インタビュイー:ノーバジェット株式会社 代表取締役社長 松浦 義幹氏
ノーバジェット株式会社 第一編集制作部統括部長 千々波 有磯氏
インタビュアー:東洋経済新報社 編集局次長 山田 俊浩氏
「ご予算がないときでも、常にお客様の力になりたい」をテーマに、費用対効果の高いデジタルマーケティング支援サービスに確固たる実績を持つノーバジェット株式会社。
オウンドメディア黎明期からその可能性を信じ、構築・運用支援サービスに携わってきた同社は、豊富な実績と確かなノウハウで、数多くの顧客企業のデジタルマーケティング戦略を成功へと導いてきた。
オウンドメディア時代において、ひときわ強い存在感を放つ会社だけに、デジタルマーケティングやオウンドメディアに関わる方ならば「ノーバジェット」の名を耳にしたことがある方も少なくはないだろう。
今回は、そんな同社のトップである松浦 義幹代表取締役社長と、コンテンツ制作チームを統括する千々波 有磯統括部長というオウンドメディアを知り尽くした2人のキーパーソンから、オウンドメディアの可能性やノーバジェットならではのオウンドメディアサービスについて話を伺った。
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目次
オウンドメディアの可能性に賭けた起業
山田:ノーバジェットは、IT領域におけるデジタルマーケティングを得意とするオウンドメディア支援会社として確かな実績を持つ会社です。まずは、そんなノーバジェット設立の経緯についてお聞かせください。
松浦:一言で言えば、「オウンドメディアに未来と大きな可能性を感じたから」です。
私のこれまでのキャリアを簡単に述べさせていただきますと、大学卒業後に新卒で電波新聞社に入社し、ビジネスマン向けパソコン情報誌「OAパソコン」の編集者としてキャリアをスタートしました。当時はNECからPC-8000シリーズが発売されるなど、コンピュータが人々の生活に入り込んでいくパソコン時代の幕開けとも呼べる時期であり、私自身もそこに大きな興奮を感じたことを今でも鮮明に覚えています。
その後、米IDG日本法人にて「月刊Windows World」「月刊NT World」「月刊OS/2 World」といったPC系雑誌の編集長を歴任した後、2001年にメディアセレクト株式会社を設立。世の中が本格的なインターネット時代を迎える中、「パソコンという枠を超え、ITというより広い世界へ」という高鳴る気持ちとともに「月刊アイティセレクト」「月刊サーバセレクト」「月刊Direction on Microsoft 日本版」といったIT系雑誌を創刊しました。
メディアセレクト株式会社はアイティメディア株式会社と合併。私は取締役兼エンタープライズ事業部長として、「ITmediaエンタープライズ」「ITmediaエグゼクティブ」といったIT系ポータルサイトの最高責任者を務め、この頃から本格的にペイドメディア事業に携わるようになりました。
これが大きな転機となります。その頃のIT業界の情報収集はどうしているのかというと、記者がIBMや富士通といった大手ベンダー企業から情報を収集するのが一般的でしたが、そこでふと「そんな有益な情報を豊富に持つ大手ベンダーが、もしオウンドメディアを作って自社で情報発信し始めたらすごいことになる」と考えたことが私がオウンドメディアに可能性を感じたきっかけです。
山田:確かに当時のベンダーは、あくまでも本業への尽力がメインで、積極的にオウンドメディアを展開していくようなことには、あまり熱心ではなかったかもしれませんね。
松浦:そんなかたちでオウンドメディアの潜在力を感じるとともに、「今後、IT業界と、その中でのデジタルマーケティングの主流はペイドメディアからオウンドメディアに移行していくのではないか」と感じました。そうなるとIT企業の数だけオウンドメディアが立ち上がっていくことになる。それで「これは大きな市場になる!」と確信し、このノーバジェットを設立したのです。
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限られた予算内で最大限の効果を生み出す独自の方法論
山田:「オウンドメディアの時代が来る!」という確信があったのですね。
松浦:ありましたね。「オウンドメディアの時代が到来したとき、先駆的に企業さんを支援できる存在になりたい」という強い思いがあり、それがノーバジェット設立の原動力にもなっています。
ノーバジェットを設立したのは2010年4月ですが、当時はまだオウンドメディア立ち上げの実績に乏しい状態でした。しかし代わりにペイドメディアは豊富にあった。だからその経験やノウハウを武器にすれば、必ず勝負できると思いましたね。
山田:イメージした顧客はやはりIT企業ですか?
松浦:そうです。中でも主たるターゲットに想定したのが中小のIT企業です。
大手ITベンダーや大手SIerは資金力と人的リソースが潤沢であるため、あえてそこに至っていない企業に注力することにしたのです。具体的には、スタートアップ企業、マーケティング部門を持たない企業、本格的なデジタルマーケティングに予算を割けない企業などをターゲットにしました。
これらの企業がオウンドメディアを立ち上げるようになったとき、限られた予算の中でどのようにコンテンツを作り、効果的なデジタルマーケティングにつなげていくかの青写真を描き、いかにその実現に向けて伴走していけるかが重要になります。こうした部分をノーバジェットの強みにしたいと考えました。
山田:「ノーバジェット」(予算がない・ごく限られた予算しかない)という社名にも、そうした想いが表れていますね。
松浦:「限られた予算であっても、貴社のオウンドメディアのコンテンツ制作とそれにもとづいたデジタルマーケティング戦略を全力でお手伝いしますよ」だから予算がないからこそウチに相談してほしい。「ノーバジェット」という社名には、そんな想いが込められています。
山田:「予算は限られているけど、その中でも効果的なデジタルマーケティングを展開していきたい」というニーズは相当数あるでしょうね。
松浦:デジタルマーケティングにおいて、オウンドメディアはもはや欠かせない重要施策であり、マーケティング戦略の核となる存在であると考えています。近年、企業はその価値の重要性をより強く感じるようになり、オウンドメディアを通じた自社の情報発信に積極的に取り組むような時代が本格的に到来したと感じています。
山田:ノーバジェットへの問い合わせや引き合いはどんどん増えていると。
松浦:今年でノーバジェットは設立15年目を迎えますが、確かに多くのご相談をいただくようになりました。その中には先ほどお話しさせていただいた予算がなくてお困りになっているお客様はもちろんですが、その予算事情から、専任のマーケターを配置することができない、という人的リソースでお悩みのお客様からも多数ご相談をいただいています。
では、そうした課題を抱えるお客様に対する具体的な支援策ですが、たとえば「予算がない」というお客様の場合は、まずは「予算がない状況の中で、どの程度までの支援を望んでいるのか」という点を明確にし、その金額に応じて、「構成案のみ作成する」「原稿のみ作成する」「レイアウトのみ作成する」といった部分的な支援を提供させていただいています。資金が潤沢にあるお客様の場合は企画・コンサルティングを起点にオウンドメディア構築、運用までに至るトータルソリューションでお応えすることができますが、そうでない場合でも、部分的支援を行うことで限られた予算の中でも費用対効果の大きなデジタルマーケティングにつなげていくことができます。
一方、「人的リソースでお悩みのお客様」のケースですが、まずはお客様のご要望をお伺いし、課題感を明確にした上で、「社内の折衝・調整、あるいは取材するのであれば取材先の選定までをそちらがやって、それ以外はすべてノーバジェットがトータルソリューションでお引き受けします」といったようなお客様と当社側の理想的な役割分担にもとづいた提案を行っていきます。
このような、予算や人材不足などの制約により、十分なデジタルマーケティング施策を実行することが難しいお客様を、これまで数多く支援してきました。
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マーケターの当事者意識がオウンドメディアを成功に導く
山田:こうした予算や人材不足などの制約があるクライアントの場合は、すべてを丸投げにできない分、互いに努力し合う相互扶助の意識を持ってもらうことも大切ですね。
千々波:それは言えますね。
本質的な話として、オウンドメディアを展開していくには、企業側も丸投げではなく、ある程度自分たちも手を動かせる力を持っておいたほうがいいと思います。
1から10まで全てを自社で行う必要はありませんが、コンテンツ制作においては、構成や企画を練り、制作会社と綿密に折衝・調整を行う中で、マーケター側からも具体的なイメージやアイデアを積極的に提案していくことが重要。こうした相互扶助があるかどうかによって、成果物の質に大きな差が生じるのです。
それができないと制作会社の負担ばかりが大きくなり、結果的にコストが嵩むだけでなく、本来期待していた成果を得られない可能性も高くなります。
つまり、依頼主である企業側もそうした意識を持ち、積極的に手を動かしていかないと質の高いオウンドメディアは作れない。すでにそんな時代になってしまっているのです。
山田:いま、お話いただいたことに紐づくような事例はありますか?
千々波:先日対応させていただいた、ある設計用CADツールの一次代理店をお客様とした案件が好例だと言えます。
そのお客様は社内にデジタルマーケティング部門を立ち上げたばかりという状況の中、リード獲得を目的としたオウンドメディアを立ち上げたいと当社へご相談くださったのですが、その担当マーケターの方が「自分自身も積極的にコンテンツ制作に関わっていく」という強い当事者意識をお持ちだったことでスムースかつ費用対効果の高いオウンドメディアを立ち上げることができました。
具体的には、担当マーケターの方が記事の方向性やテイスト、デザインなどにおいて明確なイメージを伝えてくださり、さらに「できる部分は自分でやる」という意識を持たれていたため、私たち制作側との作業分担を明確にすることができ、限られた予算内でも訴求力の高いコンテンツを作ることができ、ご満足をいただくことができました。
松浦:マーケターがこのような姿勢を持つことで、社内でマーケティング部門が立ち上げられたばかりという状況や、社内におけるマーケターの地位が低い場合でも、効果的かつ費用対効果の高いデジタルマーケティング戦略を実行することが可能になるのです。
千々波:先の例で言えば、「まずは一つ導入事例のコンテンツを作ってみましょう」ということでご支援させていただいたのですが、それを一つのサンプルにすることで営業ツールとしての活用もできますし、あるいはそれをリード獲得のためのダウンロード資料にしたりといった有意義な活用へと発展させていくことができます。
そのため、そのお客様には「小さな成功例を重ねて社内に実績アピールを行い、それをもとにどんどん予算を広げていくことができるかもしれません」といった社内におけるマーケティングの地位向上につながるようなアドバイスも併せて行わせていただきました。
山田:単なるコンテンツ制作の枠を超え、マーケターの社内地位向上まで見据えて支援を行っていく——非常に興味深い事例ですね。
松浦:うちはグループ会社に「ノーバジェット・マーケティング」というコンサルティング会社も持ってるのですが、そこがまさに「マーケターの社内地位向上」という価値を生み出す機能を担っています。
ノーバジェットがコンテンツを作る制作会社であるのに対し、ノーバジェット・マーケティングは作ったコンテンツをどう活用していくかをテーマにコンサルティングを展開する会社です。
そんな両社が連携することでコンテンツを低コストで多目的に活用することができ、それによって効果的なプロモーションやマーケティングを実現することができるようになります。さらにそれを起点にマーケターの方が社内で予算を確保しやすくなるようなコンサルティングも併せて行い、社内における地位向上にも貢献していく——そんなお客様に深く寄り添った支援が行えることも私たちの大きな強みだと言えます。
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社内の既存資産をフル活用することでオウンドメディアの可能性を広げていく
山田:お客様の予算規模や人的リソースといった事情に応じて、一気通貫のトータルソリューションから部分的な支援まで、幅広く対応していけるのはノーバジェットの大きな強みですね。
千々波:そうですね。もう一つ、予算が限られた状況で効果的なコンテンツを作りたいとお考えになられているお客様に対するアドバイスとして、「既存資産をフル活用する」という選択肢も持つことをお勧めしています。
たとえば1からコンテンツ作ろうと思った場合、企画を考えて構成案を作成し、必要に応じてデザインや取材、撮影も取り入れる必要があるなど、かなり大掛かりになる場合も往々にしてあり、それに応じてコストも大きく嵩んでいきます。
しかし、そういったとき自社内にあるホワイペーパーやオンラインセミナーの講演録、営業会議や商品企画会議の議事録などといった社内資料を活用し、コンテンツ制作に活用していくような工夫ができると、工数やコストをかけずに費用対効果の大きなコンテンツを作ることが可能となります。
松浦:ホワイトペーパーなどの、ダウンロードしてじっくり読み込むことを前提とした資料は、その企業のノウハウが凝縮された「宝」とも言うべきものです。訴求力のあるコンテンツを作成するためには、こうした社内資産を活用することが重要です。
極端な言い方をすれば、限られた予算の中でマーケティング活動を行わなければならないマーケターは、これからの時代のコンテンツ制作において「ゼロから作り上げる」という考え方を捨てるべきです。既存のものを最大限に活用し、「残りの4割から6割程度」を新規に作り上げるという意識で臨めば、より低コストかつ効率的に訴求力の高いコンテンツを生み出していけるようになるでしょう。
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ノースタッフでもデジタルマーケティングを成功に導ける
山田:これまでは「予算が限られている」という条件下におけるオウンドメディア展開のアドバイスをいただきましたが、「マーケターがいない」あるいは「マーケティングに関わる人間が少ない」といったケースにおけるアドバイスはありますか?
千々波:「柔軟な要求に答えてくれるコンテンツ制作会社さんとお付き合いしておく」ということですね。
たとえばオウンドメディアでは、作成したコンテンツを最大限に活用することが重要ですが、このとき二次利用に柔軟に対応してくれるような制作会社だと、後々の動きがラクになります。逆に「コンテンツは作ったけど、著作権は渡しませんよ」という会社ですとオウンドメディアとしての展開にかなりの制約が生じてしまいます。
その点でノーバジェットはコンテンツの二次使用に制約を設けず、さまざまなご要望に柔軟に応えていくことを信条としていますので、オウンドメディアとしての展開が図りやすく、長期的視野に立ったデジタルマーケティング戦略へとつなげていくことができます。
松浦:ノーバジェットおよびノーバジェット・マーケティングをパートナーに選んでいただければ、何かあったときに必ず力になることをお約束します。先にも述べたように、うちはあらゆる面で融通が効きますし、とことんまでお客様に寄り添うことを信条としています。極端に言えば、ノーバジェットをパートナーにすることで、ノースタッフでオウンドメディア構築からデジマ運用までを行えるようになる。
山田:つまりは「ノーバジェット・ノースタッフ」の会社をサポートする、ということですね(笑)
安物買いの銭失い?コンテンツ制作の失敗を防ぐポイントとは
山田:ノーバジェットをご利用されるお客様の傾向みたいなものはありますか?
松浦:うちの会社に相談に来るお客様には、「安物買いの銭失い」のような状況に陥っているケースが非常に多いんですよ。とにかく「安さ」だけを追求した結果、なんの知見も持たないライターが書いた原稿や、AIを使って生成した的はずれな原稿をもとにコンテンツを作ってしまったがために、効果が出なくて、振り出しに戻ってしまうようなケースが多い。
なので、もし現状の施策で効果が出ないのなら、「今頼んでいる外注が必ずしも正解ではない」という視点で、一度記事のクオリティレベルを見直してみたほうがいいでしょうね。書き手と作り手を変えたら、同じプロモーションやマーケティング戦略でもまったく結果が違った、というのはよくある話です。
山田:そういった意味では、オウンドでもペイドでも書き手の能力が大事だということですね。そしてノーバジェットはいい書き手が揃っている。
松浦:ITの世界って、今の技術だけを理解していても良い原稿を書けるわけではありません。たとえば「クラウド」をテーマとする場合も、なんでクラウドというサービスが出てきたのか、たとえばそれをメインフレームの時代にまで遡って分かっている人でないと、クラウドという技術やサービスのメリットを的確に表現しきれなかったりする。これはコンテンツの訴求力に直結する要素ですから、とても大事な部分です。
その点でうちは、黎明期からITの変遷を体験してきた書き手と50人以上取引しているのが大きな強みです。それで「セキュリティならばこの人」「DBならばこの人」「クラウドだったらこの人」といった具合にテーマに応じて高度な専門性を持ったライターが対応していくので必然的に高いクオリティのコンテンツを生み出しやすくなる。
山田:そういった「本当にわかっている人」に取材されることは、企業側にとっても大きな安心感や信頼にもつながりますね。
松浦:そうですね。メインフレームまで遡ることはなくても、ここ10〜20年のITの変遷は身を持って感じてきている人のほうが、良い原稿を書けるのは確かです。
そういった人たちは、長年のコンピュータやデジタル化の変遷と進化を肌で感じてきた経験者だからこそ、お客様のもとに伺った際にも「この人間なら取材を任せても安心だ」といったような安心・信頼を生み出せる。そんなクリエイターの質でもノーバジェットは非常に高いものを持っていると自負しています。なので、もしオウンドメディア関連でお悩みであれば、お気軽に私たちを頼っていただきたいですね。
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