インクルーシブ・マーケティングは、マス市場では見落としがちな少数派の意見や需要を尊重し、一人ひとりの多様性を重視する新しいマーケティング概念です。あらゆるビジネスサービスに最適化させ、社会とともに事業の成長を促していく目的があります。
この記事では、令和の今だからこそ知っておきたいインクルーシブ・マーケティングの重要性、日本企業における導入事例をご紹介します。
新たなマーケティング概念「インクルーシブ・マーケティング」とは?
インクルーシブ・マーケティングとは、一人ひとりの多様性を積極的に受け入れ尊重し、企業のさまざまなマーケティング活動に反映・最適化していく手法です。
インクルーシブ・マーケティングの語源となっている「インクルージョン(inclusion)」は、「包含」や「包括」を意味します。多様性を排除せず、互いに認め合うことを当たり前とする概念を表しています。
インクルーシブ・マーケティングにおける多様性とは、それぞれの価値観や考え方だけに留まらず、性別や国籍、宗教、年齢、能力、ライフスタイルなど個人を成形するあらゆるものを含んでいます。
昨今はさまざまな企業において、多種多様な人材を積極的に活用するダイバーシティと呼ばれる取り組みを行っています。
ダイバーシティはインクルーシブ・マーケティングに内包されるものであり、インクルーシブ・マーケティングを学ぶ前にダイバーシティを理解することは必須です。
また、インクルーシブ・マーケティングはマイノリティー(少数派)のみを対象とするビジネスではありません。
マス・マーケティングでは目が向けられなかった少数のターゲットや需要を汲み取るものであり、マイノリティーかマジョリティー(多数派)かというのは関係ないのです。
そのため、大企業だけではなく中小企業や個人事業主にも取り組みやすいマーケティング手法といえます。
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ビジネスにおけるインクルーシブ・マーケティングの重要性
一般的に、マーケティングとはターゲットを設定し、そのターゲットに向けてどう発信すれば利益が出るか戦略を考える手法です。
一方、インクルーシブ・マーケティングはターゲットから外れる人々を再認識し、マス・マーケティングの課題でもある見落としがちな個々の多様性を尊重します。
インクルーシブ・マーケティングがビジネスにおいて重要な理由は以下の通りです。
◇顧客は自分が企業のサービス対象として含まれることを期待している
企業の顧客は、自分たちがサービス対象として含まれることを望んでいます。
しかし、こうした顧客の要望が反映されず、ステレオタイプ(固定概念)を捨て切れていない企業マーケティングも散見されます。
その結果、自分がサービスに反映されていないと感じた顧客は企業から離れていってしまうのです。
企業には、社会で生活する一人ひとりの多様性に目を向け、サービスに反映することが求められています。
◇多様性を受け入れることは企業にとってマスト(必須)である
グローバル化が進む現代では、あらゆる多様性を無視することはできません。
今後さらに海外進出していく企業が増えることを考えると、マイノリティー・マジョリティーを問わず、個々の多様性の享受や尊重はもはや企業にとってマストだといえるでしょう。
インクルーシブ・マーケティングを取り入れた企業事例
インクルーシブ・マーケティングを取り入れている日本の企業事例をご紹介します。
●ANAグループ
◇「ANAグループダイバーシティ&インクルージョンフォーラム」
ダイバーシティ&インクルージョンをさらに推進していくことを目標に、グループ各社の管理職を中心としたフォーラムを開催しています。
◇「ANA-WINDS」(ANA-Women’s Innovative Network for Diversity)
部門や職種を超えた女性管理職のみの学びの場、ネットワーク形成を目的とした取り組みです。
ANAは2020年度末までに女性管理職の比率を15%とすることを目指しています。
参考:AMAグループ 『ダイバーシティ&インクルージョンの推進』
●テルモ株式会社
◇「グローバルモビリティプログラム」
人種や国籍に関わらず、日本から海外グループ各社へ、または海外グループ会社間において国や組織を超えた人材登用を推進。
プログラムを通し、グローバル人材の活躍を支援しています。
◇「テルモ・エキスパート・システム(TES)」
1998年度から導入する定年退職者再雇用制度。専門部門のみならず若手社員の指導や助言も行い、ベテラン社員の豊かな経験を会社の発展に活かしています。
参考:テルモ株式会社 『ダイバーシティ&インクルージョン』
まとめ
◆インクルーシブ・マーケティングは、一人ひとりの多様性を尊重し、企業活動に反映・最適化していく手法である
◆インクルーシブ・マーケティングは、マス・マーケティングの課題であった見落としがちな個々の多様性を救い上げるものである
◆グローバル化が進む現代において、あらゆる多様性を受け入れることは企業にとってマストである
◆ANAグループ、テルモ株式会社など多数の日本企業がインクルーシブ・マーケティングを取り入れている