オンライン環境に着目すると、今やたくさんの情報が掲載され、類似するような企業情報、商材、サービスなどが溢れるほどに存在しています。
そのような混戦する状況の中、より有益な情報をアピールするために、企業やマーケターはさまざまな戦略を練り、提供するサービスやビジネスに対する付加価値を高め、競合他社との差別化を図ることが非常に重要視され、「ブランド力」が大きな影響を与えるようになりました。
「ブランド力」を高めていくには、「PR」が欠かせません。現在では「PR」というキーワードは、私たちの暮らしの中に当たり前のように存在し、さまざまな場面で目にする機会も増加し親しまれています。
一見、「PR」と聞いても「〇〇〇PR」など、多くのキーワードが存在し、本来「PR」が持つ意味や、定義を理解できていない方もまだまだ多いのではないでしょうか?
本記事では、「PR」とは?という部分から、「PR」の種類、プロモーションや広告との違いについて詳しくご紹介していきます。
目次
PRとは?
PRというキーワードは「公衆との関係」を表わす言葉である、「Public Relations」の頭文字を取った略称です。
「公衆との関係」といっても、しっくりと来ない方も多いかと思います。少しかみ砕いてご説明すると、会社や組織に属する人々との間に良好な関係性を築きあげるために戦略的に実施するコミュニケーション施策となります。
私たちの暮らしの中に当たり前のように存在するキーワードである、広報やプロモーション、宣伝、広告などはPRと似たような存在として認知されています。しかし、PRはこのようなキーワードとは違いがあるのです。
目的と対象、情報の露出場所を整理し、それぞれの違いを簡単にご説明します。
PR
・目的
∟企業やマーケターが展開する企業価値、ビジネス、商材の価値を効果的にアプローチするためにコミュニケーションを戦略的に活用する
・対象
∟組織や企業全般
・情報掲載場所
∟SNS/WEBサイト/各種メディア
広報
・目的
∟企業をはじめとする組織内のビジネス内容や、施策を広範囲に知らせることを目的に情報の発信を実施する
・対象
∟組織や企業全般
・情報掲載場所
∟各種メディア/広報紙/WEBサイト
広告
・目的
∟企業やマーケターの展開するサービス、ビジネス、商品の販売や認知拡大を目的に有料メディア媒体を使用し、さまざまな宣伝活動を実施する
・対象
∟顧客層/ビジネスの取引先/一般消費者
・情報掲載場所
∟有料媒体/WEB広告/実店舗
プロモーション
・目的
∟企業が展開する商材の販売を目的とし、商材に対する特徴、性質、ブランド背景の理解を深めることを目的に情報の発信を実施する
・対象
∟顧客層/ビジネスの取引先/一般消費者
・情報掲載場所
∟各種メディア/WEBサイト/SNS/実店舗
マーケティング
・目的
∟企業が展開する商材の販売を目的とし、顧客層に見られる課題を分析し、ビジネスに対する解決策を提案、立案を実施する
・対象
∟顧客層/ビジネスの取引先/一般消費者
・情報掲載場所
∟広告/SNS/WEBサイト
PRに欠かせない存在のステークホルダーとは
ここからは、PRを語るにはセットで考える必要がある、ステークホルダーについてご紹していきます。Public Relationsのパブリックの部分には、国や地域、共同体の構成員を意味することを表わします。企業の活動では、事業に関するパブリックを“ステークホルダー”と呼ぶので覚えておきましょう。
企業のステークホルダーの種類には、主に【メディア・株主・従業員・行政機関・金融機関・取引先・一般消費者】が存在します。
企業は、上記のステークホルダーとPR活動を実施することにより、良好な関係性を築きあげることを目標とするのです。ステークホルダーの中でも、メディアの項目は特にPRとの関係性が高く、PRの大半がメディアの項目を活用して各ステークホルダーにさまざまな情報が届けられる仕組みが採用されています。
また、広告、宣伝、マーケティング、プロモーションは商材やサービスの販売促進に特化することが分かりますが、PRや広報の分野に関しては、企業をはじめとする組織内のビジネス内容や、施策を広範囲に知らせ、多くのステークホルダーと良好な関係を築くことを目的とします。このようなことからPRや広報は、売り上げに直結するような考えや施策だけを実施するものではないと理解することができるでしょう。
企業は、目的に見合ったPRを実施することにより、多数のステークホルダーに自社の良いイメージを持ってもらえます。効果的なPR活動は、戦略的なマーケティング施策と並行して実施することにより、PR活動の効果を更に向上させることにも繋がります。
企業が実施するPR活動
企業が実施するPRには、会社理念や事業活動の内容などを正確にステークホルダーに伝えことで、各ステークホルダーとの間に良好な信頼関係を築きあげることを目的とします。
現在の世の中は、たくさんのサービスやビジネス、商品などがひしめき合い、企業同士が提供する「モノ」が類似し市場から溢れかえる時代に変化しています。
ただ単に、モノを作れば売れるといった時代という訳ではなく、提供する「モノ」が持つ価値や、一般消費者の目線に立ちサービスを提供するといったようなことが非常に大切な役割を果たします。たくさんの「モノ」が溢れる時代だからこそ、一般消費者の認知拡大や、顧客層の獲得、少しでも好意を抱いてもらえるような施策などを、PR活動を通じて展開する必要があるのです。
企業が実施するPR活動の主な内容
◇プレスリリースを活用して、企業が掲げる理念や将来像、現在の活動においてどのような価値を築きあげているかなどを伝える
◇企業が運用しているWEBサイトやSNSツールを活用して、企業が掲げる理念やサービス価値を各ステークホルダーと共有する
◇多くのステークホルダーとの関係を持つために、企業独自のイベントや販促を定期的に開催する
関連記事:重要な役割を担うプレスリリースとは?意味や簡単に書けるポイントを紹介
商品PR活動
現在、提供する商品やサービスなどに特化した商品PR活動を実施するには、企業PRと矛盾がないことが必要とされます。
以前の商品PRには、その商品の持つ特徴や、競合他社の商品と比較した際の利点、コスパなどにフォーカスすることが一般的でありました。
しかし、現代では上記の内容に焦点を当てることは勿論ではありますが、企業PRとの一貫性がどれだけ保たれているかも重要視されています。
企業として「カスタマーサービス・手厚い顧客サポートを重視する」などが掲げられている場合には、提供するサービスや商品の販売だけに焦点を当てるのではなく、購入後のサポート体制の具体的な内容や、企業独自のサポート内容を企業PRと矛盾することなく主張することが必要となります。企業理念に賛同することで、サービスや商品を認知していなかった一般消費者が顧客層へと成長するフェーズを用意することができるのです。
商品PR活動の主な内容
◇提供する商品が持つ価値を、プレスリリースを通してメディアに向けて配信する
◇企業で運用するWEBサイトを活用し商品を紹介する
◇オウンドメディア(ブログ)などを活用して、商品の詳細情報や、観覧者に対してここでしか手に入らないような有益な情報を詳しく届ける
◇SNSツールを活用して紹介する
◇インフルエンサーを活用して、幅広く商品アプローチを実施する
◇メールマガジンを配信し、企業で保有する既存の顧客層に情報を届ける
◇商品と消費者の接点を増やすために、販促の企画やイベントの実施をおこなう
マーケティングにプロモーションが含まれ、プロモーションのなかに広報、PRが含まれるという考えの上では、商品PRはプロダクト広報とも言えるでしょう。
関連記事:マーケティングにおけるプロダクト広報とは
自治体PR活動
現在、地方の自治体でPR活動を実施する動きも高まりを見せています。地域定住の促進を目的とするPR活動や、インバウンド需要に向けたPR活動などが注目を集めている状況です。そのような流れを地方行政が主催しサポートを実施するPR活動も増加し、情報掲載手法としてPR動画も活発的に作成されています。
注目の集まるPR動画の特徴として、多くのユーザーに届きやすく、話題性が高まると、口コミやSNSを通して拡散されさらに注目度が増加するケースが存在します。対象地域や提供するビジネスやサービスに対する認知や、知名度も上昇する効果も発揮するのです。昨今では総務省、地方公共団体を筆頭に、PR動画制作に必要とされる経費に対し財政措置の実施が可能であるため、地方をPRする動画が活発的に制作されています。
地方・自治体PR活動の主な内容
◇作成したPR動画やSNSツールを活用して県をまたいで全国へ発信する
◇広報紙を発行するだけに留まらず、広報紙を地域の情報掲載先として活用し、一つのプラットフォームを形成する
◇地域の方やシニア層の協力のもと、若年層が地域愛を育むような魅力的なイベントを開催する
◇企業や地方自治体が地元の商品を広く紹介する目的で、都市圏にアンテナショップを設置する
関連記事:SNS(ソーシャルネットワークサービス)の基礎知識と現代のSNSマーケティングがもたらす効果をご紹介
戦略PR
戦略PRとは、PR活動を通して扱う商品や、サービスに対する「気付き」を一般消費者に付与し、消費者自身の意思決定により「買う理由」を発見してもらおうとする考え方で、10年ほど前から注目されています。
従来であれば、企業やマーケターは広告によって、提供するサービスや商品の認知拡大を図り、最終目標である販売へ繋げるといった手法を選択してきました。しかし、インターネット市場には、情報が溢れかえるほどに存在し、広告慣れや、広告を避けるユーザーも増加傾向であり、普通に広告を配信したところで費用対効果も薄く、広告を見てもらえる可能性は低下してしまいます。
戦略PRでは、広告配信目的で商品に直接的に重点を置くのではなく、PR効果によって「流れ」を生み出すことで、広告が消費者に届くように舵を取る方法が戦略PRのアプローチなのです。
戦略PRを実施していくためには、軸となる戦略設計が重要な役割を担います。この重要視される戦略設計には、経営戦略やマーケティング戦略など広範囲に思考を張り巡らす必要があります。そのため、PRを担当することが多い広報やマーケティング部門だけで策定することはおすすめできません。経営層を含むさまざまな部署と連携しながら、多方面から意見をくみ取り、一体となって推進する必要があります。
また、実施するPR活動には、最新のデジタルコンテンツや注目の高まる動画コンテンツの活用や、スマートフォンの急速な普及を考慮し、利用者数の爆発的な増加が見られるSNSツールを活用するなどさまざまなコンテンツを幅広く連動させる必要があります。このようなことからコスト面は大きくなることが予想されるので、実施するPR活動に対する費用対効果もしっかりと把握しながら実施を進めていく必要があります。
まとめ
本記事では、「PR」とは?という部分から、「PR」の種類、プロモーションや広告との違いについてご紹介してきました。
PR活動は、即座に売り上げを確保するような目的ではなく、中長期的に見て効果の発揮が期待できる施策です。PRの実施を検討であれば、目標を明確に持ち、対象とするユーザーに最もマッチするコミュニケーションツールを選択しましょう。そして、提供する商品やサービス、さまざまな取り組みがどのような価値をユーザーに寄与できるのかをしっかりと理解し発信をおこないましょう。