膨大なデータをマーケティングに活用する仕組みとして注目を集めているDMP。DMPは社外・社内、オンライン・オフライン問わずデータを収集し、分析できるソフトウェアです。導入によるメリット・デメリットや、実際にDMPを活用している企業の事例などをご紹介します。
目次
DMPとは?
DMPとはData Management Platform(データ・マネージメント・プラットフォーム)の略称です。インターネット上にあるオフラインの外部情報など、あらゆるデータを収集・分析・活用できるプラットフォームのことを指します。
DMPの特徴
幅広いジャンルのデータを一元管理し、マーケティング施策へ効果的に活用できるのが特徴です。集まったデータはレポートでわかりやすく可視化されるので、それをもとに広告配信やメルマガ配信など、適切な施策につなげられます。
DMPの利用手段
・データ収集
・データ分析
・データ活用
DMPはマーケティング利用できるソフトウェアとして広く理解されていますが、具体的な利用手段としては次の3種です。
データ収集
ユーザーの行動履歴、購買履歴、アクセス履歴などをオン・オフライン問わず収集できます。ウェブサイト、SNSなどあらゆる場所から、ユーザーの年齢・性別などの基本情報はもちろん、興味関心や嗜好性などの情報も取得します。
データ分析
DMPに保管されたデータを管理、分類、分析します。どのようなユーザーがどのような傾向で行動をとっているのか、あらゆる情報を数値化・可視化できます。DMPによっては情報を把握しやすいよう、様々な形でレポーティングする機能が備わっています。
データ活用
分析したデータを実際にマーケティング施策で活用します。DMPによっては、メルマガや広告など外部のマーケティングツールと連携も可能です。レポ―ディングされたデータをもとに、マーケターが施策を打ち出します。
DMPで扱えるデータ例
・オープンDMP
・プライベートDMP
DMPは扱うデータにより、2種類に分けられます。それぞれの具体例や特性について解説します。
オープンDMP
扱えるデータ例
・ウェブサイトの行動履歴
・SNSユーザーの属性
・ショッピングサイトでの購入履歴など
外部のデータを管理するのが、オープンDMP。第三者機関によるデータを扱います。年齢や性別、興味関心、嗜好性、ウェブサイトの行動履歴などを扱っているため、新規顧客の開拓向きといえるでしょう。
プライベートDMP
扱えるデータ例
・自社の顧客リスト
・営業が持つ商談履歴
・コールセンターでの対応履歴など
社外の人が知り得ない、内部情報を扱うのがプライベートDMP。顧客の購買履歴や行動履歴など、顧客一人ひとりの属性データが含まれているため、既存顧客へのアプローチをする場合に適しています。
DMP導入のメリット
・膨大な量のデータ収集・分析を行える
・作業の効率化につながる
・細かなターゲティングができる
DMPは人に代わりマーケティングに様々な恩恵をもたらしてくれます。これまで足踏みしていた施策を実施できるようなメリットをご紹介します。
膨大な量のデータ収集・分析を行える
DMPは自社顧客データ・購買情報・POSデータなど、複数ジャンルのデータを一元管理できます。人の手では処理しきれないほど膨大な量の情報を集め、管理・分析できるようになります。また、利用するDMPにもよりますが、多くの場合集めたデータを他のツールと連携できるのもメリットのひとつです。
作業の効率化につながる
自らデータ収集や分析に時間をかける必要がなくなり、作業がスピーディーになります。集まったデータもただの数字ではなく、分析・理解しやすいようにレポ―ティングできるのが大きなメリットです。必要なときに該当するデータを確認でき、業務効率化につながります。
細かなターゲィングができる
データ分析により個々のユーザーに対して最適なアプローチができるようになります。たとえば、メール配信の内容やタイミング、おすすめすべき商品やサービスの選定です。広い範囲でのターゲティングしかできなかった従来と比べ、DMPはより細かなターゲティングが可能です。
DMP導入のデメリットと改善策
・人材確保が不可欠
・責任の所在が不明確
・情報活用のハードル
DMP導入はデータを取り扱うため、様々な責任と障害があります。時間やコストもかかり、導入にはハードルが高いともいえますが、それぞれ改善策があるのでぜひ参考にしてみてください。
人材確保が不可欠
扱うデータ量によって、より多くの人材量が必要です。膨大なデータをたった一人で運用するのはリスクが高く、特に自社の情報を取り扱う場合は相当の知識を持つ人材も必要です。
社内の既存データを活用したい場合には、データが活用できる体制づくりからスタートしましょう。足りない機能は開発する必要があり、こちらもまた知識を持った人材が必要です。
改善策
・必要に応じて組織(チーム)の整備も検討する
・マーケター、エンジニアなど必要に応じて新規採用も検討する
責任の所在が不明確
プライベートDMPの場合、自社内でも部署ごとにデータの権限などが異なっており、責任の所在が不明確になることがあります。データの利活用には大きなリスクが伴うため、誰がどのような責任を負うかを決めておかねばなりません。
また、情報漏洩などのトラブルが起こらないよう、セキュリティ対策やプライバシーに配慮できるよう対策をしておく必要があります。
改善策
・他部署との連携を図る
・合同で研修を行うなどフォロー体制を整える
・セキュリティ対策を万全にする
情報活用のハードル
DMP導入に際し、かける時間やコスト、さらに情報をどのように活用するかを具体的に決めなければなりません。つまり、DMP導入で「何をするか」を明確にしなければなりません。導入がゴールになってしまうと、せっかく集めた情報を活かせず終わってしまいます。結果を分析し、計画・実行・検証・改善を繰り返す「PDCAサイクル」に取り組みましょう。
また、教育コストはかかるものの、DMPへの理解度を挙げるためにも従業員への研修を行うなどの対策も必要です。
改善策
・何のためにDMPを導入するのか、目的を明確にする
・導入までの時間やコストについて検討する
・DMPへの理解度を挙げるための研修を行う
・導入後の結果を分析し、PDCAサイクルを回す
DMPの活用事例
大手企業もDMPを活用し、自社内外のデータを収集して次の施策につなげています。DMP導入でどのような施策を行っているのかを知り、参考にしましょう。
ビズリーチ
転職サイトのビズリーチは、自社でマーケティング活動をする「インハウスマーケティング」のため、運用の効率化と負荷軽減に向けてYahoo!JAPANとともに「Yahoo!DMP」の実証実験を行いました。
DMPを活用した潜在顧客層の獲得に向けた施策に取り組んでおり、スポンサードサーチの自動入札機能の利用も進めています。
資生堂
資生堂はプライベートDMPの「TREASURE CDP(旧TREASURE DMP)」を採用し、顧客の美容に関する意識をくみ取っています。
資生堂にはエンジニアが少ないこと、ログデータの収集を簡単にしたい、外部サービスとの連携が容易なものがいいなどの要望に合致したのが、TREASURE CDPだったといいます。実際、ほぼマーケターのみで運用できており、適切なタイミングで顧客へアプローチできるようになりました。
日本旅行
日本旅行はデジタルマーケティング施策「マイクーポン」サービスで、ブレインパッド社のプライベートDMP「Rtoaster(アールトースター)」を用いています。クーポンのクリック率(CTR)」は最大で15倍、クーポンから旅行の申し込みにつながったコンバージョン率(CVR)は3倍に改善したといいます。
Rtoasterは機械学習アルゴリズムにより、顧客の購買情報やウェブサイトでの行動履歴から、最もおすすめのクーポンを自動的に表示させる仕組みです。
まとめ:DMPでマーケティングの加速を
DMPを用いると、社内外のデータを活用して新たなマーケティング施策につなげやすくなります。
既存顧客に関するあらゆるデータはもちろん、新規顧客獲得につながるヒントも隠れているため、集まったデータをどのように活用するか、導入前に目的を明確にしておきましょう。
また、DMPと似た意味で用いられる用語に「CDP(カスタマーデータプラットフォーム)」があります。DMPとCDPの違いについては、次の記事を参考にしてみてください。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)意味・DMPとの違いはこちら
DMPは、膨大な情報を蓄積しておくための箱のようなものです。より効率的で、一人ひとりの顧客に最適なマーケティングを行うことが可能になります。データをもとにPDCAサイクルを回せば、自社の業務改善にもつながるでしょう。