「インバウンドとアウトバウンドの違いは?」「インバウンドは観光業だけでなく、マーケティング分野でも使われる言葉?」
以上のように、インバウンドについて疑問を持っている人は多いでしょう。インバウンドという単語は、「外から中へ」という意味を持っていますが、業界によって使われ方は異なります。
本記事では、インバウンドの基本的な意味や各業界での使われ方などについて、具体例を用いて解説します。
目次
インバウンドとは?
インバウンドとは、外から中へ入ってくるという意味で、旅行業界や観光業界などで多く使われている言葉です。旅行関連の文脈で「日本へのインバウンド」という場合、「訪日外国人観光」を意味することが多いでしょう。
ビジネス全般においての「インバウンド」とは、顧客から商品やサービスに関しての問い合わせを受けるなど、自社からではなく顧客側からアクションが起こされることを意味します。
以下の項目では、インバウンドの対義語である「アウトバウンド」について解説するとともに、業界ごとのインバウンドの意味などについてご紹介します。
インバウンドとアウトバウンドの違い
インバウンドとアウトバウンドは対義語の関係にあります。インバウンドは内向きに、つまり外から中に入ってくるという意味で、例えば旅行業界や観光業界では、外国人観光客が日本に訪れることを意味します。
一方、アウトバウンドは外向き、つまり中から外へ出ていくことで、旅行業界や観光業界であれば、日本人の外国旅行を意味します。ビジネス全般だと、コールセンターから顧客に電話をかける業務や、飛び込み営業などがアウトバウンドと呼ばれます。
続いては、インバウンドとアウトバウンドの代表例を見てみましょう。
● インバウンドの代表例
● アウトバウンドの代表例
関連記事:インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違い
インバウンドの代表例
インバウンドの代表例としては、インバウンドビジネスが挙げられます。インバウンドビジネスとは、訪日外国人に対してのビジネスです。
インバウンドビジネスの代表的な例としては、ドン・キホーテとマツモトキヨシが挙げられるでしょう。ドン・キホーテとマツモトキヨシは、中国での関税強化の逆風にも関わらず、インバウンドの売上を伸ばし続けています。中華系の観光客の爆買いを狙いとし、店内では日本語表記だけでなく中国語表記も使用したり、TAXフリー専用の会計窓口を作ったりと、訪日外国人に対して効果的な施策を行っています。
アウトバウンドの代表例
前述の通り、アウトバウンドには「内から外へ」という意味があります。アウトバウンドの代表例には以下の2つが挙げられます。
● アウトバウンド営業…顧客に直接電話をしたり、飛び込み訪問をしたりなど、顧客に主体的にアプローチをかける営業手法のこと。
● アウトバウンド広告・アウトバウンドマーケティング…テレビCMや電車の中吊り広告、YouTubeのコンテンツの途中に流れる広告など、一般大衆または特定のターゲット層に向けて広告施策やマーケティングを行うこと。
関連記事:インサイドセールスとは?新しい営業手法の基礎知識やメリットを分かりやすく解説
業界ごとのインバウンドの意味
インバウンドは業界によって意味が異なります。ここからは、各業界におけるインバウンドの意味について解説します。
● 観光業界で使われているインバウンドの意味
● マーケティング業界で使われているインバウンドの意味
● IT・Web業界で使われているインバウンドの意味
● コールセンター業界で使われているインバウンドの意味
観光業界で使われているインバウンドの意味
観光業界で使われているインバウンドを含む言葉としては、以下があります。それぞれの意味について見ていきましょう。
● インバウンド観光
● インバウンド消費
● インバウンド需要
● インバウンド対策
インバウンド観光
インバウンド観光とは、外国人が日本へ訪れる旅行のことで、訪日外国人旅行とも言います。日本特有の文化や歴史に興味を持って訪日する外国人が多いため、インバウンド観光は経済面で多くのメリットをもたらします。
インバウンド観光による経済効果が期待できる業種は以下の通りです。
● 飲食業界
● 宿泊業界
● レジャー業界
● 小売業界
● 外国人向けのサービス業界
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時はインバウンド観光による経済効果は落ち込んでいましたが、最近ではようやく回復傾向にあると言えるでしょう。
インバウンド消費
インバウンド消費とは、訪日外国人による日本国内での消費のことです。訪日外国人の宿泊や買い物、飲食といった消費行動がインバウンド消費です。
中国人観光客による家電や日用品の爆買いも、インバウンド消費の一例です。昨今では訪日外国人の中でも中華圏の人々のインバウンド消費が上昇傾向にあります。中国、韓国、台湾の経済成長や、円安の影響、短期滞在査証(ビザ)を発給する要件の緩和などが、インバウンド消費の上昇傾向の一因となっていると考えられます。
インバウンド需要
インバウンド需要とは、訪日外国人の日本国内サービスへの需要のことで、「インバウンド市場」や「訪日外国人旅行市場」と呼ばれることもあります。
前述の爆買いもインバウンド需要の一種です。また買い物だけでなく、スキーやテーマパークなどの利用や体験もインバウンド需要に含まれます。近年の旅行業界では、爆買いなどのインバウンド需要はひと段落し、買い物中心から体験・経験を重視した需要に移りつつあるという見方がされています。
インバウンド対策
インバウンド対策とは、日本に訪れる外国人に国内のサービスを利用してもらうための施策や取り組みのことです。
日本語や日本文化がわからない人でも、サービスを利用しやすいように工夫し、ビジネスの機会損失を防ぎます。インバウンド対策の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
● 複数のSNSを利用してサービスの認知を広げる
● 看板や案内を複数言語で表記する
● 多言語を話せるスタッフを用意する
● 海外で主流のキャッシュレスの仕組みを導入する
外国人対応といっても、国によって言語や宗教、食べられない食品や嗜好などが異なるため、すべてに対応するのは難しいでしょう。しかし、インバウンド対策をしっかりと取り訪日外国人を増やせれば、地方活性化や大きな経済効果に繋げることができます。
マーケティング業界で使われているインバウンドの意味
マーケティング業界で使われているインバウンドを含む言葉としては、主に「インバウンドマーケティング」があります。
インバウンドマーケティング
インバウンドマーケティングとは、顧客側から自社に興味や関心を抱かせるマーケティング活動全般を指す言葉です。自社からセールス活動を行わずに、顧客側から自発的に興味や関心を抱いてもらうのが特徴です。
Webサイトをはじめ、ブログやSNS、メルマガなどのいわゆるオウンドメディアを活用し、顧客にとって価値やメリットのある情報を発信しながら、自社の商品やサービスのブランディングを行っていきます。
そして、ファン化させた顧客に対しリードナーチャリングを行い、最終的には「LTV (Life Time Value)=顧客生涯価値」の高いホットリードにまで育成していきます。
関連記事
・リードナーチャリングとは?意味や手法、4つのプロセスを解説
・LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味や計算方法、これからのビジネスに必須な基礎知識
IT・Web業界で使われているインバウンドの意味
IT・Web業界で使われているインバウンドを含む言葉としては、以下があります。
● インバウンド通信
● インバウンドリンク
インバウンド通信
インバウンド通信とは、外から内に向けて行われる通信のことを指します。いわゆる受信のことで、当該コンピュータやシステムが外側からデータを受け取ることを言います。逆に内から外へ向けて行われる通信は、アウトバウンド通信と言います。
例えば、自社でWebサービスなどの提供を行っている場合、他のコンピュータやシステム等が自社サーバーへアクセスすることがあるため、そこではインバウンド通信が行われます。
一方、Webサイトを閲覧するために自分から外のサービスへアクセスする場合は、アウトバウンド通信となります。
インバウンドリンク
インバウンドリンクとは、他のWebサイトから当該Webサイトに向けて設置されたリンクのことで、いわゆる被リンク(バックリンク)のことを指します。主にSEO対策の際によく聞かれる言葉で、インバウンドリンクが多ければ多いほどに検索エンジンからの評価が高くなるとされています。
逆に当該Webサイトから他のWebサイトへ向けてリンクを設置することをアウトバウンドリンクと言い、いわゆる発リンクのことを指します。
関連記事:リンクとは?しくみと意味、特徴を理解して魅力的なサイトを作る方法
コールセンター業界で使われているインバウンドの意味
コールセンター業界においても、インバウンドという言葉は使用されています。コールセンター業界においてインバウンドとは、俗にカスタマーサポートのことを指します。顧客からの質問や相談などに丁寧に対応することにより、顧客満足度を向上させていきます。
その他、商品やサービスへの問い合わせや申込みの受け付け、さらにはクレーム対応や顧客からの要求などをインバウンドと位置付ける場合もあります。
業界ごとのインバウンドの状況について
以下では業界ごとのインバウンドの状況について解説します。
● 観光業界のインバウンドの状況
● マーケティング業界のインバウンドの状況
● IT・Web業界のインバウンドの状況
● コールセンター業界のインバウンドの状況
観光業界のインバウンドの状況
観光業は、日本政府が国内経済の基盤と位置づけるほど力を入れてきた市場です。2006年には観光旅行者の利便増進を図る「観光立国推進法」が成立し、2年後の2008には観光庁が発足しています。
当初日本政府は、訪日外国人数の目標として2020年には4,000万人、2030年には6,000万人という数字を掲げていました※1。しかし、2020年1月に日本において発生が通告された新型コロナウイルスによって、2020年の目標は未達という結果に終わっています。
2023年9月時点で、訪日外国人数は2019年の新型コロナウイルス発生前の3.9%減にまで回復してきた※2ものの、2030年までに6,000万人という目標を達成できるかはいまだ未知数となっています。
※1参考:訪日客、20年に4000万人 政府が倍増目標(日本経済新聞)
※2参考:【図解】訪日外国人数、9月はコロナ前と同水準の218万人、一方で中国市場は6割減 -日本政府観光局(速報)(トラベルボイス)
マーケティング業界のインバウンドの状況
BtoBインバウンドマーケティング後進国と言われている日本ですが、その理由として、そもそも日本においてマーケティング自体がそれほど重要視されていなかった経緯(いきさつ)があります。
いわゆるアウトバウンドマーケティングによって、日本は高度経済成長期を築き上げてきました。なかば強引とも言えるPUSH型の営業を行えば、目に見えて成果につながる市場となっていたのです。
こういった背景から、日本は諸外国を尻目にインバウンドマーケティング後進国となっていきました。しかし、インターネットの普及やスマートフォンの浸透とともにアウトバウンドマーケティングが通用しづらくなり、インバウンドマーケティングへの転換を迫られています。
さらに消費者の意識も変わってきており、商品購入時は口コミやレビューなどのインターネット上の情報を参考にする人が増えてきています。
日本においてもすでにアウトバウンドマーケティングは市場特性にそぐわないとされ、諸外国に遅ればせながら徐々に取り入れられているのが現状です。
関連記事
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・インバウンドマーケティング、アウトバウンドマーケティングとは?
IT・Web業界のインバウンドの状況
IT・Web業界では、インバウンドという言葉は主に通信全般やファイアウォール、SEOなどの分野において使われています。いずれも2023年時点においては最先端の技術と言えるでしょう。
● 通信全般
● ファイアウォール
● SEO
通信全般
通信全般では、外部からデータを受信することを「インバウンドトラフィック」と言い、また外部から受信するデータのことを「インバウンドデータ」と言います。
通信業界はいまだ伸びる業界ではありますが、今後の課題は山積みの状況です。「IoTのさらなる拡大」「セキュアな環境の構築」「光回線が普及していない地域への拡大」など、各企業は対応に追われています。
ファイアウォール
ファイアウォールにおいては、外部から当該コンピュータやシステム内部へ行われる通信を「インバウンド通信」と言います。
ファイアウォールは非常に成長が著しい分野であり、今後の市場拡大が期待できる状況です。しかしながら、ハッカーとのイタチごっこも繰り返されている状況で、今後も進化するであろうハッカーたちへの対応が重要な課題となっています。
関連記事:WAF(Web Application Firewall)とは?セキュリティの仕組みや基礎を徹底解説!
SEO
SEOの分野でインバウンドという言葉が使われる例としては、インバウンドリンクが挙げられます。インバウンドリンクとは、他のWebサイトから当該Webサイトへ設置される、いわゆる被リンクのことを言います。
Googleは、1994年頃のインターネット黎明期(れいめいき)以降より、パンダアップデートやペンギンアップデート、ハミングバードなど、トライアンドエラーを繰り返しながら検索エンジンを進化させてきました。
幾度となく検索エンジンのアップデートが繰り返されてもなお、いまだインバウンドリンクはページ評価の向上につながったり、クローラビリティをよくしたりするなどの効果が高く、良質なインバウンドリンクの獲得はSEO対策には外せない要素となっています。
今後はさらなるスパムリンク撲滅に向けて、Googleがより質の高いインバウンドリンクをいかに見分けられるかが課題となっています。
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コールセンター業界のインバウンドの状況
コールセンター業界においてインバウンドは、顧客からの問い合わせやクレーム、要求などのことを指し、それらの電話対応業務のことをインバウンドコール業務と言います。
コールセンター業界は非常に巨大な市場規模を持っています。しかし、離職率の高さに加え、慢性的な人材不足やオペレーターのスキル不足、多様化する問い合わせにオペレーターの負担が増加している現状などがあり、このような諸問題の解決が今後の課題となっています。
まとめ
本記事では、インバウンドについて具体例を用いながら解説してきました。インバウンドとは、外から中へという意味を持つ言葉で、業界によってさまざまな形で用いられています。
インバウンド観光やインバウンドマーケティング、インバウンド営業など、よく耳にする言葉はその意味をしっかりと覚えておきましょう。またその意味を覚えるだけでなく、業界ごとのインバウンド関連の課題と今後の動向に目を向けておくことも大切です。
本記事をきっかけにして、さまざまな角度からインバウンドへの理解を深めてみてください。
よくあるご質問
インバウンドのバウンドとは?
インバウンドのバウンド(bound)とは、「〜行きの」「〜に向かって」という意味です。たとえば「a plain bound for Paris」は、「パリ行きの飛行機」「パリに向かう飛行機」と訳します。そのため、インバウンド(inbound)は、「内側(in)に向かう(bound)」を意味します。
インバウンドの使い方は?
インバウンドという言葉は業界によって意味が若干異なりますので、注意が必要です。
たとえば、観光業界や旅行業界におけるインバウンドは「外国人観光客が訪れること」や「外国人観光客」を指します。ビジネス全般においてのインバウンドは「顧客からの問い合わせを受けること」や「他社から営業を受けること」を指すことが一般的です。
インバウンドと観光客の違いは?
旅行業界におけるインバウンドは外国人観光客を指しますが、単に「観光客」といった場合は、外国人・内国人を問わず、観光に訪れた人全般を指します。
なお、インバウンドは、外国人であることだけでなく、観光客であることも含みます。たとえば、ビジネスやトランジット、親族訪問などを目的として訪日した外国人はインバウンドではありません。