近年、YouTubeショートやTikTokなどの普及により、ショート動画を視聴する機会が増えました。このショート動画をビジネスにも活用する企業が急増しています。商品をただ宣伝するだけでなく、著名人とのタイアップやドラマ仕立てのショート動画でプロモーションを行うなど、趣向を凝らした動画が投稿される傾向です。
本記事では、ショート動画とは何か、動画の作成方法やポイント、活用時の注意点などを解説します。
目次
ショート動画とは
ショート動画とは、短い時間で視聴可能な縦型の動画です。ここでは、ショート動画の特徴を紹介します。
15~60秒までの短い動画
ショート動画は、動画共有サイトやSNSで投稿・視聴可能な、15〜60秒の短い動画を指します。動画視聴の拘束時間が少なく、視聴のハードルが下がるため、通常の長尺動画より気軽に視聴されやすいことが特徴です。
なお、YouTubeが提供するショート動画サービスの名称は「YouTubeショート」であり、YouTubeショートのことを「ショート動画」と呼ぶこともあります。
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縦型でスマートフォンとの親和性が高い
ショート動画は、縦型の動画であることが一般的です。縦型動画とは、アスペクト比(縦横比)が9:16の比率で作成された動画であり、スマートフォンを縦向きに持った際にフルスクリーンで表示されます。そのため、片手で操作するスマートフォンとの親和性が高いとされています。
参考リンク:動画の解像度とアスペクト比 – パソコン – YouTube ヘルプ
ショート動画が流行る理由
続いて、ショート動画が流行る理由を見ていきましょう。短時間で多くの情報を得られ、最新のトレンドをすぐに知れることがメリットとして考えられています。
人気プラットフォームの発展
動画プラットフォームは、スマートフォンやタブレットの普及により利用者が年々増加しており、かつ著しく技術が進化していることから、さらなる発展が期待されています。
特に、AIレコメンド機能(おすすめ機能)が進化し、YouTubeショートやTikTokでは、ユーザーの好みに合う動画が再生されやすくなっています。これは、ユーザーの視聴履歴や検索履歴、エンゲージメント(いいね・コメント・シェア)などからおすすめの動画を表示させる仕組み(アルゴリズム)が働いているためです。興味のある動画が次々と視聴できる仕組みが、ショート動画が流行る理由の一つといえるでしょう。
短時間で多くの情報を得られる
ショート動画が人気の理由には、短時間で多くの情報を得られるタイパの良さも挙げられます。タイパとは、日本語で「時間対効果」と言われ、費やした時間に対して得られる満足度の度合いを表す言葉です。
昨今、特に若い世代の間では、何事にもタイパの高さが重要視されています。それは、ショート動画も同様です。休憩時間や通勤時間などの「スキマ時間」で視聴可能なため、タイパを意識する若い世代を中心に人気のコンテンツとなっています。
関連記事:タイパ重視の現代社会、あえて「自分の好きと向き合う時間」を調査 手間をかけて楽しむ時間はオトナの愉楽(株式会社トゥルースピリットタバコカンパニー)
最新のトレンドを知る手段となっている
ショート動画は、最新のトレンドを知る手段の一つでもあります。なぜなら、ショート動画にトレンドを取り入れて作成する投稿者が多いためです。トレンドに関連するキーワードは、YouTubeやTikTokなどで検索されやすく、検索からの視聴数アップにつながります。視聴ユーザーも最新のトレンドを知れる機会となっているのです。
近年、縦型ショートドラマというジャンルが登場し、縦型ショートドラマ専用の配信アプリがリリースされるほど、ショートドラマの需要は高まっています。
参考リンク:縦型ショートドラマアプリ「タテドラ」本日より正式リリース!(PRTIMES)
ショート動画が利用されるプラットフォーム
ショート動画が利用される主なプラットフォームには、YouTubeやInstagram、TikTokなどが挙げられます。ここでは、各プラットフォームの特徴を見てみましょう。
YouTube(YouTube ショート)
YouTubeショートは、YouTubeで視聴できる短い動画を指します。基本的な解像度は1080×1920ピクセルのフルHDですが、1080×1080ピクセルの正方形の動画も投稿可能です。
YouTubeショートの最大尺は当初60秒以内でしたが、2024年10月15日以降から180秒に変更されました。スマートフォンやタブレットのYouTubeアプリをはじめ、パソコンのWebブラウザやテレビ、ゲーム機などで視聴可能です。
なお、YouTubeは、InstagramやTikTokと比較して、ユーザー層が10〜60代と幅広いことが特徴です。ほかのプラットフォームと比べるとビジネスユーザーが多いため、BtoBマーケティングにもっとも向いていると言えるでしょう。
Instagram(リール)
Instagramのリール(Reels)とは、Instagramで最大90秒の縦型動画を投稿・視聴できる機能です。2020年8月に追加された機能ですが、近年のショート動画ニーズの高まりから、現在も積極的にアップデートされています。
Instagramのリールは20代を中心に利用されていることから、ファッションやライフスタイル、商品紹介などのビジュアルを重要視した動画が人気です。
リール動画にはエフェクトや音源・お題・倍速などの細かな編集機能が備わっており、動画内容に適したオリジナルの動画を作成できます。Instagram公式によるテンプレート機能を活用すると、リールに慣れていない人でも編集をスムーズに行えるでしょう。
TikTok
TikTokとは、ショート動画プラットフォームの主流となっている中国発のSNSアプリです。主にZ世代を中心に利用されており、月間アクティブユーザー数は世界で約11億人いることから、現在急成長している動画アプリの一つといえるでしょう。
TikTokは、高い情報拡散力が特徴です。TikTokには「おすすめフィード」という機能が搭載されており、投稿者をフォローしていない場合でもユーザーの興味に適した動画が優先的に表示されます。
また、アルゴリズムの特性により、良質な動画を投稿するとフォロワーが少なくても再生されやすい特徴があります。そのため、運用の工夫次第で効果的なマーケティング活動が行えます。
関連記事:TikTokのマーケティングとしての使い方を徹底解説。ビジネスアカウントや広告の特徴・戦略
ショート動画の作り方・手順とポイント
ショート動画を作成するには、企画や編集などのさまざまな過程があります。ここでは、ショート動画の作り方とポイントを紹介します。なお、制作会社への依頼を考えている方は下記サービスの利用をご検討ください。
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目的・目標を考える
ショート動画を作成する最初のステップは、制作の目的を明確にし、目標を設定することです。一体誰に届けたいのか、見てもらった人にどう思われたいのか、どういう行動を起こしてほしいのか、などを決定し、それぞれの目標数値などを定めます。
目的や目標設定に際しては、カスタマージャーニーマップや、ペルソナ設定などのフレームワークが役に立ちますので、参考にしてみてください。
関連資料
・【テンプレート無料配布】カスタマージャーニーマップをパワーポイント(PPTX)で作ろう
・【テンプレート無料配布】BtoBマーケティングのペルソナ設定・作成ができるパワポ資料
企画・テーマを考える
続いて、ショート動画の大まかなテーマや内容を決めます。
ゼロイチで良い案が思いつかない場合は、競合他社のSNSや動画のトレンドを調査してヒントをつかみましょう。自社のショート動画に取り入れられそうな部分がないか、さまざまな視点で探します。
動画の構成を考える・アサインを進行する
脚本や絵コンテなどを制作し、ナレーションや出演者が必要な場合は、アポイントを取ります。
ショート動画は「興味がない」と感じたらすぐにスワイプできてしまうため、冒頭の数秒で視聴者を引きつけることが大切です。よって、ショート動画を多くの人に見てもらうため、念入りな構成を考えることが重要です。
撮影準備:撮影場所・機材の確保
自社の会議室やスタジオなどの撮影場所を確保し、撮影機材の手配を進めます。スマホは自前でも場合によって音声やライティング機材などが必要になるかもしれません。
撮りたい動画の内容から必要な機材を見極め、準備を進めていきましょう。
撮影準備:発注先の決定
出演者、ナレーション、撮影者、スタジオなどの外注先が決まったら、スケジュールの確定や発注手続きなどを進めます。すべて自前で用意する場合、このステップは不要です。
撮影準備:アプリ決定
撮影準備の一環として、編集に使用するアプリを決めます。ショート動画の作成に活用できるアプリはたくさんあるため、以下の基準から比較すると良いでしょう。
・価格
・操作のしやすさ
・機能
・ショート動画の投稿先
ちなみに、スマートフォンでショート動画を編集する際に、「CapCut」「Filmora」「PowerDirector」などのアプリがよく使用されています。
各アプリには、無料版・有料版があります。無料版のアプリは、ロゴの透かしが入ったり一部の機能が制限されていたりしますが、一度試して使いやすいアプリを探すことがおすすめです。
なお、編集に時間をかけたくない時や編集技術に自信がない場合は、制作会社へ依頼する方法もあります。
動画撮影
いよいよ動画撮影です。三脚や外部マイクなどのツールを活用したり、速度調節やタイマーなどの機能を使ったりすると、動画のクオリティアップが期待できます。万が一、撮影できていなかった時のために、複数回撮影すると良いでしょう。
動画撮影を外注する場合は、このステップは不要です。
編集
動画撮影が完了したら、編集を開始します。手ブレや音声の不具合などを確認し、動画素材の選定が完了したら編集アプリに動画を読み込ませます。
ショート動画の編集には、「効果音・BGMの設定」「テキストの挿入」を行うことがおすすめです。ショート動画には、トレンドの楽曲や動画に適した音楽など、さまざまなBGMが使われています。加えて、シーンに応じた効果音をプラスすることで、クオリティの高い動画に仕上がるでしょう。
また、テキストのフォントや色・位置なども、インパクトのある動画を作成するためには工夫が必要です。各プラットフォームの編集機能や、編集アプリに搭載している機能を使いこなすと、より高品質な動画が作成できます。
動画編集を外注する場合、このステップは不要になりますが、代わりに納品データのチェック作業などのステップが加わります。
関連記事:動画編集は初心者でもできる!便利な編集ソフト含め簡単な方法を解説
投稿
ショート動画が完成したら、動画サイトに投稿します。投稿する際は、動画のタイトルやキャプション(説明文)、タグなどを設定しましょう。
多くの人に視聴してもらうために、動画を見たくなるタイトルやタグを適切に設定することが大切です。また、サムネイルの設定も行います。
ショート動画活用のメリット
ショート動画を活用するメリットには、拡散性が期待できたり、コスト効率が良かったりする点が挙げられます。ここでは、ショート動画活用の各メリットを見てみましょう。
情報を集約して伝達できる
ショート動画は、画像や文字と比較して、短時間で情報を伝達できます。15〜60秒の短い時間に情報を集約でき、かつユーザーも簡単に情報を収集しやすいため、画期的なコンテンツといえるでしょう。
また、動画の作成やアップロードが手軽にでき、短時間でユーザーにインパクトを与えられるため、投稿者側にも大きなメリットがあります。
注目されれば拡散性が期待できる
短い時間で視聴できるコンテンツであるため、スキマ時間を利用するユーザーが多い傾向です。例えば、休憩時間や通勤時間、寝る前の時間など少しの時間で視聴できるため、平日・休日問わず学生から社会人の視聴者が常にいるでしょう。そのため、注目された時の拡散力が高く、拡散されるスピードもとても早いという特徴があります。
潜在層にもリーチができる
ショート動画では、自社のサービスや商品に興味があるユーザーだけでなく、興味がない・存在を知らないユーザー(潜在層)にもリーチできます。今までアプローチできなかった層に動画が届けば、新規顧客の獲得やブランド力の向上などにつながる可能性があるでしょう。
コスト効率が良い
ショート動画を自前で作成する場合、利用料金はかかりません。スマートフォンのカメラの技術が進歩しているため、立派な機材を用意できなくても、ある程度品質の高い動画を気軽に撮影できます。スマートフォンさえあれば低コストで質の高い動画が撮影可能です。
また、ショート動画は汎用性が高く、他の動画プラットフォームにも投稿が可能です。一つの動画を作成すれば、その動画を複数のプラットフォームに流用できるため、コスト効率が良いといえるでしょう。
ショート動画活用の注意点
ショート動画を活用する際は、ブランディング観点での統一感や品質の管理などに気を付けなければなりません。ここでは、ショート動画活用の注意点を紹介します。
統一感
企業がショート動画を投稿する際は、チャンネルのイメージに合わせた統一感を保つことが重要です。ブランドやチャンネルのイメージと動画が一致していると、より視聴者の信頼を得られます。
例えば、使用するフォントや動画全体の色合い、BGMなどの要素に一貫性を持たせると、ユーザーは継続的に安心して視聴でき、認知もされやすくなります。
投稿の継続性
ショート動画は、一般的な動画よりも「おすすめ」される期間が短く、数日を過ぎるとユーザーに届きにくくなります。そのため、投稿を継続的に行っていくことが重要です。
品質を管理する
ショート動画を多くのユーザーに届けるには、高い視聴維持率や高評価率が必要です。これらが低ければ有益な動画とみなされず、次の動画を投稿した際におすすめ動画として紹介されにくくなります。そのため、ショート動画の品質に注意し、魅力的な動画を作成しましょう。
各プラットフォームの特性理解
作成したショート動画を別の動画プラットフォームに投稿する際は、各プラットフォームの特性を理解し、調整することが大切です。ショート動画の流用は労力や時間の節約になりますが、プラットフォームの特性やユーザー層などは微妙に異なるため、すべてのプラットフォームで同じ動画が視聴されやすいとは限りません。それぞれのプラットフォームの特性にあった動画を投稿しましょう。
ショート動画活用の企業事例
現在、ショート動画を活用してプロモーションを行う企業が増えています。ここでは「料理×企業タイアップ」「ショートドラマ」といったショート動画活用の事例を見てみましょう。
料理×企業タイアップ
ヤマサ醤油株式会社は、人気料理研究家リュウジ氏のYouTubeチャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」とのタイアップを通じて、新商品「これ!うま!!つゆ」のプロモーションを実施しました。
リュウジ氏は、自身のチャンネルで「これ!うま!!つゆ」を使用した「鶏胸肉のレモン漬け」のレシピ動画を公開。調理過程を実演しながら、商品の使用方法や特徴を視聴者に訴求しました。
登録者380万人を超える人気YouTuberリュウジ氏とのコラボレーションにより、幅広い層への認知拡大を実現。さらに広告色が強い従来のCM動画とは異なり、自然な形でのプロモーションに成功しています。
情報発信力のあるインフルエンサーと連携したマーケティングの好例と言えるでしょう。
https://x.com/ore825/status/1670754463131353091
ショートドラマで「タッチ決済」を自然に訴求
三井住友カード株式会社は「忙しすぎる人」というショートドラマをTikTokに投稿し、5,133いいねを獲得しました(2025年1月現在)。
タイムパフォーマンス(タイパ)をテーマとしたこのドラマでは、主人公が日常生活のさまざまな場面で三井住友カードのタッチ決済を利用する様子が描かれています。
押しつけがましい広告表現を避け、ストーリーの中に自然にタッチ決済を溶け込ませることで、視聴者に違和感を与えることなく、ブランドイメージの向上につなげています。
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まとめ
ショート動画とは、15〜60秒の短時間で視聴できる縦型動画です。タイパを重要視する若者世代を中心に、さまざまな年齢層のユーザーから人気を集めています。
ショート動画は、潜在層にもリーチしやすく、拡散性も期待できるため、多くの企業がプロモーションに活用しています。企業のイメージに沿った動画作成や、継続的に動画投稿を行うといった注意点を心がけ、ショート動画をマーケティングに積極的に生かしましょう。