSシステムです。「POS」とは「Point of Sale」のことで「販売時点情報管理」といった意味になります。ほとんどの小売店で導入されており、商品が販売された時点の情報を管理できます。
Shopify POS Proを利用すれば、他でPOSシステムを導入しなくても済みます。在庫数や入出荷記録、注文書などの管理が行える他、在庫分析機能やセール商品を提案する機能なども備えています。
また、無制限で作成可能な「ストアスタッフアカウント」を作成することにより、販売スタッフの管理も同時に行えます。この機能によって、スタッフのパフォーマンスなども個別に収集でき、パフォーマンスごとに分類することもできます。
Shopifyを利用するメリット
Shopifyを利用するメリットとしては以下が挙げられます。
● コストを抑えてECサイトを構築できる
● 配送面に強い
● 外部サービスやSNSと連携できる
● Shopifyのパートナーによるアプリでカスタマイズ性が高い
● 越境ECに対応できる
● ブログ機能がある
● ストアの分析ができる
コストを抑えてECサイトを構築できる
Shopifyを利用する最大のメリットが、手軽にECサイトを構築できることです。ECサイトを自作する場合、どれだけの機能を搭載するかによって異なるものの、50万円から100万円程度の開発予算が必要です。加えて、毎月の保守費用が20,000円から50,000円程度かかるうえ、公開までには数ヶ月必要になります。
しかし、Shopifyであれば最短3日程度でECサイトを構築でき、公開も可能です。自社のリソースが足りない場合でも、大きな工数を必要としないため、EC化も実現しやすいメリットがあります。
配送面に強い
Shopifyは、配送面に強いECプラットフォームであることがメリットです。在庫状況、売上状況、販売状況などを管理画面からひと目で見られるようになっているため、在庫のマネジメントがしやすくなっています。加えて、店舗の在庫状況との連携も図れるため、事業全体の在庫を一元化して管理することも可能です。
外部サービスやSNSと連携できる
Shopifyは、外部サービスやSNSと連携ができる機能を備えます。この機能を活用することにより、外部の様々なECサイトをはじめSNS、そして実店舗によるオムニチャネルを構築することができます。具体的には、以下の外部サービスやSNSと連携ができます。(一部抜粋)
ECサイト | SNS |
Amazon | |
楽天市場 | |
Google Shopping | TikTok |
eBay |
など
Shopifyのパートナーによるアプリでカスタマイズ性が高い
Shopifyアプリストアには7,000を超えるアプリが提供されています。これによって、Shopifyで構築したECサイトを自由にカスタマイズできます。
これらのアプリを使えば、Webサイト開発の知識やプログラミング技術がなくても、サイトに必要な機能を随時追加することができ、大幅にユーザビリティを向上させることができます。
また、世界でも最先端のWebマーケティング手法を、アプリを通して見つけられる可能性もあります。こういったアプリから最新マーケティング手法を知ることができるのも、Shopifyを利用する一つのメリットと言えます。
越境ECに対応できる
Shopifyは、FedExやUPSといった海外配送サービスと提携しているため、国外への配送が可能となります。つまり、ShopifyでECサイトを構築することにより、越境ECにも対応ができます。
国境を超えてグローバルECソリューションを展開できるECショップ構築サービスは、今のところ日本ではShopifyが一強となっています。越境ECを構築できれば国外からの注文増が期待できます。
経済産業省の調べでは、令和4年度の日本、米国、中国の3カ国間における越境ECの市場規模は3,954億円と非常に巨大です。
ShopifyでECサイトを構築するだけで、このような巨大市場に参入できることは夢があり、非常にメリットしては大きいものになります。しかしながら、ECサイトを構築したからと言って注文がすぐに急増するわけではなく、現地調査を入念に行った上での地道なマーケティング活動が必要です。
ブログ機能がある
Shopifyにはブログ機能があります。オンラインストアにブログを追加することで、商品の最新情報やお得情報、キャンペーン案内などを投稿できます。こうすることで、顧客によるWebサイト回遊率がアップします。
また、商品の補足説明や違った視点から商品を紹介することで、更に顧客の興味関心を引くことができます。こういったブログを導入することで、ECサイト自体にボリュームを持たせることができ、SEO対策としても有効になります。
ストアの分析ができる
Shopifyには、ストアの分析ができる機能が備わっています。ストアには販売や注文に関する情報や顧客データなどが随時蓄積され、これらの情報はストア分析ページにて表示されます。こういった機能により、全ての販売チャネルが確認でき、ストアの業績がひと目で把握できます。
また、これらの情報を元にストア分析を行うことで「売上を前期と後期で比較する」「販売チャネルごとの業績を把握する」「期間ごとの平均注文額を割り出し増減の確認をする」など、様々な業績を可視化することができます。
Shopifyを利用するデメリット
Shopifyを利用するデメリットとしては以下が挙げられます。
● 大規模なサイトには不向き
● 一部HTMLなどの知識が必要になる可能性がある
● 日本語未対応の機能がある
● サポートに電話対応がない
大規模なサイトには不向き
Shopifyは、大規模なサイトには不向きです。とくに、顧客情報を管理し、アップセルやクロスセルに繋げるためのCRM領域まで手を出す場合、Shopifyを利用するのは得策ではありません。また、月に数百万PV以上の大規模サイトになると、どうしてもページスピードが低下し、CVRも落ちるでしょう。Shopifyは、月商ベースで数百万円程度のECサイトにおすすめです。
関連記事:ECに「特集ページの大量作成」をすすめる理由/CVRを効率的に改善させる方法とは?
一部HTMLなどの知識が必要になる可能性がある
Shopifyをカスタマイズする際、機能によっては、一部HTMLなどの知識が必要になる可能性もあります。自社にエンジニアがいない場合は、作業を外注するしかありません。
その場合の費用は、数万円程度に収まるケースが大半です。ECサイトの制作全てを外注すると数十万円以上の費用がかかるので、それらと比較すると安価であることに間違いはありません。
関連記事:ホームページ制作の相場は?内容、目的によって金額はどう変わるのか
日本語未対応の機能がある
Shopifyは、カナダのオタワに拠点を置く多国籍企業で一次情報は英語です。そういったこともあり、一部の管理画面やテンプレート、サードパーティアプリなど、まだ日本語に対応していない箇所もあります。
特にアプリは海外の開発者が多いため、説明文などは英語表記しかされていないものが数多くあります。利用できれば大きくストアのユーザビリティを向上させてくれる便利な機能を利用できないのは、大きなデメリットとなります。
サポートに電話対応がない
Shopifyでは、英語における電話サポートには対応しているものの、日本語での電話サポートには対応していません。
問い合わせはメールのみで、他の手段としては「コミュニティフォーラムで質問する」「ヘルプセンターで回答を見つける」「ガイドを使用する」といった自助努力となっています。困ったときにすぐに電話で対応してくれるスタッフがいないことは、非常に大きなデメリットとなります。
Shopifyの料金プラン
実際にShopifyを導入する上で気になるのは、必要な費用ではないでしょうか。ここでは、Shopifyの料金プランを紹介します。
● 初期費用
● 月額費用
● 手数料
● Shopify Plusとは
初期費用
Shopifyには複数の料金プランが存在するものの、どのプランであっても初期費用は無料です。初期費用が必要になるECプラットフォームも存在するので、その点は非常にメリットだと言えるでしょう。
月額費用
Shopifyの料金プランは、ベーシック、スタンダード、プレミアムの3つです。その3つの月額費用は下記の通りです。
● ベーシック:33米ドル
● スタンダード:92米ドル
● プレミアム:399米ドル
なお、どのプランであっても3日間の無料体験が用意されています。
手数料
Shopifyのクレジットカード手数料は、料金プランによって異なります。
● ベーシック:3.4%から4.15%
● スタンダード:3.3%から4.1%
● プレミアム:3.25%から4.05%
上記の手数料に幅があるのは、ユーザーの決済方法によって異なるためです。国内発行のクレジットカードの手数料が最も安価であり、海外発行のクレジットカードだと手数料が少々高くなる仕組みです。
ランニングコストを抑えて運営するためにも、まずはベーシックプラン、もしくはスタンダードプランから始めることを推奨します。
Shopify Plusとは
Shopify Plusとは、通常のShopifyプランのさらに上位プランに位置付けられているサービスです。Shopifyは「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」という通常プランがありますが、Shopify Plusはこれらプランのさらに上のプランとなります。主に大企業や取引量が膨大になるクライアント向けとなっています。
そのため、オンラインストアの構築に関して専門の知識が必要になる場合が多く、自社で対応が難しい場合は「Shopify Plus Partner認定企業」に相談する必要も出てきます。人手作業のほとんどを自動化できるため、作業効率の大幅な向上が見込めるプランとなっています。
Shopifyを導入して成功した事例
最後に、Shopifyを導入して成功した事例を2つ紹介します。
● ゴーゴーカレー
● カキモリ
それぞれ順番に解説します。
ゴーゴーカレー
ゴーゴーカレーは、金沢カレーのブームを作ったカレーブランドです。年齢問わず決済してもらえるよう、複数の決済システムを搭載しています。また、各商品ページにSNSシェアボタンを設置し、拡散による自動的な集客が図られていることも特徴です。飲食に関連する商品を販売する場合は、ゴーゴーカレーを参考にしてみてください。
カキモリ
オーダーノートで有名な文具店のカキモリは、Shopifyに集客用のコラムを多く投稿して見込み客を集めているECサイトです。Instagramとの連動も図っており、ユーザー層に合わせてデザインも最適化しているなど、非常に作り込んでいることが見て取れます。コラムの発信も並行して行いたい場合は、カキモリを参考にしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、Shopifyについて解説をしてきました。Shopifyは、手軽にECサイトを公開できるプラットフォームです。基本機能、デザインテンプレート、カスタマイズ機能など、かゆいところに手が届くあらゆる機能が搭載されています。月額のランニングコストも安価であるため、中長期的な運用も容易に可能となっています。
まずは、実際にShopifyに登録し、どのような機能が搭載されているかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。