半導体商社国内No.1シェア(※1)と売上高一兆円(※2)を誇り、世界26の国と地域に、92の拠点を展開するマクニカ。
1972年に産声を上げ、半導体の専門商社として確かな実績を築き、技術支援重視のビジネスを展開する技術商社へと変貌を遂げている。さらに2030年を目標に、最先端のデジタル技術と同社が持つインテリジェンスを組み合わせ、高い社会的価値の創造を生み出す「サービス・ソリューションカンパニー」への事業変革を目指している。変革成功の鍵を握るのは、データとテクノロジーを積極活用したデータドリブンなマーケティングだ。
今回は、同社のマーケティング統括部長であり、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)表彰部会のリード役なども務めている堀野史郎氏に、マクニカ独自の強みや特徴を聞くとともに、事業変革を実現して次なる次元へと引き上げていくためのマーケティングについて語ってもらった。
(※1)ガートナー調べ
(Gartner Market Share: Semiconductor Distributors, Worldwide, 2021, Masatsune Yamaji, 9 March 2022, Revenue Basis)
(※2)2022年度実績
目次
半導体の専門商社から技術商社、そしてサービス・ソリューションカンパニーへ
ーーまずはマクニカの事業について教えてください。
堀野史郎(以下、堀野) マクニカの第一の柱は当社の代名詞でもある半導体ビジネスです。
半導体ディストリビューターとしては日本一のシェアを誇り、業界屈指の製品ポートフォリオを武器に、医療機器、半導体製造装置、自動車、コンピュータ、民生機器、通信装置、通信インフラ、OA・周辺機器をはじめ、多岐に渡る産業分野を支える製品を、グローバルなスケールで供給しています。
次いで第二の柱となるのがネットワークビジネスです。
具体的にはサイバーセキュリティ・ネットワーク、AI/データやDXアプリケーションがメインで、日本国内だけではなく、アジア、中東をカバーするグローバルネットワークを活用して、世界各国に最先端のテクノロジーとインテリジェンスを提供しています。
この2つを主な事業の柱とし、売上規模は2023年3月期決算において売上高1兆円を突破するなど、順調な成長を続けています。
ーーマクニカといえば「半導体の専門商社」というイメージが強いですね。その一方で、ネットワークビジネスでも確かな実績を築いています。今後もこうした流れを加速させていくのですか?
堀野 そうです。さらに次なる次元へと押し上げていくための長期経営計画として、2030年までに「サービス・ソリューションカンパニー」になるという目標を掲げています。
具体的には、3つのマテリアリティにもとづき、6つの事業テーマを設定してビジネスを展開しています。
1. Business & Economy:
「スマートマニュファクチュアリング」や「CPS(Cyber-Physical System)セキュリティ」をテーマにした事業です。これにより、生産現場の労働力不足や後継者不足といった課題を解決します。
2. Life & Society:
自動運転車両を含むトータルスマートモビリティで、スマートシティ/モビリティを提供します。超高齢化社会における個別化医療や予防医療の発展に向けたヘルスケア事業を展開しています。
3. Green & Earth:
カーボンニュートラルの実現や、再生可能な資源の活用による循環型社会を目指し、サーキュラーエコノミーやフード・アグリテックをテーマにした事業を展開しています。
これらの取り組みは、AIやIoTを活用したサービス・ソリューションを通じて、持続可能な未来社会の実現に向けた一翼を担っています。
ーー世界の主要なデバイスを網羅する豊富な商材と圧倒的なノウハウ、そしてそこから生まれる技術力を武器とした新たな挑戦ですね。
堀野 これまでのマクニカに対する世間の印象は、「半導体の専門商社」が強かったのですが、そこに技術という新たな要素を加えた「技術商社」へと変化することができました。今後は、それらを融合させた「サービス・ソリューションカンパニー」への変革を目指しています。企業はもちろん、一般の方々も含め「マクニカってサービス・ソリューションの会社だよね」と思ってもらえることがゴールです。
こうした飽くなき挑戦の源となっているのは、創業者である神山治貴の「足下に種を蒔き続ける」というマクニカ不動の企業理念にもとづく企業風土であり文化です。
技術商社だけに、全社で「未来変化にどう対応していくか」ということを常に意識しているのが特徴です。世の中の動向を先読みして、メインストリームになり得るようなテクノロジーを見つけ出し、それを世の中に広く発信していくことで社会から必要とされる存在になる。「足下に種を蒔き続ける」という言葉は、そんなマクニカの姿勢を如実に表したものだと言えます。
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グローバルなシナジーを活かして新しい価値を創造していく
ーー新たな挑戦をマーケティングでリードしていく堀野さんから見て、マクニカの強みはどこにあると思いますか?
堀野 今日のマクニカは商社にとどまらず、自社での開発やエコシステムパートナーとの協業などを通じたソリューション開発を実現できる会社として、あらゆる産業分野からのニーズに先端技術で応えていける課題解決力、実装力を武器としています。
さらに日本をヘッドクォーターに、世界26の国・地域に、92の拠点を展開するグローバルカンパニーでもありますので、未だに世に出ていないような海外の技術動向を素早くキャッチし、いち早く自分たちのビジネスに採り入れられるという強みもあります。
お客様も半導体を組み込んでモノづくりを行うナショナルメーカーだけではなく、半導体メーカーやエンジニアリング企業、テック企業まで多岐にわたることから、幅広い市場にアプローチできる点も強みの一つです。
そうした体制や強力なアセット・リソース、そしてグローバルなネットワークという武器をフルに活かし、新しい取り組み、たとえば、自動運転モビリティの検証・実装にも取り組んでいます。
具体化には、貨物輸送EVと水素燃料電池技術のパイオニアである仏GAUSSIN(ゴーサン)社と、自律的でゼロ・エミッションのモビリティ開発を目的した新会社GAUSSIN MACNICA MOBILITYを設立し、従来から取引のあった仏NAVYA社の事業を引き継ぎ、レベル4自動運転の社会実装を目的とした自動運転EVバスソリューションの検証や実装を行っています。
これまで茨城県常陸太田市や神奈川県横浜市といった自治体で自動運転EVバスの社会実証実験やテスト運行、定常運行などを行っており、ニュースメディアなどでも取り上げられました。
この他に、ビデオ分析ソリューションを得意とするオーストラリアのセキュリティ企業icetana(アイセタナ)社とパートナー契約を締結し、最先端の施設警備ソリューションの開発も行っています。先日はパナソニックEWネットワークス株式会社の画像解析ソリューションにマクニカの異常検知ソフトウェアを組み合わせた、次世代の警備ソリューションを発表しました。
これらは一例ですが、グローバルなシナジーにもとづき、新たな価値創造を次々と展開していけるのもマクニカの大きな強みです。社内には海外の技術を評価・検証する専門チームがあり、まだ世に出ていない技術やサービスを探索し、その技術を使ってどんなことができるのかを考え、商品化していくまでの一連の流れをリードできる体制があります。ご紹介した取り組み以外にも、数多くの先端的なプロジェクトが並行して走っている状態です。
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NVIDIA(エヌビディア)の正規代理店であり、GPUソフトウェアのソリューション開発チームを保有
ーーマクニカといえばNVIDIA(エヌビディア)社の一次代理店としても知られていますね。
堀野 おっしゃる通りです。マクニカはNVIDIAの正規代理店として、国内最大規模の販売実績を持つ会社でもあります。
NVIDIA製品の中でも、当社が専門店に取り扱うのは画像処理系ではなく、AI開発用のワークステーションや組込み製品などのスーパーコンピューター側の製品です。
社内にはNVIDIAのGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のソフトウェア開発チームもおり、同社のGPUを用いたAIシステムをコアとしたソリューション開発も行っています。
そのほかにも、音声入力だけで議事録や日報、報告書などのドキュメントを自動作成するAIソリューション『おまとめ忍者』といったプロダクトも生まれています。生成AI関連のテクノロジーは市場に多数でてきておりますが、当社のプロダクトも注目をいただき、企業におけるDX推進を支援するソリューションとしても、数多の問い合わせや引き合いをいただいています。
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データとテクノロジーを活用したデータドリブンなマーケティングを重視
ーーそれでは、マクニカのマーケティング体制について教えてください。
堀野 マーケティングチームは「マーケティング統括部」というヘッドクォーターがあり、その直下に「DXマーケティング部」「フィールドマーケティング部」、そして私自身が兼務で部長を務める「マーケティングオペレーション部」が置かれています。
「マーケティングオペレーション部」は、マーケティング戦略を具体的なアクションへと落とし込んでいく「フィールドマーケティング部」を支える、いわば実行部隊を後方から支援するチームです。リード(見込み顧客)管理やデータマネジメント、BIツールを用いた可視化、プロセス設計など、戦略的なマーケティングの実行を支えます。
一方で事業部サイドのマーケティングチームもあります。半導体、サイバーセキュリティ、既にご紹介したような新規事業とそれぞれのビジネスに紐づいたマーケティングチームが存在し、他のマーケティングチームと有機的に連携しながら、事業成長を支えるマーケティングを展開しています。
ーーマーケティングを展開していく上で大切にしていることはありますか?
堀野 マクニカでは、「目的」「戦略」「戦術」を明示した上でプロジェクトに取り組むことを大切にする文化があります。
マーケティング、さらにはインサイドセールスが確実に成果を挙げていくためにABM(アカウント・ベースド・マーケティング)への取り組みも準備しており、戦略的な営業アプローチ実現を支援し、データとテクノロジーを活用したデータドリブンなマーケティングを追求していきます。
加えて、マーケティングの一環として、MET(Macnica Exponential Technology)という大規模なカンファレンスを通じたブランディングやリードジェネレーションを大切にしていることも当社ならではです。
METはコロナ禍の2020年から「最先端テクノロジーを俯瞰し、共に未来を創る」をコンセプトに、共創パートナー、重要顧客や、未来顧客をもターゲットに、さまざまなお客様へ向け毎年開催しているオンラインイベントです。最先端技術のトレンドやマーケットサマリー、導入事例、共創事例などといったコンテンツを通じ、ブランディング、リードジェネレーションを行っています。2023年度からはリアルイベントも招待制のスタイルで開始しました。
それ以外のリードジェネレーション施策として、「半導体」「セキュリティ・ネットワーク」「新規事業:CPS(Cyber Physical System)」など、事業ごとの個別イベントを実施しているほか、仕入先主催イベントや「RX JAPAN」「CES」といった大規模な国際的な展示会にも参加し、導入事例やプロダクト紹介などの情報発信活動にも力を入れています。
このように、目的に応じて戦略設計し独自性を追求します。戦術レイヤーでは、ターゲットオーディエンスとコミュニケーションが最大化できるようアウトプット(=提供するコンテンツ)にこだわります。さまざまなオンライン・オフラインの施策を通じてマクニカに価値を感じてもらい、さらには、自社のキーイベントにご参加いただき、効果的なコミュニケーションを生み出すことで、ビジネスの機会を創出するのがマクニカのマーケティングだと言えます。
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テクノロジーを積極活用するマクニカのマーケティングスタイル
ーー先ほど、「データとテクノロジーを活用したデータドリブンなマーケティング」というお話が出ましたが、具体化にどのようなテクノロジー活用を行っているのですか?
堀野 当社にはテクノロジー面からマーケティングの効率化・最適化を導き出すことをミッションとした「マーケティングテクノロジーチーム」もあり、その部門がCMSやDAM(デジタルアセットマネジメント)ツール、ユーザー分析ツールなどのテクノロジーを選定・評価し、自分たちのマーケティングに取り入れた運用を行っています。
さらに「データマネジメント&アナリティクスチーム」もあり、さまざまなデータのクレジングやサードパーティデータを統合し、分析精度向上やその範囲の拡大を図り、BIツールを用いた分析結果の可視化も行っています。
ーー堀野さんの具体的な役割は?
堀野 先にも述べた通り、基本的にはマーケティング戦略を具体的なアクションへと落とし込み実行していく「フィールドマーケティング」側を支えるコーポレート部門側マーケティング部門の責任者という立ち位置です。ただし、複数あるフィールドマーケティングのいくつかも兼務で担当しております。
そして2030年までにサービス・ソリューションカンパニーを目指すためのフレームワーク設計や、ロードマップの作成なども一から手がけています。具体的には、全社的な事業戦略を支えるためのマーケティング戦略立案、マーケティングオペレーション、セールスイネーブルメントに至るフレームワーク設計を手がけたほか、それらの実行に必要なテクノロジーやツール類の選定、デマンドセンターの立ち上げに向けた準備、AIを効果的に活用するためのナレッジ蓄積なども実行中です。
事業戦略を支えるしくみづくりの一環として、営業側に対しても顧客ごとに効果が出やすい商材や、効果的なスキームのサジェストを行えるようにしたいと考えています。そのための取り扱いデータの形式統合や、AIによるデータ分析精度の向上に向けた取り組み、さらに事業部単位で異なる業務プロセスの標準化なども進めていく予定です。
すべての動きは、サービスソリューション・カンパニーになるための布石であり、ワンチーム実現のためのものです。
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マーケティングのインテリジェント化による変化と効果
ーー現在のインテリジェント化に取り組む以前のマーケティングはどのような感じだったのでしょうか?
堀野 これまで「マーケティングは事業部ごとにそれぞれの方法で取り組むもの」という意識が強く、人力要素、属人化要素が強いマーケティングだったように感じます。
獲得したリードの管理も表計算ソフトに入力するというプリミティブな方法で、その扱い方もチームごとに異なっており、部署間をまたいだ連携が行いにくい状況がありました。
私自身は縁あって7年前にマクニカへ入社し、それまでは信販系SIerや国内外のクラウドサービス系のITベンダーなどで長きにわたってマーケティングに従事し、外の世界にいました。そのため、マクニカのマーケティング課題を誰よりも明確に感じることができていたのです。
最初はチームごとにバラバラだったデータベースやデータの取り扱い方法を一本に統合化することに取り組み、スキームなどもできるだけ共通化しました。さらに全社規模でデータベースの統合なども行い、共通化されたデータマネジメントルールのもと、誰が使っても必要な情報を扱えるようにしていったのです。
ーー具体的にどのような成果や変化や成果が現れましたか?
堀野 一番大きいのは「データドリブンなマーケティングを実施できるようになった」という点ですね。現在のマクニカはかなりレベルの高いマーケティングを実施できていると感じています。
そして、企業文化そのものにも変化が現れています。これまでマーケティングは「営業のアシスタント」という認識が強かったのですが、データドリブン・マーケティングという新たなかたちのマーケティングを導入し、「2030年までにサービス・ソリューションカンパニーへと変貌を遂げる」という長期目標を明確にしたことで、「マーケティングから事業成長をリードしていく存在」という認識への変化があり、社内プレゼンスが大きく向上しました。
そのほかに、戦術面で営業チームにこれまでにない選択肢を提示できるようになった点も大きな変化の一つです。
時代の経過やコロナ禍による社会構造の変化により、展示会に出ればリード獲得数を増やせるという時代は終わりました。オンライン対応が急激に進み、展示会だけでは十分なリード獲得をできなくなったのです。とくにコロナ禍以降は、どうやってターゲットセグメントのリードを獲得していくか、という課題に対し、マーケティングは適切な戦術を提案する役割を求められるようになりました。そこで“戦術の引き出し”をいくつも用意し、ケースに応じた最適解をサジェストしていく。その結果、効率的かつ確度の高いセールス活動を実現できるようになったのです。
さらにマーケティングの一貫として、先の「MET」のような大規模オンラインイベントを展開していくことで、「どういう媒体がどういう戦術のときに効果的なのか」という知見を相当数蓄積することができたことも大きな成果です。たとえば集客メールを送る場合、IT系や産業系のニュース媒体、オンライン・オフラインイベントなど、さまざまな集客に活用できる媒体がある中で、どの媒体の反響が一番大きく、伝播性が強いか、といったことを見極めやすくなりました。
加えて「集客における読みの精度が向上した」というのも大きな成果です。データドリブン・マーケティングにより、思った通りの集客見込みを得られるようになり、それに合わせた戦術を迅速に実施できます。目論見が外れた場合も、パートナーである代理店を巻き込んだリカバリープランを迅速に実施でき、確実に目標数値を達成できるようになりました。
これらは一例で、この数年で数え切れないほどの変化があったと感じています。
ーー集客の見込み予想にズレがなくなったというのはすごい成果ですね。そのほかにマーケティングチームとして取り組んでいることはありますか?
堀野 近年は競合他社とも積極的に情報交換を行うようになりました。
これまで当社が蓄積してきたデータや方法論の中から開示できる部分をピックアップし、分析や方法論をオープンにする一方で、競合の分析データや手法などを見て、いいものを取り入れながら互いにマーケティングのブラッシュアップを図り合っています。
サービスソリューション・カンパニーへと歩みを進めていくためには、自分たちだけの方法論に固執せず、積極的に外部のナレッジを取り入れていくことが重要なのです。
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全社的なマーケターのスキル向上に注力
ーー先のお話にもあったように、マクニカは世界的なグローバルカンパニーです。海外拠点ともマーケティングの共通化などを行っているのでしょうか?
堀野 もちろんです。マクニカは中国、台湾、シンガポール、米国、欧州、ブラジル、ASEANなど、世界各国に現地拠点を有しており、現地法人にも本社と同じCMSやMAツールを導入しています。本社主導のもと、グローバルなスケールのマーケティングテクノロジー基盤を確立しています。
テクノロジー基盤がある程度整ってきたら、次のステップとして本社でセンタライズを行い、それを現地拠点に落とし込みながら共通化を図っていく運用へと移行する予定です。それによって、より高度なマーケティングオペレーションを実現することができるようになるでしょう。
また、高度なマーケティング戦略を推進していくため、全社的なマーケターのスキル標準化を行い、それにもとづいた教育育成にも力を入れています。具体的にはABMのスキル深化や、最先端テックを活用したマーケティングをテーマとしたカリキュラム、提供価値の言語化、自らのアイデアを的確に伝える思考能力を磨くトレーニングなどを行っています。
また、外部ゲストをお招きした勉強会も定期的に実施しています。これまでシンフォニーマーケティングの庭山 一郎さんや、株式会社メンバーズの原 裕さん、著述家の細谷功さんなどにご依頼してご来社いただき、講義やワークショップを行ってもらいました。
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マーケターに求めたいのは「抽象化能力」
ーー堀野さんがマーケターに求めるものはなんですか?
堀野 新たな仲間としてマクニカに迎え入れる、という前提なら、「マクニカの企業文化に合うか」と「抽象化能力があるか」という点を重視します。
「抽象化」とは、何かを単純化して本質的な部分を見出す能力です。目に見える詳細を一旦引いて眺めることで、共通点や法則性を見つけることを指します。抽象化の結果を具体的なアイデアやプロダクトに落とし込んで「価値の創造」に結びつけていく。そのプロセスを実行できるかが、私がもっとも重要視しているマーケターの資質です。
目に見えるものをそのままでしか捉えられない人は、マクニカのマーケティングには合わないかもしれません。なぜなら、マーケティングは「しかけづくり」が重要であり、抽象化・具体化両方の視点を併せ持って取り組むことが強く求められる仕事だからです。
当然、先のマーケターのスキル標準化や教育育成でも、そうした部分を強く意識したスキルセットやカリキュラム作成を行っています。
営業起点だけでなく、マーケティング起点で選んでいただける(売れる)しくみを創っていく
ーーマクニカのマーケティングチームが目指す姿は?
堀野 はっきり言えるのは、従来の営業起点だけでなく、マーケティング起点から売れるしくみづくりを確立し、実行していける存在になることです。
国内外において、主力事業、新規事業問わず、マーケティングテクノロジーを駆使しながらビジネスを創出し、最適解でプロダクトやサービスを運用できる状態を作り出すこと。それがマーケティングチームの目的でありミッションだと思っています。
マクニカは、ハードウェアやソフトウェアの両方のテクノロジーを駆使し「お客様の課題を解決に導く会社」にとどまらず、使い方がよくわからないけどすごいテクノロジーを見つけてきて「市場そのものを創っていく会社」だと思っています。売上規模や、カバーする業界の広さ、そして提供できる価値を考えると、社会的な影響力は決して小さなものではありません。そうしたマクニカのビジネスをさらに進化させ、より広く展開していくには、従来の営業起点に加え、私たちマーケティング起点によるしくみづくりを行うことが何よりも大切です。
ーーマーケティング起点のビジネス創出が加わることで、マクニカの可能性はより大きく広がっていくと。
堀野 これからは「価値共創マーケティング」というテーマを深化させていきます。「お客様とマクニカでなにか新しい価値を創りましょう」という観点でマーケティングを行い、お客様がパートナーとしてマクニカを選んでくださり、一緒になって生み出した価値が、その先にいるユーザーやエンドユーザーに幸せをもたらすことを目指すのです。
マクニカが触媒となってお客様とお客様をつなぎ、そこから新たな価値を生み出しやすい状況を作り出していく。そんな状況をどうやって実現していくかが、これからのテーマです。それが実現できたとき、はじめてマクニカはサービス・ソリューションカンパニーへと変貌を遂げ、これまでにない価値を提供できる会社になると信じています。