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第3回 広告体験の理想は既存の延長だけには無い【LINEヤフー宮村壮 連載】

2024.7.29
読了まで約 6

LINEヤフーの営業企画組織で部門長を務める宮村壮氏が登場し、広告業界のトレンドや、今後の業界動向などについて語ってもらう本連載。第3回は「スマートフォン広告のあり方」について解説します。宮村氏が理想として掲げる「ナビゲーターのような広告体験」とは一体どのような広告を指すのでしょうか?広告に携わるマーケティングやクリエイティブ担当の方は、ぜひクリエイティブ戦略の参考にしてください!

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完璧な広告なんてない

広告で泣いた事があるか?

皆さまこんにちは、宮村です。今回は連載記事の第3回目です。今回も冒頭で前回のおさらいをさせて下さい。ユーザーファーストが重要な時代の中、枠×人の考え方について深掘っていくという事で、前回は「枠編」の前半の位置づけでした。その中でお伝えさせて頂いたことは、

● 枠と言う言葉は4階層に分解できる
 ▶ 第1階層:デバイス(どの装置で)
 ▶ 第2階層:サービス(装置上の何のコンテンツ上で)
 ▶ 第3階層:プレイス(コンテンツ上のどの場所で)
 ▶ 第4階層:フォーマット(どんな広告形態で)
● 第1階層:デバイスとはキャンパスであり広告表現できるサイズの限界である
● キャンパスが物理的に大きいほど広告体験は感受性を刺激できる
● ポータビリティ(携帯性)とセンシビリティ(感受性)はトレードオフ関係
 ▶ 携帯性が高いデバイスは利用者が多い一方、キャンパスが小さい
● 利用者数トレンドはマーケター目線で重要だが、利用ユーザー目線では無関係

画像:センシビリティ、ポータビリティのトレードオフ

前回はテレビやPCの「ポータビリティが低く利用者は減っているが、キャンパスが大きいためセンシビリティを刺激し易い」強みに触れました。逆に「ポータビリティが高く利用者は多いが、キャンパスが小さいためセンシビリティへの刺激は枠として限界がある」点がスマートフォンの弱みです。

少し話を脱線させますが、私がこの業界に身を置いて約5年目の頃、当時の同僚に「スマートフォンの広告を見て泣いた事があるか」と質問され、ハッとしたことを覚えています。考えるとテレビCMに心打たれた経験はあってもスマートフォン上の広告でそんな刺激は無かった。今思うとこの問いとこの構造が、意味する事は同じだと思います。

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スポーツにポジションが存在する理由

この流れですと、デジタル広告の主戦場であるスマートフォンは「枠として価値が低い」と主張しているようですが、そうではありません。私の主張は「広告枠によって期待役割が違う」です。

私がプラットフォーム事業に携わった約10年間で、あらゆるデバイス・サービス・フォーマットに触れましたが万能な広告枠に出会った事は一度もありません。何かに秀でても必ず何か苦手な領域がある。絶対的な優劣ではなくレーダーチャートのように得意不得意があるので、目的に合わせて使い分け弱みを補う役割分担を差配するのがプランニングと言えるのでしょう。

さながら、スポーツのポジション(と監督)のような考え方です。オフェンスが得意だからフォワードに、ディフェンスが得意だからディフェンダーに。万能な選手がいないから役割分担をして、試合を組み立てるのと同じでしょう。

逆に、あたかも万能のように強みだけを強調して説明される広告枠に出会った場合は、必ず疑うべきとも思います。例えばテレビCMとスマートフォン上の広告の認知率を正面から戦わせ、片方の優位性を強調する調査結果は「フォワードとディフェンダーの得点率」を比較しているようなものです。

その前提を踏まえ、ここからは「スマートフォン上の広告枠の役割」について私の考えをお話させて下さい。また改めてですが、本記事の内容は個人の考えであり、所属会社の見解と一切関係ありませんので事前にご承知おき下さい。

スマートフォンは「異質」な存在

今の延長線上に理想の体験は無い

あくまで私見であることを強調しますが、現状のスマートフォンデバイス上での広告体験の大半は、ユーザー視点で本来あるべき姿とまだギャップがあると思っています。その要因として、広告マーケティングの「王道」的な出稿先となっているスマートフォンがむしろ他のデバイスと比較して「異質」な存在であるからです。

何を言ってるんだ?と思われそうですが、当たり前になりすぎて今更疑問にも思わないだけで、広告が表示されるあらゆるデバイスで、ここまで画面が小さいデバイスは他に無いのです。その特性だけで異質と言えると思います。

故に、他デバイスでの広告出稿=既存の延長線上の考えをトレースするだけだと、どうしてもユーザー視点で歪な体験になってしまうのだと思います。スマートフォンにはスマートフォンの役割に合った、従来と異なる広告体験が必要だと感じます。

画像:スマートフォン上の広告枠のあるべき姿

スマートフォンは「ナビゲーター」

ではその「従来と異なる広告体験」とは何か?を考えます。

また少し話を脱線させて下さい。私は大のゲーム・映画好きなのですが、アドベンチャー等の冒険ジャンル作品では、主人公の相棒ポジション=「ナビゲーター」の存在が欠かせません。『ピノキオ』に登場する『ジミニ―・クリケット』のような存在と言えば分り易いでしょうか(?)。主人公と常に共に行動し、調べ物をして、やるべき事を提示してくれる役立つパートナーです。

スマートフォン、厳密にはスマートデバイス全般はこの「ナビゲーター」があるべき姿だと思っています(ジミニー・クリケットもスマートフォンも小さくて、常に一緒にいて、色々教えてくれますよね)。

さて、ナビゲーターの異質な点として彼らが「主人公の内なる存在」である事です。例えば冒険の先々で見かける看板が「外部からの情報」だとしたら、それを受けどうすべきかをナビゲーターは主人公側の立場で話しかけてくれるのです。スマートフォンはよくパーソナルなデバイスと言われますが「パーソナル」という言葉は非常に近い意味を持っているかもしれません。

画像:ナビゲーターの存在、スマートフォンの存在

全く同じ広告・クリエイティブでもスマートフォン上で接触すると途端にスルーされてしまい、果ては煩わしいとさえ感じられてしまうのは、ユーザーにとっての内なるパーソナルな存在であるというコンテキストがあるからだと思います。これが他デバイスと異なる異質さの一端です。

サービスに話しかけられる広告体験

この異質なポジションに対してどう向き合うべきかを、ここでも主人公とナビゲーターの関係整理から模倣しつつ、私の業務経験や検証結果を交えて考察してみます。

画像:「ナビゲーターとの関係性」から読み解く「あるべき姿」

ナビゲーター側の整理は完全に私のイメージですが、主人公に強制してきて、ひたすら独演会をし、嫌われている相棒なんていないでしょうから、違和感は無しとさせて下さい笑。

ここで強調したいのは「伝え方」と「伝える情報」です。

第1回記事でも少し触れましたが、2020年代にデジタル広告は媒体や広告フォーマットに応じた最適クリエイティブ表現のハックが一気にトレンドになりました。例えば、ソーシャル媒体では拡散・エンゲージを意識した表現、アウトストリーム動画フォーマットはデフォルト音声オフなので字幕を入れる、というようにユーザーがデジタル広告に触れるコンテキスト(モチベーション・環境)を意識した潮流です。

これらは広告枠の階層定義でいう「第2階層:サービス」「第4階層:フォーマット」の研究です。ユーザーの利用サービスと情報粒度を揃えるこれらの考え方は「利用中のサービスに話しかけられるような体験」と言い換えられると私は考えます。利用サービス内の広告の異物感を取り除く、スマートフォンがユーザーにとって内なる存在だからこそ生まれたトレンドでしょう。

私自身クリエイティブ部隊を抱え、ヤフー上の最適クリエイティブ表現について2年以上向き合った経験がありますが、数万を超える入稿された広告実績を解析した結果、最適化されたクリエイティブ表現の方がCPA観点で高い勝率である事を確認しています。商材・目的にもよりますが、「冗長で情報量の多い表現」よりも「端的で結論から述べる表現」の方がクリック率や検索リフト率が高い傾向が見えた事も興味深かったです。広告枠に最適なクリエイティブ表現の科学は、ユーザーファーストの実践と言えると感じています。

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枠の工夫で広告の可能性は広がる

第2階層:サービス、第4階層:フォーマットに最適化したクリエイティブ制作は、携わる広告主様・広告会社様・制作会社様が工夫の結晶です。我々プラットフォーマー側が生み出す工夫の真価は「第3階層:プレイス」にあると考えます。この根拠を語る上で、私の成功体験を一つお話させて下さい(弊社の商品の話をしますが断じて宣伝ではありません。ご容赦下さい)。

私が昨年手掛けリリースした「Yahoo! JAPAN トップページ トピックスPR SP」という商品があります。ご覧の通り、通常広告と異なり「プレイス」に溶け込んだネイティブ性の高さが特徴です。

画像:Yahoo!JAPANトップページ トピックスPR SP

有難い事にご出稿実績が溜まってきており、広告枠自体の傾向を分析すると

・クリックユーザーの約30%前後が普段全く広告クリックをしない層
・検証した全案件で指名検索リフトが発生(20/20件)

といった通常あまり見る事のない傾向を検知できたのです。個人的にこの結果は、異質な存在であるスマートフォンにおけるユーザーファーストな広告体験の大きなヒントだと感じています(特に前者)。従来の広告体験を大事にしつつも、こうした自然にサービスから新しい情報を提供されているようなユーザー体験の創出が、ユーザーファーストと広告効果の両立に繋がっていくのではないかと今は強く感じています。

ただここで気を付けるべきは、オーガニックと広告の境界線が無いようなステルス性の高い広告枠は絶対に作ってはいけない事(上記ではオーガニックとの意図的な表示サイズの差異・PR表記の明記などで対策しています)、ユーザーが広告であると認識した上で有益な情報であると感じて貰えるプレイスの提供が重要であると考えます。

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「既存の枠」に捉われない発想

主人公⇔ナビゲーターの信頼関係

少々長くなったので、本記事のおさらいをさせて下さい。

● 広告出稿先の王道であるスマートフォンは「異質な存在」
 ▶ 他デバイスと異なりユーザーにとって「内なる存在」
 ▶ 従来と異なる広告枠体験も必要
● スマートフォンのあるべき姿は「ナビゲーター」
 ▶ サービス側から「端的に話しかけられる」体験設計が重要
  ◇ 第2階層:サービス  =最適なクリエイティブ
  ◇ 第3階層:プレイス  =自然な情報提供
  ◇ 第4階層:フォーマット=最適なクリエイティブ

ここまでナビゲーターを例にとって整理をしましたが、前述の表内で触れられていないのが「信頼関係」です。かつ、現状で最も差のある項目ではないでしょうか。主人公がナビゲーターの情報に聞く耳をもつのは、自分を騙すような事はしないという信頼関係がそこにあるからです。

直近のデジタルマーケティング業界では、詐欺広告なども問題になっています。どれだけその枠にある情報がユーザーにとって有益でも、見る間でも無くシャットアウトされてしまえば存在しないのと同義です。ユーザーが広告を「有益な情報元である」と感じるような状態を全体で目指していく必要があります。

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数年後の広告枠は全く違う形に

最後に。今回私が「ナビゲーター」という象徴を使ったのは、整理として分り易いからではありません。こうした具体的なあるべき像は、現状とのギャップを埋めてくれる思考のベクトルになってくれると思うからです。既存の発想に捉われず「ナビゲーターのような広告体験」を発想してみれば、日頃向き合っている動画広告・バナー広告というフォーマットではなく、音声やプッシュ通知のようなフォーマットかもしれない。広告配信のタイミングも、サービス利用中ではなくリアルの場で起きたイベントがトリガーになるかもしれない。

枠だけに、こうした既存の枠に捉われない発想が、あるべき広告体験に繋がっていくと思っています。私自身、引き続きユーザーファーストの視点で考え抜いていきたいと思います。

おあとがよろしいようで、今回の内容は以上になります。次回は「枠×人」の「人編」について言及していきます。是非、次回も読んで頂ければ幸いでございます。

最後までご高覧下さり、誠にありがとうございました!

執筆者

宮村 壮

宮村 壮(みやむら そう)

LINEヤフー株式会社
マーケティングソリューションズカンパニープロダクトマーケティング本部プロダクトマーケティング1部 及び ストラテジック・プランニング部 部門長

2015年にヤフー株式会社(当時)入社。広告営業から営業企画へと対応領域を拡大し、販売促進部の部長職など経て現職に。開発責任を担うプロダクト部門と販売責任を担うセールス部門の架け橋となる営業企画組織で部門長を務めている。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

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