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第2回 ポータビリティとセンシビリティのトレードオフ関係【LINEヤフー宮村壮 連載】

2024.7.2
読了まで約 6

年齢や入社年次にとらわれず若手リーダーを積極登用するなど、若い世代の挑戦を推進する企業文化で知られているLINEヤフー。そんな中でもとくに注目されているのが、20代にしてヤフー(当時)の販売促進部 部長に就任し、現在ではさらに多くの部門を率いている宮村 壮(みやむら そう)氏の存在です。

この連載ではそんな宮村氏に、プラットフォーマー企業から見た広告業界のトレンドや、今後の業界動向などについて語ってもらいます。第2回では、ユーザーファーストの考え方の中でデジタルマーケティングにおける「枠」の考え方について更に深ぼっていきたいと思います。

マーケティングに関わるすべてのビジネスパーソンに役立つエッセンスがたくさん詰まった本コラムは必見です!

34年振りに刷新されたマーケティング定義

皆さまこんにちは、宮村です。今回は連載記事の第2回目ですが、冒頭で前回のおさらいを簡単にさせて下さい。前回の記事では私の経験の中で見てきたデジタル業界での変遷を踏まえ、

① どれだけテクノロジーが発展してもユーザーファーストが第一
② 人×枠(興味がある人×その瞬間の欲求)が重要
③ その瞬間の欲求=そのプラットフォームを利用した動機

という3つの不変的な考え、そしてプライバシー保護などの潮流から今こそがデジタル広告の価値の分岐点であり、正しい方向に進むためには「ユーザーファーストの考え」が重要になってきている時代だと述べさせて頂きました。
前回の記事では言及しませんでしたが、この考えは本年1月に公益社団法人日本マーケティング協会によって新しく刷新された日本のマーケティング定義にも通じる部分と感じています。

画像:マーケティングの定義(2024年制定)

出典:公益社団法人日本マーケティング協会
https://www.jma2-jp.org/home/news/916-marketing

ここで述べられている「顧客や社会と共に価値を創造し」に部分ついて、出典元では「膨大な顧客データの分析技術」や「シェアリング・クラウドファンディングのような仕組み」が例として挙げられていましたが、私は「ユーザーのリアルな声に更に耳を傾け、事業側がそれを反映させていくことで顧客と共に価値を創造する」という意味も込められていると解釈しています。まさに、前述したユーザーファーストの考え方そのものだと思います。

ユーザーファーストの深堀り「枠編」

さて冒頭で振り返った通り、デジタルマーケティングの不変的な要素の一つに「人×枠が重要」であるとお伝えしました。〈興味を持っている人〉であればいかなる時でも反応する訳でも、〈効果の高い枠〉であれば誰でも反応する訳でも無く、〈興味を持っている人〉に〈興味を持って訪れた枠(場所)〉でアプローチ出来ることが最適であろうという考えです。例えば、ガジェット好きな人が、ガジェット系コンテンツを閲覧している、まさにその瞬間に高規格なガジェット商品を訴求されたら、きっと思わず反応してしまうでしょう。

本連載ではこの「人×枠」のテーマについて、「人編」と「枠編」に分けて全3回で掘り下げていこうと思っています。僭越ながら、私のこれまで経験した仕事、デジタル業界における特性・潮流などを踏まえて、私見を交えながらお伝えが出来ればと思います。

前編はまず「枠編」から。早速、枠編のテーマ性からお伝えしますと「デジタル広告における枠の限界と役割」です。プラットフォーム事業に身を置く人間が設定するとは思えない、物騒なテーマになっておりますが笑、是非最後までお付き合いを頂ければ幸いです。

また改めてですが本記事の内容は個人の考えであり、所属会社の見解と一切関係ありませんので、事前にご承知おきを下さい。

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普及し易いほど表現がし辛くなるジレンマ

話を深掘っていく前に、大大大前提としてこの「枠」という言葉の定義を、私と読み手の皆様との間で合わさせて下さい。これがまた解釈がブレ易いワードかと思っています。広告枠の要素を構造的に分解していくと、以下の4階層になると思います。

・第1階層:デバイス(どの装置で)
・第2階層:サービス(装置上の何のコンテンツ上で)
・第3階層:プレイス(コンテンツ上のどの場所で)
・第4階層:フォーマット(どんな広告形態で)

より具体的にイメージを合わせるために、4階層にいくつかの例を当てはめてみます。

画像:"広告枠"要素の構造的分解

基本的にどんな枠もこの4階層に当てはめ整理が出来ると思います(ちなみに第5階層はクリエイティブになるでしょう)。

ひとえに枠の話をすると言っても、それが掲載される「サービス」レベルの話をしていることもあれば、インストリーム動画枠という大きい括りで「フィーマットレベル」で語られることもあるため、粒度と言語を統一させることがまず重要です。

前提整理をさせて頂いた所で本論に入っていきます。

第1回でお話した通り2015年から数年間は「枠から人」最盛時代であり、言い方を変えると枠の議論が失われた時代でもあると言えます。「アドテクノロジーファーストとなり、広告に接触する瞬間のユーザーファーストが置いてきぼりになった」とも表現しましたが、最適な広告枠を考えることとはすなわち、ユーザーが広告に触れる1インプレッションの体験を考えるということと言えます。我々事業者が日々向き合うのは非常に大規模なインプレッションの大海原ですが、ユーザーにとってはその1インプレッションが広告体験のほぼ全てです。

第1階層「デバイス」とは「キャンバス」である

少し話が逸れますが、私が今の会社における約10年弱の経験の中で忘れられないエピソードが一つあります。それは自動車業種を担当するセールス部門から「ある広告主様の中でPC版Yahoo! JAPANのトップインパクト(以下モック)を見てディーラーに来店したお客様がいると話題になっている」という話を聞いたことです。

画像:Yahooのトップページ

※上記は実際のクリエイティブではなくイメージです

この話を聞いた時に、広告の力は勿論のこと、この枠の持つパワーに震えたことを覚えています。多少バイアスはかかっているかもしれませんが、PCという比較的大きいデバイス上の多くを占有するこの枠は、通常のバナーのような「広告接触」よりも「広告体験」といった言葉に近いのではないでしょうか?世界観を表現し易く、五感に働きかけ好意的な行動に繋がり易いと思います。

この話を通じて私が感じていることは2つです。
① デバイスとはキャンバスであり、キャンバスを超えた表現は出来ない
② デバイスが物理的に大きいほど、体験的な広告を表現しやすい

私の業務領域の中で無視できない存在の一つがテレビCMです。デジタル広告にとってテレビCMは戦うべき競合…ではありますが、テレビデバイスが持つ体験的な広告価値の凄まじさは日々痛感するばかりです。私が過去行ったユーザー調査では、テレビCMへの興味関心度・好意度ともにデジタル広告の2倍以上のスコアでした。近年、そのアプリインストール単価の安さからテレビCMに出稿するゲーム系企業・スタートアップ系企業も増えています。リーチできる層が変わってもテレビデバイスの大きさ・テレビCMの画面占有度は、1インプレッションの体験としては依然強いパワーを持っていると思います。

他にも例えば、都内に見られる巨大な屋外ビジョン広告も非常に「大きなデバイス」と言えるでしょう。近年ではまるで飛び出しているかのような迫力のある表現ができるビジョンも生まれ、まるで映像作品のような「広告体験」を得ること出来ます。

どこまで行っても1インプレッションを受け取る我々は人間ですから、広告によって受ける感受性に、物理的な大きさによるインパクトが影響しない訳がありません。

テレビデバイスを持ち歩く人なんていない

このように考えると、今や広告において支配的な立場を占めている「スマートフォンデバイス」というのは、非常に小さく表現が制限されたデバイスです。プラットフォーム事業に携わる私自身も業務において「スマートフォン上でどうやって体験的な広告枠を作るか?」を、いつも考えていますが、PCデバイスと比較しても非常に難易度が高いです。

そもそもスマートフォンデバイスが広告において主流である理由は、マーケティング原理の一つである「規模」、即ちユーザーの利用率・普及率です。では何故スマートフォンはここまで普及したのか?それは言うまでもなくその【ポータビリティ(携帯性)】でしょう。
これが枠(デバイス)における面白くも難しい部分ですが、ポータビリティとデバイスの大きさはトレードオフの関係になっています。PCを持ち運べても、さすがにテレビデバイスを持ち歩いている人はいないでしょう。笑

画像:センシビリティ、ポータビリティのトレードオフ

ここでは体験的な広告価値を【センシビリティ(感受性)】と表現させて頂きました。マーケティングにとって「規模」は一つの正義ですので、スマートフォンデバイス中心に出稿を行うことはロジカルな正攻法ですが、「枠」の視点に立つと制約が強く、感受性を刺激し辛い点には改めて注目すべきではないかと思います。

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デジタル広告における枠の限界と役割

変化が激しいが故にダウントレンドに厳しすぎる

私が今回改めてデバイスレベルから深掘りを行った背景として、テレビデバイスやPCデバイスが必要以上にネガティブキャンペーンされ、強みが埋もれがちな風潮を感じるからです。

デジタル業界の大きな特徴の一つにトレンドに非常に敏感であるという点があります。これ自体は大変素晴らしいく、業界を成長させた理由であり、今もなおAIやプライバシーテックなどが物凄いスピードであらゆる事業に反映・導入され進化しています。誇張抜きで、たった1年でトレンドが毎年大きく変わっていると実感します。

一方で「新しいもの」が生まれた数だけ「古いもの」も生まれるのです。新しいものをより際立たせるために、その古いものに対し過度にオワコンの様な表現がされるケースは正直多いのではないでしょうか。その被害者がテレビデバイスとPCデバイスだと思います。

事実としてテレビ視聴率・PC利用率は年々低下していますが、それでも数千万人という規模のユーザーがまだそこにいます。私もこの記事をPCで書いていますし、この記事を読まれている皆さまの多くは日常的にPCを疲れているのではないでしょうか。そして利用しているユーザーにとっては、テレビデバイスやPCデバイスの1インプレッション体験の方が、価値がある場合だってあります。

トレンドを武器に「オールドメディアの終焉」のような過剰な表現が蔓延ってしまえば、ユーザーを置いてきぼりにしたデジタル勃興期の繰り返しに繋がってしまうと感じます。

重要なのは強みと弱みを理解し補い合うこと

枠の構成要素において分母と言ってもいいデバイスには【ポータビリティ】と【センシビリティ】のトレードオフあるとお伝えしました。これはデジタルマーケティングおいてはリーチ規模とインパクトのトレードオフであると言えます。そのため大事なのは、どちらが良い悪いではなく各デバイスの強み・弱みを理解しつつ使い分けや補完をし合うことでしょう。

デジタルデバイス(スマートフォン・PCなど)はテレビデバイスや屋外広告と比べてデバイスサイズが小さいので、それ以上の表現ができないという枠としての限界があります。では、強みであるボリュームを活かして、単なるリーチ・フリークエンシーの補完しか役割が無いのか?というとそうではないと思います。

デジタルデバイスは巨大なデバイスと比較すると、体験的な広告価値の提供は相対的に苦手ですが、それとは別の役割を担わせることで枠としての価値をより発揮できると個人的には考えています。
次回の記事では枠編の後半として、その役割について触れていければと考えています。是非、次回も読んで頂ければ幸いでございます。

最後までご高覧下さり、誠にありがとうございました。

関連記事:新聞広告は効果があるのか?メリットと活用のポイントについて解説

執筆者

宮村 壮

宮村 壮(みやむら そう)

LINEヤフー株式会社
マーケティングソリューションズカンパニープロダクトマーケティング本部プロダクトマーケティング1部 及び ストラテジック・プランニング部 部門長

2015年にヤフー株式会社(当時)入社。広告営業から営業企画へと対応領域を拡大し、販売促進部の部長職など経て現職に。開発責任を担うプロダクト部門と販売責任を担うセールス部門の架け橋となる営業企画組織で部門長を務めている。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

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