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ポリコレの意味とは?マーケ・広報・人事が企業活動で炎上しないためのポイントを解説

2024.5.28
読了まで約 15

企業のマーケティング・広報・人事担当者として社内外に向けて情報を発信する際、言葉選びは慎重に行いたいものです。特に配慮したいのはポリコレ(ポリティカルコレクトネス)です。

インターネットの発達とグローバル化する社会情勢に伴い、たとえドメスティックな企業であっても、国籍や人種、宗教といった多様なルーツや価値観を尊重する姿勢が求められています。令和時代の企業活動においては、性別や年齢などについても、差別や偏見につながらない表現を心がけることも重要です。

本記事では、ビジネスパーソンの中でもとくにマーケティングや広報、人事など、対外的な情報発信をするビジネスパーソンに向け、ポリコレの意味や、注意すべきポイントをお伝えします。また、国内外のポリコレ関連で炎上した事例を交え、問題点をわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)とは

ポリコレとは、ポリティカルコレクトネスの略称で、さらに「PC」などとも略します。直訳すると「政治的正しさ」となり、中立的な立場で、あらゆる差別や偏見のない社会をつくり出そうという考え方を示す言葉です。国や人種、宗教、性別、年齢、さらに出身地や学歴、職業などにおいても差別や偏見をすることなく、多様な価値観を認め合おうという考えから生まれた概念です。

関連記事:アンコンシャスバイアスの具体例は?仕事上で気をつけたい対策

ポリコレ誕生の背景と歴史

差別や偏見をなくそうという考え方自体は昔からあり、最近になって広まった動きではありません。ポリコレという言葉が多くの人に認識されるようになったのは、1980年代以降のアメリカで起きた政治的な運動です。

アメリカの社会は、大航海時代を経てイギリスから移住した、アングロサクソン系の背景を持つプロテスタントの人々が中心的な存在です。先住民族であるネイティブアメリカンや、奴隷貿易という悲惨な歴史を背景に持つアフリカ系、南アメリカからの移民が由来のラテン系、19世紀以降の移民が由来のアジア系など、少数派の人種に対する差別や偏見は今でも少なくありません。このような社会を変えていこうという活動が80年代に活発になり、まずは差別的な呼称を改めようとなったのが、ポリコレの始まりです。

政治的な活動が活性になったもう一つの背景には、グローバル化やインターネットの進化、SNSの普及も挙げられます。世界中の人々が交流する機会が増えたのと同時に、情報の拡散性が高まったことで、それまで無自覚に発されていた差別的な表現が多くの人の目に触れやすくなり、ポリコレの需要が高まったと考えられます。

ディズニーやハリウッド映画に見るポリコレの広がりと現状

アメリカではディズニーやハリウッド映画など、エンターテインメントの世界においてもポリコレを重視する動きが見られます。ハリウッドで問題とされているのは、ホワイトウォッシングとBLM(Black Lives Matter:ブラック・ライブズ・マター)です。

ホワイトウォッシングとは、アフリカ系やアジア系、ラテン系などの有色人種の登場人物を、アングロサクソン系やコーカソイド系の、いわゆる「白人」の俳優が演じることを指します。これまでハリウッドではヨーロッパ系が出自の俳優が優遇される場面が多かったものの、現在ではポリコレに配慮し、有色人種が担うケースも珍しくありません。

有名な例として挙げられるのが、2023年に公開されたディズニーの実写映画「リトル・マーメイド」です。1989年にアメリカでアニメ映画として公開された際、主人公のアリエルは赤い髪の色白な女性でしたが、実写映画ではハリー・ベイリーというアフリカ系がルーツの、ドレッドヘアが特徴的な女性でした。ディズニーは、あくまで歌声の良さでキャスティングしたとしているものの、ポリコレを意識したキャスティングなのではないかという声もありました。

また、2020年5月にアフリカ系アメリカ人男性が警察官による不当な拘束方法で殺害された事件に端を発した「ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動」の影響も映画界に広がっています。過去にアフリカ系アメリカ人を侮辱的に描いた作品の配信差し止め要求や、過去の作品に釈明文を付ける動きなどが各所で見られるようになりました。

ただし、急激なポリコレへの傾倒には批判的な意見も少なくありません。前出の「リトル・マーメイド」では、実写とアニメのイメージがかけ離れていることから、X(旧Twitter)上で「#NotMyAriel(私のアリエルじゃない)」というハッシュタグを使用した発言が急増しました。

また、ハリウッドにおけるポリコレ重視の傾向は強いものの、内部では「白人中心主義の体質はあまり変わっていない」という声もあります。エンターテインメントの業界では、今後もポリコレとの向き合い方が課題となり続けることでしょう。

関連記事:ハッシュタグの意味とは!付け方や活用シーンを徹底解説

日本におけるポリコレの歴史と推移

多民族国家のアメリカと比較すると、日本におけるポリコレの問題は、人種間よりも男女間やマジョリティとマイノリティの間で起こりやすくなっています。続いては、日本国内におけるポリコレの歴史と推移の詳細を確認していきましょう。

アファーマティブ・アクション

国内では、ポリコレとともにアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)にも注目が集まっています。これは男性中心になりがちな社会の中で、女性や障害者などの不利な立場にある人に対して、進学や就職の際に法律で優遇措置を設ける運動を指します。

たとえば、1999年に施行された「男女共同参画社会基本法(第二条二項)」では、男女のいずれか一方に「機会を積極的に提供すること」が明記されています。また、2019年に施行された「改正雇用機会均等法(第八条、第二十条)」では、「女性労働者について極的改善措置をとるべきこと」や「事業主による積極的改善措置につき国が援助できること」が明記されています。

さらに男女間以外でも「障害者雇用促進法第四十三条一項」により、従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上(2.5%)雇用しなければならないと定められています。

これらの法制化により、少しずつではありますが、以前に比べて女性や障害者が働きやすい社会へと変革が進み、同時にポリコレへの意識も向上されつつあります。

参考記事
ポジティブ・アクションをめぐる日本の課題と諸外国の取組 | 内閣府男女共同参画局
障害者雇用促進法の概要 |厚生労働省

関連記事:クオータ制とは?メリットや日本の課題を分かりやすく

ハラスメント問題

日本でもう一つ、ポリコレの重要課題として挙げられるのがハラスメントです。セクハラやパワハラだけでなく、モラハラ、カスハラなども社会問題として認識されています。

ハラスメントについて詳しく知りたい方は「ハラスメントの種類とは?職場で起こる理由や企業側の対策について解説」をご覧ください。昨年末の更新時点で存在する25種類のハラスメントについて解説しています。

ポリコレで留意すべきポイント

外部へ情報を発信する企業のマーケティング・広報・人事部門担当者は、ポリコレについて常に留意しておく必要があります。そのなかでも特に気をつけたいポリコレのポイントを解説します。

人種・民族差別

アフリカ系アメリカ人に対する呼称は、かつて「ブラック」や「黒人」と呼ばれていましたが、現在では「アフリカ系アメリカ人」あるいは「アフリカン・アメリカン」が一般的です。これにより、過去の差別的な呼び方から脱却し、尊重される呼称が用いられるようになりました。

アメリカ先住民族に対する「インディアン」という呼称も、現在では「ネイティブ・アメリカン」と呼ぶことが多くなりました。これも、先住民族への敬意を込めた呼び方として広まっています。

また、宗教的な多様性を尊重するため「メリークリスマス」ではなく「ハッピーホリデイズ」と表現することが増えました。これには、ユダヤ教の「ハヌカ」やアフリカ系アメリカ人の文化を祝う「クワンザ」などの祝日も含まれます。

日本ではアメリカほど人種や民族差別の問題が顕著ではないとされますが、グローバル化が進む中、特に国外向けのビジネスにおいて差別的な表現をした場合、大きな損失を招きますので、十分に注意しなければなりません。日本語では先の「黒人」と同様に「白人」の使用も徐々に控えられるようになっています。

国内企業でも、グローバルを意識したポリコレの動きは多く見られます。たとえば花王は2021年3月に新製品の発売や既存品のリニューアルに際し「美白」という表現を取りやめました。2000年には、ぺんてるが製品の色名を「肌色」から「うすだいだい」に変更しています。

人種や民族に対する差別的な呼称や表現は、徐々に改善されてきています。特に企業においては、差別的な発言や表現を避けることが重要であり、それが社会的信用の向上にもつながるでしょう。

関連記事:グローバル視点で考える感覚マーケティング【上智大学 外川拓准教授 連載 第1回】

性別・ジェンダー・LGBTQ

LGBTQなどの性的少数者をネガティブな表現で呼ぶのは避けるべきです。もちろん多数派の性別やジェンダーについても、わざわざ差別的な表現で呼ぶ必要はありません。

また、夫婦関係についても多様性や時流を考慮した呼び方に変わりつつあります。「奥さん・家内」は女性が家庭にいるという固定概念を助長するため、「妻」や「パートナー」と呼ぶことが増えています。同様に「主人」の呼称は「夫」「パートナー」などが推奨されます。

ルッキズム

ルッキズムとは「外見至上主義」などと訳される言葉で、容姿で人を差別したり揶揄したり、差別や偏見、ひいきなどをすることです。顔の美醜や体格を揶揄するような言葉の発信はとくに控えるべきです。また、褒める文脈であっても、公的な場面で人の美醜について言及するは控えたほうが無難でしょう。

これまで大学の学園祭でよく開催されていたミスコン・ミスターコンなどの行事も、ルッキズムを助長するとして批判の対象となりやすいことから、廃止もしくは男女合同で行う学校が増えています。

エイジズム・年齢差別

エイジズム、つまり年齢差別にも注意が必要です。「高齢だから」「若すぎるから」といった先入観で人を判断し、その人のスキルや経験、価値観を無視してしまうのは避けるべきです。

ビジネスの現場では、自社の新製品をアピールする際に「高齢の方でも簡単に使えます」と言ったり、人事で中途社員を面接する際、年齢に関する情報だけを求めたり、などが具体例として挙げられます。

日本では2007年10月施行の改正労働基準法によって、求人票は年齢不問とし、年齢を理由に応募を断ることや、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定する行為が禁止されるようになりました。また、改正高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用保障義務に加え、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置をとることが努力義務としても設けられました。

少子高齢化が進み、労働人口が不足する現代社会においては、多様な人材を活用することが強く求められています。高年齢者の人材を採用する企業においても、年齢に関する偏見はさらに減らしていく必要があるでしょう。

参考記事
募集・採用における年齢制限禁止について |厚生労働省
高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省

関連記事:シニアマーケティングのリーティングカンパニーに聞く「ハルメク」成功の秘密(自分たちに都合のいいシニア像をペルソナに設定しないことがシニアマーケティングの鉄則)

職業への偏見・性別における職業の呼び方の変化

特定の職業や従事者に対し、先入観や偏見に基づいた差別的な扱いや発言を行う「職業差別」も避けなければなりません。また、これまで同じ仕事をしている男性と女性で名称が異なる職業の事例が多数ありましたが、近年では是正されつつあります。

たとえば、かつては「スチュワード」という言葉が男性客室乗務員を指し、「スチュワーデス」は女性客室乗務員を指していました。しかし、現在は男女ともに「キャビンアテンダント(CA)」と呼ばれています。

また、法律によって職業の呼称を変える動きも強まりました。保健師助産師看護師法により「看護婦」が「看護師」に、児童福祉法により「保母・保父」が「保育士」に、男女雇用機会均等法により「ビジネスマン・サラリーマン・OL」が「ビジネスパーソン」に、時流の変化から「カメラマン」が「写真家・フォトグラファー」などに変わりました。

職業差別とは若干異なりますが「就職差別」というものも存在します。採用面接などで面接官が相手に家族の職業や家業について質問するのも、控えたほうが無難です。詳しくは下記の記事を参考にしてください。

参考記事:就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例|大阪労働局

人権を軽視する差別・不快表現

上述した以外でも人権を軽視するような差別や不快表現には十分気をつけなければなりません。たとえば体型や見た目、病気、心身などに関する無配慮な言葉は、コンプレックスや障害を持つ人や関係者を傷つける恐れがあります。普段何気なく使ってしまっている言葉でも、実は誰かが傷ついている可能性もあるのです。

また、コンプレックス広告などといって、人のコンプレックスを強調し不安を煽るような不快な広告が近年問題視されています。広告出稿の際には、ユーザーに不快感や嫌悪感を与える表現にも留意しましょう。詳しい内容は下記の記事などを参考にしてください。

参考記事
【改めてもう一度】 言葉づかいを考えてみませんか~人権尊重のために~|橿原市公式ホームページ
Yahoo!広告ヘルプ(3. ユーザーに不快感を与えるような表現【第2章7.(1)(4)(5)(7)関連】)
その広告 行き過ぎていませんか?|NEWS WEB(NHK)

ポリコレに関連する用語集

ポリコレの周辺で頻出する用語や問題などを解説します。

言葉狩り

ある時期までは一般的に使われていた言葉が、一部の声により不適切だと判断され、過剰に排除された状態を「言葉狩り」と言います。言葉自体よりも、批判したい対象の発する言葉尻を捉えて、批判の道具として使われるケースも少なくありません。

ポリコレに関する配慮も、行き過ぎてしまうと単なる言葉狩りになってしまう恐れがあります。企業の情報発信者は、批判的な視点ではなく、誰かを傷つけていないか、という視点で表現方法を考えていく姿勢が望まれます。

言論弾圧・言論統制

立場の強い者や、権力を持っている者によって、弱い者が言論の自由を奪われる状態を「言論弾圧」と言います。また、公的な権力が検閲などをしてメディアや個人の言論や表現を制限することを「言論統制」と言います。自分とは異なる意見を弾圧する、といった形でも使われます。

企業が個人に自由な意見を言わせないような圧力をかけることも、言論弾圧だと捉えられる可能性がありますので、情報発信の際には留意すべきでしょう。

表現の自由

表現の自由とは、民主主義の根幹をなすものであり、守られなければならない個人の権利です。しかし、ポリコレの観点から見れば、表現の自由によって発した言葉や制作物が誰かを傷つけてしまう可能性もあります。そのため、表現の自由とポリコレは適切なバランスをとることが重要です。

自由には責任が伴うものであり、自由を盾にして何を発信してもいいわけではありません。「表現の自由」によって発された言葉や制作物が、相手の表現の自由を奪ってしまう可能性があることも考慮する必要があるのです。

ヘイトスピーチ

ヘイトスピーチとは、人種や宗教、性別などの属性を持つ集団や個人に向けて、攻撃的な言説を行うことです。国連が発信した「ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画」によると、ヘイトスピーチは以下のように定義されています。

「ある個人や集団について、その人が何者であるか、すなわち宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダー、または他のアイデンティティー要素を基に、それらを攻撃する、または軽蔑的もしくは差別的な言葉を使用する、発話、文章、または行動上のあらゆる種類のコミュニケーション

出典:ヘイトスピーチを理解する:ヘイトスピーチとは何か | 国連広報センター

全国で初めてヘイトスピーチ抑止条例を制定した大阪市では、有識者で構成される審査会がヘイトスピーチと判断した場合、市がその発信内容や発信者の氏名、団体名などを公表すると設定しました。大阪市の決定に対し、表現の自由を侵害するとして条例を無効とする住民訴訟が起こされましたが、大阪地裁と大阪高裁は、この条例に表現の自由を制限する側面はあるものの、合理的でやむを得ない範囲内であり、条例は合憲であると判断しました。

さらに川崎市では、ヘイトスピーチに対して刑事罰を盛り込んだ条例が施行されるなど、全国的にヘイトスピーチを抑止する動きが強まっています。

今後、ヘイトスピーチに関する条例が制定された大阪市や川崎市に在籍する企業に限らず、すべての企業は、ネット炎上などによるブランドイメージの毀損を防ぐためにも、ヘイトスピーチを未然に抑えなければなりません。

多様性・ダイバーシティ

多様性(ダイバーシティ)とは、人種や国籍、性別、宗教、価値観などの違いをお互いに認め合い、受け入れることを指します。

ポリコレを浸透させるうえでも、多様性への理解は欠かせません。多様性を認識することがポリコレ推進の第一歩といえるでしょう。

関連記事:ダイバーシティマネジメントを解説!注目を集める背景、日本企業の事例

インクルージョン

インクルージョンとは「包括」「包含」といった意味で、多様性をさらに一歩進めた概念です。1970~80年代に欧州で問題となっていた社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)への対策として生まれました。人種や国籍、宗教などで差別をせず、互いに認め合ったうえで、誰もがあらゆるサービス、機会、権利を享受できるようにする社会福祉政策として始まったものです。

現在では、社会福祉に限らず、ビジネスや教育の場でもインクルージョンの概念が広がり、ポリコレを実現させるうえでも欠かせない考え方だといえます。

関連記事:インクルージョンとは?ダイバーシティとの関係や推進のためのポイント

リスクマネジメント・リスクヘッジ

リスクマネジメントとは、ビジネスを行う際に将来的に起こり得るリスクを洗い出し、防止策の立案や、実際にリスクが起きた際の適切な対応方法などを包括的に管理するプロセスです。一方、リスクヘッジは「リスクの回避」を意味し、実際にリスクが発生した場合にその影響を軽減するための戦略や手段を指します。リスクヘッジは投資などの分野でもよく用いられます。

ポリコレに十分な配慮をしていても、何かしらのミスや誤解によってリスクに直面する可能性はゼロではありません。そのような状況に遭遇したときに、迅速かつ適切に対応するためには、あらかじめリスクマネジメントを適切に設計し、リスクヘッジを実施することが重要です。

関連記事:レピュテーションリスクとは?意味や原因、事例を分かりやすく解説

キャンセルカルチャー

キャンセルカルチャーとは、2010年代中盤頃からアメリカで始まった動きで、主にSNSやネットメディアを通じて、政治家や芸能人、企業などに対する抗議活動を指します。具体的には製品の不買や、テレビ局、出演CM企業への抗議などが挙げられます。また、SNSを利用した誹謗中傷もキャンセルカルチャーの中でよく見られる現象です。

キャンセルカルチャーは、人物や企業が発したポリコレに反する発言をきっかけに起こることが多く、不用意な一言が大きな損失につながるリスクがあるため注意が必要です。

ポリコレ棒・ポリコレ疲れ

ポリコレ棒とは、自分の考える正義を振りかざして他人を攻撃する様子を、第三者が皮肉る際に使う言葉です。ポリコレを自分の都合にいいように扱い、他人に対して傲慢な態度をとる人たちを揶揄する際、「ポリコレ棒を振り回す」などと言います。

ポリコレ疲れは、過度なポリコレ遵守の風潮に対する、反感や疲弊を表した言葉です。2016年のアメリカ大統領戦でドナルド・トランプ氏が勝利した背景に、アメリカ国民のポリコレ疲れが影響したのではないかという説があります。この当時から「ポリコレ疲れ」なる言葉が使われるようになりました。

SDGs「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」「目標10 人や国の不平等をなくそう」

国連が採択した17の目標から構成されるSDGs。その達成目標のなかにも、ポリコレに関連するものが2つあります。1つは「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」、もう1つは「目標10:人や国の不平等をなくそう」です。

性別による差別や偏見をなくし、ジェンダー平等の促進をすることや、国籍、人種、年齢、性別、障害の有無など、表層・深層の両面で異なるものを認め合い、すべての人や国が社会・経済・政治に参画できるようにすることを掲げています。この2つの目標を達成するためには、ポリコレの理解と浸透が必須です。

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企業活動におけるポリコレ炎上事例:海外編

海外での企業活動におけるポリコレ炎上の多くは人種問題や異文化への敬意不足から来るものです。ここではそのなかでも代表的な事例を4つ紹介します。

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Gap:広告写真のアフリカ系アメリカ人モデルの立ち位置により炎上

2016年にアメリカのアパレルメーカーGapが、子供服のプロモーションとして4人の子供モデルを使った広告を作成し、炎上しました。

この広告は、アフリカ系アメリカ人の少女と3人のヨーロッパ系アメリカ人の少女が写っているもので、アフリカ系の少女だけが暗い顔をしていて、それ以外の少女がその少女をひじかけのようにしたポーズをしていることが問題視されました。

ソーシャルメディア上で、少女の立ち位置が差別的に見えるという指摘が広まり、Gapは不適切だというクレームがあったとして広告の出稿を取りやめました。一部では「差別的な意図はないはずだ」「大げさに考えすぎではないか」といった意見もあり、論争となりました。

広告がどのような受け取られ方をするのかは、受け取る個人の資質や背景、そして社会的な時流なども影響します。企業は時代の空気に合った広告制作をする必要があるでしょう。

ボストン美術館:イベント内容がアジア系人種の差別を助長するとして炎上

2015年、アメリカのボストン美術館で、印象派画家のクロード・モネが描いた「ラ・ジャポネーズ」が展示されました。この絵画は、モネの妻が日本風の着物である打ち掛けを身にまとい、扇子を持った姿が鮮やかな色彩で描かれています。

ボストン美術館では、モネの芸術との一体感を味わってもらおうと、同じような打ち掛けを用意し、来場者がそれを羽織って写真撮影するイベントを開催しました。

しかしこの試着イベントは、アジア系の人種差別を助長するとして、あるアジア系の団体が抗議し、美術館側はイベントを中止しました。抗議の理由としては、人種差別やステレオタイプな見方を助長し、異国情緒を抱く人々に誤ったイメージを与える可能性がある、というものでした。

この件に限らず、民族的なアイテムを、その背景を知らないほかの民族が安易に取り扱うと、当事者たちが違和感を抱く現象が起こりやすくなります。異文化を扱うイベントの開催時には、こういった抗議が起こり得る可能性を事前に考慮しておく必要があるでしょう。

参考記事:ボストン美術館の「キモノ試着イベント」が中止に 理由は人種差別、白人至上主義?

キム・カーダシアン:女性用下着ブランド「KIMONO」が文化盗用とされ炎上

2019年、アメリカのセレブタレント、キム・カーダシアン氏が、アメリカ人女性の多様な肌の色や体形に対応する女性用補正下着ブランド「KIMONO」を立ち上げました。しかし、このブランド名に対し、主に日本の国内で「伝統ある着物を下着ブランドの名前にするのはおかしい」「文化の盗用だ」という議論が巻き起こり、社会的な問題として炎上しました。

彼女自身は「日本の文化における着物の重要性は十分理解しており、深い敬意をもっている」とコメントし、当初はブランド名の変更をしないと表明していましたが、その後「SKIMS」というブランド名に変え、新たなスタートを切りました。

この炎上事例も、先のボストン美術館の件と共通し、異文化の取り扱いには注意が必要だということを示唆しています。

H&M:キャンペーン広告が女児の性的対象化につながるとして炎上

ごく最近の事例なので記憶している方も多いかもしれませんが、アメリカのアパレルメーカー、H&Mがオーストラリアで展開したキャンペーンで批判の的となり、広告の削除と謝罪を余儀なくされました。

このキャンペーンでは、2人の少女がピンク色の通学バスを模したシーンで制服を着てポーズをとり、「H&Mの『バック・トゥー・スクール(新学期)ファッション』で注目を集めよう」というキャッチコピーが添えられていました。

この広告を見たオーストラリアの作家で、広告の性的表現や児童ポルノ問題について取り組むメリンダ・タンカード・リースト氏が広告を批判しました。彼女の主張は「多くの子供たちは自分の外見に対し、過度に注目を集めることを望んでいない」「なぜ少女が外見やスタイルに注目を集めるべきだという考えを煽るのか」というものでした。

その後、X(旧Twitter)上では「少女が性的対象化されることにつながる」「ルッキズムの意識を子供に植え付ける」といった批判が寄せられ、H&Mは広告を削除し、謝罪することになりました。

この炎上事例は、広告表現における性、ジェンダー、ルッキズムなどについて、多くの人に再考を促すきっかけとなりました。

企業活動におけるポリコレ炎上事例:日本編

日本の企業活動におけるポリコレ関連の炎上事例は、海外のような人種や異文化間の摩擦や衝突によるものが少なく、ほとんどは女性に関する事例です。近年の国内で起こった5つの印象的な炎上事例を振り返ります。

東京医大:女子受験者を一律減点し合格者数を恣意的に操作していたとして炎上

2021年、東京医科大学が同年2月に行われた医学部医学科の一般入試で、女子受験者だけの得点を一律に減点し、合格者数を恣意的に操作していたことを、読売新聞やBBC NEWS JAPANなどの報道機関が報じました。

女子だけに不利な得点操作が行われた理由として、大学側は、女子学生が結婚や出産で医師を辞めるケースが多いとし、男性医師が病院の医療を支えているという意識が強いためだと説明しました。得点操作は2010年の一般入試合格者の割合で女性が前年の2割強から4割弱と大幅に上回ったことをきっかけに、それ以降毎年行われていたことも明らかになりました。

この事件は世間の広範囲に影響をおよぼし、女性差別ではないかという議論を引き起こしました。

アツギ:タイツのキャンペーン内容が女性を鑑賞することを助長するとして炎上

2020年、ストッキングやタイツのメーカーであるアツギは、11月2日の「タイツの日」に合わせて、30人のイラストレーターに同社のタイツを着用した女性のイラストの作成と、X(旧Twitter)への投稿を依頼しました。しかし、いくつかのイラストでは下着が見えそうな表現や、スカートを持ち上げているなどの性的な表現が見られたため、タイツのユーザーで当事者の女性たちから多くの批判が集まりました。

アツギはユーザーからの批判を受け、翌日に公式Webサイト上で謝罪しました。しかし今年、アツギのX公式アカウントが、タイツに関して綴られた、賛否のある内容の投稿に対し「いいね」をしていたことがまた問題となり、再度謝罪をすることになりました。

この事例では、広告キャンペーンのメッセージが自社のユーザーだけでなく、一般の閲覧者にも向けられた表現となり、結果的に主要なユーザーに不快な印象を与えてしまったため、炎上しました。広告の本質と意義について、新たな議論を引き起こした事例と言えるでしょう。

参考記事:【謝罪全文】アツギ、SNS「不適切」運用 女性下着めぐる投稿に「いいね」で炎上→「運用を停止」(よろず~ニュース) – Yahoo!ニュース

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ルミネ:Web動画がルッキズムやセクハラを迎合しているとして炎上

2015年、ショッピングセンターチェーンを展開するルミネは、Web上で「女性応援CM」を公開しました。

しかし動画の内容が「女性を差別する意図が感じられるものである」「男性のセクハラ的な言動に女性が迎合しているように見える」と批判され、SNSを中心に炎上。その結果、ルミネは動画を非公開にし、公式に謝罪を行いました。

参考記事:ルミネ、資生堂…なぜ優良企業のCMが「炎上」するのか|日経BizGate

資生堂:CMの内容がエイジズムだとして炎上

2016年、化粧品メーカーの資生堂は、同社の化粧品ブランドのCMにおいて、「男性上司の発言がセクハラにあたる」「女性の価値が若さと見た目に限定されている」といった批判を浴びました。

特に25歳を過ぎた女性に対して、同僚女性が「あなたはもう女の子ではない」と発言した内容が、女性に対するエイジズムを助長するとして、世間に大きな波紋が広がりました。

その結果、資生堂は公式Webサイト上で謝罪し、Web上で公開していた2本のCMを削除し、テレビCMの放映も中止しました。

ユニ・チャーム:動画広告がワンオペ育児の賛美だと批判されて炎上

2016年、衛生用品メーカーのユニ・チャームは、自社の主力商品であるおむつブランドのCMが、母親のワンオペ育児を賛美する内容だとして炎上しました。

CMでは父親の姿はほとんど描かれず、新米の母親が一人で悩みつつも育児に励む様子が描かれました。最終的には女性の笑顔で終わるものの、育児経験のある女性からは「過去の辛さを思い出す」「ワンオペ育児を賛美するべきではない」といった批判が寄せられました。

企業活動で留意したい部門ごとのポリコレ

ここまでの解説や事例を踏まえて、「マーケティング」「広報」「人事」の各部門で留意すべきポリコレのポイントを解説します。

マーケティング・営業:プロモーション、広告展開

マーケティングや営業部門は、プロモーション活動や広告を通じて対外的に情報を発信する役割を果たします。事例でも紹介したように、企業の炎上案件の多くは、SNSやCM内容の不備に起因しています。ですので、公開前にさまざまな立場の人に何重にもわたってチェックをしてもらうことが求められます。

特に日本では女性に対するジェンダーやルッキズム、エイジズムを助長する内容が炎上の原因になることが多いため、さまざまな立場にある女性の視点によるチェックが必須です。プロモーション情報を発信する部門では、チェック体制を整備しておく必要があるでしょう。

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広報:SNS、プレスリリース等の発信

広報部門はマーケティングや営業と並んで対外的な活動を行う主要な部門であり、「会社の顔」とも呼べる重要な役割を担っています。そのため、ポリコレを遵守する意識が一層求められます。

特にSNSは拡散性が高く、不用意な投稿が一瞬で広まる可能性があるため、担当者へのポリコレに関する研修や教育、炎上などの緊急時の対応など、リスクマネジメントの徹底が重要となります。

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人事:求人・採用活動、ポリコレ・ハラスメント研修

求人や採用活動においては、エイジズムやジェンダー差別に対する注意が必要です。また、面接で家業や両親について尋ねるなど、本人や家族に対する無配慮な行動にも注意を払うべきです。

また、人事研修においては、全社員にポリコレやハラスメントの概念をしっかりと認識してもらう必要があります。研修も一度で終わらせるのではなく、定期的に実施し、社内で禁止事項を明文化することも重要です。

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企業活動においてポリコレの配慮は必須である

企業活動において、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)は常に意識すべき概念です。企業情報の発信を行う際には、社内外の多様な意見に耳を傾け、バランスを取りながら行動することが重要です。

グローバルにおいては、多様な国籍、人種、宗教などへの無配慮な情報発信が炎上を引き起こしやすく、日本では、女性に関する炎上の事例が多く見受けられます。これらの事例から言えるのは、企業活動におけるポリコレの重要性は日に日に増しているということです。

広告、SNS、プレスリリースなど、社外への情報発信手段は以前に比べて大幅に増え、発信の敷居も低くなりました。そして、情報伝達のスピードも格段に上がり、炎上も一瞬で広がる可能性があります。炎上を未然に防ぐためには、ポリコレ遵守の意識が欠かせません。時代に合わせてポリコレの認識をアップデートする姿勢が、令和のビジネスパーソンには求められています。

これからも、ポリコレへの理解を深め、それを日々の業務に生かすことで、より良い社会を創造していきましょう。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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