訴求力とは、商品やサービスの価値を的確に伝えターゲットの関心を引き、行動を促す力を指します。マーケティングにおいては業種やサービスごとに適切な訴求ポイントを見極め、顧客視点を重視したコミュニケーション設計が重要です。
しかし、「さまざまな施策を試しても成果が出ない」「どの訴求ポイントを選ぶべきか自信が持てない」といった課題に直面している方は多いのではないでしょうか。
また、訴求力に対する取組みがどれほどのリターンを生んでいるのか、効果の観点から評価しきれていないことも、戦略の改善を妨げる要因になっています。
本記事では、訴求力を高めるための基本的な考え方を整理し、成果が出ない原因の分析方法や効果的な改善策を具体的に解説します。
▼こちらの記事でも、訴求ポイントの考え方、「価格訴求」「限定訴求」「トレンド訴求」といった具体的な訴求軸など、「訴求」に関するノウハウをご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
訴求とは?意味や使い方、訴求ポイントを作る際のコツについて解説
目次
訴求力を作れない、訴求ポイントが見つからない時に要因として考えられること
そもそも、なぜ訴求力が作れないのでしょうか。その要因として、商品やサービスの魅力を十分に伝えられていない、顧客ニーズとズレたメッセージを発信している、競合との差別化が不十分といった点が考えられます。
以下では、多くの担当者が陥りがちな3つの原因を解説します。
商品やサービスの特徴について、深掘りが上手くできていない
商品のスペックや機能を並べるだけでは、ターゲットに強く訴えるポイントにはなりません。顧客にとって本当に価値のある要素を明確にし、どのような課題を解決できるのかを示すことが重要です。
BtoB向けのソフトウェアを販売する企業が、「高性能なAIアルゴリズムを搭載」とアピールしても、顧客にとっては抽象的でピンとこないかもしれません。
それよりも、「月間〇〇時間の業務削減を実現」「平均〇%の業務効率向上」 といった、関連する成果を伝えることで、顧客が自社の課題解決にどう役立つのかをイメージしやすくなります。
商品やサービスの特徴を深掘りし、「その機能によって顧客が得られるメリット」を明確にすることで、訴求力を高められます。
ユーザー目線ではなく、自社目線で考えてしまっている
企業は自社の商品やサービスに強い愛着を持っているため、「自社が伝えたいこと」「自社が強みだと思っていること」を前面に押し出してしまいがちです。
しかし、顧客は商品やサービスそのものには興味がなく、「自分の課題をどのように解決してくれるのか」に関心を持っています。
そのため、訴求メッセージを作る際には、顧客目線を徹底することが不可欠です。
自社が伝えたいことではなく、顧客が知りたいことにフォーカスすることで、より響く訴求メッセージを作れます。
関連記事:マーケティングに重要な「ユーザビリティ」とは? 定義やポイントを徹底解説
「解決できる課題や悩み」に注目できておらず、技術的なアピールになってしまっている
BtoBビジネスにおいては、商品の技術的な優位性を強調しがちですが、技術者を除く購買決定者が求めているのは技術そのものではなく、業務の改善やコスト削減といった具体的なメリットです。
そのため、「何ができるか」ではなく、「どのような課題を解決できるのか」にフォーカスしましょう。
また、プロダクトアウト型(技術や製品の特徴からマーケティングを組み立てる)ではなく、マーケットイン型(市場ニーズから逆算してマーケティングを組み立てる)の視点を取り入れることも重要です。
関連記事:マーケティングリサーチが事業発展のポイント! 役割やリサーチの流れを解説
顧客が本当に必要としている課題解決を軸に訴求することで、より効果的なコミュニケーションを行えます。
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自由な購買行動が確立したインターネット時代においては「訴求力が高い企業」「訴求力が高い人」が成功しやすい
インターネットの普及により、消費者やビジネスパーソンは膨大な情報を比較・検討し、購買判断をするようになりました。そのため、優れた商品やサービスを提供するだけでは選ばれず、いかに価値を伝え、相手の関心を引けるかが成功の鍵となっています。
訴求力の高い企業は、顧客の課題を的確に捉え、それに応じたメッセージを発信できています。わかりやすく伝えることを重視し、一貫したブランド戦略を展開すれば、認知度と信頼を高めることが可能です。
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個人においても、訴求力の高さはキャリアの成功につながります。
SNSやブログで専門知識やノウハウを発信し続けることで、業界内での信頼を獲得し、新たな仕事の機会やキャリアアップを実現できます。
インターネット時代においては、価値を持つだけでなく、それを適切に伝えることが、企業・個人の成長に不可欠です。
訴求ポイントを見つける際の3つの方法
訴求力の高いマーケティングの実現には、まず「何を強く打ち出すべきか」を明確にすることが重要です。しかし、単に「この商品は優れています」と伝えるだけでは、競争の激しい市場の中で埋もれてしまうでしょう。
では、どのようにして自社の訴求ポイントを見つければよいのでしょうか?ここでは、訴求ポイントを明確にするための3つの方法について解説します。
自社分析
訴求力を高めるためには、まず自社の商品やサービスが持つ独自の強みを明確にしましょう。
以下のような観点で洗い出してみると、自社の強みが明確になります。
・機能面の優位性:他社にはない特別な機能があるか?
・コストパフォーマンス:価格と品質のバランスが市場の中で優れているか?
・ブランドの信頼性:業界内での実績や認知度が高いか?
・アフターサポート:導入後のサポート体制が充実しているか?
たとえば、SaaS企業であれば、「〇〇業界特化型のツールである」「初期導入のサポートが無料でついてくる」などの差別化ポイントを見つけられるかもしれません。
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顧客分析
自社が「これが強みだ」と考えていても、顧客が価値を感じなければ効果的な訴求にはなりません。そのため、顧客が何を求めているのかを正確に把握する必要があります。
顧客の課題やニーズを把握するおすすめの方法は、複数名の顧客を対象にインタビューを実施することです。
複数の意見を集めることで、共通するニーズや競合ではなく自社を選んだ理由などを明確にできます。
もしインタビューが難しい場合は、既存の顧客データ、競合製品のレビュー、SNSの投稿、アンケート結果などを活用し、顧客のインサイトを分析しましょう。
こうしたデータをもとに、顧客視点での価値を再定義することで、より効果的な訴求が可能になります。
関連記事:インサイトとは?マーケティングにおける重要性と成功事例3選
競合分析
自社の強みを明確にするためには、顧客ニーズと合致し、なおかつ競合が満たせていないポイントを見つけることが重要です。
この差別化ポイントこそが、競争優位性を生み出し、訴求すべき「自社独自の強み」につながります。競合分析を行う際は、以下の視点を意識しましょう。
・競合が提供している価値と自社の違いを比較
・競合のレビューや顧客の評価を分析し、弱点を探る
・競合が訴求していないが、顧客が求めているポイントを見つける
このように、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3Cを整理することで、自社が提供できる価値、顧客のニーズ、競合の強みと弱みを俯瞰し、訴求力の高い独自の強みを発見できます。
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訴求を高めるためのコンセプト整理は、時間をかけて行おう
適切な訴求を行うためには、データ分析や顧客インサイトをもとに、戦略を見直す視点が欠かせません。こうしたプロセスには時間と労力をかける価値があります。
以下では、訴求コンセプトの整理方法について、具体的なステップを解説します。
強み・特長(特徴)を洗い出す
まず自社の商品やサービスが持つ強みを明確にします。
このとき、単なる機能やスペックの羅列ではなく、「顧客にとっての価値」という視点で整理することが重要です。
スターバックスの例を考えてみましょう。
「高品質なコーヒー豆を使用」「多彩なカスタマイズが可能」といった機能的な強みのほか、「自宅でも職場でもない、リラックスできる特別な空間を提供」「注文時に名前を呼んでくれることでパーソナルな体験を演出」といった顧客が得られる価値にフォーカスしています。
このように、「顧客が何を求めているのか」「どのような体験を提供できるのか」を考えることで、強い訴求コンセプトを作ることが可能です。
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洗い出した特徴を競合商品・サービスと比較する
訴求コンセプトをより強化するためには、洗い出した特徴を競合と比較し、どこで差別化できるのかを明確にすることが重要です。
競合分析においては、直接競合だけでなく、間接競合にまで目を向けるようにしましょう。
スターバックスの直接競合は、同じくカフェチェーンを展開するブランド、「ドトール」や「タリーズ」などが該当します。これらの企業も高品質なコーヒーを提供していますが、スターバックスは「サードプレイス(第三の場所)」というコンセプトを掲げ、店内での体験を重視する点で差別化しています。
一方で、スターバックスの間接競合には、「ファストフード店」や「コンビニコーヒー」が含まれます。
マクドナルドの「プレミアムローストコーヒー」は手軽に安価で購入でき、コーヒーを飲むという目的だけを考えれば、スターバックスの競争相手になり得るでしょう。
また、コンビニコーヒーは、短時間で購入でき、価格もリーズナブルなため、「忙しい朝に手軽にコーヒーを楽しみたい」という顧客層を獲得しています。
このように、直接競合と間接競合の両方に目を向けることで、自社がどのポイントで強みを発揮できるのかをより明確にできます。
自社での抽出だけでなく第三者の意見も聞く
自社商品やサービスの強みを把握する際、社内の視点に加えて、第三者の意見を取り入れましょう。
社内の人間は自社商品を「優れている」と認識しがちですが、実際の顧客や外部の視点から見ると、思いもよらない評価や改善点が見えてくることがあります。
顧客アンケートやオンラインのクチコミ、レビューサイトの評価などを活用することで、「どのような点に魅力を感じているのか」「改善すべきポイントは何か」といった客観的なフィードバックを収集できます。
「機能が豊富で便利」という社内意見があっても、実際には「多機能すぎて使いこなせない」という課題が潜んでいるかもしれません。こうしたフィードバックをもとに、自社の訴求ポイントを見直すことが重要です。
顧客データやアンケートを元に「ユーザー視点」で訴求コンセプトを掘り下げる
訴求コンセプトを強化するためには、「便利」「楽しい」といった抽象的な表現ではなく、具体的な利用シーンやターゲットの特性を掘り下げることが大切です。
Webサイト上の行動データ、SNSのクチコミ、アンケート結果などを分析し、ユーザーがどんな状況で、どんな価値を感じているのかを明確にしましょう。
「使いやすい」という評価を一つとっても、それが「直感的なUIによるもの」なのか、「サポート体制が充実しているから」なのかを特定することで、より適切な訴求が可能になります。
自社への直接的なフィードバックが少ない場合、競合サービスや類似商品のクチコミ分析も有効です。他社製品の長所・短所を把握すれば、自社の改善点や差別化ポイントを見出せます。
こういったSNSなどのクチコミ情報を収集する手法を「ソーシャルリスニング」といいます。
ただし、こうしたマーケティングリサーチには、正確な情報の精査力と分析力が求められます
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セグメントごとに訴求ポイントを選定する
顧客の属性やニーズが多様である場合、すべての人に向けて一律の訴求を行うのではなく、セグメントごとに最適なメッセージを設定することが必要です。
具体的には、同じ商品でも「ビジネスパーソン」「学生」「ファミリー層」では求める価値が異なります。
それぞれのセグメントに対し、「ビジネスパーソン向けには作業効率を上げる機能を強調」「学生向けにはコストパフォーマンスの高さをアピール」「ファミリー向けには安心・安全な素材を訴求」といった形で、ターゲットに合わせたメッセージを作りましょう。
また、同じセグメント内でも複数の訴求ポイントがある場合は、最もインパクトの大きい要素を優先するべきです。
このように、顧客データをもとに具体的なニーズを把握し、ターゲットごとに最適なメッセージを整理することで、より効果的な訴求が可能になります。
ホワイトペーパーや資料を作成する際には「マーケティング・構成・デザイン」の3つの面での訴求力が重要
ホワイトペーパーや資料は、リード獲得や営業支援のツールとして活用されるため、ターゲットに響く内容に仕上げなければいけません。しかし、単に情報を詰め込むだけでは、効果的な資料とは言えません。
訴求力を高めるためには、「マーケティング面」「構成面」「デザイン面」の3つの要素を意識する必要があります。以下では、各要素のポイントを見ていきましょう。
マーケティング面での訴求力
マーケティング面での資料の訴求力は、大きくコンテンツとプロモーションの2つに分類できます。
コンテンツの訴求力では、ターゲットの課題を具体化し、それを解決するテーマ設定が重要です。顧客の「どのような問題を解決できるか」にフォーカスすることで、より効果的に訴求できます。
また、ホワイトペーパーや資料は、顧客情報と引き換えにダウンロードされることが多いため、単なる一般論ではなく、自社独自の経験やノウハウを交えることが不可欠です。Web検索や書籍で得られる情報と差別化し、読者にとって価値ある内容を提供しましょう。
次に、プロモーションの訴求力も欠かせません。どれほど優れた資料を作成しても、適切に届けられなければ意味がありません。ターゲットの課題を反映しながらも、思わず手に取りたくなるタイトルやキャッチコピーを設定することが重要です。
また、Web広告、SNS投稿、メルマガなどのプロモーション施策を活用し、適切なチャネルを通じてターゲットに届けることで、より多くのリード獲得につなげられます。
ターゲットにとって有益な情報を提供し、それを適切に届けることで、ホワイトペーパーや資料の効果を最大限に引き出せます。
関連記事:ホワイトペーパーの意味とは?作り方の手順やダウンロードを促す方法も徹底解説
構成面での訴求力
資料の構成がわかりづらいと、有益な情報が含まれていても、読者は途中で離脱します。情報を整理し、論理的な流れを意識することで、最後まで読んでもらえる資料に仕上げられるのです。
まず、目次を活用して全体の流れを明確にしましょう。長い資料では、冒頭に目次を設置すれば、「どの情報がどこにあるのか」が一目で分かり、読者が必要な情報にスムーズにアクセスできるようにします。
また、1ページに複数の情報を詰め込みすぎると、要点がぼやけてしまうため、1ページにつき1つの重要ポイントにフォーカスすることが効果的です。
要点の強調も忘れてはいけません。重要なデータやキーメッセージは、太字や図表を活用し、一目で伝わるように工夫することで、読者の記憶に残りやすくなります。
論理的な流れと視認性の高さを意識しながら構成を整理することで、情報が伝わりやすく、読者の行動につながる資料を作成できます。
デザイン面での訴求力
ホワイトペーパーのデザインは、情報の伝わりやすさに大きく影響します。
どれだけ有益な内容でも、視認性が低かったり、レイアウトが煩雑だったりすると、読者の興味を引けず、最後まで読んでもらえないでしょう。
以下のポイントを押さえることで、視覚的に魅力的で、伝わりやすい資料を作成できます。
・フォントの種類やサイズ、カラーを統一し、視認性を向上させる
・不必要な装飾や過度な色使いは避け、すっきりとしたレイアウトにする
・視覚的要素(図表・グラフ)を活用する
・フローチャートやアイコンを用いることで、概念の説明をわかりやすくする
・適切な余白を設ける
・情報を詰め込みすぎず、余白を活用することで読みやすさを向上させる
・CTAボタンは目に入りやすい色や配置を意識し、クリックしやすいデザインにする
視覚的に整理されたデザインを採用することで、情報が伝わりやすくなり、読者の理解度と関心を高められます。
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まとめ:「訴求」の意味や役割をしっかり捉えて、訴求力の高いマーケティングを
本記事で見てきたように、ビジネスにおける訴求とは、顧客の購買意欲を醸成し、行動を促すことを指します。
訴求力を高めるためには、まず顧客の課題や悩みを正確に把握することが重要です。そのうえで、「どのように解決できるのか」「その結果、顧客にどのようなメリットをもたらすのか」を明確に伝えることで、より効果的なマーケティングが可能になります。
顧客の視点を意識しながら、伝え方を磨き、より効果的な訴求を実現しましょう。
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