アーリーマジョリティとは、価値観や行動から分類される購買層のひとつで、新製品・新サービスへの興味関心はあるものの、購買に関しては慎重に行動する傾向があります。マーケティングを実施するうえで、そのほかの購買層と合わせて特徴を把握すれば、マーケティング戦略を立てやすくなるでしょう。
この記事では、アーリーマジョリティとは何か、イノベーター理論における位置づけはどこかを詳しく解説します。市場への影響力やほかのグループとの違いも紹介するので、マーケティングの知識を身に着けたい方は参考にしてください。
目次
アーリーマジョリティの定義
アーリーマジョリティとは、イノベーター理論に登場する購買層のひとつです。企業が展開する新製品や新サービスへの興味・関心が強いものの、すぐには飛びつかず、慎重に利用を検討するユーザーが該当します。
ここでは、イノベーター理論におけるアーリーマジョリティの位置づけ、そのほかのグループとの違いについて解説します。
イノベーター理論における位置づけ
マーケティングの基礎知識といわれるイノベーター理論では、消費者を5つのグループに分類します。5つのグループと消費者の割合は以下の通りです。
分類 | 全体に占める割合 |
イノベーター(革新者) | 2.5% |
アーリーアダプター(初期採用者) | 13.5% |
アーリーマジョリティ(前期追随者) | 34% |
レイトマジョリティ(後期追随者) | 34% |
ラガード(遅滞者) | 16% |
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1つ目のグループであるイノベーター(Innovator、革新者)は、新しさを非常に重視する層のユーザーで、新製品やサービスへの関心が強い人が該当します。新しく発売された製品や、提供を開始したばかりのサービスの情報をいち早くキャッチし、すぐに使い始める先進的な人たちです。イノベーター理論では、ユーザー全体における割合はわずか2.5%と定義されています。
2つ目のグループであるアーリーアダプター(Early adapter、初期採用者)は流行に対してとても敏感で、新製品にベネフィットがあるかを自分で判断して導入を決めます。口コミの提供などにも積極的で、インフルエンサーの多くはこのタイプに属します。ユーザー全体における割合は13.5%です。
3つ目のグループで、本記事のメインで紹介するアーリーマジョリティ(Early majority、前期追随者)は、平均よりも早いタイミングで新製品・新サービスに手を伸ばすものの、慎重さもあり、口コミなどを重視する層です。新しいものの導入に至るまでには若干時間を要する、慎重なタイプといえるでしょう。ユーザー全体における割合は34%です。
4つ目のグループであるレイトマジョリティ(Late majority、後期追随者)は、新しいサービスや製品に懐疑的で、なかなか導入しようとしないタイプです。半数以上の人が導入をしたころでようやく購入する人が多い傾向にあります。ユーザー全体における割合は34%です。
5つ目のグループであるラガード(Laggard、遅滞者)は、もっとも保守的な層です。新しい製品やサービスに対しては非常に消極的で、伝統主義者とも呼びます。新しいものが伝統として認められてから初めて導入する層です。ユーザー全体における割合は16%です。
<図解:イノベーター理論>
イノベーター理論について、より詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
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アーリーマジョリティとレイトマジョリティとの違い
イノベーター理論における5つのグループの違いは、製品やサービスへの関心です。イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティまでのグループは、新しいものの情報を早めにキャッチする層で、レイトマジョリティやラガードのグループは新しいものに対して消極的で、保守的な姿勢を持っています。
アーリーマジョリティとレイトマジョリティの大きな違いは、新製品・新サービスの利用開始時期です。アーリーマジョリティは先行して利用する人たちから評判を聞いて使い始めることが多く、レイトマジョリティは製品やサービスがある程度普及してから利用を開始します。
キャズムと「キャズム越え」とは
新しいものに興味を持つのが早いアーリーアダプターと、新しいものの利用に慎重な姿勢を見せるアーリーマジョリティの間には、溝(キャズム)があるとされています。なぜなら、アーリーアダプターとアーリーマジョリティはそれぞれ製品やサービスに対する価値観が大きく異なるからです。
イノベーター理論に基づいてマーケティング戦略を立てるときは、キャズムについて理解することが重要です。製品やサービスを幅広く普及させるには、グループごとに異なる働きかけをしなければなりません。
例として、1990年代に発売され、その後衰退してしまった「電子手帳」を挙げてみましょう。電子手帳は革新的なものとして、まずイノベーターが飛びつき、次にアーリーアダプターから人気を集めました。しかし紙のシステム手帳とも競合し、魅力を伝えきれないまま、アーリーマジョリティまで浸透せずに、廃れてしまいました。
アーリーアダプターとアーリーマジョリティ、2つのグループの間にある大きなキャズムを超えるには、革新的であることに加え、実用性や信頼性といったものが重要になります。2つのグループの特性を十分に理解したうえでマーケティング戦略を練る必要があるでしょう。
アーリーマジョリティの特徴・性質
製品やサービスを幅広く普及するためのマーケティング戦略において、アーリーマジョリティの購買意欲を刺激することが大切です。そこで、アーリーマジョリティの特徴や性質を紹介します。
購買行動は慎重
アーリーマジョリティは新しいものにはすぐに飛びつかず、慎重な姿勢を見せます。購買意欲を刺激するには、実際に利用した人からの評判・実用性・信頼性などを提示することが重要です。
一方で、アーリーマジョリティは新製品・サービスへの関心が高く、情報をいち早く入手すべく、利用者の評判も素早くキャッチしようとします。そこで、先行する利用者が投稿した口コミやレビューを企業側でもキャッチして拡散を行い、情報をアーリーマジョリティに届けましょう。
企業公式の宣伝文句ではなく、同じ目線に立つユーザーが発信する使用感やメリットのほうが、アーリーマジョリティの購買意欲を刺激できます。
社会的な影響を受けやすい
アーリーマジョリティは利用者の評価に影響されやすい一面があります。実際に利用している人が高評価を付ける製品・サービスならすぐに利用しますが、評価の悪い製品・サービスには手を付けません。
マーケティング戦略を立てる際にはアーリーマジョリティへの適切なアピールが必要です。新しさを重視する層に製品・サービスの魅力や実用性を伝えることで、ユーザーが最適な評価を付けてくれます。
悪い口コミやレビューが圧倒的に多い場合は、内容を確認して改善することも重要です。改善した製品やサービスを再度提供することで、悪い評価を付けていたユーザーも満足してくれるかもしれません。
コスト意識が高い
アーリーマジョリティはコスト意識が高い一面も持つため、製品やサービスに見合った価格を設定することも重要です。利用者からの評価がよくても、製品やサービスのメリットや実用性に見合っていない価格設定だと、利用を断念してしまう人もいます。
価格設定は、製品・サービスの評価にも大きく影響します。新製品ということでイノベーターとアーリーアダプターには購入してもらえたけれど、価格の問題でリピーターがつかなかった、という事例も多く見られます。また、価格面で悪く評価されてしまうと、次のグループの購買行動にも大きく影響するため、普及率の低下を招いてしまいます。
消費者に受け入れられる価格帯を見極め、製品・サービスに適した価格を設定しましょう。
実用性・信頼性を重視
アーリーマジョリティは実用性や信頼性を重視します。アーリーマジョリティに働きかけるマーケティングにおいては、先行する利用者の評価を活用し、安心感を与えることが重要です。
実際に製品を使った、またはサービスを利用した人は、使用感や得られる効果などの評価をくだすことができます。そこで、利用者が行った評価をアーリーマジョリティに紹介するのです。ここでは、製品やサービスのメリットを伝えることが可能です。
また、製品やサービスのサポート体制を整えることも重要です。サポートの手厚さは、ユーザーの大きな安心感につながります。サポート体制を整えることで、トラブル時に対応してくれる企業としての信頼感を高められるでしょう。
アーリーマジョリティの影響力
5グループの中間に位置するアーリーマジョリティは、製品やサービスを市場に普及させるのに大きな影響力を持つ層です。この層の評価次第で市場への普及率が左右されるため、グループのなかでも特に重要な購買層だといえます。
ここでは、アーリーマジョリティが持つ影響力について詳しく解説します。
市場拡大における役割
ユーザー全体における割合が34%のアーリーマジョリティは、市場の拡大に大きな影響をもたらすグループです。アーリーマジョリティの動向によって市場を拡大し、普及率が高まっていけば、製品の利用に消極的な次のレイトマジョリティにも大きな影響を与える存在です。
定番の製品やサービスになるほど、新しいものに興味がない人も利用し始めるため、レイトマジョリティにまで浸透すれば、その製品やサービスはマーケティングに成功したと判断できるでしょう。
製品やサービスの普及におけるターニングポイント
製品やサービスの普及を進める際のターニングポイントとなるのが、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるキャズムです。キャズムを超えられるかどうかが製品やサービスの普及を左右する分岐点ですので、キャズムを超える戦略を立てる必要があります。
キャズムを超えるために実践したいのが、普及率に応じてアピールの内容を変えることです。最初は製品・サービスの先進性をアピールします。ほかの企業にはない独自の魅力や先進性を伝えることで、新しいものに着目するグループが興味を持ちます。
次に製品が少しずつ浸透し始めたら、製品やサービスへの信頼性や安心感をアピールします。アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるキャズムを超えるには、製品・サービスの実用性や信頼性を広めることが重要です。キャズム越えのためにしておきたいアピール内容は以下の通りです。
● 影響力のあるインフルエンサーや有名人などに製品・サービスを利用してもらう
● 利用者の口コミを活用する
● 製品・サービス利用者を具体的な数字で示す
これらのアピール内容をどのように戦略に含めるか、次から詳しく解説します。
アーリーマジョリティを意識したマーケティング戦略
キャズムを超え、次のグループに製品やサービスを普及させるには、適切なマーケティング戦略が必要です。ここからは、アーリーマジョリティを意識したマーケティング戦略について詳しく解説します。
実績や成功事例、データを用いた信頼性の強調
アーリーマジョリティを意識したマーケティングでは、実績や成功事例をアピールしましょう。アーリーマジョリティは先行する利用者の影響を強く受けるため、これまでの具体的な実績を示す数字などの記載があれば、そこに注目が集まり、興味がひきつけられます。
たとえば「高い満足度が得られた」などとうたうより「99%の人から高評価」というように、数字を交えることで製品・サービスへの信頼性が高くなります。利用したユーザー数を挙げるときは「多くの人が愛用中」よりも「20万人が利用している」としたほうが、アーリーマジョリティには響きます。
もちろん、具体的な数字を交えるには、実際の利用者数や満足度をリサーチする必要があります。目標とする数字を定め、達成した際には数字を交えた広告を打ち出すことがおすすめです。
専門家・インフルエンサー・アンバサダーマーケティングの活用
新製品・サービスをプロモーションする際、その分野における専門家やインフルエンサー、アンバサダーによるポロモーションがおすすめです。製品やサービスのジャンルに特化した人材を採用して宣伝することで、製品を幅広く周知できるだけでなく、ユーザーに安心感や信頼感を与えられます。
インフルエンサーマーケティングとは
インフルエンサーマーケティングとは、特定の業界において影響力を持っている人材(アカウント)を活用してPRを行い、製品やサービスの認知の拡大、売上増加を図るマーケティング施策のことです。
特定の業界で影響力を持つ人物に製品やサービスをアピールしてもらうことで、業界関係者やその分野に興味を持つユーザーにスムーズに周知できます。有名な人や、権威ある専門家による言及は、ユーザーに安心感を与え、権威性や専門性などの好印象を抱かせることができます。
関連記事:インフルエンサーの有名人活用手法をご紹介!BtoB領域でうまい活用方法とは!
アンバサダーマーケティングとは
アンバサダーマーケティングとは、アンバサダー(Ambassador)を起用したマーケティング手法です。アンバサダーとは、大使、使節、代表、代理人などを意味する単語です。企業や地方自治体などが選出した「宣伝大使」や「観光大使」もアンバサダーの一種と言えます。
アンバサダーマーケティングは、企業や団体がアンバサダーを採用し、SNSをはじめとした各種広告などを通じて自社ブランド・製品・サービスをPRする宣伝手法のことです。とくに利用者の多いSNSなどを使ってアンバサダーが情報を発信すれば、製品・サービスのジャンルに興味を持つユーザーにスムーズに周知できます。
インフルエンサーとアンバサダーの違い
インフルエンサーとアンバサダーの違いは、知名度や影響力の大きさです。インフルエンサーはそのジャンルに特化した人物で、知名度が高く、影響力の大きい人が選ばれます。
一方のアンバサダーは、企業がブランドを代表する人物としてふさわしいと判断すれば問題はなく、知名度や影響力などは重視しません。
インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングの特徴をふまえ、自社製品やサービスにとってどちらが適切かを判断したうえで、インフルエンサーやアンバサダーとなる人材を探しましょう。
インフルエンサーマーケティングやアンバサダーマーケティングについてもっと知りたい場合は、下記の記事を参考にしてください。
関連記事
・インフルエンサーの有名人活用手法をご紹介!BtoB領域でうまい活用方法とは!
・アンバサダー(Ambassador)とは?アンバサダーマーケティングの意味や事例
BtoCの場合:口コミ、レビューなどお客様の声を活用したアプローチ
BtoCのマーケティングにおいては、実際に製品やサービスを利用したユーザーの声をプロモーションに取り入れましょう。
アーリーマジョリティは自分と同じ立場にあるユーザーの声に強く影響される特性があります。そのため、製品やサービスに寄せられる口コミ・レビューを活用したマーケティングを行うと、高い効果が期待できます。
SNSや個人のブログなどで良い口コミを見つけたら、企業のマーケティング担当者は積極的に拡散しましょう。
口コミやレビューを活用したアプローチについて詳しく知りたい場合は、下記の記事を参考にしてください。
関連資料:SNSネタ探しの時間を削減!SNSコンテンツカレンダー(エクセル形式)2024年版
BtoBの場合:導入事例など「顧客の声」を活用したアプローチ
BtoBのマーケティングにおいてアーリーマジョリティを意識したプロモーションを行う場合は、製品・サービスを導入している顧客の声を活用しましょう。
顧客の声を吸い上げるコンテンツとしては、自社が取引する企業の導入事例が挙げられます。BtoCの場合と同様に、アーリーマジョリティは自分と同じ立場にあるユーザーの声に強く影響されるのです。
そこで、製品やサービスを導入したことでこのような効果があった、こんな課題が解決できた、ということがわかる事例を紹介します。似たような状況にあるユーザーは、製品やサービスに対して大きな魅力を感じるでしょう。
また、導入前後のビフォーアフターがわかりやすく明示されていると、ユーザーのサービス理解も促進できます。導入前にあった課題と、導入後の成果を記載することをおすすめします。
BtoB企業の導入事例については、下記のカテゴリが参考になります。ProFutureのマーケティングソリューション(HRプロ、HRサミット、HR SEOなど)を導入した企業への事例インタビューです。ぜひ参考にしてください。
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まとめ:アーリーマジョリティを理解しキャズムを越えてビジネスの成功を掴もう
新たな製品やサービスを展開する際は、イノベーター理論で定義された5つのグループを意識したマーケティング戦略を立てることが重要です。とくにアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある大きな溝、キャズムを超える戦略が必要です。
キャズムを超えるには、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの特性と違いを十分理解し、それぞれに適したマーケティング手法を実施しなければなりません。
今すぐ、ターゲット層の分析を始め、効果的なマーケティング戦略を立案しましょう。