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ニーズとは一体何?ウォンツやシーズとの違いも解説

2024.7.4
読了まで約 5

マーケティングに携わる人ならば、誰もが一度は見聞きし、使ったことがあるであろう言葉「ニーズ」。しかし、実際のところ、ニーズの説明を求められると困ってしまうほど、理解が曖昧だという人は少なくないでしょう。

的確なマーケティング施策を打っていくためには、ニーズの意味を正確に把握することが重要です。

そこで今回は、ニーズとは何かを解説したうえで、ニーズの種類を紹介します。また、ニーズと混同されがちなウォンツとシーズについても、丁寧に解説します。

ニーズとは

ニーズ(needs)とは、端的に言えば「欲求」です。

「マーケティングの神様」と称されるアメリカの経済学者フィリップ・コトラーは、ニーズについて「人が生活するうえで必要な充足感が満たされていない状態」を指す言葉と定義づけしています。

「充足感が満たされていない状態」は、「欲求が生じている状態」と言い換えられます。

そのため、「顧客ニーズ」と言えば、「顧客が抱く欲求」を意味する言葉として用いられることが一般的です。

ただし、顧客ニーズは、顧客が抱く欲求全般を指す言葉ではありません。

ニーズの語源である「need」の主たる意味が「必要」であり、コトラーが「人が生活するうえで必要な」と条件付けしていることからも窺い知れるように、顧客ニーズは「顧客にとって必要性が高い欲求」を意味します。

たとえば、「車で旅行をしてみたい」など、顧客が「困ってはいないけれど、できたらいいな」と感じる程度の小さな欲求は、顧客ニーズとは呼べません。

「勤務先が公共交通機関を利用できない場所にあるため、車で通勤しなければならない」など、顧客が「困っていることを解消しなければならない」と強く感じ、具体的な解決手段を求めるほど大きな欲求を、顧客ニーズと呼びます。

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ニーズの種類

顧客のニーズは、「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の2種類に大別されます。これらのニーズをしっかりと区別して把握しておくことは、効率的なマーケティングを行ううえで欠かせないと言っても過言ではありません。以下より、それぞれのニーズについて、具体例を交えながら解説します。

顕在ニーズ

顕在ニーズとは、顧客自身が自覚しているニーズを指す言葉です。

たとえば、「ウォーターサーバーが欲しい」と話す顧客がいたとします。

その顧客にウォーターサーバーが欲しい理由を尋ねてみると、おそらく、「いちいちお湯を沸かす手間を省きたい」「赤ちゃんにきれいで安全な水でミルクを作ってあげたい」など、さまざまな答えが返ってくるでしょう。

このように、顧客に少し質問するだけで聞き出せるのが、顕在ニーズの特徴です。

なお、顕在ニーズは以下のように質問を重ねていくことで深掘りできます。

店員:なぜ、ウォーターサーバーの購入をお考えなのですか?
顧客:毎日きれいな水を飲みたいと思ったので。
店員:きれいな水を飲みたいと思いはじめたきっかけはありますか?
顧客:最近体調が優れなくて、知人に相談したら水から変えてみればと言われたので。
店員:差し支えなければ、お体のどのような点が気になっているか教えていただけますか?
顧客:お通じがあまり良くなくて、何とかならないかと悩んでいます。

多くの顧客から顕在ニーズを聞き取れば、顧客の共感を呼ぶ訴求力の高いマーケティングができるようになります。

しかし、顧客一人ひとりと対話を重ね、顕在ニーズをつぶさに聞き取っていくことは、現実的ではないでしょう。

より多くの顧客の顕在ニーズを把握するための主な方法としては、以下の2つが挙げられます。

アンケート

アンケートを実施すれば、多くの顧客の顕在ニーズを容易に把握できます。特に、インターネットを通じてアンケートを実施すれば、直接会うことが叶わない顧客の声も拾うことができるため、おすすめです。

なお、アンケート調査サービスやクラウドソーシングサイトなどを活用すれば、集計の手間も最小限に抑えられます。また、性別や年齢、居住地域などの属性ごとに顧客の顕在ニーズを把握できる点も、特筆に値するでしょう。

ソーシャルリスニング

ソーシャルリスニングとは、顧客がTwitterやInstagramなどのSNS上で発信している情報を収集し、分析する調査手法です。企業が直接質問してもなかなか聞き出すことができない顧客の本音を知ることができるということで、今注目を集めています。

ソーシャルリスニングを行えば、顕在ニーズのみならず、ブランドイメージやトレンドなども把握できます。ソーシャルリスニングツールを活用すれば、より効率的に顧客の顕在ニーズを集められるでしょう。

潜在ニーズ

潜在ニーズとは、顧客自身が自覚できていないニーズや、うまく言い表せないニーズを指す言葉です。

たとえば、家づくりに際し、「多くの衣類を収納できるよう、ウォークインクローゼットが欲しい」と話す顧客がいたとしましょう。

この顧客の顕在ニーズは、「多くの衣類を収納したい」ということになります。しかし、言葉には出さずとも、実際には「衣類のみならず、大切なコレクションや金庫なども置きたい」「クローゼット内で一通りの身支度をしたい」「整理整頓を容易にしたい」など、さまざまな潜在ニーズを抱えている可能性があります。

このような顧客に対し、「多くの衣類を収納したい」という顕在ニーズを叶えるためにただ広いだけのウォークインクローゼットを提供しても、顧客の満足度を高めることはできません。この顧客の満足度を高めるためには、コレクションや金庫を置けるスペース、姿見や化粧台、豊富で使い勝手の良い収納棚など、潜在ニーズを満たす機能を備えたウォークインクローゼットをつくる必要があります。

潜在ニーズの把握無くして顧客のニーズを満たすことは、不可能と言って良いでしょう。そのため、潜在ニーズは真のニーズとも呼ばれます。

潜在ニーズを把握するための主な方法としては、以下のようなものが挙げられます。

インタビュー

インタビューを実施すれば、顧客から潜在ニーズを聞き出せます。ただし、漫然と質問を重ねるだけでは顕在ニーズしか把握できないため、質問方法を工夫したり、質問内容をしっかりと練ったりしておく必要があります。

潜在ニーズを明らかにするためにインタビューを実施する際には、商品・サービスがもたらすメリットは何かを属性・機能・情緒・価値観と段階を追って繰り返し尋ねるラダリング法などを用いることがおすすめです。

顧客分析

顧客の属性や過去の行動など、さまざまな情報をもとに顧客分析を行えば、顧客の潜在ニーズを洗い出すことができます。潜在ニーズの発見に有効とされている顧客分析の主な手法としては、以下の5つが挙げられます。

行動観察 複数のユーザーの行動をリアルタイムで観察して分析する。
行動ログ分析 ユーザーのWeb上の行動履歴データを分析する。
RFM分析 Recency(最近の購入日)・Frequency(利用頻度)・Monetary(購入金額)の3つを指標とし、顧客をランク付けする。
CTB分析 Categry(カテゴリー)・Taste(テイスト)・Brand(ブランド)の3つを指標とし、購買予測を行う。
セグメンテーション分析 市場や顧客をこまかくグループ分けし、グループごとに分析を行う。

ニューロリサーチ

ニューロリサーチとは、脳波をはじめとする神経活動反応をリアルタイムで計測し、顧客の無意識化にある潜在ニーズを明らかにする調査手法です。視線の動きを追うアイトラッキングやアンケートなどの他の調査手法と組み合わせれば、より一層精度を高めることができます。

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ニーズとウォンツの違い

ニーズと混同されやすい概念として、「ウォンツ」があります。

フィリップ・コトラーは、ウォンツについて、「ニーズを満たす特定の物が欲しいと感じる欲望」を指す言葉と定義づけしています。

たとえば、「家の中で運動をしたいから、トランポリンが欲しい」と話す顧客がいたとしましょう。この場合、「家の中で運動をしたい」がニーズ、「トランポリンが欲しい」がウォンツとなります。

つまり、ニーズとウォンツは、目的と手段の関係にあると言い換えられます。

ニーズとウォンツは、しっかりと区別することが肝要です。

たとえば、「肌の調子を整えたいから、スキンケアグッズを揃えたい」と話す顧客がいたとします。この顧客のニーズは「肌の調子を整えたい」であり、ウォンツは「スキンケアグッズを揃えたい」です。

それにもかかわらず、「スキンケアグッズを揃えたい」というウォンツをニーズと取り違えてしまうと、肌の調子を整えることとは無関係なスキンケアグッズを勧めてしまい、顧客に不信感を与えてしまう危険性があります。

また、美容家電やサプリなど、他に提案できたはずの選択肢にも気づけなくなってしまう可能性があります。

間違いなく顧客が満足する提案をしたいと考えるのであれば、ニーズとウォンツを嗅ぎ分ける手腕を磨きましょう。

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ニーズとシーズの違い

「シーズ」は、ニーズと対比されることが多い概念です。

シーズとは、企業が持っている技術やアイデア、強みなどを指す言葉です。

ニーズ志向と言えば、顧客のニーズを満たすことを目的に商品・サービスをつくることを意味します。競合が多いために価格競争にさらされる恐れがあるものの、需要がある商品・サービスを提供するために利益が見込めます。

他方、シーズ志向と言えば、企業の技術やアイデアを活かして商品・サービスをつくることを意味します。顧客の琴線に触れられなければ売上につながらないものの、オリジナリティの高い商品・サービスを提供するために市場を独占できる可能性が高まります。

ニーズは「顧客視点」、シーズは「企業視点」と考えると、わかりやすいでしょう。

なお、マーケティングでは、ニーズとシーズを両立することが理想とされています。

まとめ

ニーズとは、具体的な解決手段を求めるほど大きな困りごとを抱えているときに生じる欲求を指す言葉です。

ニーズは、顧客自身が自覚している顕在ニーズと顧客自身が自覚していない潜在ニーズの2つに大別されます。顧客のニーズを満たすためには、顕在ニーズはもちろん、潜在ニーズまで把握することが必要不可欠です。

また、ニーズとウォンツを区別し、ニーズとシーズを両立するマーケティングを実施することも重要です。

今回紹介したニーズの概要をしっかりと押さえ、結果につながるマーケティングを実現してください。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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