ナレッジは、ビジネスにおいて生産性や顧客満足度の向上に役立つ重要な概念です。本記事では、ビジネス用語としてのナレッジの意味や、ナレッジマネジメントの方法、ナレッジの種類、そしてナレッジマネジメントの企業事例などを解説します。
目次
ナレッジの意味・注目される背景
さっそくナレッジの意味とナレッジが注目される背景を解説します。
ナレッジの基本的な意味と定義
ナレッジ(knowledge)とは、英語で知識や情報や知恵などを意味する言葉です。ビジネスシーンでは、知識や情報全般ではなく、企業や組織にとって有益な知識や情報などを指します。具体例として、過去の失敗から得られる教訓や、業界における成功事例などが含まれます。文字のように目に見える情報だけでなく、体験や経験なども含まれるのが特徴です。
知識、情報、ノウハウとの違い
ナレッジによく似た言葉として「知識」「情報」「ノウハウ」がありますが、厳密には異なります。それぞれの意味の違いは以下の通りです。
知識
ビジネスシーンで使用されるナレッジは、直訳した知識と異なる意味も待ち合わせています。
知識とは、ある事柄について知っている情報や内容のことです。ナレッジは、知識を使って何かを実行する能力や技術であり、実践的な側面を持っています。例えば、歴史の年号や理科の公式は知識に含まれますが、ナレッジは料理を作るためのレシピのように実践に生かせる知識を指します。
情報
情報は、データの集合であり単なる事実や数字や言葉なども含みますが、ナレッジはその情報をどのように活用するかを指します。
例えば、卵料理を作る際「卵を使う」という情報は単なる事実です。一方、ナレッジは「卵は調理法によってキッシュや茶碗蒸しなど味や食感が大きく変わる」のように具体的な活用方法や経験から得られる知見なども含みます。
ノウハウ
ノウハウとは、専門知識や技術、手法や情報などを指す言葉です。ビジネスシーンでは、手続き的知識というニュアンスも持ち、マーケティング手法や製造方法などがノウハウに当てはまります。
ナレッジは有益な知識や情報や付加価値のある体験ですが、ノウハウはナレッジを実践して培われた知恵です。そのため、ノウハウはナレッジよりも共有が難しいといわれます。
ナレッジが注目される背景
ナレッジが注目される背景として、雇用の流動化や働き方の多様化などが挙げられます。高度成長期(1955〜1973年)からバブル経済の時期(1986〜1991年)にかけての日本では、終身雇用制度が大半だったため、ベテラン従業員から若手従業員へと、自然にナレッジが継承されていました。
しかし、バブル崩壊後から現在にかけて、人材市場は流動化しており、一つの企業で働き続けることが当たり前ではなくなってきています。それに伴い多くのナレッジを持つベテラン従業員が転職するケースもあり、ナレッジの継承が困難になっているのです。
さらに近年では、時間や場所を選ばずに働くテレワークや、労働者が日々の労働時間を決めるフレックスタイム制が普及しています。たとえば、コミュニケーション不足によって、業務に必要な情報やノウハウが共有されにくくなり、結果として特定の従業員しか業務を把握していない状況が発生しやすくなるため、組織全体へのナレッジの共有が阻害され、業務の属人化が進行するリスクが高まっています。
こうした問題を解決するため、ナレッジの管理・共有が重要視されるようになっているのです。
関連記事
・「ナレッジ」の意味やノウハウとの違いとは? 「ナレッジマネジメント」の重要性も解説 | 人事のプロを支援するHRプロ(外部サイト)
・テレワーク・リモートワーク時代のチームビルディングを進めるために大切なこととは
・属人化とは!メリット、デメリット解消法や意味を解説します!
VUCA時代に求められる組織知・ナレッジ共有の重要性
現代は変化が激しく、先行きが不透明なVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)時代といわれています。VUCA時代を生き抜くためには、組織知やナレッジの共有が重要です。
なお、VUCA時代について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
VUCA時代とは?ビジネスで広がる共創の概念。なぜ必要とされているのか?
組織知とは?
組織知とは、個人の知識や経験やノウハウを組織全体で共有し、活用することで生まれる知識です。具体例として、優れた営業担当者のノウハウをまとめたマニュアルが挙げられます。これを基に他の従業員に学ばせることで、組織全体の営業力を向上させることが可能です。
また、個人が持つ知識や経験を組織全体で共有・活用できる形にすることを組織知化といいます。
急激な変動への対応
ナレッジを共有していれば、突発的なトラブルや市場の変動にも対応できるようになります。これは、共有されているナレッジを基に適切な戦略や対応を取りやすくなり、スピーディーに意思決定できるようになるためです。
この柔軟性は新プロジェクトの立ち上げや新規事業の開拓の際に強みになります。また、従業員間のコミュニケーション方法が変わっても、共有されているナレッジを基にすれば問題解決が可能となり、働き方の多様化にも対応できるようになるでしょう。
競争優位性の向上
ナレッジを蓄積・共有することで、スピーディーな意思決定や戦略的判断ができるようになります。過去の経験から新たなビジネスチャンスも見つけやすくなるため、競争優位性を向上させられるでしょう。
さらに、独自の知識体系を確立することで、市場での差別化も可能です。結果として、業績を向上させられる可能性もあります。
業務効率化と生産性向上
業務を進行する際、必要な情報を見つけられないために業務が止まってしまうというケースは少なくありません。資料を見つけられないため、資料を作り直すという無駄な業務が発生することもあるでしょう。
ナレッジを共有すればこのような事態を防げるため、業務効率化や生産性の向上が期待できます。また、効率的な業務フローを社内全体に共有していれば、担当者が変わっても業務効率や品質が低下しにくくなるでしょう。
イノベーションの促進
ナレッジの共有が進むことで、従業員一人ひとりのアイデアが組織全体に浸透します。これにより、新しいアイデアや解決方法が生まれやすくなり、イノベーションが促進されるでしょう。
また、ナレッジを蓄積することで、アイデアを実現する環境が整いやすくなり、持続的な成長が期待できます。特に、VUCA時代ではイノベーションによって新たな価値を創出し、競争環境に対応できる体制を整えることが重要です。
人材難時代のスキル継承の向上
現在は少子高齢化による労働人口の減少や働き方の多様化により、さまざまな企業が人材難に悩まされています。
人材難の時代において、勤続中の従業員の技術やノウハウの継承は、企業の存続や競争力維持のために必要です。従業員一人ひとりが持っている知識や経験をナレッジとして蓄積し、それらを企業の知識財産として継承していくことで、後継者をスムーズに育てられます。これにより、教育コストの削減や属人化の防止が期待できます。
属人化の発生原因やデメリットが気になる方は、以下の記事をご覧ください。
ナレッジの種類と分類
ここでは、ナレッジの種類と分類を解説します。ナレッジは、「形式知と暗黙知」「個人ナレッジと組織ナレッジ」「専門ナレッジと一般ナレッジ」に分けられます。
形式知と暗黙知
形式知とは、言葉や図表や数式などで客観的に表現できる知識を指します。明示知とも呼ばれ、論理的に示されている点が特徴です。具体例として、マニュアルや業務フローや料理のレシピなどが挙げられます。
一方の暗黙知とは、個人の経験や直感に基づいて形成された知識です。具体例として、営業担当者の交渉手法やデザイナーのセンスなどが挙げられます。主観的な知識であり、言語化や図形化しづらい点が特徴です。
暗黙知と形式知の意味や具体例が気になる方は、以下の記事もご覧ください。
「暗黙知」と「形式知」の意味や具体例とは? 形式知化する「ナレッジマネジメント」のポイントや企業事例も紹介 | 人事のプロを支援するHRプロ(外部サイト)
個人ナレッジと組織ナレッジ
個人ナレッジとは、個人が持つナレッジです。暗黙知に分類されることが多く、言語化されていないため、共有が難しく業務に生かしづらいといわれます。
一方の組織ナレッジとは、企業や組織で共有されているナレッジです。形式知に分類されることが多く、これを活用することで業務効率化や生産性向上などが期待できます。
専門ナレッジと一般ナレッジ
専門ナレッジとは、専門分野に関するナレッジです。専門分野で適切な判断を下すために必要であり、蓄積が難しいとされています。
一方の一般ナレッジとは、幅広い分野の一般的なナレッジです。さまざまなシーンで応用が利くナレッジで、蓄積される機会は多いといわれます。
ナレッジマネジメントとは?定義と目的、4つのメリット
続いては「ナレッジマネジメント」の目的やメリットを解説します。
ナレッジマネジメントの定義と目的
ナレッジマネジメントとは、従業員が得た知識や経験を組織全体で共有・活用して企業経営に生かす経営手法です。野中郁次郎の『知識創造企業』に起源を持ち、この中で論じられたナレッジマネジメントが欧米でブームとなったことで、日本でも広まるようになりました。
参考リンク:知識創造企業 | 野中 郁次郎, 竹内 弘高, 梅本 勝博 |本 | 通販 | Amazon
ナレッジマネジメントは企業の成長を促し、競争力を向上させることが目的です。暗黙知から形式知へと変換し、新たな知識を創造して価値を創出します。また、次のようなメリットが得られます。
メリット1:業務の属人化防止
組織内の知識やノウハウを共有することで、業務に対応できる人材が増え、業務の属人化を防げます。
メリット2:業務効率や生産性の向上
業務の標準化が進むため、業務効率や生産性も向上する可能性があります。
メリット3:人材育成の効率化
従業員が得た経験やノウハウを言語化してまとめることで、人材を効率的に育成できる可能性が高まります。
メリット4:組織力の強化
ナレッジマネジメントを通じて、従業員一人ひとりの知識やスキルを向上させることで、組織全体の力を強化することが可能です。
ナレッジマネジメントについては、以下の記事もご参考にしてください。
生産性向上に欠かせない「ナレッジマネジメント」の意味や企業事例とは? ツール導入や研修で失敗しないために理論もわかりやすく解説 | 人事のプロを支援するHRプロ(外部サイト)
ナレッジマネジメントの課題
ナレッジマネジメントはメリットも多いですが、一方で以下のような課題もあります。
ナレッジが集まらない
従業員の協力がなければナレッジは集まりません。従業員にとってメリットがなければ時間を削ってまでナレッジを共有しようとは思いません。また、ナレッジマネジメントへの理解不足や共有すべきナレッジが不明瞭である場合もナレッジは集まりにくいでしょう。
従業員がナレッジを活用できない
ナレッジを蓄積できても従業員が活用できなければ意味がありません。たとえば、古い情報が残っていたり、情報が整理されていなかったりすると目当ての情報を見つけづらいため、業務への活用は難しいでしょう。
効果がわかりにくい
ナレッジマネジメントが、企業経営にどの程度貢献しているのかがわかりにくいという点も課題です。経営資源を使ってナレッジマネジメントを進めても、効果がはっきりしなければ改善は難しいでしょう。効果がわからないために予算が出なくなり、ツールを解約しなければならないケースも少なくありません。
ナレッジマネジメントの4つの手法
続いては、ナレッジマネジメントの手法を解説します。ナレッジマネジメントは「経営資本・戦略策定型」「顧客知識共有型」「ベストプラクティス型」「専門知識共有型」の4つに分類できます。
経営資本・戦略策定型(知的資本集約型)
知的資本集約型は、特許やライセンス、ブランド、技術、ノウハウなど、経済的な価値に変換しやすい知識を整備・活用し、収益に結び付ける手法です。
具体例として、自社が独自開発した業務システムを他社向けに販売する、経営するレストランの人気メニューを販売するテイクアウト専門店を運営する、などが挙げられます。
自社のナレッジだけでなく、他社のナレッジも参考にする点が特徴です。知的財産を組み合わせて新たな付加価値を生み出し、他社のナレッジも参考にすることで、業務プロセスの改善や経営戦略の策定につなげられます。
顧客知識共有型
顧客知識共有型は、顧客の意見やクレーム、顧客対応の履歴などをデータベース化して、それを基にサービスの向上を目指す手法です。
具体例として、顧客にアンケートを行ってそれを基に商品を改善する、過去の対応履歴を基にトラブルに対応する、などが挙げられます。
顧客の声が反映されるため、顧客満足度の向上につながるでしょう。また、社内でデータベースを共有すれば、問い合わせに対し、スピーディーに対応できる可能性が高まります。
ベストプラクティス型
ベストプラクティス型は、企業内の成功事例や、優秀な従業員のノウハウを共有し、組織全体のスキルアップを目指す手法です。
具体例として、優秀な従業員のノウハウをマニュアル化する、生産性が向上した工場のオペレーションを別の工場でも行う、などが挙げられます。
うまくいったことや効果的なノウハウや知見を共有することで、組織全体のスキルを底上げできるでしょう。しかし、自身の評価に影響する場合、ナレッジが集まらない恐れがあります。
また、優秀な従業員ほど忙しいため、マニュアル化する時間を確保できないケースも少なくありません。
専門知識共有型
専門知識共有型は、専門知識を持つ人たちのネットワークを活用し、組織内外の知識をデータベース化する手法です。
具体例として、社外の専門家と社内の意思決定者が連携を取る、よくある質問と専門家の回答をまとめるなどが挙げられます。
専門知識を集約し、専門家と連携を図ることで、解決に必要な情報の迅速な取得が可能です。
ナレッジマネジメントの成功事例
続いては、有名企業のナレッジマネジメントの成功事例を紹介します。成功事例を参考にして、自社の課題に合ったナレッジマネジメントを進めましょう。
オムロン
オムロン株式会社はナレッジマネジメントの導入に課題を抱えていました。同社のお客様相談室は顧客から評価されていたものの、回答の情報源は紙のカタログや個人が持っている資料だったため、ナレッジマネジメントとしては不十分だったのです。そこで、同社はナレッジマネジメントの推進に力を入れた結果、1件に20分かかっていた対応時間が12分に短縮されました。
また、リクエスト機能も取り入れ、どんなナレッジを作成してほしいか把握し、リクエストを基に約1,000件の新しいFAQを公開しました。結果として、問い合わせは500件以上減少したそうです。これは、自己解決している件数が増えていると考えられます。
参考資料
・技術ナレッジのグローバル共有化の仕組み構築と活用 | OMRON TECHNICS | テクノロジー | オムロン
・20万点超えの商品数でナレッジマネジメントを実現! 現場の知見が可能にする、運用に最適化されたCRMシステムとは?|株式会社ベルシステム24
・オムロンのトップセールスが挑んだナレッジマネジメント。 グローバル2000名の営業力を底上げできた理由とは? | 営業DX Handbook by Sansan
オークマ
オークマ株式会社は主力製品である工作機械の開発や当時の標準化の風潮を受け、知識創造の促進が重要だと考えていました。従業員が持っている知識を引き出し、それを既存のデータや知見と組み合わせることで、問題解決のために役立てようと考えていたのです。
そこで、同社は開発の設計・製造・販売などを一挙に行う、コンカレント・エンジニアリングやナレッジマネジメントなどを1つの生産システムに統合した生産モデルを構築します。今までの製造現場で行われてきた議論や知的生産の歴史を分析したことで、日本の製造業に適したナレッジマネジメントを確立できました。
今後は、改善の状況把握のデジタル化やデジタルと人の長所を最大限に活用する方法を検討する意向です。
参考資料:製造業DX取組事例集(P15 経済産業省(PwCコンサルティング))
国土交通省
国土交通省は以前から各職員のノウハウや経験などに基づいた対応をすべく、各地方整備局で災害時の対応マニュアルを作成し、防災対応に取り組んできました。しかし、定期的な情報更新が難しい点や必要な情報を閲覧できない点、人員の減少や外部委託の増加により情報共有の機会が減少している点が問題となっていました。
そのため、国土交通省はナレッジマネジメントの手法を応用して個人のノウハウや、経験を活用する手法の検討に取り組みます。イントラネット用のブログツールを利用し、各職員の暗黙知を共有したことで、従来の対応マニュアルではわからない防犯対応業務のノウハウを共有できました。
経験の少ない職員への効率的な教育にもつながり、災害時のスピーディーな対応も可能となっています。
参考資料:防災対応力の向上に資する知の伝承について(国土交通省)
帝人
帝人株式会社はイントラサイトを構築していたものの、情報が分散していたため、目当ての情報が見つけにくくなっていました。これにより、人事・総務部門への問い合わせが殺到し、対応する従業員は本来の業務が後回しになっていたのです。そこで、同社はチャットボットに社内のナレッジを集約させます。その結果、目当ての情報をスムーズに入手できるようになり、業務効率化につながりました。さらに、問い合わせも減少したため、本来の業務に集中できるようになり、残業時間の削減にもつながりました。
参考資料
・人的資本 | 社会 | サステナビリティ | 帝人株式会社
・ナレッジマネジメントで直面しやすい3つの課題とは?解決方法も解説 | 生成AI社内活用ナビ – ChatGPTやAzure OpenAI ServiceなどのLLMやRAGの業務利用、生成AIの最新情報をお届け
ナレッジマネジメントを成功させるためのポイント
ここでは、ナレッジマネジメントを成功させるためのポイントを解説します。成功させるためには、目的と目標の明確化や適切なツールの選定は欠かせません。
目的と目標の明確化
ナレッジマネジメントを進める際は、予算や時間を投資する目的と最終的なゴールを明確にすることが重要です。目的を明確にして従業員へ説明することで、従業員の意識が向上し、スムーズな運用が期待できます。実施の背景とともに、具体的なメリットを説明すると、より効果的です。
また、目標を設定することで、社内全体の足並みがそろいやすくなります。目標は、企業の戦略や課題に応じて設定が必要です。新商品の開発を狙っている場合は、必要な知識の共有と活用が目標となり、生産性の向上が求められる場合は、業務の効率化を目指します。
目標を設定する際は、目標達成のプロセスを評価する指標であるKPIを設定し、進捗状況を数値化することが重要です。
適切なツールの選定
ナレッジマネジメントの手法に合わせて、最適なツールを選ぶことも重要です。
ツールの種類は、先述のとおり「ヘルプデスク型」「業務プロセス型」「ベストプラクティス共有型」「経営資産・戦略策定型」の4つに大別されます。
マニュアル管理やFAQデータベースを強化したい場合はヘルプデスク型、業務の属人化を防止したい場合は業務プロセス型がおすすめです。従業員のスキルを向上させたい場合はベストプラクティス共有型、データ分析を活用して経営判断を効率化したい場合は経営資産・戦略策定型を使いましょう。
さらに、機能別にナレッジマネジメントツールを選ぶことも重要です。一般的な機能には「FAQシステム」「ファイル共有」「検索エンジン」「eラーニング」「社内SNS」などの機能があります。
業務の知識やノウハウを共有したい場合は、ファイル共有や検索エンジン機能が搭載されたツールを利用します。蓄積したナレッジを教育研修に活用したい場合は、eラーニングで教材を管理できる機能があるツールがおすすめです。
トップダウンとボトムアップのバランス
組織の意思決定のバランスにも気をつけましょう。トップダウンとは、企業の上層部が主導して下部組織が動く意思決定の方式を指します。一方、ボトムアップとは、現場の意見や提案を経営に反映させる意思決定の方式です。
通常、ナレッジマネジメントは、経営陣や管理部門が主導するトップダウンで導入されます。しかし、上層部の意向だけで進めると従業員は導入の意義を理解できず、ナレッジを提供してもメリットが無いと感じるでしょう。そのため、導入する際はボトムアップからもアプローチすることが重要です。
両者のバランスを取ることで、ナレッジを収集しやすい環境が整い、スムーズにナレッジマネジメントを推進できます。
継続的な改善
ナレッジマネジメントを成功させるためには、定期的に見直して改善策を実施することが不可欠です。運用を進めるうえで、成功している部分とそうでない部分を把握し、成功していない部分に関しては新たな改善策を講じることで、運用効果を向上させられます。
また、蓄積したナレッジが古くならないよう、定期的に情報を見直したり、従業員からのフィードバック(評価)を基に改善点を反映させたりするのも重要な業務です。
関連記事:PDCAとは!時代遅れといわれる理由やOODAとの違いについて解説!
ナレッジマネジメントに役立つ有料・無料ツール
続いては、ナレッジマネジメントに役立つツールを紹介します。無料で利用できるツールもあるため、実際に使ってみるのもいいでしょう。
ナレカン
ナレカンはシンプルなシステムが特徴のナレッジ管理ツールです。ノート形式の記事を作成するだけでナレッジを残せます。キーワード機能や自然言語検索も搭載されているため、高精度な検索が可能です。
また、社内メンバーに質問できる機能や添付したファイルの内容をAIが要約する機能など、必要な情報に素早くアクセスできる環境が整っています。
料金プランは標準的な機能のビジネスプラン、管理・セキュリティを強化したい企業向けのエンタープライズプラン、全機能を利用できるプレミアムプランの3つです。
なお、企業での導入目的であれば、無料トライアルへ申し込むことができます。
トップページ | 社内のナレッジに、即アクセスできるツール「ナレカン」
Notion
Notionはクラウド型の文書管理ツールです。テキストはもちろん、画像・Excel・PDFファイルや外部アプリなどを自由にページにレイアウトできます。グラフやハイライトや議事録などの情報も一か所に集約が可能です。
さらに、データベース機能によってナレッジを効率的に分類・整理でき、必要な情報に素早くアクセスできる環境を整えられます。Notion内の情報だけでなくさまざまな情報から横断検索を行い、AIが質問に答えてくれるため、情報が分散していても簡単に検索できるでしょう。
料金プランは企業向けのビジネスプラン・エンタープライズプランや小規模導入向けのプラスプランがあるほか、無料で利用できるフリープランも用意されています。
当サイトでも、ドキュメントの入稿手続きなどのシーンで利用しています。
Wiki、ドキュメント、プロジェクト機能をすべてつなげたワークスペース | Notion (ノーション)
Stock
Stockはシステム内のノートで情報が記録できるクラウド型の情報共有ツールです。テキストや画像やファイルなどの情報を簡単に記録でき、複雑な機能が少なくシンプルなため、直感的に操作できます。
ノートをフォルダに分類できる機能もあり、これにより必要な情報へスムーズなアクセスが可能です。また、タスク管理機能やメッセージ機能も搭載されており、これにより情報が分散せずに業務を遂行できます。
料金プランは企業向けのビジネスプラン・エンタープライズプランがあるほか、無料で利用できるフリープランも用意されています。
Stock(ストック)|チームの情報を、最も簡単に管理できるツール
このほかに、Google Workspace、Microsoft 365、サイボウズ Office、Evernote、QiitaTeam、kintoneなどがよく知られています。
ちなみに、当社ではGoogle Workspaceのほか、rakumoボード、kintoneなどを活用しています。
ナレッジパネルとは?
SEO施策に関わっているマーケターの中には、ナレッジといえば「ナレッジパネル」を最初に思い浮かべる人も多いでしょう。
ナレッジパネルとは、Googleの検索結果画面に表示される情報ボックスのことです。ここでは、ナレッジパネルの定義や役割などを解説します。
参考記事:ナレッジパネルについて
関連記事:【2024年最新】SEOとは?基礎知識と具体的な施策を詳しく解説
ナレッジパネルの定義と役割
ナレッジパネルは、ナレッジグラフ(Google独自のデータベース)に存在する人や場所や物事を検索した際に、検索結果の上部に表示されます。これはあるトピックに関する概要を簡単に確認できるようにするためです。
ナレッジパネルは、Web上のさまざまな情報に基づいて表示されるほか、特定のトピックに関しては信頼できるデータを提供するデータパートナーの情報も組み合わせます。ナレッジパネルの対象が著名人やテレビ番組のクリエイターの場合、その個人が正式な情報源です。
検索クエリによって、「AI要約」が表示されるケースと、ナレッジパネルが表示されるケース、何も表示されないケースなど、さまざまなケースがあります。
ナレッジパネルに自社情報を表示させるには?
ナレッジパネルの内容について、修正は申し立てられますが、ナレッジパネルへ意図的に任意の自社情報を表示させることはできません。
なお、Googleのアルゴリズムがユーザーに有益な情報だと判断した場合、地図や画像などの表示枠に自社の地図情報や画像コンテンツなどが表示される可能性があります。
画像コンテンツをナレッジパネルに表示させるためには、SEO対策を行ってGoogle画像検索の検索結果に表示されるようにすることが重要です。
また、Googleビジネスプロフィールに登録することで、ナレッジパネルに表示される企業情報や地図情報の更新が可能です。
ナレッジパネルとSEO
ナレッジパネルは検索結果の中でも目立つ位置に表示されるため、ユーザーの関心を引きやすいとされています。また、信頼性・ブランドイメージの向上や競合との差別化にもつながるでしょう。
そのため、ナレッジパネルはWebマーケティングやローカルSEO施策の一つとして重要な要素と考えられています。ローカルSEOとは、特定の地域で自社サイトを検索結果の上位に表示させるための対策です。
ローカルSEOの詳細については、以下の記事をご覧ください。
ローカルSEOとは? マーケティング効果や対策方法を徹底解説
マーケティングのナレッジ習得手順
ここでは、マーケティングのナレッジを習得するための手順を紹介します。以下の参考記事をもとに学習を進め、マーケティングに関するナレッジを蓄積していきましょう。
マーケティングの基本概念(4P、STP、SWOTなど)理解
マーケティングの基本概念を理解することは、効果的なマーケティング戦略を立案し、実行するための土台となります。マーケティングの概念を習得することで、より実践的なノウハウが身につけられるでしょう。
以下に、主なマーケティングの基本概念と、それぞれの参考記事を紹介します。
4P分析
4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)という4つの要素を分析し、マーケティング施策を立案する手法です。自社製品・サービスを4Pの視点から分析することで、その強みやアピールポイントを明確にし、マーケティング戦略に効果的に活用できます。
詳細は以下の記事をご覧ください。
4C分析
4C分析は、顧客価値(Customer Value)、顧客コスト(Customer Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)という4つの要素を分析し、マーケティング施策を立案する手法です。先述した4P分析が企業側の視点であるのに対し、4C分析は顧客視点で自社製品・サービスを分析するという特徴があります。
詳細は以下の記事をご覧ください。
4C分析とは?意味や活用方法、4P分析や5C分析との違いを解説
STP分析
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)という3つの要素からマーケティング施策を立案するフレームワークです。セグメンテーションで市場を細分化し、ターゲティングでターゲットを明確にし、ポジショニングで自社の立ち位置を決めます。詳細は以下の記事をご覧いただき、テンプレートをご活用ください。
・マーケティング初心者がおさえるべき「STP分析」をわかりやすく解説します!
・ポジショニングマップの作り方とパワポテンプレート×5パターン
ペルソナ分析
ペルソナ分析は、ペルソナ(商品・サービスを利用するユーザー像)を設定し、そのユーザー像に基づいて商品・サービスの開発やマーケティング施策の立案を行う手法です。顧客視点で考えるため、ニーズを的確に捉えられます。詳細は以下の記事をご覧いただき、テンプレートをご活用ください。
・マーケティングに欠かせない「ペルソナ診断」「ペルソナ分析」を解説
・ペルソナ設定・作成ができる無料パワポテンプレート(BtoBマーケティング用)
SWOT分析
自社の内部・外部環境を強み・弱み・機会・脅威の4つの要素に分け、現状を分析するフレームワークです。これにより、既存事業の改善点や力を入れるべきポイント、新規事業の将来的なリスクなどがわかります。詳細は以下の記事をご覧いただき、テンプレートをご活用ください。
SWOT分析とは?やり方や分析例を図とテンプレート付きで簡単に
カスタマージャーニー
顧客が商品・サービスを認知して購入・利用に至るまで、購入・利用後に廃棄・離脱するまでの一連の流れを旅に見立てるフレームワークです。これにより、顧客のニーズや課題を把握でき、マーケティング施策の立案や改善に役立てられます。詳細は以下の記事をご覧いただき、テンプレートをご活用ください。
【テンプレート無料配布】カスタマージャーニーマップをパワーポイント(PPTX)で作ろう
最新情報の収集(業界ニュース、マーケティングニュース、マーケターのSNSアカウントフォロー)
さまざまな媒体で最新情報を収集して取捨選択することで、新たなアイデアの創出につながります。業界やマーケティングのニュース、マーケターのSNSアカウントなどから情報を収集しましょう。以下は当サイトのSNSアカウントですので、フォローをいただき、ご参考にしてください。
・マーケトランク X(旧Twitter)アカウント
・マーケトランク Facebookアカウント
成功事例の収集・把握
成功事例を収集・把握することで、ビジネス上の課題に対して適切な対策が取れるようになります。企業のホームページやプレスリリースなどから、自社に近い業界や同じような課題を抱えている企業の成功事例を集めましょう。
以下は当社のマーケティングサービス(HRプロ、各種イベント、経営プロなど)を導入いただいた企業様のマーケティング事例インタビューです。人事系ベンダーに所属するマーケターの方々に、サービス導入前の課題感や解消の過程、成功事例などをお聞きしています。ぜひ参考にしてください。
各分野(SEO、コンテンツマーケティング、SNS等)の戦術を学習
SEOやコンテンツマーケティング、SNSなど、各分野の戦術を学習することで、さまざまな場面で活用できるノウハウを身に付けられます。各分野の基礎知識やノウハウを学習したい方は、以下の記事をご覧ください。
・マーケティング 記事一覧
・Webマーケティング 記事一覧
・SEO 記事一覧
そして適切なマーケティング施策を立案するためには、戦略と戦術の違いも理解する必要があります。以下は戦略と戦術の違いやマーケティングの具体例を紹介している記事です。参考にしてください。
マーケティングセミナー・ワークショップ・交流会に参加
マーケティングセミナーやワークショップや交流会などに参加することで、同業者との交流でしか得られない情報や気づきを得られます。また、人脈の形成やコミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。以下の記事では、セミナーやイベントマーケティングについて解説しています。
セミナーとは!講演会、研修との違いも解説!
イベントマーケティングとは?期待できるメリットや実施方法を解説
PDCAの実践
PDCAとは、計画・実行・評価・改善の4つのプロセスを繰り返して目標達成や業務改善につなげるフレームワークです。PDCAを回すことで、過去の施策や行動などを評価でき、ナレッジを蓄積できます。PDCAの詳細の詳細が気になる方は、以下の記事をご覧ください。
PDCAとは!時代遅れといわれる理由やOODAとの違いについて解説!
具体的な社内ナレッジの蓄積・共有方法
続いては、社内ナレッジの蓄積・共有方法を解説します。主な蓄積・共有方法は「社内Wiki」「社内SNS」「ナレッジマネジメントツール」の3つです。
社内Wikiの運用
社内Wikiとは、インターネット上の百科事典であるWikipediaのように、業務に関する情報を蓄積・共有できるシステムです。集約されたナレッジを整理しやすく、権限を設定すれば更新や閲覧もできます。
導入のデメリットは、初期コストがかかる点です。自社で構築する場合は、一定以上の専門知識や工数が求められます。また、情報を整理するためには、記述ルールやマニュアルの設定が必要です。
社内SNSの運用
社内SNSを活用してナレッジを蓄積・共有するのも効果的です。場所や時間を問わずにアクセスでき、リアルタイムで情報を共有できるため、迅速なコミュニケーションが実現できます。気軽に利用できるため、ナレッジも集まりやすいでしょう。
しかし、情報量が多い場合は、重要な情報が流れたり埋もれたりする恐れがあります。その場合、情報の共有や検索は困難になるでしょう。また、公私の境界があいまいになりやすい点や、情報漏えいにつながるリスクがある点もデメリットです。
ナレッジマネジメントツールの運用
ナレッジの蓄積・共有に特化したナレッジマネジメントツールもおすすめです。本格的な運用に向いており、目的に応じてさまざまな種類や機能があります。自社の課題やシステムなどを踏まえ、各ツールの特徴やメリットを把握し、適切なツールを選びましょう。
ナレッジマネジメントの懸念点と解決方法
最後に、ナレッジマネジメントの懸念点と解決方法を解説します。それぞれの問題に応じた解決策を取ることで、ナレッジマネジメントの導入失敗を防げます。
共有の意識や文化が根付いていない
システムを導入してナレッジを集める環境を整えたにもかかわらず、ナレッジが集まらない場合は組織全体でナレッジを共有する意識や文化が根付いていない恐れがあります。
この問題を解決するためには、ナレッジマネジメントの目的の明確化や重要性・メリットの説明が必要です。これにより、自発的なナレッジの共有や積極的なシステムの利用が推進されます。
技術環境に不備がある
システムが使いづらく情報が分散している場合、検索自体が負担になることがあります。UI(ユーザーインターフェース)がわかりづらく検索性が悪いシステムは典型的な例といえます。
多くの人にナレッジを適切に活用してもらうためには、適切なツールの導入や、ナレッジの整理・分類を行って、情報を簡単に見つけ出せる環境を整えることが重要です。
運用計画・リソースの不足
システムは導入したら終わりではありません。特に、ナレッジマネジメントは運用計画の策定やリソースの確保を行わないと、高い確率で失敗してしまいします。
システムを導入する前に、ナレッジの共有方法やカテゴリーのまとめ方など、ルールや管理者を策定し、必要な予算や時間などをクリアにしましょう。効果を把握するための指標やモニタリング期間の設定も運用計画の一部です。
情報の質と信頼性が低い
ナレッジの中には、情報が古く、現在では間違っているものや、情報元が不明なデータを基に記録されているものもあります。ナレッジのクオリティに問題があると思われた場合、ナレッジは活用してもらえないでしょう。
ナレッジを多くの人に活用してもらうためには、信頼できる情報源に基づいていることと、ナレッジによって実際に結果を出していることが重要です。
まとめ:ナレッジを理解し、活用しよう!
主に企業や組織にとって有益な知識や情報を指すナレッジは、形式知・暗黙知や個人ナレッジ・組織ナレッジなどの種類があります。社内Wikiや社内SNSやナレッジマネジメントツールを運用することで、ナレッジの蓄積・共有が可能です。
また、ナレッジマネジメントには業務の属人化を防ぎ、業務効率を向上させ、生産性を高めるメリットがあります。ナレッジマネジメントを成功させるためには、目的と目標の明確化や適切なツールの選定や継続的な改善が大切です。
ナレッジを活用して、企業成長やイノベーションにつなげましょう。