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第4回 私たちは「人」をプランニングする事が出来るのか?【LINEヤフー宮村壮 連載】

2024.9.3
読了まで約 7

デジタルマーケティングの仕事に携わる方必見!LINEヤフーの宮村氏が、ターゲティングからAI活用まで、デジタル広告における「人」の捉え方を徹底解説。顧客行動を最適化する方法がわからない!ヒントがほしい!とお悩みの方は、ぜひご覧ください。マーケティング戦略に新たな視点を与える、示唆に富んだ内容です。

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人×枠の「人」を考える

皆さまこんにちは、宮村です。今回は連載記事の第4回目です。少し遡りますが、冒頭で第1回記事のおさらいを簡単にさせて下さい。第1回記事では私が見てきた約10年間のデジタル広告の変遷を踏まえ、3つの普遍的な考え方を整理しました。

① どれだけテクノロジーが発展してもユーザーファーストが第一
② 人×枠(興味がある人×その瞬間の欲求)が重要
③ その瞬間の欲求=そのプラットフォームを利用した動機

10年前のアドテクノロジー勃興時代における「広告体験=事業者視点中心」から、プライバシー保護の潮流などから「広告体験=ユーザー視点中心」へと確実に時代が変わっています。そんな時代の変化を前提に「人×枠」のテーマについて「人編」と「枠編」に分けて掘り下げを連載の中でさせて頂いています。第2回・第3回は「枠編」でしたので、第4回である今回は「人編」について考えていきたいと思います。

人編のテーマを最初に提示すると「私たちは人をプランニングする事が出来るのか?」です。何やら映画のタイトルみたいですが(笑)、あえて疑問符で投げかけているように正直「人」の領域は枠の領域ほど、私の中で明確な考えが確立していません。「ターゲットを正しく捉え行動して貰う」というテーマはマーケティングの根幹であり答えを出すことは極めて難しく、また消費者の購買心理の変化が激しい昨今においてその難しさはより高まっているからです。

このテーマに対する現段階の私の意見は「人=ターゲットの行動をコントロールする事は難しくなっている」ため「広告・コンテンツに接触するチャンスを広げる事と接触の品質がより重要になってくる」です。この考えに至る背景を説明する上で、デジタルマーケティングが「人」という言葉と向き合ってきた変遷を少し辿る必要があると思っています。

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「人」の捉え方はミクロ→マクロへ

きめ細やかにコントロールしようとした時代

デジタルマーケティングにおいて、アドテクノロジー黎明期であった2010年代前半には「枠から人」という時代を象徴するキーワードが業界の中心でした。少し大雑把ですが、ここで指す「人」とはほぼ「ターゲティング」の文脈を意味していたと思います。各プラットフォーマーが補足できるユーザーの属性データ・行動データが拡充し、デモグラフィックターゲティング・リターゲティングといった旧来の手法だけではなく、画期的で新しいターゲティング手法が凄まじいスピードで日々生まれていた感覚です。

私が仕事をしてきた経験の中でも、様々なターゲティング企画に出会いました。形になっていないものもありますが、例えばテレビを見ていない層へデジタル広告でターゲティングできる手法や、調査会社のパネルを活用したリアル店舗での購買傾向のターゲティング、情報への感度が高いアーリーアダプターターゲティングなどなど…社内・社外問わずキャッチーでユニークなターゲティング手法を多くの人間が考え、企画していました。

また実際の広告運用でも、たとえ1セグメント辺りのボリュームが乏しくても新しいターゲティングを次々トライする事で総リーチを増やし、広告運用もターゲットをどんどん細分化し、それぞれに最適なクリエイティブ・入札を差配する運用の流れが今よりも強かったです。

先ほどこの時代は「事業者視点中心」と述べましたが、各事業者が「人をきめ細やかにコントロールするために尽力していた」時代のように思い返せます。

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抽象的にプランニングしようとする時代

2010年代後半から徐々にこの流れは変わり、「人」の捉え方はより抽象的・マクロ的になっていきました。厳密にはそう捉えざるを得なくなっていった、という言い方が正しいでしょうか。個人的にその理由は3つあると思います。

1. 管理・運用のコスト対効果

これは経験則が非常に強いですが、新しいターゲティングというのはどれだけユニークで画期的でも浸透せず、何度か試されるも気付けば忘れられている事が多いです。その理由は「結局リターゲティング・拡張配信などの手段に成果で勝てない」か「成果が良くてもボリュームが無い」のどちらかに陥り、結果既存の手段に集約されるからです。

こうした経験が続くと、担当者・運用者としては新しいターゲティングを試すモチベーションも低下します。ターゲティングの数が増えればその分、ラーニングコスト・メンテナンスの工数もかかるため、既存の成果の良い手段の延長でテコ入れする方法を考えるほうが効率的と判断されるケースが多いです。

2. ユーザー×メディア接点の変化

2019年前後に「広告が掲載されるメディアに応じた最適なクリエイティブ表現が重要」という考え方がトレンド的に広がり、一気に主流になりました。これは従来のWEBサイト的なサービスに加え、動画メディア・ソーシャルメディアといったコンテンツ的なユーザー行動が加速した影響が強いでしょう。要は同一の「人」でも利用中のサービスによって欲しい情報・振り向いてもらう表現が異なる、という変数が増えたのです。

この辺りから「人さえ捉えれば枠(場所)は関係ない」という発想から、例えば「ソーシャルメディアを使っている最中の人」という、ターゲティングよりもう一段高い階層で「人」を発想する流れが強まりました(無論、ターゲティングの重要性が無くなった訳ではなく、新しいターゲティングが日夜生まれるような温度感が落ちたという意味合いです)。

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3. 新型コロナによる思考の変化

2020年に世界を襲った新型コロナウイルスの影響で、あらゆるマーケターは更にもう一段俯瞰的な階層で「人」の動向を追わざるを得なくなりました。今でも忘れませんが、あの当時は「ユーザーはステイホームの時間をどう過ごし、何を消費しているのか?」「どんな不安を抱え、どんな情報を求めているのか?」といったような消費者全体=最もマクロな視点で「人」の変化とらまえるよう議論が日々の仕事の全てでした。

画像:「人」軸で辿るデジタルマーケティング変遷

 

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フレームワークの民主化

市場全体の動向というのは、知らず知らずの内に過去の歴史を基に最適化されています。こうしたミクロ思考からマクロ思考で人を捉える変遷が市場にもたらしたのは「フレームワーク」のデファクトスタンダード化です。

人を捉えようとするフレームワークの代表例は「カスタマージャーニー」や「パーチェスファネル」でしょう。これらの概念自体は1990年代から存在していましたし、個社・個人単位でみればありふれた概念かもしれませんが、我々のような媒体社や、クリエイティブ制作会社・ベンダー企業といった広告主様のマーケティング活動の一部を担うようなプレイヤーも、違う軸ではマーケターのレイヤー・年次に関係なく誰しもが教科書のように使う状態まで浸透したのは、2010年代の後半にかけてのように感じます。

今や「フルファネル」や「ジャーニー設計」のノウハウ本や実践的な記事などは世の中に溢れかえっているのではないでしょうか。それだけ業界に従事する人間の「人」に対する業務リソースが、ターゲティング開発などのミクロなものからプランニング設計といったマクロなものに変わった事が分かります。

画像:「人」領域の業務リソースの変化

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消費行動の説明が難しい時代に

ここまでデジタルマーケティングにおける「人」の捉え方がどう変化・最適化してきたかを辿りましたが、ここからはこの領域の私見について纏めます。

この「人」領域の変遷とは「規模と効率の両立」というマーケティングの根幹への問いの歴史です。自社商品を効率よく購入してくれる戦略ターゲットは誰で、彼らはどこにたくさんいて、何に困っていてどうすれば動いてくれるのか?を追求し試み続けた歴史です。

こうした試行錯誤そのものは尊いものですが、一方で業界としてこの問いに完璧な回答を出すことは、未だ出来ていないという事実は見逃してはいけないと思います。

プライバシー保護の潮流に伴うリターゲティング配信へ影響によって、非リターゲティング領域・ミドルファネル領域の攻略といった動きも加速していますが、まだ確立された手法・手段が出てきていない事も、その事実を裏付けしていると思います。

フレームワークの限界

ミクロからマクロへ思考が変化した中で、逆に変わらない事実として「リターゲティングより効果のいい手法が登場していない」が挙げられます。連載記事第1回でお話したリスティング広告のように、変化の激しい時代において変わらない事には意味があると思います。少し強い言葉で言うと「我々はまだ顕在ニーズ以外の事を理解できていない」と言えるのではないでしょうか。

これはパーチェスファネル・カスタマージャーニーといったフレームワーク思考の限界とも捉えられると思います。これらフレームワークは思考の整理・関係者の共通認識醸成・社外へのブリーフィング(編集部注:簡単な説明)などに非常に役に立つ側面を持つ一方で、ユーザーの全ての行動を説明できる訳では無いという弱点があります。

比較検討といった工程を飛ばす「衝動買い」やジャーニーを踏まずに行動する「偶発的な認知」など、ユーザーの行動パターンは無数に存在し、デジタルネイティブの割合が加速度的に増える今後はそのパターンはどんどん増殖していくでしょう。

マーケティングプランの設計という業務がある以上、フレームワークの必要性は変わりませんが、それで説明できない領域が増えてくる流れを踏まえると「事業者側の設計」の意味合いは相対的に変わってくる可能性が高いと思います。

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設計ではなくユーザーへ寄り添う

最後に、こうした変化の中で今後重要になると感じる考えを4つ挙げさせて頂きます。いずれもコントロールしようとするのではなく、予測不能なユーザーニーズへ寄り添うスタンスがベースとなっています。

1. AIの力に頼る

無限に枝分かれるユーザーの消費行動を人間が設計するのは不可能なため、広告配信は全てAIに全て任せる発想です。現に自動化を実装するプラットフォーマー視点では、ターゲティングなどユーザー探索の制約に繋がる設定は、学習の妨げになると主張もあります(無論、事業者によって異なります)。

一方でどこまで行っても手触り感というのは大事で、透明性や肌感覚を全て捨ててまで完全自動化を実践する企業が大半と、言える状態では無いのも現実です。

関連リンク:AI広告の発達がWeb広告業界にもたらす効果と影響

2. 「線」<「面」でユーザーを捉える

ファネル・ジャーニーなどの考えは「順番=線」でユーザーを捉える発想ですが、今後は「網を張る=面」で捉える発想も重要になると思います。行動をコントロールしようとするのではなく、ニーズが高まる瞬間と繋がっているような状態を目指すという事です。

単なる広告接触だけの話になると広告投下力勝負になる中で、ソーシャル戦略・戦略PRなどのアーンドの重要性が高まるのは、網の面積を広げる意味合いとも連動しています。

3. 広告体験の品質を上げる

前述の通り「線」での行動設計が難しくなると、連続性ではなく単体接触の威力の重要性が相対的に高まると思います。良質な広告体験・コンテンツ体験は、極論たった一度の接触でも購買行動に一気に結び付くかもしれません。この発想は「枠編」で語ったセンシビリティやスマートフォンデバイスのあるべき枠体験にも繋がる話です。

4. 瞬発力を高める

実行前の設計ではなく、実行中の変化に対応できる環境・体制構築の重要性が増していると思います。そういった文脈でターゲットのモニタリング環境はより重要になってくると思います。事前のターゲット定義は必要ですが、今・どの層に・どれくらい人が居て・どの程度の成果を生んでいるか・をリアルタイムに把握し、課題やチャンスがある層に瞬発力高く施策を打ち込めることが、変化へ対応できるアクションと言えると思います。

新しい仕組みの模索

最後に、私が挙げた2、3の考えは矛盾性もはらんでいます。良質な広告体験であるほどCPM(編集部注:Cost per Milleの略。Web広告を1,000回表示させる際にかかる費用)は高い傾向にあり、CPMが高いと限られたコストの中で出稿量は減ってしまい、面でユーザーを捉えるのは難しいでしょう(逆に出稿量だけ増やそうとすると低質なインプレッションが増える可能性も高い)。

この矛盾の解決は、広告主様側の工夫ではなく既存の広告体系を変える必要があり、ハードを作る側の人間が模索をしていく必要のある領域と考えています。「人」領域のユーザーファーストとは「求めている人に求めているものが届く」「それによりユーザーも広告主も幸せである」というマーケティングの本懐だとも思うので、こうした形を実現できることを信じて私も引き続き試行錯誤していきたいと思います。

今回の内容は以上になります。最後までご高覧下さり、誠にありがとうございました!
是非、次回も読んで頂ければ幸いでございます。

執筆者

宮村 壮

宮村 壮(みやむら そう)

LINEヤフー株式会社
マーケティングソリューションズカンパニープロダクトマーケティング本部プロダクトマーケティング1部 及び ストラテジック・プランニング部 部門長

2015年にヤフー株式会社(当時)入社。広告営業から営業企画へと対応領域を拡大し、販売促進部の部長職など経て現職に。開発責任を担うプロダクト部門と販売責任を担うセールス部門の架け橋となる営業企画組織で部門長を務めている。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

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