高品質な記事コンテンツや、信頼性の高い学術論文・レポートなどを執筆したいけれど、文献や情報源の正しい引用方法がわからず、著作権を侵害してしまったらどうしよう…。そんな悩みはありませんか?
引用は記事や論文執筆などに欠かせない手法ですが、使い方を誤ると危険です。著作権を侵害しないように、高品質なコンテンツ制作や論文を書くには、正しい引用方法を知る必要があります。
この記事では、引用の定義や正しい引用方法まで、くわしく解説します。主な引用スタイルや、活用できる参考文献管理ソフト、引用する際の注意点、関連用語なども紹介しますので、文書を作成する方はぜひ参考にしてください。
目次
引用とは?
ここでは、引用の定義や、引用の必要性について解説します。
引用の定義
引用とは、他者が作成した文章や図・表などの著作物の一部やデータなどを、自身のコンテンツに利用することです。自身の主観的な意見だけでなく、第三者の意見やデータを取り入れることで、コンテンツの信頼性を高めることができます。
ちなみに、気象観測データなどの事実の記録は著作物と見做されませんが、データの選択や分析、グラフなどは著作物として保護される可能性があります。
著作権の詳細については後述しますが、下記の記事も参考にしてください。
関連記事:著作権とは?制作担当者が知っておくべき保護の期限・期間や侵害しないための基礎知識&ミッキー事例も紹介
なぜ引用が必要なのか
論文やレポート、記事などを作成する際に引用が必要となる理由は、主に以下の3点です。
先行研究をふまえる
これまでに公表された研究成果を踏まえ、自身の主張を展開することで、議論に説得力を持たせることができます。
客観性を担保する
第三者の意見やデータを用いることで、自身の主張の客観性を高め、信頼性を向上させることができます。
著作権の保護
著作物を無断で使用することは著作権の侵害にあたります。引用は、著作権法で認められた著作物の利用方法であり、適切な引用を行うことで、著作権を保護することができます。
学術的な論文やレポートだけでなく、Webサイトの記事やブログ記事などにおいても、引用は重要な役割を果たします。
引用の種類
引用には大きく分けて直接引用と間接引用の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
● 直接引用:引用する文章をそのまま使用する
● 間接引用:引用する文章を自身で要約して使用する
直接引用は、原文を忠実に再現する必要がある場合に用います。引用する文章の長さに合わせて、短い文章の場合は「」を使い、長い文章の場合は引用文の前後に改行を入れ、本文と引用文の境目をわかりやすくするなどの工夫が必要です。いずれにしても、引用文の後に出典を明記することがルールです。
間接引用は、元の文章を要約したり、自分の言葉で言い換えたりする場合に用いられます。直接引用と同様に、出典を明記する必要があります。ただし、要約する際は、元の文章の意味を正確に伝え、著者の意図を歪めないように注意することが重要です。
なお、引用と参照、参考、転載との違いについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:引用とは?参照・参考・転載との違いや意味、書き方について解説
引用と著作権
他者の論文やレポートなどを引用する際に知っておきたいのが、著作権についてです。ここでは、著作権とは何か、著作権法で定められる引用の要件について解説します。
著作権とは
著作権とは、文章や絵画などの創作物を創作した人に与えられる権利です。著作権を持つことで、第三者がその著作物を無断で使用したり、改変したりすることを禁じることができます。
現代社会では、インターネットやSNSを通じて、自身の創作物を手軽に公開することが可能です。公開することで多くの人に作品を見てもらい、誰かの役に立てもらうことができます。しかし同時に他者の著作物を無断で使用する人も増えました。
著作権は、自身の創作物を守るだけでなく、他者の創作物を尊重するためにも重要な権利です。著作権について正しく理解することで、自身の創作物を守り、他者の権利を侵害しないようにすることができます。
著作権の種類や有効期限、具体的な事例を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
著作権とは?制作担当者が知っておくべき保護の期限・期間や侵害しないための基礎知識&ミッキー事例も紹介
著作権法における引用の要件
著作権を保護する著作権法では、一定の要件を満たす場合に、他者の著作物を引用することが認められています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
上記のように、公開されている研究結果や論文、レポートなどは引用可能です。引用元を明記し、主従関係を守り、正当な目的を持って行う必要があります。
また、国などが情報を周知する目的で公表するものに関しても引用可能ですが、禁止の記載がされている場合もありますので、引用元の注意書きはしっかりと確認しましょう。
主な引用スタイルと主流ジャンル
他者の論文や文献などを引用する際、引用スタイルガイドを理解しておくことが重要です。引用スタイルガイドとは、論文執筆時に遵守すべきガイドラインであり、それぞれのスタイルガイドによって書き方が大きく異なります。
論文を投稿する先のジャーナルや学会が提示するスタイルに合わせた執筆が求められるため、必ず事前にスタイルを確認しましょう。
ここでは、主要な4つの引用スタイルと、その特徴を紹介します。
APAスタイル:社会科学系
1929年に確立されたAPA(米国心理学会)スタイルは、心理学、教育学、人文科学など、幅広い分野で採用されているスタイルガイドです。
APAスタイルでの引用時には、著者名、発行年、引用元文献名を記載し、参考文献リストには著者名と文献タイトルを記載します。インターネット資料を引用する際は、発行年やタイトルが不明なケースもありますが、その場合は、「n.d.」(no date:発行日不明)と記載したり、引用した研究内容を記述したりするなどの対応が必要です。
MLAスタイル:人文科学系
MLAスタイルとは、1883年に設立されたアメリカ現代言語協会が推薦するスタイルガイドです。英語学や文化学などでよく用いられます。
MLAスタイルでの引用時には、著者名、出典表記、出版物名、その他の寄与者、出版物のバージョン、巻や号、出版社、出版年月日、場所など、9つの項目を記載する必要があります。
ただし、引用文が掲載される出版媒体によっては、一部の項目が不要となる場合があります。
シカゴスタイル:歴史学・出版業界
シカゴスタイルとは、シカゴ大学出版局がまとめたスタイルガイドで、1906年に初版が、2024年には第18版が出版されました。芸術学や人文学でよく用いられており、特に書籍や文献の出版などで活用されています。
シカゴスタイルの引用時には、参考文献に番号を付与し、巻末または論文末に、その番号に対応する引用情報をまとめて記載します。著者名、著作物のタイトル(Webサイトの場合はURLとサイト名)、出版社情報などが主な記載項目です。
AMAスタイル:医学系
AMA(アメリカ医師会)スタイルは、1847年に設立されたアメリカ医師会がまとめたスタイルガイドです。医学分野向けのスタイルガイドですが、科学分野でも推奨されています。
AMAスタイルは記事のフォントやレイアウトなどのスタイルが細かく規定されており、参考文献の書き方も媒体によって異なります。文法や句読点にも規定があるため、AMAスタイルを利用する際はスタイルガイドをよく確認しておくことが重要です。本文中の引用文に数字を割り振り、巻末にまとめて情報を記載します。なお、数字はアラビア数字(一般的な0、1、2、3など)と決められているので、漢数字やローマ数字などを混在させないように注意しましょう。
バンクーバースタイル:自然科学系
バンクーバースタイルは、主に科学ジャーナルで使用されているスタイルガイド、「著者-番号システム」とも呼ばれます。本文中の引用部分に数字を割り当て、文末の参考文献リストに、その番号順に引用情報を記載します。
引用元がWebサイトの場合は、著者名・ページタイトル・URL・サイトにアクセスした日付などを記載し、書籍の場合は、著者名・書籍名・発行場所・出版社・出版年などを記載する必要があります。
Wordでできる「引用文献の挿入」
Word で論文やレポートを作成する際、引用文献の挿入は避けて通れません。しかし、引用スタイルは多種多様であり、手作業で文献目録を作成するのは時間と手間がかかります。そこで役立つのが、Word に搭載されている引用文献挿入機能です。
この機能を使えば、引用文献の情報を一度登録するだけで、さまざまな引用スタイル(APA、MLA、シカゴなど)に合わせた引用表記や文献目録を自動で作成することができます。
Wordで引用文献の目録を作る流れは以下の通りです。
1. 「参考資料」タブから「引用文献と文献目録」を開く
2. 「スタイル」の横にある▼から使用するスタイルガイドを選択
3. 引用する文章全体、または文章末尾をクリック
4. 「参考資料」タブの「引用文献の挿入」→「新しい資料文献の追加」を選択
5. 表示されるボックス内に必要事項を入力
6. 引用部分全体の入力が終わったら、文献目録を作成する場所をクリック
7. 「参考資料」タブの「引用文献と文献目録」から「文献目録」を選択
これらの手順で、自動的に選択したスタイルガイドに沿った形式で文献目録を作成してくれます。
Word の引用文献挿入機能を活用することで、文献目録作成にかかる時間を大幅に短縮することができます。ぜひこの機能を活用して、効率的に論文やレポートを作成してください。
資料ごとの引用方法
スタイルガイドの項目で紹介したように、引用する際に記載の必要がある情報はスタイルごとに異なります。そのため、引用する媒体ごとに必要な情報を押さえておくことが重要です。ここでは、資料ごとに必要な引用情報を紹介します。
書籍・学術論文・政府文書・法律文書
書籍や学術論文、政府文書などを引用する際の書き方は以下の通りです。
書き方 | 例 | |
書籍 | ● 著者名 ● 書籍タイトル ● 出版社 ● 出版年 ● 総ページ数、または引用部分のページ数 ● シリーズ名とシリーズ数 |
斎藤 幸平.人新世の「資本論」.集英社.2020.384p. |
学術論文 | ● 著者名 ● 表題 ● 雑誌名 ● 発行年月 |
日道 俊之.安全性の知覚尺度の作成と信頼性・妥当性の検証.心理学研究 2024年 第95巻 第5号.2024 |
政府文書 | ● 表題 ● 提供元の官公庁名 ● URL ● サイトにアクセスした年月日 |
国勢調査2020 ライフステージで見る日本の人口・世帯.総務省統計局.https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/lifestage.pdf.2025年1月1日 |
法律文書 | 法令には著作権がないため、引用文献への記載は不要 | – |
政府文書の場合、文書が掲載されているURLに加え、アクセスした年月日も記載するようにしましょう。
また、本文に法律を記載するときは、引用文献の記載は不要です。法令には著作権がないため、情報を記載せずに引用できます。
ウェブサイト・ブログ記事
Webサイトやブログ記事などの文章を引用する際の書き方は以下の通りです。
著者名(更新日).ページ名.サイト名.URL.サイトにアクセスした日付
例:杉野 千晶(2022).「教職員のICT活用指導力向上を目指して」.福岡県義務教育課.https://gimu.fku.ed.jp/wp-content/uploads/gimu/2024/01/22144142/01_R4%E6%9D%B1%E5%B3%B0%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%80%80%E6%9D%89%E9%87%8E%E4%B8%BB%E5%B9%B9%E6%95%99%E8%AB%AD.pdf. 参照 2025-01-01)
他サイトの文章を引用する際は、引用方法だけでなく、本文との差異がわかるようにしましょう。引用部分と本文を明確にわけるポイントは以下の通りです。
● 引用部分を「」や “” で囲う
● 引用部分の文字を斜体・太字にする
● 引用部分の文字色や背景色を変える
● 引用部分前後に改行を入れる
● 出典元を掲載する
● blockquoteタグ(引用文がインデント表示されるタグ)を使う
いずれかを行うことで本文と引用部分が明確にわかれるため、視認性を向上させられます。
また、blockquoteタグ(ブロッククォートタグ)とは、HTMLの記法で、インデント表示のみならず、引用・転載元を表すこともできるタグです。blockquoteタグのほかにも、短文を引用する際に使用するqタグ、引用元の明示に使われるciteタグなどの類似するタグがありますが、SEO効果などの詳しい内容は後述します。
画像・写真・イラスト
画像や写真などを引用する際は、著作権法上の要件を満たす必要があります。特に、画像や写真の引用は、文章の引用に比べて著作権侵害となる可能性が高いため、より慎重な対応が必要です。
著作権者の許諾を得る
大前提として、第三者が撮影した写真や作成した画像・イラストは、著作権者の許諾を得て掲載する必要があります。
SNS等で著作権者の許諾を得ない投稿は多く見られますが、原則的に許諾なしの画像・写真の使用は禁止されています。
引用元を明示する
画像・写真・イラストの著作者名、作品名、URLなどを記載します。引用元を明示することで、読者は引用された画像や写真の出所を確認でき、著作権者に敬意を払うことができます。また、クレジットは、画像の外にテキストデータとして記載するのが基本です。
引用部分が明確にわかるようにする
文章の引用と同様に、自社・自身で撮影・作成・購入した素材との差異をつけると引用であることがわかりやすくなります。
引用する必然がある
文章の引用と同様に、画像の引用をするにあたっても、正当な目的があるかどうかも考慮されます。
引用する著作物の量が、自分の著作物に比べて少量である
文章の引用と同様に、主従関係も鉄則の一つです。引用する画像・写真・イラストの量が、自分の著作物の中で「主」とならないようにします。
加工しない
引用した画像・写真・イラストに対し、レタッチや文字を載せるなどの加工をすることも禁じられています。
以上のように、画像や写真の引用には厳しい要件があります。これらをすべて満たす必要があると理解しておきましょう。
なお、個人的な利用であっても、公衆に提供する場合は著作権侵害となる可能性があります。たとえば、第三者のイラストをダウンロードして、自分のパソコンやスマホの壁紙に設定することは個人利用の範囲ですが、著作権者に無許可で壁紙画像としてブログ記事やSNSに公開することは著作権違反です。
統計データ・グラフ・図表
事件の報道、事実の伝達といった際に使用するデータは、著作権法における「創作的な表現」に該当せず、著作権の対象外となります。
ただし、それを元にしたグラフや図表などは創作物として認められる可能性があるため、著作権者へ引用許諾を得る必要があります。その際にも出典元記載などの原則を守る必要があります。
音声・動画・YouTube・ポッドキャスト
音声や動画、YouTubeなどを引用する場合は下記の要件を満たす必要があります。
● 音声:音源や楽曲は許諾が必要。著名人の音声の場合はパブリシティ権なども発生するため、許諾申請が必須。ロイヤリティフリーの音源であれば許諾は不要。
● 動画:営利目的で利用する場合は許諾が必要となる可能性がある。そのほかの引用要件も満たす。
● YouTube:リンクの埋め込みによる引用であれば可
● ポッドキャスト:営利目的で利用する場合は許諾が必要。そのほかの引用要件も満たす。
音源や楽曲は作成者の著作権があるため、著作権管理団体を通じて使用許可を申請しなければなりません。ただし、ロイヤリティフリーのものであれば、許可は不要です。また、著名人の音声の場合はパブリシティ権で保護されているため、許諾申請のほかに利用料を請求される可能性もあるでしょう。
動画とポッドキャストは引用に関する要件を満たしていれば許諾不要ですが、営利目的利用の場合は著作権者への許諾が必要になる可能性があります。
YouTubeで配信されている動画や再生リストを引用する際は、リンクを埋め込む方法で利用すれば問題ありません。
関連記事:動画圧縮する方法-基礎知識から実践まで!初心者でもできる高画質な動画作成術
歌詞・詩
歌詞や詩には著作権があります。引用の要件を満たした状態で一部の歌詞や詩を引用することは可能ですが、歌詞・詩全体をそのまま記載すると引用の要件から外れる恐れがあります。その場合、JASRACなどの著作権管理団体から使用料を求められるかもしれません。
なお、JASRACと利用許諾契約を締結しているアメーバブログや楽天ブログ、ニコニコ動画、Instagramなどのサービス内で歌詞・詩を掲載する場合は、許諾の必要はなく、使用料も発生しません。
翻訳された文献
翻訳された文献を引用する際は、原著者だけでなく、翻訳者や出版社名なども明記する必要があります。参考文献に記載する場合の書き方は以下の例を参考にしてください。
参考文献リスト
・書籍: 原著者名、翻訳者名 (出版年) 『書籍名』出版社名
・論文: 原著者名、翻訳者名 (出版年) 「論文名」『雑誌名』巻号、ページ
本文中
(原著者名, 翻訳者名,出版年, ページ数)
引用における注意点
第三者の著作物から引用をする際は、要件を満たす必要があります。トラブルにならないためにも、引用するために気を付けておきたいポイントを確認していきましょう。
正確性:原文の忠実な引用
引用は原文に忠実であることが原則ですが、現代の一般的な表記に修正することは許容される場合があります。たとえば旧字や句読点の位置、誤字脱字の修正などです。
ただし、修正して記載する場合は必ず注釈などで元の表記を明記する必要があります。明らかな誤字脱字は修正しても構いませんが、原文の意図を損なわない範囲で修正箇所を明示するか、(原文ママ)や(ママ)など、原文そのままで未修正であることを示す文言を書き添える方法もあります。
出典の明示:引用元を明確に示す
第三者の著作物を引用する際は、著者名、出版年、書名、出版社、ページ番号などの情報を、引用する資料の種類や引用スタイルに応じて適切に記載する必要があります。
引用範囲:必要最小限の引用
引用は、必要最小限の範囲のみに留めます。「引用とは?参照・参考・転載との違いや意味、書き方について解説」でもお伝えしたように、引用部分が本文の補助的な役割を果たし、本文が主となる「主従関係」を厳守する必要があります。論文やレポートの主な部分は本文であり、引用は本文を補足する最小限の範囲に留めるのです。
引用部分が過度に多い場合は、引用元文献の著作権者の許諾を得る必要があります。
改変の禁止:原文の無断改変
引用元の原文を著作権者に無断で改変することは、著作者人格権の侵害となる可能性があります。著作者人格権とは、著作者が自分の著作物に対して持つ、氏名表示権や同一性保持権などの権利です。
また、図やイラストを改変したい場合は、著作権者だけでなく、出版社などの著作権を管理する権利者からも許諾を得る必要があります。
著作権:著作権法の遵守
引用は著作権法で認められた行為ではあるものの、法律で定められる要件を遵守して行わなければなりません。定められる要件は以下の通りです。
● 引用する時点で、すでに公表されている著作物であること
● 引用が社会通念上、妥当だと認められていること
● 本文と引用の主従関係が正当な範囲であること
● 引用元が明確であること
なお、未発表の著作物の場合、著作権者に無断で引用をして公開すると、著作者人格権の公表権(公表するかどうか、公表の時期、方法を決める権利)を侵害する恐れがあるため、公開済みの著作物以上に注意を払う必要があります。
また、営利目的で他人の著作物を大量に引用することは、社会通念上の妥当な引用とは言えない可能性が高く、著作権侵害となる恐れがあります。
論文整理に最適な参考文献管理ソフト
引用しながら記事や論文を執筆する際には、参考文献管理ソフトやアプリを活用することがおすすめです。ソフトを活用することで、利用した文献や論文を手軽に管理できるため、次回以降の引用文を探す際に役立つでしょう。
ここでは、論文整理に活用できる参考文献管理ソフトを紹介します。
ナレカン:AI検索が便利
ナレカンは、企業内のナレッジ(知識、経験)を一元管理できる機能を備えたソフトです。
企業向けのソフトではあるものの、文献や論文を一元管理するソフトとしても活用可能です。PDFをアップロードすればソフト内に論文や文献を蓄積でき、必要なときは検索機能で素早くファイルを探し出せます。
AI自然言語検索を使えば、ファイル内の情報から質問に対する答えをAIが自動生成してくれるため、必要な情報が入った論文や文献を見つけたら、ナレカンに保存しておくといいでしょう。
Stock(ストック):直感的に簡単に文献管理できる
Stockは、社内の情報を手軽・簡単に管理できるナレッジ管理ソフトです。操作性がシンプルなため、管理ソフトを使ったことがない人でもすぐに使い始められる点が魅力です。
テキスト情報だけでなく、画像やファイルなどの必要なナレッジをどんどん蓄積できます。
チーム内のタスク管理や、メンバー間でのメッセージのやり取りなどの機能も付属しています。複数人で論文や文献を管理するソフトとしても活用できるでしょう。
Notion(ノーション):AIサポートつき
Notionは、チーム・プロジェクトのタスク管理やメモ機能、ナレッジ管理などのさまざまな機能を備えたクラウド型アプリです。Notionに論文や文献などを直接保存することも可能ですが、ほかのアプリに保存されているデータをインポートすることで、必要な情報を一元管理できます。
必要な情報が掲載されている論文や文献を見つけたいときは、NotionのAIに任せることがおすすめです。蓄積されたデータのなかから必要な情報を教えてくれるため、検索に時間を取られることもありません。
EndNote(エンドノート):論文作成に特化
EndNoteは、文献管理だけでなく、論文作成をサポートする機能も備えたソフトです。蓄積したファイルは、検索機能を使えばすぐに見つけ出せます。
引用に必要な著作物のタイトルや出版社などの情報も、オンラインデータベースから取得できるため、手入力の手間も省けます。
海外発のツールですが、日本語の操作ガイドや、無料のWebセミナーなども開催されていますので、安心して利用できるでしょう。
ReadCube Papers:世界の研究データにアクセス可能
ReadCube Papersは、必要な論文や文献の蓄積に加え、世界中の研究データベースを検索することが可能なソフトです。ReadCube Papersに組み込まれているAIがデータの検索や研究内容の解釈をサポートしてくれるため、論文検索から執筆までの手間を省けます。
また、OSやデバイスに関わらず、シームレスに利用することができます。
Zotero:ドラック&ドロップで引用文献を収集
Zoteroは、Web閲覧時の情報収集のサポートや、9000を超える引用スタイルから参考文献の自動作成などを行ってくれるソフトです。必要な論文や文献が見つかったら、ドラッグ&ドロップで簡単に収集できます。難しい操作は必要ありませんから、誰でも手軽に使えるでしょう。
Zoteroは300MBまでなら無料で利用でき、情報を蓄積したライブラリはほかの人とも共有できます。共同で論文やレポートを作成するのに便利です。
Mendeley:デスクトップ版とWeb版あり
Mendeleyは、Windows、Mac、Linux、及びすべてのブラウザに対応しており、デスクトップ版とWeb版の2つが使えるソフトです。なお、デスクトップ版とWeb版は同期できます。
ソフトを使っているユーザー同志であれば文献リストの共有も可能です。Mendeleyの公式サイトからは1億件以上の出版社の記事を検索できるため、必要な情報もすぐに集められるでしょう。
RefWorks:文献管理と論文作成支援ツール
RefWorksは、情報収集・文献管理・情報共有・参考文献リストの作成など、論文やレポート作成に必要なさまざまな機能を備えたソフトです。情報収集はデータベースからのインポートや、PDFファイルからも取り込めます。容量は無制限なので、蓄積した情報を削除する必要もありません。
海外発のツールですが、日本語でのサポートが受けられます。また、年2回開催されるオンライン講習会も実施しています。
引用に関連する用語の解説
引用に関連した用語の意味を解説します。
直接引用
直接引用は、他者の文章を一言一句変えず、そのまま使用することです。原文の意図を正確に伝えられますが、誤字脱字もそのまま引用する必要があります。明確な誤字がある場合は、誤字の横に(ママ)と記載するのが一般的です。
例:A社は「今後同様の問題が起こる確立(ママ)は20%程度である」と発表した。
間接引用
間接引用は、引用する文章を自身の言葉で要約して使うことです。誤字脱字を修正できますが、要約のしかたによっては誤解を招く可能性があります。
二次引用・孫引き
二次引用(孫引き)とは、著作元ではなく、他者が引用した文章を使うことです。情報源が複数になるため、文書の信頼性は下がってしまう可能性があります。
基本的に二次引用は控えたい手法ですが、原典の書籍が絶版になっていたり、Web上のファイルが削除されていたりなど、一次情報が入手困難な状況においては、合理的な理由と捉えられ、認められる可能性もあります。
やむを得ない事情で二次引用をする場合は、一次引用元と二次引用元の両方を明記し、二次引用である旨も明記する、といった方法がとれます。
転載
転載は、第三者の著作物をコンテンツ内で従の範囲を超えて使用することです。引用の場合は「主が本文で従が引用元」という関係性ですが、転載の場合は「主が転載元で従が本文」という関係性になります。
転載は著作権者の許諾を得た上でする分には問題ありませんが、「無断転載」といった場合は著作権法を侵害している可能性があります。
剽窃(ひょうせつ)
剽窃とは、第三者が創作した文章や画像などを盗用し、自分のものとして発表することです。許諾申請や出典元の明示、主従関係などのルールを守らず、そのうえ自分のものとして他人の著作物を使うことは著作権侵害にあたります。
引用タグの使用とSEOの効果:検索順位が上がるのか?
第三者の文章を引用してWebサイトやブログなどで公開する際は、引用タグを使用することをおすすめします。blockquote、q、citeなどのHTMLタグを適切に活用して、より質の高いコンテンツ作りを目指しましょう。
引用とSEOの関係性
引用タグは、第三者の文章を適切に引用していることを示すため、コピペとみなされるリスクが軽減できます。Googleはオリジナルコンテンツを重視するため、引用タグの使用はSEOに有利に働く可能性があるのです。
引用タグを使用しつつ、有益なオリジナルコンテンツを作成することで、検索順位の上昇が期待できます。ただし、引用タグだけで検索順位が上がるわけではありません。あくまでコンテンツの質が重要です。
blockquote(ブロッククォート)タグ
blockquoteタグは、書籍や文献などの長文を引用するのに最適なHTMLタグです。ただし短文でも使用可能です。タグの使い方を見てみましょう。
<blockquote>
<p>引用する文章</p>
</blockquote>
HTMLに文章とタグを入力すれば、Googleの検索エンジンからは引用した文章だと判断されます。しかし、コンテンツを閲覧したユーザーは引用した文章だと気づかない可能性があるため、文章を「」や““で囲ったり、背景色などを使ったり、書体を変えたりして、視覚的に本文と異なることをわかりやすく示すことがおすすめです。
qタグ
qタグは、短文を引用する際に使われます。HTMLに入力するタグは以下の通りです。
<q>引用する文章</q>
なお、blockquoteタグでも代用可能です。
citeタグ
citeタグは、引用元の書籍やサイト名を表記する際に使うタグです。タグの使い方は以下の通りです。
<blockquote>
<p>引用する文章</p>
</blockquote>
<cite>引用元:<a href=”引用元サイトのURL”>サイト名とタイトル</a></cite>
いずれのタグも使用必須ではありませんが、適切に使うことでコンテンツの質を高めることができます。
まとめ
先人が残した研究結果や論評などを引用し、自説を補強することで、自身の制作する論文やレポート、ブログ記事、コンテンツの信頼性は高められます。ただし、引用の要件を満たさないと、転載や剽窃などに該当し、トラブルになりかねません。
また、Webサイトにおいて引用を行う際は、検索エンジンにコピペコンテンツだと判断されないよう、blockquote、q、citeタグなどを適切に使用する必要があります。
第三者の著作物を引用する際は、作成者の著作権を守ることが重要です。著作権を侵害せずに引用の書き方を知り、説得力のある論文・レポート・ブログ記事・コンテンツを作成しましょう。