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行動経済学とは?理論を簡単に解説!企業のマーケティングに活かした例も紹介

2024.10.31
読了まで約 5

行動経済学は、企業のマーケティングに役立つ学問です。この記事では、行動経済学における主要な理論を簡潔に解説します。行動経済学を活用したマーケティング事例もあわせて参考にしてください。

行動経済学とは

行動経済学とは、心理学と経済学が融合した学問です。人間の直感や心情などによって選択する行動が、経済活動や人間の幸福に及ぼす影響を研究します。

行動経済学は、心理学者のダニエル・カーネマン氏とエイモス・トヴェルスキー氏、経済学者のリチャード・セイラー氏によって提唱されました。この学問に関する研究は、人の判断は不確実性が高く、行動には間違いを伴うと示した点が特徴です。功績は高く評価され、カーネマン氏は2002年、セイラー氏は2017年に、それぞれノーベル経済学賞を受賞しました。

ここでは、行動経済学と経済学、心理学との違いについて解説します。

経済学との違い

行動経済学と経済学は、理論の前提が異なります。経済学は、政府や個人消費者はすべて合理的な経済行動をとる前提で構成されています。自身が最大の利益を得られるように判断し、決めたとおりに経済活動を実行することが前提です。

一方で、行動経済学には、意思決定の材料として人の感情や感覚の影響が考慮されます。そのため、人がつねに合理的な行動をとるとは限らず、誤った判断をすることも想定に入れる部分が、経済学との相違点です。

心理学との違い

心理学は人の心情・行動・言動を研究する学問で、行動経済学の理論に活用されますが、その範囲は限定的です。

心理学の種類は、基礎心理学と応用心理学に分かれます。基礎心理学は、心の仕組みを研究する一般的な学問です。発達心理学や学習心理学、社会心理学などが例に挙げられます。一方で、応用心理学では、日常生活のさまざまな場面に基礎心理学の理論を当てはめて分析します。産業心理学や犯罪心理学などが、その一例です。

行動経済学と関係が深い心理学の領域は、学習心理学や社会心理学などです。

行動経済学がマーケティングに活用される理由

行動経済学の理論は、企業のマーケティング施策によく活用されます。主な理由は以下のとおりです。

● オンラインショップが普及したため
● 顧客の商品体験が売上に影響するため
● サービスのパーソナライズ化に役立つため
● 競合他社との差別化を図るため

消費者の購買行動は、心理学と経済学の両面から分析できるため、行動経済学を活用するには最適な対象です。近年、一般化しているオンライン販売によって、顧客情報のデータ化が進んだため、より分析・活用しやすい環境が整ったといえます。

行動経済学を活用できる他の分野

行動経済学は、マーケティング以外の分野でも活用できます。主な例は以下のとおりです。

● 人材マネジメント
● セルフマネジメント
● 投資
● 政策実行

政策実行の分野では、行動経済学のナッジ理論が活用されています。ナッジは、人のよりよい選択を手助けする理念です。日本では、環境省がナッジをはじめとする理論の活用によって、新たな政策実行を検証しています。

参考:環境省「ナッジ戦略の策定について(日本版ナッジ・ユニットBEST)

行動経済学の理論を簡単に解説

ここから紹介するものは、行動経済学における9つの理論です。商品の情報や置かれた状況を踏まえて、人の心理は一定の動きをみせます。結果として、心理が購買行動に影響を及ぼします。それぞれ、理論が成立しやすい経済活動の場面を確認しましょう。

ハロー効果

ハロー効果は、心理学者のエドワード・ソーンダイク氏が提唱した理論です。ハローは英語で「Halo」と表記し、「後光」を意味します。目立つ印象や特徴によって、商品の評価が左右されることを示した理論です。

例えば、書店の本には販促用の帯がつきます。有名な文化人のコメントが帯としてついていることで、読む価値のある本だと判断される可能性が高まります。この現象がハロー効果の一例です。

関連記事:ホーソン効果とは?ピグマリオン効果やプラセボ効果との違い、事例を解説

サンクコスト効果

リチャード・セイラー氏によって提唱されたサンクコスト効果は、過去に投じた費用がもったいないと考える心理です。サンクコスト効果が働くと、費やしたお金や時間を惜しみ、損失が出続ける状況でも、不合理な行動を取り続けるケースがあります。

商品を獲得するまでUFOキャッチャーをやめられないケースや、飽きた習い事に対しても、今までの出費がもったいなく感じて退会できないケースは、サンクコスト効果の作用であるといえます。

関連記事:サンクコスト効果とは。コンコルド効果と同じ?日常生活やビジネスシーンでの例

プロスペクト理論

プロスペクト理論は、前述のカーネマン氏とトヴェルスキー氏が提唱した、損失を回避しようとする行動の傾向を示した理論です。人はリスクを負って高い利益を得るよりも、リスクがない確実な利益を選ぶ傾向があると考える点が特徴です。

例えば、当日限りの値引きが実施されたときに、何も買わないことによる損を回避したい気持ちが働き、購買行動に移ることがあります。

関連記事:プロスペクト理論とは!マーケティングで活用するべき心理学を解説!

アンカリング効果

アンカリング効果は、最初に得た情報がその後の判断基準につながる理論です。語源は英語の「Anchoring」で、船の錨を打ち込むという意味を持ちます。

行動経済学では、最初に得た情報は商品の価格にあたります。例えば、1万円の商品を見たあとに7千円の商品を見ると安いと感じる一方で、5千円の商品を見たあとでは7千円を高いと感じられる心理を指すものが、アンカリング効果です。

ウィンザー効果

ウィンザー効果とは、当事者による評価よりも、他者が下した評価のほうに信頼性を感じる現象です。第三者による訴求は、売り手による訴求を上回る効果があるといえます。

ウィンザー効果が発揮される実例は、インターネット上の口コミやSNSのいいね数、アンケートなどです。利害関係を持たない客観的な立場から多くの好意的な意見が寄せられていると、商品に魅力を感じやすくなります。

関連記事:ウィンザー効果とは?マーケティング、人事マネジメント等での活用例

バーナム効果

誰にでも当てはまる内容を伝えられたときに、自分のことを言い当てられたと思い込む現象をバーナム効果と呼びます。占いやカウンセリングなどで起こりやすい現象です。

企業のマーケティング活動では、どの会社にも当てはまる課題や悩みにアプローチする手法があります。クライアントにバーナム効果を引き起こさせ、自社を理解してもらえると錯覚させるための手法です。

関連記事:バーナム効果とは?マーケティングでの活用方法やポイントを解説

認知的不協和

認知的不協和は、レオン・フェスティンガー氏が提唱した理論です。思考と行動が矛盾したときに、他の理由づけで矛盾を正当化する現象です。

例えば、欲しい商品が高額である際、購入することで財政が苦しくなるにもかかわらず、「仕事で使うため」と理由づけをして購入する場面では、認知的不協和が働いています。ほかにも、「小さくても長持ち」や「美味しいけれど塩分控えめ」などの宣伝文句は購買意欲に影響する可能性を高めます。

現在志向バイアス

現在志向バイアスは、ダニエル・カーネマン氏によって提唱された、将来手に入る大きな利益よりも、今すぐ手に入る目先の利益を追い求める心理です。

例えば、今すぐ1万円をもらうか、1年後に1万1千円をもらうかの選択では、今すぐ1万円をもらえる選択肢のほうが多くの人に好まれます。将来得られる最大利益を選ばない点においては、不合理な心理といえます。

関連記事
バイアスとは!マーケティングでバイアスを使ってビジネスを進める方法とは!
「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介

ヒューリスティックス

ヒューリスティックスは、カーネマン氏とトヴェルスキー氏が唱えた、自身の経験や先入観を活かし、直感で意思決定する心理のことです。

例えば、CMでよく見る商品は購入の価値がある、口コミ上位の店では美味しいものが食べられるなどの心理は、ヒューリスティックスの作用です。経験則に基づいた判断は迅速な決断につながりますが、思い込みや都合のよい考えに捕らわれ、間違いを生む原因にもなり得ます。

企業のマーケティングに活かせる行動経済学の例

前述の理論を踏まえて、ここでは行動経済学が企業のマーケティングに活用された例を3つ紹介します。実験や企業の取り組みで得られた効果を、具体的に確認しましょう。

①サンクコスト効果の例

サンクコスト効果が働いた代表的な例は、超音速旅客機のコンコルドに投資した人々です。

コンコルドは、開発の時点で採算が取れず、完成しても多額の損失が出ると判明しました。その状況でも、投資家たちはコンコルドに出資した金額がもったいないと感じ、引き続き投資を続けてプロジェクトが続行されました。結果として、さらに赤字額が膨れ上がった事例です。

仮に損失が発生しても無理に取り返そうとせず、適切なタイミングで撤退することが有効な場面もあることが分かります。

②認知的不協和の例

提唱者のフェスティンガー氏による認知的不協和の実験を紹介します。2つのグループに単調な内容の作業で報酬を与え、次に同じ作業をする人々に「作業が楽しかった」と伝えてもらう実験です。

片方のグループには高い報酬を、もう片方には低い報酬を与えると、低い報酬のグループのほうが、作業が楽しかったことを協調する割合が高いという結果が得られました。割に合わない仕事に対し、矛盾を解消しようとする心理が出てくるのです。

マーケティングにおける認知的不協和の活用例として、健康食品が考えられます。味が美味しくなかったとしても、「健康のため」と不協和を解消することで、食品の効果の訴求が可能です。

③現在志向バイアスの例

目先の利益を優先させてしまう「現在志向バイアス」に関しては、ウォルター・ミシェル氏が示したマシュマロの実験があります。

子どもの前に1つのマシュマロを用意し、「15分間我慢したら、もう1つあげる」と条件をつけたところ、3分の2にあたる子どもが15分間を我慢できずに、マシュマロを食べてしまいました。

時間や数量の制限がつくと、目先の利益を優先する現在志向バイアスの効果がより働きやすくなりますので、タイムセールや数量限定セールなどを開催すると、顧客の購買意欲を刺激できるでしょう。

行動経済学をマーケティングに活用するときの注意点

行動経済学の理論をマーケティングに活用する際は、以下の点に気を配ることが大切です。

● 理論に頼りすぎない
● 一定期間の検証で効果を測定する
● 押し売りや、嘘をつくために利用しない
● 顧客体験の質や、企業価値を上げる目的で利用する

行動経済学は、あくまでもマーケティングの一助として使う理論です。実施する際は、効果の測定や分析が重要です。また、マーケティング活動では、企業として顧客に対する誠実な姿勢が求められます。

まとめ

この記事では、行動経済学について解説しました。行動経済学の理論を用いることで、消費者の心理を考慮した有効なマーケティング活動が可能です。ここで紹介した行動経済学の活用事例を参考に、自社の状況や目的に適した活用方法を模索してみてください。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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