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底割れをしてしまったデジタル広告への不信と広告質、広告メディア質の課題【デジタル広告の現状と課題 長澤秀行 連載第2回】

2024.6.27
読了まで約 9

生成AIをはじめとした最新の手法や技術が次々に導入され、急速に進化しているデジタル広告。その一方で、なりすまし広告や詐欺広告の横行といった深刻な課題も浮き彫りになってきた。

本連載では、クオリティメディアコンソーシアム事務局長で株式会社BI.Garage 特命顧問を務める長澤秀行氏が、インターネット広告の黎明期から現代に至るまでの進化を俯瞰し、現代におけるデジタル広告の問題点と、本来あるべき理想形について解説する。

本稿では、なりすまし詐欺広告への政府の対応や広告配信プラットフォーマーの見解から広告配信における現状と課題を探っていきたい。

なりすまし詐欺広告の政府対応

前回の記事で言及したなりすまし詐欺広告への対応方針は6月18日に閣議決定されました。

出展:国民を詐欺から守るための総合対策 総務省6.18発表
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_space/02ryutsu02_04000493.html) 資料23-2

令和6年6月18日犯罪対策閣僚会議における岸田内閣総理大臣発言です。

「近年、SNSやマッチングアプリを通じたやり取りで相手を信頼させ、投資等の名目で金銭をだまし取る、SNS型投資詐欺、SNS型ロマンス詐欺が急増しています。著名人になりすました偽広告によって、被害者を誘い込む手口も広く見られ、社会的な問題となっています。キャッシュレス決済の普及等の中で、拡大するフィッシング被害や手口を変化させながら拡大する特殊詐欺も深刻であり、危機感を持って対応しなければなりません。このような状況を踏まえ、国民の大切な財産を守り抜くため、また、安心して投資できる環境を確保するとともに、国民生活に不可欠なツールとなっている、SNSやキャッシュレス決済などの健全性・信頼性を確保するため、この度、政府として初めて詐欺全般に特化した総合対策を取りまとめました。各位にあっては、本対策に基づき、様々な手口を踏まえた広報啓発やSNSでの警告表示、闇バイト情報に関するサイバーパトロール、そして、携帯電話契約時などにおけるマイナンバーカードを用いた本人確認の厳格化や犯罪収益のより的確な没収のための法改正を含む暗号資産対策、海外拠点の摘発を始めとする徹底的な取締りなど、被害に遭わせない、犯行に加担させない、犯罪者のツールを奪う、犯罪者を逃さないための対策を総合的に推進してください。特に国民を被害に遭わせないため、SNS事業者による実効的な広報審査や情報流通プラットフォーム対処法の速やかな施行、警察等からの通報への迅速な対応を含む偽広告の削除の推進など、偽広告への対策を抜本的に強化してくださいまた、経団連などとも連携して、フィッシングを防止するための送信ドメイン認証技術や金融機関、ECサイト等での次世代認証技術の導入・促進を強力に進めるほか、未把握のフィッシングサイトに係るウイルス対策ソフトを通じた警告など、技術的なアプローチも強化してください。国民を詐欺から守るため、民間事業者に社会的責任を果たしていただくよう強く働きかけることを含め、強い決意をもって本対策に基づく取組を徹底するようお願いいたします。」

と岸田首相のコメント入りで対応方針が公表され、META社等への改善要請、SNS大手事業者へのヒアリング対応要請が総務省から発表されました。

出展:SNS等におけるなりすまし型「偽広告」への対応に関する要請の実施 総務省6.21
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000411.html

本件も含めデジタルプラットフォーム事業者への具体的法規制等の検討作業に入ると思われる。長澤の経験ではこれほど素早いネットメディア、ネット広告の問題への政府対応が出たのは初めてだ。私も自民党政務調査会や総務省のヒアリングを受けましたが判断が早い。それだけネットメデイアが国民生活に密着する存在になっており民間で秩序維持ができなければ法の介入も躊躇なしというグローバルのネット規制の動きの表れを感じた。このなりすまし詐欺広告の問題がネット広告全体、特にデジタルプラットフォームの運用体制課題に関する論議を加速しているのが現状である。今まで産業振興的視点、グローバル競争視点から見過ごされてきたインターネット課題が生成AIの拡大も踏まえ、ガンガンと議論していくぞ、という国民社会課題視点での国の姿勢を感じた。

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広告配信プレイヤーに求める具体的な行動

そのような外部環境において、ネット広告の効果指標の仕組みがマーケテイングでの広告の効果指標のKPIとして標準化する中で、その信頼性を大きく損なうデジタル広告の質の瑕疵が顕在化している。いわゆる「デジタル広告の信頼価値を底割れさせる課題」の表出である。日本アドバタイザーズ協会の緊急提言はなりすまし広告の社会問題化に危機感を表明と共に、提言の基本は「デジタル広告の信頼性の崩壊、底割れをいかに防ぐか」をより広い範疇でデジタル広告のマルチステークスホルダーに強く求めた観点である。具体的には各関係プレイヤー別に以下のような具体的行動を求めている。

出典:社会問題化する上の詐欺広告に対する緊急提言 公益社団法人日本アドバタイザーズ協会
https://www.jaa.or.jp/information/20240517-912/

■プラットフォーマー
アドバタイザーが安心して広告を掲出するために、自社サイトのコンテンツや取り扱う広告、および広告掲載先のメディアの品質管理に責任を果たすべきである。 多くの生活者が利用するプラットフォーマーは、その影響力に鑑み、日本国内で掲載する広告を含むコンテンツが、国内法や公序良俗に反しないことを担保する必要がある。 具体的には、刑法や知的財産法をはじめとする関係法令に反するコンテンツ、消費者を誤認または困惑させ消費者の利益を害することが明らかなコンテンツ、青少年の健全な成長に対し著しい悪影響を及ぼすコンテンツ、国民生活・経済に悪影響を及ぼすフェイクニュースや偽情報コンテンツなどを放置せず、可及的速やかに削除・非表示などの対応を取ることなどである。 そのためにも、グローバル・日本国内それぞれにおいて品質をしっかりと担保する審査体制が必要と考える。

■テクノロジーパートナー、メディア
MFA(Made For Advertisement)のような広告費を無駄に消費するために作られたメディア群や、上記のような品質に問題のあるコンテンツが掲載されるメディア、アドフラウド・ブランドセーフティに問題のあるメディアが存在しないよう注力すべきである。

■アドバタイザー
自社の広告が、どのメディアに掲出され、どこに費用が使われているか認識し、不適切なメディアへ資金が流れないように最大限の注意を払う。安心・安全なメディアへの広告掲載を実施する。 運用型デジタル広告の利用により、自社広告が掲出されているメディアのすべてを把握しきれないアドバタイザーが多くなっている。 その中で、自社広告が法令(刑法、知的財産法、薬機法、景表法、特商法など)違反のコンテンツを掲載するWebサイトや、フェイクニュース・偽情報を発信するWebサイトに掲載され、結果として反社会的勢力などの収益源となっている可能性について認識する必要がある。 ブランドセーフティを担保するため、品質の高いコンテンツを生み出し、利用者に信頼されるために不断の取り組みを続けているメディア、安心・安全なメディアへの広告出稿を実施する。 広告費を払っているアドバタイザーが、この問題についての責任の主体となり、リスク管理をし、対策を講じなければならない。

■エージェンシー、パートナー企業
アドバタイザーの広告が、本来意図していない広告掲出場所に掲載されることのないよう、ブランドを毀損しない適切なサービスを提供する。 広告の専門家であるエージェンシー、パートナー企業は、アドバタイザーが意図せずリスクの高いメディアに広告を掲出することがないように、必要な対策を提示すべきである。そしてアドバタイザーが求める品質を満たす、適切な広告サービスの提供を行うことが求められる。
最後に改めて強調したいのは、デジタル広告を掲出するアドバタイザーには重要な役割があるということです。社会に対する規範としての倫理観を、広告を出稿するアドバタイザー自身が持つ必要があります。 倫理観に基づく役割の一つに、出稿した広告の行き先に責任を持つことがあります。アドフラウドやブランドの毀損といった社会的に不適切なものにつながる動きはないかを自らに問いながら、広告活動を行わなければなりません。そして問題があった場合は、後回しせずに対応を行わなくてはなりません。 私たちアドバタイザーが、生活者との健全な関係を追及し続けることができるのか、今、私たちの行動にかかっていると考えます。 以上

これは現在も将来もマーケテイングにおけるメデイア広告の中核メデイアとしてその役割を果たし続けるためのデジタル広告の品質管理に関する改善アクションを関連プレイヤーに強く求めたアド協の決意表明と自分は読み取りました。 熟読必の緊急提言です。

広告メディアへの品質担保とMFAサイトの影響

この具体的提言を読むと気が付くのがアド協の「広告掲載メデイアの質、信頼性」への強い危機感です。当然、なりすまし詐欺広告を平然と掲載を続けるデジタルプラットフォームメデイアに対してのメデイア信頼性への警鐘もありますが、それ以上にデジタル広告の運用型広告取引、広告配信の仕組みの中に包含された「広告掲載メデイアの質の担保の欠如」という構造的瑕疵への関連プレーヤーの注意喚起、改善行動を強く促す点が強いイシューとして読み取れます。その典型的な事例がオープンマーケットプレイス型アドネットワーク(掲載メデイアを指定しないアドネットワーク。指定するのがPMP=プライベートマーケットプレイス)、具体的にはGoogleが主宰するGDN等アドネットワークでの「広告掲載メデイアの質管理」の問題です。

画像:ネット広告の出稿の流れ図

表1:ネット広告の出稿の流れ図

これは米国では「MFAサイト(広告収入を得る為だけに乱造されたメデイア)」問題で大きく注目されて、米国広告主協会がその定義を定め昨年から警鐘を鳴らしています。

広告収入目的の「MFA」と呼ばれる低品質なWebサイトで、生成AIの導入が進んでいることが分かった。中には1日1200本以上の記事を生成しているサイトもあり、自動化が急速に進んでいる様子が伺える。140社を超える大手ブランドが、おそらく知らず知らずのうちに、AIで作成された信頼性の低いサイトの広告費用を支払っているとみられる。こうしたAI生成ニュースサイトで見つかった大手ブランドの広告の90%はグーグルが配信したもので、グーグル自身のポリシーに違反している。こうした行為によって多額の広告費が無駄になるだけでなく、AI生成コンテンツで溢れかえり、不具合とスパムにまみれたインターネットの到来が早まってしまう可能性がある。
※引用;2023/06/28 MITテクノロジーレビュー

画像:MFAサイト広告掲載事例参照

表2:MFAサイト広告掲載事例参照

画像:日本新聞協会MFA意見書

表3: 日本新聞協会MFA意見書

世界第2位のネット広告大国日本でも早速、MFAは展開され影響が具体化し警鐘が鳴らされています。

画像:表4:全米広告主協会のMFAサイトの定義 (デジデイ 10.20)

表4:全米広告主協会のMFAサイトの定義 (デジデイ 10.20)

2023年9月下旬、全米広告代理店協会(4A’s)と世界広告主連盟(WFA)、全英広告主協会(ISBA)との共同作業を経て、MFAを定義付けした。これら業界団体が発表したプレスリリースによると、「MFAサイトは一般に、次のような特徴を何らかの組み合わせで示している」という
定義付けは交渉や議論の出発点であるが、現実は表3資料のようにMFAへの広告出稿は進んでいる。特にMFAサイトがなりすまし詐欺広告の主体のようにネット広告を資金源とするネットマフィア等反社会勢力やフェイクニュースを多量に発信、流通させる目的の団体や海外勢力である可能性は否定できない。つまりこのようなサイトの運営に広告費で資金提供をしているという構図が現在進行形で進んでいるという現実です。米国広告主協会やJAAなどが警鐘を鳴らしたのは、広告主の多くが自社からの出稿広告がMFAサイトに掲載されている事実を知らない。レポートされていないし広告主自らも自社広告の掲載サイトを確認していないという広告管理体制です。当然、これは日本にも当てはまります。昨年の経済産業省のデジタル広告主ヒアリング調査ではなんと70%の広告主がGDNの自社広告の掲載サイトを知らない、掲載レポートも見ていない、という結果が出ています。(表5、表6参照)

画像:ネット広告の掲載先の把握率(経産省調査)

表5: ネット広告の掲載先の把握率(経産省調査)

画像:ネット広告の配信レポートについて(経産省調査)

表6: ネット広告の配信レポートについて(経産省調査)

この広告掲載メデイア質管理の軽視の要因は以下と考えます。
1:クリック優先のKPIの結果、クリックを生むメデイアは良いメデイアであり黒いメデイアでも広告メデイアとしては良いメデイアという歪んだ発想
2:そのクリックを生むために多種多様なサイトから運用型広告市場に集められた広告在庫の品質管理の欠如(これは広告仲介プラットフォームの責任領域)
3:ブラックリストやブランドセイフ技術を容易に突破してしまう悪質サイト側の技術力。これは生成AIの活用で急速に進歩していると思われる(表8参照)

画像:MFAへの広告配信排除は難しい

表8: MFAへの広告配信排除は難しい

いずれにしても広告主サイドの広告掲載メデイアの質管理への意識が変わらなければデジタル広告メデイアの質の底割れ状態は続きます。
当然、広告在庫を集め、管理し、配信するGoogle等デジタル広告仲介プラットフォームの販売商品への品質管理への注力はなりすまし詐欺広告の排除努力と同様に厳しく問われる状況と思います。さらに広告取引を仲介する広告会社等の責任も重大だと思われます。(表7参照)

画像:ネット広告の配信先管理主体について(経産省調査)

表7: ネット広告の配信先管理主体について(経産省調査)

しかし、なりすまし詐欺広告同様にデジタルプラットフォームは広告配信先の広告掲載メデイアの質管理が難しいと表明しています。(表9参照)

画像:広告配信先メデイア管理へのGoogleの見解

表9: 広告配信先メデイア管理へのGoogleの見解

Googleはグループ内のYouTubeやグループ外広告配信ネットワークGDNでネット広告在庫に圧倒的なシエアと生成AIを含めた最高の分析技術力を持つわけですから、ぐだぐだ理屈を並べる前に製造商品、販売商品の品質管理には絶対の責任を持つべきだと思いますし、世界最大の情報流通企業の社会責任だと思います。自動車でもスマホでもユーザーの安全管理にトヨタやアップル等が最大の手間とコストをかけるのは製品提供企業の当然の社会的責務です。ダメなら社会から指弾される。

すこし、話題が広告から外れますが、今、総務省のデジタル情報流通空間の健全化の在り方を検討する会で(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_space/index.html)でデジタル情報空間に流れるフェイク情報の管理に関する突っ込んだ議論が進んでいます。その中でフェイク情報の排除をいかに進めていくのか、ファクトチックの在り方も含めて喧々諤々の議論が行われています。GoogleやMETAもX(twitter)もヒアリングを受けました。
やはり議論はデジタル情報を流通させるプラットフォームが情報責任をどこまで負うか、どうフェイク情報を排除していくのかに集中しています。これは今、グローバルでほぼ同時進行で進んでいるフェイク情報対策議論です。広告問題も含まれますが注視すべき検討会です。自分はやはりデジタルプラットフォームもユーザーから見れば信頼する情報メデイアであり、その信頼の付託への責任をデジタルプラットフォームは負っているんだ、その前提でプラットフォーマーはエコシステムが形成できマネタイズできているんだという点への対社会責任観のあり様に注目しています。

しかし、MFA問題はネット広告のポジショニングにおいて、プラットフォーム問題だけでなくネット広告の本質的な課題を突き付けています。以下は昨年の米国でのMFA問題レポートで一番気になった記事です(デジデイ誌より)

プログラマティック広告のコンサルタントであるトム・トリスカリ氏は、ANA(全米広告主協会)がこのほど報告したMFAを含むプログラマティック広告の調査にも参画した。同氏いわく

「MFAサイトの広告を買うも買わないも、ブランドには選択の自由があるし、ログデータで検証するしないも同様だ」と言う。

潜在的にもっとも重大な理由は、「パフォーマンスがすこぶる高く、かつ安価な広告を」という広告主の無茶な要求だ。そんな広告は現実的に存在しない。

そこでMFAが発明された。

しかし問題は、MFAサイトの広告は確かに安価だがその反面、なにしろ広告を詰め込んだサイトであるため、大量のクリックやインプレッションは大いに期待できる。短期的な利益追求を優先するマーケターには、まさにうってつけと言えるだろう。

この狭域的視野の効率主義の発想が現在のネット広告の使い方のメインの発想であり、それが広告仲介プラットフォームサイドの粗悪在庫でもOK発想を生み、ネット広告の質の底割れを生んでいるという現実です。そしてその流れを誰も止めない。止められない。それが、結果、次回連載に述べるネット広告嫌いの大量のユーザーを量産している悪循環です。
その背景にはまだまだネット広告の課題への広告主、広告会社の認識不足の点も多々あります。従前から言われているアドフラウド問題でもなかなか広告主の意識変革は進まないようです。(JICDAQ調査資料表13、14)

画像:アドフラウド等への広告主の意識1(JICDAQ調査)

表13: アドフラウド等への広告主の意識1(JICDAQ調査)

画像:アドフラウド等への広告主の意識2(JICDAQ調査)

表14: アドフラウド等への広告主の意識2(JICDAQ調査)

特に日本では短期利益追求型の広告主が多いと米国と比較していわれてれています(表15参照)

画像:ネット広告指標の日米の違い

表15: ネット広告指標の日米の違い

プラットフォームも責任回避にスタンスが流れます。(表12参照)

画像:アドフラウドへのLINEYahooの見解

表12: アドフラウドへのLINEYahooの見解

この状況にあえて一石を投じた日本アドバタイザーズ協会の緊急提言には敬意を表します。先ほど言及した総務省検討会でのアド協山口デジタルメデイア委員長の意見表明が多くの検討会構成員の先生方、業界関係者に共鳴を与えました。その意見表明スライドを次に紹介させて頂きます。ご注目ください。

参照:デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会(第12回)配付資料※ワーキンググループ(第7回)合同開催 「資料12-1」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_space/02ryutsu02_04000442.html

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まとめ

デジタル広告の現状とフェイク情報
通常、他のメディアではメディア自体で信用管理されている「広告の質」が管理されていない。フェイク広告が紛れ込んでもだます手口が巧妙化、ハイテク化しユーザーからは真偽が判別できず、実被害が発生している。

ユーザーはDPFも普通のメディアと認識している。
アテンションエコノミーや個人志向ターゲットによるエコーチェンバーがフェイクに悪用されている。ユーザーのリテラシーでは普通、見抜けない。

通常、他のメディアでは広告配信元が信用管理しているネットワーク広告の配信先の「コンテンツの質」がきちりと管理されていない。(MFA含め)

広告主はDPFが広告配信先管理をしていると考え配信先の安全を確認していないケースも多くネット広告そのものの「質」の在り方が問われる。ネット広告の掲載先無視のクリック至上主義、個人ターゲット主義の弊害が表出している。発想の転換と確認努力の手間ひとつで状況は改善もする。(表10参照)

画像:MFAの米国近況レポート

表10: MFAの米国近況レポート

なりすましフェイク広告や記事ニュース型フェイク広告等詐欺広告技術の高度化にDPFの広告、コンテンツ管理技術が追い付いていないか、コストかけてない

DPFのエコシステムがフェイク情報の収益、拡散の一つになっている。情報の安全性確保よりプラットフォームの収益性確保を優先していないか?

連載の次回はネット広告の質の底割れが生んだユーザーのネット広告嫌いの実態と対応策を記したいと思います。

執筆者

長澤 秀行

長澤 秀行(ながさわ ひでゆき)

クオリティメディアコンソーシアム 事務局長
株式会社BI.Garage 特命顧問
1977年(株)電通入社、新聞局デジタル企画部長を経て、2004年 インタラクティブコミュニケーション局長、2006年 (株)サイバー・コミュニケーションズ 代表取締役社長 、2013年(株)電通 デジタルビジネス局局長、2014年一般社団法人日本インタラクティブ広告協会常務理事を歴任。
2017年より(株)デジタルガレージの顧問に就任し2020年には同社グループのBI.GARAGEの取締役に就任。
現在は同社にて日本国内の30媒体社からなるコンテンツメディアコンソーシアムの事務局長としてコンテンツメディアの価値を活かしたデジタル広告事業を推進。
著作 「メディアの苦悩28人の証言」 (光文社新書)。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

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