Microsoft社が開発・販売している表計算ソフトのExcelには、ピボットテーブルという集計機能が搭載されています。膨大なデータを集計し、売上管理や分析、データのグラフの作成などが行えるため、覚えておきたい機能です。このピボットテーブルを、業務やマーケティングに活用したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ピボットテーブルの基本的な機能や使い方、利用する際の注意点などを解説します。
目次
ピボットテーブルとは?
ピボットテーブルは、Excelでデータ集計や分析が行えるツールです。ピボットテーブルの使用には、複雑な数式や専門的な知識を必要としません。そのため、多くの企業が管理表や報告書などを作成するために利用しています。
ここでは、ピボットテーブルの機能や具体的な利用シーンを見てみましょう。
ピボットテーブルの機能
ピボットテーブルとは、情報を集計し作成した表データを基とし、項目ごとに自動で集計するExcelの機能です。ピボット(pivot)は「回転軸」、テーブル(table)は表という意味の英単語です。つまり、膨大なデータから注目する項目を軸に、集計表を作成することを表しています。
ピボットテーブルの主な用途は、集計したデータを項目別に整理・分析することです。この機能性から、ピボットテーブルは、売上を管理するために、利用されることがよくあります。例えば、売上一覧表にピボットテーブルの機能を利用すると、商品別の売上や顧客別の売上を、関数や数式を使うことなく集計可能です。
また、ピボットテーブルでは、データを項目別に分類し、さらに項目を組み合わせて分析可能なクロス集計という機能を使用できます。
クロス集計は、複数の項目を組み合わせてデータの分析や意味付けを行うデータの集計方法です。「取引先ごとの売上」や「年齢別の人数」など、収集したデータを細かく分析したい際に使用します。
クロス集計のメリット・デメリットは、以下の通りです。
<メリット>
・細かなデータ分析と、分析結果を同時に可視化できる
・集計したデータの項目同士の関連性がわかる
<デメリット>
・詳細に分析を行う場合は、クロス集計に使用するデータ以外のデータが必要である
・項目を過度に細分化すると、データ数が減少し正しい分析結果が得られない恐れがある
企業で蓄積したデータは、専門の担当者が整理しなければ、データが表す意味やデータから読み取れる課題が不明確のままになりかねません。
しかし、ピボットテーブルでは、自分が作成した表でなくても表データを分析できるため、さまざまなビジネスシーンで活用できます。さらに、複雑な数式や関数を使用しなくても膨大なデータが分析可能であるため、作業の効率化にも役立つでしょう。
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具体的な利用シーン
ピボットテーブルは、複数の項目を集計したり、集計した項目の並び替えを行ったりできるため、大量のデータからさまざまな角度から集計・分析できます。データのグラフ化も簡単です。グラフ化することで、データが表す内容を素早く把握できます。強調したい項目を視覚的に訴えることが可能で、記憶に残りやすくなる効果もあります。
また、手作業で集計作業を行うと、時間がかかるうえにミスが発生しやすくなりますが、ピボットテーブルを活用すると迅速かつ正確に行えます。
このような特徴のあるピボットテーブルは、多くのビジネスシーンに利用されます。
具体的な利用シーンは、以下の通りです。
活用例 | できること | 利用シーン |
売上の管理・分析 | 商品やエリア、担当者ごとに売上を集計する | 今期の売上を集計し、来期の売上の見通しを立てたい |
データのグラフ化 | 収集したデータを売上順にグラフ化する | 集計したデータをグラフ化し、視覚的にわかりやすい資料を作りたい |
ランキングの作成 | 売れている商品の売上額を多い順に表示する | 1年間で売れた商品の売上額を多い順に表示したい |
アンケートの集計 | ユーザーから収集したアンケートの回答をまとめる | アンケートの回答から、イベントの満足度と年代の関連性を求めたい |
勤怠管理表 | 従業員の勤務データを自動で集計する | 従業員の勤怠管理表を作成したい |
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ピボットテーブルを使うメリット
8割のシェア率を誇るExcelが使用できる環境であれば、利用できることがピボットテーブルの最大のメリットといえるでしょう。他にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ピボットテーブルを使うメリットについて具体例を挙げて紹介します。
● 関数を使わずにデータを分析できる
ピボットテーブルは、関数を使わずにデータ分析が可能です。そのため、Excel初心者でも簡単に表を作成できます。
● クロス集計が簡単
複数の項目ごとに集計したり、項目を入れ替えたりすることも、シンプルな操作で行えます。例えば、販売日ごとに売上を集計していたが「曜日ごとに売上を分析したい」と変更する場合、通常は多くのクロス集計を行う必要があります。しかし、ピボットテーブルでは変更や修正に手間がかかりません。
● 直感的な操作が可能
直感的な操作が可能な点も、ピボットテーブルのメリットの一つです。ドラッグ&ドロップのマウス操作のみのため、グラフ作成が苦手な人でも簡単に操作できます。
● データの更新が簡単
ピボットテーブルは、データの更新が簡単です。例えば、販売記録に新規データを追加する際、「更新」ボタンを押すだけでピボットテーブルに反映されます。
ピボットテーブルの構成要素
ここからは、ピポットテーブルの作成に欠かせない要素をご紹介します。ピボットテーブルの構成要素は「行」「列」「値」「レポートフィルター」の4つです。ピボットテーブルでは、この構成要素を組み合わせることで、判読性、柔軟性の高いオリジナルの表を作成できます。
・行:縦方向、行に表示される項目
・列:横方向、列に表示される項目
・値:計算後の数値項目
・レポートフィルター:指定する条件でデータを絞り込む機能
ピボットテーブルの使い方
ピボットテーブルは、使い方を覚えてしまえば、それほど難しいものではありません。前章でもご紹介した通り、複雑な関数も不要で直感的な操作が可能です。
ここでは、ピボットテーブルの作成方法と使い方をわかりやすく解説します。
データを用意する
はじめに、分析対象となるデータを準備します。例えば、会社の支店ごとの売り上げを集計したいのであれば「日付」「支店名」「商品名」「担当者」「金額」のデータが必要です。この時、入力形式にバラつきがないことを確認しておきましょう。特に、日付や金額などの数値で表す部分は、形式を統一しておくことが大切です。日付は「西暦/月/日にち」、金額であれば「,(コンマ)」を使用する表示形式にすると見やすいでしょう。
分析対象となる表を作成
次に、対象となるデータを基に表を作成します。表の作成は、ピボットテーブルを使用するうえで重要な作業です。なぜなら、表の間に空列や空行が存在すると、表の範囲が正しく読み込まれなかったり、読み込み後に正しい集計結果が出なかったりする場合があるためです。ピボットテーブルを適切に利用するには、縦横のデータを全て埋める必要があります。
表を作成する際のポイントは以下の通りです。
1.項目は1行目に入力する
項目名(フィールド)は、1行目に入力します。
例えば、表のA列「日付」B列「支店名」C列「商品名」D列「担当者」E列「金額」といった項目を設定し、該当する列が何の値を示しているかを明記します。
2.空白の行を作らない
2行目以降には、連続したデータ入力が必要です。空白行を作らないようにしましょう。
3.一つの列に同じ種類のデータを入力する
列(縦方向)には、同じ種類のデータを入力することがポイントです。
例えば「日付」の項目に入力する数値と、「商品名」の項目に入力する文字列は、一つの列に混在しないように入力します。
4.データ以外は何も入力をしない
表と隣接するセルに異なるデータが存在すると、表を適切に認識しないことがあります。そのため、表の周囲のセルには、何も入力しないように気を付けましょう。
5.1件のデータは1行に入力する
項目数が多い場合に、1件のデータを2行以上に分けて入力するケースがあります。しかし、ピボットテーブルでは集計の元データとして使用できないため、1件のデータは1行に入力しましょう。
ピボットテーブルを入れる
表の作成が完了したら、ピボットテーブルを入れていきましょう。表を作成したシートで作業を進めます。
手順は、以下の通りです。
1.「挿入」タブの「ピボットテーブル」を選択する
2. 表示されたダイアログボックスにて、選択されたテーブルで間違いないか確認する
3.2と同じダイアログボックスにて、ピボットテーブルの作成先を指定する
分析・集計の対象としたいエリア選択
最後は、対象エリアの選択です。
ここでは、商品別に売上集計をする場合を例に説明します。
手順は、以下の通りです。
1.フィールドのリストから「商品名」を、「行」ボックスにマウスでドラッグ&ドロップする
2.フィールドのリストから「合計」を、「値」ボックスにマウスでドラッグ&ドロップする
3.シート上のピボットテーブルに、商品名ごとの売上集計表が作成される
加えて、フィールドリストの「担当者」を、「列」ボックスにドラッグ&ドロップすると、列ラベルが追加されクロス集計表が作成されます。フィールドをドラッグ&ドロップする順番には特に決まりはありません。自身のわかりやすい手順で行いましょう。
なお、集計や分析が不要になったフィールドは、ボックス外にドラッグすることで削除できます。フィールドを簡単に入れ替えられるため、素早くかつさまざまな視点で集計結果を確認できます。
また、複数のフィールドを一つのボックスに入れることも可能です。例えば、「商品名」と「商品分類」のフィールドを一つの行ボックスに追加すると、商品別の売上と分類ごとの集計が同時に表示されます。
ピボットテーブルで詳細のデータ分析をする方法
情報を収集したデータの分析は、マーケティング戦略に欠かせません。この分析にも、ピボットテーブルの機能が役立ちます。
ここでは、ピボットテーブルで詳細のデータ分析をする方法を紹介します。
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並び替え
ピボットテーブルのデータを、並べ替えて表示することができる機能です。数値であれば、最小値から最大値順の「昇順」やその逆の最大値から最小値順の「降順」に並べ替えできます。日付も古い順の昇順や、新しい順の降順に並べ替え可能です。
並び替え機能は、以下の場面で役立ちます。
・特定の項目のみを表示する
必要な情報だけを抽出し、他のデータを非表示にすることができます。これにより、分析の焦点を絞り込み、重要なデータに集中することが可能になります。
・指定した順序に並べ替える(数値の大小や五十音順など)
数値の大小に基づいて売上高を降順または昇順に並べ替えることで、最も売上が高い商品や、逆に売上が低い商品を一目で把握することができます。また、五十音順に並べ替えることで、特定の商品の検索が容易になります。
・特定のデータのみを表示する
売上が特定の基準値を超える商品や、上位の数値に該当するデータのみを抽出することができます。これにより、パフォーマンスが優れた商品や、改善が必要な商品を迅速に特定することができ、戦略的な意思決定のサポートが可能です。
並び替えの手順は以下の通りです。
1.ピボットテーブルの「行ラベル」と 「列ラベル」 セルの横にある小さい矢印をクリックする
2. 並べ替える行または列のフィールドをクリックする。
3. 「行ラベル」と 「列ラベル」のドロップダウン矢印 をクリックし、目的の並べ替えオプションを選択する
4.「昇順」「降順]」を選択し並べ替える
また、並べ替えを行う際にはいくつかの注意点があります。
以下の通りです。
1. 並べ替えの順序は、ロケール設定に依存するため、正しい設定を確認する
2. テキストデータには先頭のスペースが影響することがあるため、並べ替え前に削除しておく
3. 大文字と小文字を区別しての並べ替えはできない
4. 条件付き書式に基づく並べ替えも不可
グループ化
ピボットテーブルのグループ化は、時刻や日付の数値を単位別に集約して表示する機能です。
例えば、商品の売上一覧表においてデータを四半期ごとに表示させたい場合は、ピボットテーブル上の値を右クリックし、表示されたウィンドウから「グループ化」を選択します。
グループ化機能では、四半期だけでなく年や月といったさまざまな期間のグループ化も可能です。よって、会計データや部門の実績を集計し、レポートを作成する際に役立つでしょう。
スライサー機能
スライサーはExcel2010から搭載された機能です。スライサー機能を使用すると、ピボットテーブルのデータの絞り込みが簡単にできます。例えば、商品名や支店名ごとの売上集計結果も、スライサーを挿入すると、一目で確認できるようになります。
スライサーの手順は以下の通りです。
1.ピボットテーブルツールの分析タブをクリックし「スライサーの挿入」を選択する
2.表示されたダイアログボックスにて、スライサーを作成したい項目名にチェックを付けて「OK」ボタンをクリックする
ピボットグラフ
ピボットグラフとは、ピボットテーブルのデータからグラフを作成する機能です。ピボットテーブルのセルをアクティブ状態にして、画面上のメニュー「ピボットテーブル分析」から「ピボットグラフ」を選択すると、グラフのデザインの選択画面が表示されます。ピボットグラフの活用により、集計した期間・数字による差や、データの傾向をわかりやすく表記できるでしょう。
ピボットテーブルの応用編、便利な機能
続いて、ピボットテーブルの応用編を見てみましょう。Excelのピボットテーブルを使用すれば、クロス集計表を簡単に作成できます。クロス集計とは、データを複数の項目に分けて集計や分析を行うことです。例えば、商品の売上金額を商品のカテゴリーと注文月の項目で集計することで「この商品は10〜12月にかけて売上が伸びやすい」など、売上の推移を商品ごとに分けて可視化できるようになります。
このように、ピボットテーブルを用いてクロス集計表を作成すれば、容量の多いデータの分析に役立つでしょう。ここでは、便利な機能の一つであるクロス集計の作成方法をご紹介します。
クロス集計の作成方法
まずは、クロス集計表を作成するためにピボットテーブルから作成していきます。売上・販売のデータやアンケート結果など、クロス集計したいデータを用意しておきましょう。
1.ピボットテーブルを作成する
集計したいデータ範囲が選択されている状態で、メニューの「挿入」から「ピボットテーブル」をクリックしましょう。そうすると、「ピボットテーブルの作成」というダイアログボックスが表示されます。集計したいデータ範囲のセル番地が表示されているか、「新規ワークシート」が選択されているかを確認したら、OKボタンを押しましょう。
新しく挿入されたワークシートに、項目が未選択になっているピボットテーブルが作成されたら、クロス集計表を作成する準備は完了です。
2.クロス集計を行う
ピボットテーブルを作成したら、クロス集計表を作成していきましょう。画面右側にある「ピボットテーブルのフィールド」から分析したい項目を、それぞれ行・列・値のボックスへドラッグすると、可視化したいクロス集計表が作成できます。
例えば、販売データを商品カテゴリーに分けて売上推移を確認したい場合は、商品の売上金額を値のボックス、商品カテゴリーを行のボックス、注文月を列のボックスにドラッグすると、項目に対応したクロス集計ができます。
クロス集計表を変更したい時は、項目をフィールドリストから該当のボックスにドラッグしましょう。項目を外す際は、フィールドリストにあるチェックを外すか、ボックス外へドラッグすると除外できます。
また、ピボットテーブルを使ったクロス集計の応用には、以下のような方法もあります。
・グラフの作成
クロス集計はグラフ化が可能です。グラフを作成するには、クロス集計後のピボットテーブルを選択し、メニューにある「ピボットテーブル分析」から「ピボットグラフ」をクリックします。
・フィルターの設定
クロス集計表にフィルターを設定すると、ピボットテーブル全体で一定の条件下によるデータの選別・除外ができるようになります。項目をフィルターボックスにドラッグして「▼」ボタンをクリック、表示された項目の中から選びたい項目を選択し、OKボタンを押しましょう。選んだ項目だけが対象に該当するクロス集計が可能です。
ピボットテーブルを利用する際の注意点
ピボットテーブルは、関数を使わずにデータ分析を行ったり、クロス集計が簡単な操作でできたりと、大変便利な機能です。しかし、作成の際は、データ情報の更新日やエラーの確認など、注意しておきたいポイントが2つあります。
データの情報は常に更新日を確認
ピボットテーブルは元のデータとの連動が可能ですが、元のデータを変更しても自動的な更新はありません。つまり、元のデータが変更した場合は、手動で変更を加える必要があります。
ピボットテーブルのセルをアクティブにした状態で、画面上メニュー「ピボットテーブル分析」から「更新」を選択します。
また、ピボットテーブルを自動で更新したい場合は、ピボットテーブルのセルをアクティブ状態にして「ピボットテーブル分析」を選択し、「ピボットテーブル」内の「オプション」を選択しましょう。
別ウィンドウが開かれたら、「ピボットテーブルのオプション」のタブ「データ」から、「ファイルを開くときにデータを更新する」にチェックを入れましょう。
元のデータを編集・追加した時は、必ずデータの更新と変更が必要になります。トラブルを防ぐためにも、ピボットテーブルを作成する前にデータが最新のものかを確認するようにしましょう。
エラーが出てしまっている場合
セル結合や空白が存在すると、エラーが出るケースがあります。元データ内に空白があると、ピボットテーブルを挿入する際にエラーメッセージが出ます。加えて、セルが結合されている場合、フィルターが正常に反応しないため表を作成できません。誤作動を防止するために、一つのセルに対して一つのデータのみを入力しましょう。
また、ピボットテーブルのデータは、直接編集するのではなく元のデータ表を編集する必要があります。直接編集しようとすると「選択部分の変更はできない」とエラーメッセージが出ます。ピボットテーブルの挿入時は、初めに元データに空白やセル結合がないかを確認することが大切です。
まとめ
ピボットテーブルとは、Excelの表データを項目ごとに集計・分析できるツールです。関数を使うことなく詳細にデータ分析やクロス集計ができるため、さまざまなビジネスシーンで活用できます。ドラッグ&ドロップのマウス操作で、直感的な作業が可能なことや、データの更新が簡単なことから、多くの企業がデータ管理に利用しています。しかし、情報更新日の確認を怠らない、エラーが出た場合の適切な対処には注意が必要です。ピボットテーブルを正しく活用し、マーケティング戦略に生かしましょう。