お茶のリーディングカンパニーとして、緑茶などのお茶を中心とした健康志向飲料を多数展開する株式会社伊藤園。同社では主力ブランドである『お〜いお茶』を通じて緑茶文化を世界へ広める活動を進めている。商品の売上の一部を用いて環境保全活動を実施する「Green Tea for Good」プロジェクトを世界規模で展開するため、MLBで活躍する大谷翔平選手をグローバルアンバサダーに据え、強力な発信力にもとづく世界規模のキャンペーン展開を図っている。
そんなグローバルなキャンペーンの「仕掛け人」となって、大谷選手とともに緑茶文化を世界へと発信するのが『言葉のアップデート術』を用いた効果的なコミュニケーションで定評がある気鋭のコピーライター小竹 海広(おだけ みひろ)氏だ。緑茶という古典的な文化と現代のトレンドを巧みに融合させ、グローバルな価値を生み出す独自のアプローチにもとづく、今プロジェクトでの取り組みを伺う。
また、アスリートを起用した広告事例はこれまで数多あるが、大谷選手を起用したキャンペーンはいずれも好評を博しており、なぜマーケターの間でも大谷選手の人気が絶大なのか、その謎についても解明してもらった。
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目次
大谷翔平×伊藤園で緑茶文化を世界へ
――先日、メジャーリーガーの大谷翔平選手が、株式会社伊藤園とグローバルアンバサダー契約を締結し、『お~いお茶』を軸とした世界規模のキャンペーンを開始しました。小竹さんは、このプロジェクトのクリエイティブ・ディレクターとして重要な役割を担っていると伺いました。まずは、このプロジェクトの概要について詳しく教えていただけますでしょうか。
小竹 海広(以下「小竹」) このプロジェクトは、伊藤園が『お〜いお茶』のブランドを世界的に展開し、日本茶の魅力をグローバルに広めることを目的としています。
大谷選手は、メジャーリーガーとして渡米する以前から『お〜いお茶』を愛飲しており、アメリカの生活でも大切な相棒として飲んでいたそうです。そこで本プロジェクトにぴったりの人物ということで、伊藤園さんがお声がけしたと聞いています。
本プロジェクトでは、大谷選手が『お〜いお茶』のブランドストーリーとともに世界85カ所以上の国と地域に向けて同製品の魅力をPRしていきます。さらに伊藤園さんと大谷選手が共同して「Green Tea for Good」というグローバル社会貢献プロジェクトを立ち上げ、「お茶で日本を美しく。」 というこれまでの伊藤園さんの活動を拡大し、世界各国で実施していくことも重要な取り組みの一つとなっています。
――このプロジェクトでは、小竹さんが所属するCIRCUS(サーカス)がコピーやビジュアル面、媒体選定を含めた制作全般を担っていますが、どのような経緯でこのプロジェクトに参画することになったのでしょうか?
小竹 株式会社CIRCUS代表の河野広一は、過去に寝具メーカー大手の株式会社西川や、英会話スクールで知られる株式会社ECCといった大手クライアントのプロモーションなどに大谷選手を起用した広告展開を手掛けました。また、河野が以前より伊藤園さんとお付き合いがあったこともありました。
また、これは余談ですが、CIRCUSが別の広告制作でロスでの撮影を行った際に、大谷選手が『お〜いお茶』を飲んでいそうです。これは今回の伊藤園さんのプロジェクト発足前の話ですから、本当に大谷選手は普段から『お〜いお茶』を愛飲しているということになりますね。
――「お茶で日本を美しく。」というテーマが物語るように、伊藤園さんの狙いとしては、世界に緑茶文化を広めたいという思いがあるのでしょうか。
小竹 伊藤園さんは、中長期経営ビジョンとして「世界のティーカンパニーへ」というキーワードを掲げており、日本のお茶文化を世界へ発信していくことを目指しています。当然、今回のプロジェクトもその一環です。
シリコンバレーの先端企業では、以前から『お~いお茶』がクリエイティブサポート飲料として愛されており、健康志向の高まりにともなって「甘くないお茶」のニーズが急速に高まっています。緑茶文化が根付くアジア圏にとどまらず、欧米でも緑茶文化が広がりを見せているのです。こうした世界的な緑茶市場の拡大を背景に、緑茶文化の先駆者である伊藤園が仕掛けるのが、今回のプロジェクトなのです。
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――今回の大谷選手と『お〜いお茶』を通じたグローバルキャンペーンにおいて、小竹さんはCD(クリエイティブ・ディレクター)として広告制作を統括されていますが、重要な役割を任された理由はどこにあるとお考えですか?
小竹 今回の抜擢は、これまでの実績と、社内での稼働状況などを総合的に判断した結果だと考えています。手前味噌ではありますが、メッシ選手やエンバペ選手が所属していたパリ・サン=ジェルマンのジャパンツアーのプロモーションに関する実績や、ゼンショーとエヴァンゲリオンのコラボキャンペーンなど、大規模な広告キャンペーンを成功させてきた実績を評価してもらったのではないかと思います。
また、キャッチーなフレーズを生み出す力や、マス広告とバズ広告の両方を一貫させた広告展開に強みを持っている点が評価されたのかもしれません。これらの経験を、今回のプロジェクトでも活かしているつもりです。
――パリ・サン=ジェルマン・ジャパンツアー「全員、超人。」、ゼンショー×シンエヴァンゲリオン「外食5チェーン共同作戦」、TBSラヴィット!「日本でいちばん明るい朝番組」などですね。これらのフレーズは非常にキャッチーで強烈でした!今回のプロジェクトにおけるCDの具体的な役割についてもお聞かせください。
小竹 当プロジェクトでは、株式会社CIRCUSの代表取締役社長の河野広一がTBP(トータル・ビジネスプロデューサー)として、大谷選手との契約締結や伊藤園さんとの折衝・調整、メディア戦略など、プロジェクトの起点づくりを担っています。私はクリエイティブディレクターとして、クリエイティブ全体の企画と、制作全体の監修を担っています。
具体的な仕事内容としては、企画はもちろん、コピーライティングも自分でやっています。他にもアートディレクターやデザイナーとの連携、制作統括、メディア選定、プレスリリースおよびヘッドラインの制作、『お~いお茶』のパッケージデザイン、キャンペーンで用いるPOPの制作監修など、クリエイティブに関わる全てのパートを包括的に手掛けさせてもらっています。
――今回のキャンペーンにおけるキービジュアルやコピーのポイントは?
小竹 今回のキャンペーンは、世界62か国の主要紙への新聞広告展開や、国内外85都市でのOOH広告(Out Of Home:屋外広告)ジャックなど、大規模なものとなっています。しかしコンセプトやメッセージはあくまでも1つに集約しています。日本側で決定した1つのメッセージとキービジュアルをベースに、各国の言葉にローカライズしながら世界展開を図っていく、という方法をとっています。
茶畑を背景に大谷選手が彼方を見つめるキーヴィジュアルも世界共通ですし、「Green Tea for Good」(お茶で世界を美しく)をテーマとした環境保全活動も、日本だけでなく世界各国で実施していく取り組みです。
小竹 唯一異なるのは、日本でのみ「いつの日も、僕のそばには お茶がある」という新俳句がパッケージやキービジュアルに採用される点です。この俳句は、季語や五・七・五の形式にとらわれず、より自由な表現を楽しむ「新俳句」と呼ばれる新ジャンルです。五・七・五のリズムを活かしつつ、俳句の枠を超えた表現として、大谷選手とコミュニケーションを重ねながら生み出されたコピーです。
こうした俳句や新俳句といった文化は日本固有のものであることから、国内製品のパッケージやキービジュアルでのみ使用しています。
――この新俳句は国内のSNS等でもかなり話題になりましたね。小竹さんといえば、モヤッとする一言を、スッと伝わる一言に変えることでマーケティング効果を最大化する、「言葉のアップデート術」という著書を出されていますよね。その手法を用いたコピーライティングが真骨頂ですが、今回のコピーライティングにおいてもそうした手法は取り入れているのですか?
小竹 まず大前提として「いつの日も、僕のそばには お茶がある」という新俳句は、ロサンゼルスにいる大谷選手とコミュニケーションをした上で生まれたものです。その上で、私の経験やノウハウをもとに、メッセージの効果を最大化するための提案を行わせていただきました。
まず、大谷選手が日本にいたときからロサンゼルスにいたるまで、「お〜いお茶」を愛飲してきているというファクトに基づいたコピーが必要だと考えました。大谷選手のような健康に人一倍気をつかい、結果を出しているアスリートが愛飲しているだけで、強い訴求効果を持っています。
普通に、企業が言いたいことだけを言うと「僕の相棒はお~いお茶」や「僕は、いつもお~いお茶を飲んでいます」といったストレートなエンドースメントになってしまいます。
そこで、表現として五・七・五とすることで、伊藤園らしいエモーショナルなトーンとしつつ、パッケージの新俳句欄にも記載するという企画を発案しました。
とはいっても実際、通常の「お〜いお茶」のパッケージの新俳句は、一般の方から公募するものでハードルがあったのですが、伊藤園さんと議論を重ねるうちに「やはりパッケージに、このコピーを入れよう」という決断をしていただき、実現となりました。
――メディアや一般の方々の反応はいかがでしたか?
小竹 新俳句形式のメッセージに整えたことにより、「和」のテイストが強い『お~いお茶』のパッケージに奥行きを与えることができました。そして「俳句」という文法だけに、それを深く読み解いてみたいという潜在的なニーズも喚起させることができたのではないかと思います。
ニュース番組や情報バラエティなどでも、本キャンペーンや新俳句をフィーチャーしていただきました。フリップを使ってわかりやすく解説を行ってくれるTV番組さんもあり、大きなPR効果を生み出すことができたと思っています。
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「商品を擬人化する」ことで、大谷ファンの気持ちを代弁したクリエイティブ。
小竹 また、今回の大谷選手のグローバルアンバサダー就任を記念し、LAで活躍する大谷選手に向けた新聞広告を世界60紙で展開しました。メッセージは以下のようになります。
拝啓 大谷翔平様
お〜いオオタニサン!
あたらしい季節が来ましたね。
いつも、ご活躍を拝見しております。
その凛とした姿から、
勇気をいただく日々です。
「お~いお茶」が
大谷さんにとって、
ほっと一息つけるときの
一助になれれば幸いです。
どんなときでも。
どんなに離れていても。
私たちは、大谷さんのそばに。
伊藤園 お〜いお茶
小竹 これも先の新俳句と併せて、さまざまなテレビ番組で取り上げていただいたほか、SNSでも大きく拡散されました。
――『お~いお茶』が「一ファン」となってLAで活躍する大谷選手にエールを送る、という趣旨なんですね。確かにビジュアルを見ると、『お~いお茶』がスタジアムを見つめているように見え、それが海の向こうで活躍する大谷選手を応援する一ファンの姿に思えてきます。これは面白い!
小竹 ありがとうございます。この新聞広告が話題になった理由として、大谷選手の知名度や社会的な影響力の大きさが大前提にあることは間違いありません。その上で、『お~いお茶』を擬人化し、海の向こうで活躍する大谷選手に語りかけ、応援しているという構図を生み出したことがクリエイティブとしての強さになったと思います。
「お〜いお茶」も大谷選手のファンの1人であることを表明することで、ユーザーとブランドの間に固い絆を産むことが狙いでした。たとえるならば、共通の推し活をしている人同士が、初対面でも一瞬で意気投合するような現象を、この新聞原稿で起こしたかったんです。
パッケージが裏側を向いているというビジュアルをフックに、「なんだこれ?」という、いい意味での違和感が読者に生まれます。さらに「お~いオオタニサン!」という呼びかけに続く本文を読んでみたいという衝動が生まれます。そして、メッセージをしっかりと読み込むことで、この一文は一ファンが綴った手紙であることがわかり、実は大きな世界観が広がっていることに気づくと同時に、『お~いお茶』という製品に対する親近感も生まれます。
このような階層構造を持つメッセージが、解説する価値のある話題として捉えられ、いくつものニュース番組や情報バラエティ番組で取り上げられたのではないかと考えています。
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小竹 それから、実は「商品を擬人化する」という手法は自分としても過去に実績があります。2018年に日本マクドナルドさんがTwitter(現X)を通じて新社会人にメッセージを贈る、というキャンペーンを担当させていただいたときに、マックフライポテトが新社会人に語りかけている構図のメッセージを発信しました。
いちばん長いポテトが、
いちばん偉いわけではありません。
短いポテト、まがったポテト、
カリカリのポテト、やわらかいポテト。
皆それぞれ良いところがあります。
皆それぞれ「好き」と言ってくれる人がいます。
自分の味を大切にすれば、
きっと自分らしく活躍できるはず。
新社会人のみなさま、
入社式おめでとうございます。
マックフライポテトより
新入社員むけに、マクドナルドのSNS企画で書いたコピーを再掲。
— 小竹海広| コピーライター/クリエイティブディレクター (@0dake) April 1, 2024
いちばん長いポテトが、
いちばん偉いわけではありません。… pic.twitter.com/svu9ZhuLp5
このメッセージが、新社会人の”背中を押す”というエモーションとなって若い世代の方々の共感を呼び、「前向きになれた」「励まされた気がした」「ポテトに泣かされるとは思わなかった」という反響のコメントをいただき、大きな話題となりました。
これを機に「擬人化」「タイミング」「メッセージ内容」の3つの要素がハマると大きく跳ねる、というのが私の中でのクリエイティブの型の1つとなりました。今回のキャンペーンでも、そうした手法が効果的だろうと考え、企画に盛り込ませていただきました。
諸々の結果、抽選でLAでの観戦旅行が当たるという特典要素も手伝って、Xにおいて、「#お〜いLAの大谷さん」というハッシュタグが2回トレンド入りし、そのうち1回は国内のトレンドで1位を獲得するなど、確かな露出を生み出すことができました。2ヶ月ほどで、SNSで3000万インプレッションを記録し、夏の商戦期におけるブランドの露出に大きく貢献したことがわかっています。
――今回のプロジェクトは、世界85の国と地域を対象としたグローバルなキャンペーンとなっていますが、どのような国々が対象となっているのですか?
小竹 OOH(屋外広告)のような大々的な広告展開は、日本、北米、韓国、台湾といった国々で実施しています。これらの国々は野球人気が高く、大谷選手の知名度による絶大なプロモーション効果が期待できることから、必然的にプロモーション規模も大きなものとなっています。
ベーブ・ルースの保持していた「2桁勝利&2桁本塁打」という金字塔的な記録を複数年連続で更新したり、ア・リーグの最多本塁打記録61本を破ったり、50-50を達成(※2024年9月20日時点)したりしたことが世界的なニュースとなり、世界中で大谷選手の注目度は高まりつつあります。
野球文化が日本ほど根付いていない国々でも、フランスの老舗スポーツ紙「レキップ」の表紙を飾りましたし、中南米ドミニカのメディアでも大谷選手を絶賛した特集が組まれたそうです。そうした動きがさらに高まり、当キャンペーンを強力に後押ししてくれることを期待しています。
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――このキャンペーンのほかにも、大谷選手を起用しマットレス等を販売する西川株式会社や株式会社コーセーによるコスメデコルテのプロモーションが多数あり、どれも反響は絶大だという話を見聞きします。小竹さんはマーケティングにおける大谷選手の魅力はどんな部分にあると感じますか?
小竹 MLBという世界最高峰の野球リーグで、あれだけの記録を達成し、生ける伝説として圧倒的な存在感を放つ選手ですから、その知名度や経済効果が絶大であることは疑う余地はありません。そのため、マーケティング業界でも「大谷選手を起用した広告を展開したい」というニーズが非常に大きいことは確かです。
特に緑茶飲料の市場では、コカ・コーラの『綾鷹』が宇多田ヒカルさんと鈴鹿央士さん、サントリーの『伊右衛門』が堺雅人さんと古川琴音さん、キリンの『生茶』が鈴木亮平さんと高畑充希さんといった、今をときめく人気タレントを起用したプロモーション合戦を行い、熾烈を極めています。こうした群雄割拠な状況が高まれば高まるほど、大谷選手を起用する意味は大きくなっていきます。
また、伊藤園さんが身を置く飲料業界では、健康表示に関してさまざまな審査がともなうため、安易に健康増進効果をうたうことができないという現状があります。そうした状況において、健康なイメージを強力に想起させる大谷選手のようなアスリートを起用することには非常に大きなアドバンテージがあると言えます。
また、大谷選手は以前から『お~いお茶』を愛飲していたというのは先ほどもお伝えしたとおりですし、西川のマットレスも実際に遠征の際に持ち歩いていると聞いています。コスメデコルテに関しても、大谷選手の肌がとてもきれいだということから、事実に基づいた説得力がありますね。
今や、広告業界は大谷選手ブーム真っ只中ですが、消費者はより一層事実や本質を求めるようになっているので、単にイメージに頼った広告では通用しなくなるかもしれません。その点で『お〜いお茶』をはじめとした「実際に大谷選手が使っている商品」の広告は、消費者の信頼を得やすく、真のブランド力向上に繋がっていくと考えられます。
――大谷選手だけでなく、スポーツ選手や有名タレントを起用した広告展開を検討している企業が重視すべきポイントですね。
小竹 特に大谷選手のようなスーパースターになればなるほど、消費者は製品と本人との関係性を重視する傾向が強くなると思います。したがって、伊藤園さんや西川さんのように「実際に使っている」という個人的な体験にもとづいたエピソードは、消費者の共感を呼び起こし、ブランドとのエンゲージメントを深める上で有効ですし、プロモーションやマーケティングをより効果的に進めていく上でも強力な武器となります。
今回の『お〜いお茶』を通じたグローバルキャンペーンでは、大谷選手は単なる広告塔ではなく、『お〜いお茶』や伊藤園といった企業のブランドストーリーを世界に伝えるグローバルアンバサダーという役割を担っています。そのため、いかに大谷選手と『お〜いお茶』の関係性、そして伊藤園のブランド理念を整合性のあるストーリーとして構築できるかが、キャンペーン成功の重要なポイントです。今回のケースと同じようなマーケティングや広告展開を検討されている企業や制作サイドの方々は、こうした点を踏まえて戦略構築を行うことが重要になってくると思います。