ProFutureマーケティングソリューション|マーケトランク

ProFutureマーケティングソリューションマーケトランクはリードジェネレーションを中心としたソリューションです。HRプロや経営プロを中心としたマーケティング、人事データを活用したDSP、SEOに強いコンテンツマーケティングなどのマーケティングソリューションと情報を提供しています。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基本的な概念から具体的な施策手法まで解説!

2025.12.8
読了まで約 13

「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング」という言葉をよく耳にするようになっていませんか? これまでのマーケティングとは異なるというのは分かっているものの、その内容は、意味はどのようなものなのか、あまりよく分かっていないという人は多いのではないでしょうか。
また、これまでのマーケティング手法とどのように違うのか、なぜ現在、注目されているのかも気になることでしょう。そこで今回は、AMBを分かりやすく解説します。

人事・経営層のキーパーソンへのリーチが課題ですか?
BtoBリード獲得・マーケティングならProFutureにお任せ!

AMBとは

ABMとは「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の略称で、2013年頃に米国で誕生した比較的新しいマーケティング手法です。数年前から日本でも注目を集め始め、現在では多くの企業で導入が進んでいます。ABMは、従来のマーケティング手法とは一線を画す特徴を持っています。

「人」ベースではなく「企業・団体」ベースへのアプローチ

図:「人」ベースではなく「企業・団体」ベース

「アカウント」とは、マーケティングにおいては特定の企業や団体を指します。ABMは、この「アカウント」をマーケティングの基盤とする手法です。「リードジェネレーション」や「リードナーチャリング」といった従来のマーケティング手法では、不特定多数の見込み顧客(リード)に対して広くアプローチし、徐々に確度の高い顧客を特定して商談に繋げる育成プロセスが主流でした。つまり、企業活動においては、個々の担当者や部署に焦点を当ててアプローチしてきたのです。

しかし、ABMでは、個々の担当者ではなく、最初から「企業・団体」そのものをターゲットとします。特に、自社にとって売上最大化に繋がりうる、あるいは将来的に優良顧客となる可能性の高いアカウントを明確に特定し、そのアカウントのニーズや課題に焦点を当てて、戦略的にアプローチを展開します。

特定の企業・団体へ、はじめから直接アプローチ

ここでもう一つ、大きな特徴が出てきました。それは「はじめから特定のアカウント(企業)をターゲットとする」ということです。これまでの手法では、不特定多数の見込み顧客に広くアプローチしていました。これは、ある程度、大まかにターゲットを絞り込んで、自社に興味関心を示したリードを育てるというアプローチでした。

一方、ABMは、はじめから具体的なアカウント(企業)を決めて、そのアカウントにアプローチしていくということに特徴があります。

組織的にアプローチする

図:組織的にアプローチする

特定の企業・団体へ、はじめから直接アプローチ

ABMのアプローチは、非常に戦略的であり、その実行には組織全体での協力が不可欠です。マーケティング部門だけでなく、営業部門、カスタマーサクセス部門、さらには経営層までもが一体となって、ターゲットアカウントのビジネス目標達成に向けて連携し、アプローチを行います。これは、単一の部門からのアプローチでは得られない、包括的で強力な影響力を生み出します。

アカウント(企業)の深い理解とデータ活用による課題解決

ABMでは、ターゲットとするアカウント(企業)を深く理解し、その企業が抱える経営課題や事業課題を解決するための最適なコンテンツやソリューションを提供することに重点を置きます。これにより、汎用的なコンテンツではなく、そのアカウント固有の課題に響く、より価値の高いアプローチが可能となります。

このような個別最適化されたアプローチを実現するためには、ターゲットアカウントの課題やニーズを正確に把握し、それに応えるためのデータマネジメントが極めて重要となります。自社が保有する顧客データやMA、SFA、CRMなどの情報を一元管理し、分析・活用することで、アカウントの深い理解と、それに裏打ちされた効果的なアプローチ戦略を立案・実行することができるのです。

関連記事:マーケティングとは?基礎から重要ポイントまで初心者にも分かりやすく解説

ABMが注目され始めた理由・日本企業に必要な理由

ABMは、米国で「デマンドジェネレーション」における課題を解決するために登場したと言われています。デマンドジェネレーションとは、先に述べた見込み顧客獲得のためのマーケティング手法全般を指し、例えば、見込み顧客獲得のためのリードジェネレーション、見込み顧客育成のためのリードナーチャリング、そして見込み顧客を絞り込むためのリードクオリフィケーションなどが含まれます。米国でも、見込み顧客を創出し、育て上げ、営業に引き渡す一連の流れは行われてきました。

しかし、こうしたプロセスを経ても、営業部門がすべてのリードに対してアプローチしないという問題が発生しました。つまり、せっかくマーケティング部門が育て上げたリードに対して、企業として商談を進めないという状況が起こっていたのです。この営業効率の低下という問題を解決するために、ABMが登場しました。

では、日本企業にとってABMはなぜ必要なのでしょうか。諸説ありますが、日本では古くからの慣例として、組織内ではタテのつながりばかりが重要視され、ヨコのつながりが薄い傾向があると言われています。そのため、これからアプローチしようとしていた企業に対して、実はすでに他部門が顧客であった、といったことが往々にして起こり得ます。ABMは、組織的にあらゆるデータを統合してアプローチする戦略を取ることから、こうした社内連携の課題を回避することができます。むしろ、部門間の連携を強化することで、より有意義な営業アプローチをすることが可能になるのです。

また、日本でABMが注目されるようになった背景には、ABMに不可欠なデータマネジメントがやりやすくなってきたという点も挙げられます。具体的には、MA(マーケティングオートメーション)やSFA、CRMといったデータ基盤を持つ日本企業にとって、ABMは実践しやすい環境が整ってきているのです。こうした技術的な背景や、従来のマーケティング手法の課題解決策として、日本でもABMが徐々に浸透してきています。

ABMとデマンドジェネレーションとの違い

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とデマンドジェネレーションは、どちらもBtoBマーケティングにおいて重要な概念ですが、そのアプローチや目的には明確な違いがあります。両者の違いを具体的に理解することで、自社にとって最適な戦略を選択できるようになります。

1.対象の違い

ABMの対象は、「アカウント」、すなわち特定の企業や団体です。特に、自社にとって価値の高い、収益性の高い優良顧客となりうる企業(アカウント)を特定し、集中的にアプローチします。多くの場合、ABMでは既存顧客の中でも特にポテンシャルの高い大口企業を中心にターゲットとします。

一方、デマンドジェネレーションは、「リード」、つまり見込み顧客となりうる個人を対象とします。不特定多数の見込み顧客に広くアプローチし、興味関心を引き出して育成していく手法であり、新規顧客の獲得を主な目的としています。

この対象の違いから、ABMは既存ビジネスの拡大や深耕に、デマンドジェネレーションは新規ビジネスの創出にそれぞれ適していると言えます。

2.実践内容の違い

ABMでは、あらかじめ特定されたターゲットアカウントに対し、その企業固有のニーズや課題に最適化されたコンテンツやメッセージを提供します。個々のアカウントごとにカスタマイズされた戦略的なアプローチが特徴です。これは、「質」を重視するアプローチであり、数よりも、選定したアカウントとの関係性を深めることに重点を置きます。

対照的に、デマンドジェネレーションは、できるだけ多くのリードを獲得し、育成(リードナーチャリング)を経て、商談化できる段階になったら営業部門に引き渡すことを目指します。そのため、「量」を確保することが前提となります。多くの見込み顧客を集め、その中から確度の高いものを抽出していくプロセスが重要です。

3.誰が行うかの違い

ABMは、マーケティング部門と営業部門が連携し、組織全体で取り組むことが不可欠です。役員クラスを含めた部門横断的な協力体制が求められます。

一方、デマンドジェネレーションは、主にマーケティング部門が主体となって実行されることが多いです。リードの創出から育成までを担当し、営業部門への引き渡しをゴールとします。

このように、ABMとデマンドジェネレーションは異なるアプローチを取りますが、ABMはデマンドジェネレーションによって培われたリード育成のノウハウやデータ基盤があってこそ、より効果的に実施できる側面があります。つまり、デマンドジェネレーションで一定の成果を上げ、基盤を構築した後にABMを導入することが、成功への近道となる場合が多いのです。

1.対象の違い

ABMの対象は、アカウント(企業・団体)ですが、デマンドジェネレーションの対象はリード(個々の見込み顧客)となります。多くの場合、ABMでは既存顧客の中でも特に売上貢献度の高い大口企業を中心にターゲットとします。これは、すでに取引実績があり、関係性を構築しやすいアカウントベースドマーケティングの特性を活かすためです。
一方、デマンドジェネレーションでは、新規顧客開拓を目的として、より広範なリードを対象とします。したがって、ABMは既存ビジネスの拡大や深耕に適しており、デマンドジェネレーションは新規顧客の獲得や市場の開拓に向いていると言えます。アカウントベースドマーケティングの戦略は、個々の企業が抱える課題に深く焦点を当てるため、既存顧客との関係強化に特に効果を発揮します。

2.実践内容の違い

ABMは、特定のアカウント(企業)をはじめから絞り込んで対象とし、各社に最適なコンテンツを提供するなどのアプローチをします。これは、ターゲット企業の課題解決に直結する、パーソナライズされた価値提供を重視する手法です。一方、デマンドジェネレーションは、リード(見込み顧客)を獲得し、育成して商談化できる段階になったら営業に渡すプロセスを指します。デマンドジェネレーションは、できるだけ数多くの見込み顧客を集めることが前提であり、そこで獲得したリードの量と質が実施の成否を左右します。それに対し、ABMは質を重視し、数よりも個々のアカウントとの関係構築と深い理解に基づいたアプローチを核とします。このため、ABMはエンゲージメントを高め、より精度の高い商談創出を目指す点でデマンドジェネレーションと明確に区別されます。

3.誰が行うかの違い

ABMは、組織全体で連携して実施されるのが最大の特徴であり、主に営業部門とマーケティング部門が中心となって推進します。しかし、より効果を最大化するためには、カスタマーサクセス部門やサービス部門、さらには経営層まで含めた全社的な協力体制が不可欠となります。各部門が持つ顧客に関する知見やデータを統合し、一貫したアプローチを行うことで、個々の企業(アカウント)に最適化された体験を提供します。

一方、デマンドジェネレーションは、マーケティング部門が主体となってリード(見込み顧客)の創出から育成までを担当します。リードの絶対数を増やすことを目指し、獲得したリードを営業部門に引き渡すまでのプロセスを管理します。ABMのように、特定の企業への深い理解に基づいた組織的なアプローチというよりは、より広範なターゲット層へのリーチを重視する傾向があります。この違いは、アカウントベースドマーケティングが、個々の企業との関係性を深め、長期的な価値を創造することに重点を置いていることを示しています。

ABMとインサイドセールスの関係

近年、インサイドセールスも日本企業では主流になってきました。インサイドセールスとは、内勤営業のことを指し、電話やメールなどを通して見込み顧客とのコミュニケーションを実施し、受注と成約につながりそうな見込み確度の高いリードを営業に引き渡すという手法です。

ABMにおいて、インサイドセールスの存在は欠かせません。なぜなら、ABMにおいては、戦略的に、そのターゲットアカウント(企業)の課題やニーズに対して最適なコンテンツを提供し、課題解決に導くことが必要であるため、事前にできるだけ多くの情報収集が欠かせないからです。つまり、事前にインサイドセールスを実施済の企業が、ターゲットアカウントとなり得るということです。インサイドセールスは、ABMの成功に不可欠な「アカウント理解」と「関係構築」の基盤を築く役割を担います。

また、ABMのターゲットアカウントに据えるかどうかの判断基準の際にも、インサイドセールスは重要になってきます。後ほど手順はお伝えしますが、自社にとって優良なアカウントとなり得るかどうかは「BANTC」と呼ばれる情報で判断ができます。

これは予算の有無や権限の有無、ニーズの有無などの情報であるため、インサイドセールスによって「BANTC」に関する情報収集はすでになされている必要があります。インサイドセールスは、ABM戦略における仮説検証のスピードを上げ、より精度の高いアカウント選定を可能にします。

これらのことから、インサイドセールスはABMに欠かせない存在であると言えるのです。ABMの実行は、インサイドセールスが収集・分析した質の高いアカウント情報を起点として、よりパーソナライズされたアプローチを展開していくプロセスと言えます。

ABMを実践するための手順

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)を成功に導くためには、戦略的かつ段階的なアプローチが不可欠です。ここでは、ABMを実践するための具体的な手順を解説します。これらの手順を踏むことで、自社にとって最も価値の高い顧客企業(アカウント)に対し、効果的なマーケティング活動を展開することが可能になります。

1.アカウント(企業)の選定

ABM戦略の最初の、そして最も重要なステップは、ターゲットとなるアカウント(企業)の選定です。無数に存在する企業の中から、自社の製品やサービスにとって最大の収益をもたらし、長期的なパートナーシップを築ける可能性のある企業を特定する必要があります。この選定プロセスでは、既存の顧客リストを徹底的に洗い出し、収集した情報を整理・分析して優先順位を決定することが肝要です。

図:BANTC

・Budget(予算): 購買決定には予算の確保が不可欠です。予算の有無や規模は、商談の成否を左右する重要な判断材料となります。
・Authority(決裁権): 誰が最終的な購買決定権を持っているかを把握することは、適切なキーパーソンにアプローチし、効率的な営業活動を行う上で極めて重要です。
・Needs(ニーズ・関心): ターゲットアカウントが抱える課題や、解決したいニーズを深く理解することが、ABM成功の鍵となります。どのようなソリューションを求めているのかを把握することが、的確なアプローチにつながります。
・Time frame(検討時期): 企業がいつ予算申請を行い、いつ頃契約に至る可能性があるのかといった検討時期(スケジュール)を把握することは、タイミングを逃さずアプローチするために重要です。
・Competitor(競合): ターゲットアカウントに対して、現在どのような競合他社がアプローチしているのか、その頻度や提案内容などの情報を把握することは、自社の差別化戦略を練る上で役立ちます。

これらのBANTC情報をはじめ、顧客の事業内容、業界動向、過去の取引履歴などを総合的に分析することで、自社にとって最も収益性が高く、かつ関係構築のポテンシャルがあるアカウントを選定し、アプローチの優先順位を明確にしていきます。この初期段階での的確なアカウント選定が、ABM全体の成否を大きく左右します。

関連記事:商談を成功に導く鍵は【決裁権】キーパーソンを見極め、勝率を劇的に上げる戦略

2.キーパーソン・導入関与者の情報調査

ターゲットアカウント(企業)を選定したら、次に、各企業のキーパーソンを確認します。これは、自社の製品やサービスの導入決定に最も関与する人物や、意思決定プロセスに影響を与える人物の情報を取得することを意味します。アカウントベースドマーケティング(ABM)においては、このキーパーソンを特定することが、効果的なアプローチの第一歩となります。

情報収集の方法としては、インサイドセールスによる電話やメールでのアプローチが有効です。これにより、担当者の役職、部署、さらには意思決定における役割などを把握できます。また、セミナーや展示会への参加を通じて名刺交換を行ったり、DMを送付したり、すでに接点のある担当者から紹介を受けたりといった方法も考えられます。これらの活動を通じて、ターゲットアカウント内の意思決定者や影響力を持つ人物像を明確にしていきます。BtoBマーケティング戦略において、こうした人物像の解明は、後続のアプローチを成功させるための鍵となります。

3.キーパーソンとのコンタクト取得

キーパーソンが特定できたら、その人物とコンタクトを取得するための方法を具体的に検討し、実行に移します。アカウントベースドマーケティング(ABM)においては、ターゲット企業内の意思決定プロセスを理解し、適切な担当者にアプローチすることが成功の鍵となります。

アプローチ方法としては、インサイドセールスで既に接点のある担当者から紹介してもらう、あるいはセミナーや展示会への参加を通じて名刺交換を行うといった、既存の接点を活用する方法が考えられます。これに加えて、電話やメールといった直接的なコンタクトチャネルも有効な手段となります。どのようなチャネルを選択するにしても、相手の状況や好みを考慮し、丁寧かつ戦略的にコンタクトを試みることが重要です。ここで得られた情報も、次のステップであるアプローチ方法の考案に活かされます。データマネジメントの観点からも、コンタクト取得の経緯や初期の応答などを記録しておくことが、今後の施策立案に役立ちます。

4.アプローチ方法を考案する

ターゲットアカウント(企業)とキーパーソンが特定できたら、次に、そのターゲットに響くアプローチ方法を考案する段階に入ります。これは、営業活動における「切り口」の設計とも言えます。すでに収集したニーズや課題に基づき、アカウントベースドマーケティング(ABM)において、そのアカウントにとって最も価値を提供できるコンテンツは何かを深く検討します。これには、ターゲット企業が抱える具体的な課題を解決するための、パーソナライズされた資料作成や、説得力のある営業トークの構築が含まれます。

また、どのようなチャネルを通じてアプローチするのが最も効果的かについても検討が必要です。電話、メール、訪問、ダイレクトメール(DM)など、ターゲットアカウントの特性やキーパーソンの行動パターンに合わせて、最適なコミュニケーションチャネルを選定します。この戦略的なアプローチ設計が、アカウントベースドマーケティング(ABM)の成功を左右する重要な要素となります。例えば、決裁権を持つキーパーソンには直接的なメリットを訴求する資料を、導入に影響力を持つ担当者には具体的な活用事例を示すといった、メッセージングの微調整も重要です。アカウントベースドマーケティング(ABM)では、画一的なアプローチではなく、個々のアカウントに最適化された戦略が求められます。

5.アプローチを行う

アプローチ方法が具体的に定まったら、いよいよターゲットアカウント(企業)への実行段階に入ります。ここでは、事前に収集した「BANTC」情報や、キーパーソンが抱える課題・ニーズを踏まえた上で、最も効果的なアプローチを遂行することが重要です。例えば、電話、メール、訪問、あるいはダイレクトメール(DM)といったチャネルの中から、アカウント(企業)の特性やキーパーソンの状況に合わせた最適な手段を選択します。

アカウントベースドマーケティング(ABM)においては、単なる一方的な情報提供ではなく、アカウント(企業)とのエンゲージメントを深めることが重視されます。そのため、アプローチの際には、相手の状況を理解し、共感を示す姿勢が求められます。例えば、オンライン商談であれば、事前に相手企業の最新動向をリサーチし、会話の中で自然に触れることで、よりパーソナルな関係性を構築できるでしょう。また、営業担当者だけでなく、マーケティング部門やカスタマーサクセス部門など、組織全体で連携したアプローチを展開することで、アカウント(企業)の課題解決に向けた包括的な提案が可能となります。この戦略的なアプローチを通じて、信頼関係を築き、受注・契約へと繋げていきます。

6.効果測定を行う

アプローチが完了したら、その結果がどうだったのか、そしてその後の相手からの反応はどうであったのかを正確に把握し、データとして記録・分析する効果測定を実施します。 アカウントベースドマーケティング(ABM)の効果測定は、施策の成功要因を特定し、今後の戦略に活かすために極めて重要です。

もし施策が奏功したのであれば、どのようなプロセスを経てその効果が現れたのかを詳細に分析します。この分析結果を応用することで、他のターゲットアカウントに対しても同様の効果が期待できるようになります。 マーケティングROIの向上に不可欠なプロセスであり、ABM戦略を継続的に改善していくための基盤となります。

ABMのメリット

ABMは、戦略的にアカウントベースドマーケティングを実践することで、以下のようなメリットが期待できます。

1.限られたリソースで効率的にマーケティングが実施できる

ABMは、ターゲットとなるアカウント(企業)を選別し、最も自社の売上に貢献する顧客企業に焦点を絞って、マーケティングを行います。そのため、リソースの無駄を省き、少ないリソースで最大限の効果を上げることができるといわれています。このことから、効率的にマーケティング活動が実践できるといわれています。特にリソースが限られている場合に有効と言えます。実際、営業やマーケティングのROI(Return On Investment:投資利益率)もABMによって向上した企業もあるといわれます。特にBtoBマーケティングにおいては、すぐれたROIを生み出すといわれています。経営状態を良くすることにも貢献するでしょう。ABMによる精緻なターゲティングは、パーソナライズされたコミュニケーションを可能にし、顧客エンゲージメントを高めることにも繋がります。これにより、顧客生涯価値(LTV)の最大化も期待できます。

2.PDCAの高速化が可能

ABMでは、ターゲットとするアカウント(企業)を明確にし、その企業に最適化されたアプローチを行うため、施策の効果測定が容易になります。個々のアカウントに対する具体的なアクションとその結果がデータとして蓄積されるため、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」のPDCAサイクルを、迅速かつ効率的に回すことが可能になります。これにより、アカウントベースドマーケティング戦略の継続的な最適化が図れ、より精度の高いマーケティング活動へと繋がっていきます。特に、アカウントベースドマーケティングでは、迅速な状況判断と柔軟な戦略変更が成功の鍵となるため、このPDCAの高速化は大きな強みと言えるでしょう。また、データに基づいた効果測定は、アカウントベースドマーケティングにおけるROIの向上にも貢献します。

3.マーケティング部門と営業部門の連携がしやすくなる

ABMは、先述の通り、マーケティング部門と営業部門がそれぞれ連携しながら実施していきます。従来のリード創出の際には、マーケティング部門が手動で行っていたため、営業部門とは、なかなか連携が取りにくかったところがあります。そのため、ABMでは、連携がスムーズにいくでしょう。
マーケティング部門が営業のことまで考えて実践できるようになるといわれています。そのため、知識の面、精神面でも営業部門に近付くことができ、組織としての結束も高まるでしょう。

ABMのデメリット

一方、ABMにもデメリットがあります。

1.大企業でなければ実現しにくい

先述の通り、ABMを実施するには、すでにデマンドジェネレーションの仕組みが構築されていることが不可欠です。そのためには、コストをかけられる大企業のほうがABMに取り組みやすいでしょう。中小企業はどうしてもABMに取り組みにくいところがあります。これは中小企業にとってはデメリットとなることがあるでしょう。

2.運用開始まで入念な準備が必要

ABMは、情報・データがなければ一歩も踏み出せません。何より情報有りきなのです。インサイドセールスが得たさまざまな情報をはじめ、セミナーや展示会などの名刺情報などありとあらゆる社内情報を持って、はじめて臨むことができます。その情報収集には時間を要することは容易に想像がつきます。
また情報の整理やアプローチのための準備なども必要になってきます。運用開始までに時間がかかることから、すぐに始めたい、すぐにでも商談につなげたいといった場合には不向きとなるでしょう。

3.組織全体が同じ方向を向く必要がある

ABMは、組織全体が同じ方向を向いて実施していく必要があります。組織的に行うことが最重要であるためです。しかし、それは同時に、組織の統率が必要であるといえます。一人が目先のインセンティブを追い求めて、組織的な指標に従わないというケースがあれば、ABMは総崩れになってしまいます。組織の統率がとれていない企業はむずかしくなるでしょう。

ABMツールとは?MA・SFAとの違い

ABMを実施する際には、ツールを活用することが一般的です。ABMで利用するツールのことをABMツールと呼ぶ場合、具体的にはどのようなツールとなるのか確認しておきましょう。
また、従来のマーケティングで多くの企業が活用しているMA(マーケティングオートメーション)や営業で活用するSFAとはどのように異なるのかを知ると、ABMツールの特徴がより分かりやすくなるでしょう。

ABMツールとは

ABMツールが担うのは、まずターゲットとなるアカウント(企業)の選定を行うことです。自社にとって最大限に収益性の高い企業を選び、そのターゲット企業の情報の統合を行うことができます。
具体的には、見込み顧客や既存顧客のリストから、ターゲットとなる確度の高い顧客を抽出する機能があります。そのためには、情報の蓄積が前提として必要になります。
また、蓄積した情報により、ターゲット企業に対して、効果的なタイミングで必要な情報を提供することができ、適切な商品やサービスの提案も行うことができます。またキーパーソンや商談の記録なども行うことができます。

MA

MAは、マーケティングオートメーションのことで、マーケティング部門がよく利用する代表的なツールです。MAでは、顧客情報の収集と蓄積を行い、見込み顧客を育成します。さらに、見込み顧客に対して実施したマーケティング施策の分析を行います。
特に、顧客の購買履歴の蓄積のほか、Webサイトへの訪問履歴、ページ閲覧情報やSNS、メールなどの行動情報を蓄積し、それをもとに、分析を行います。そして、自社にとって有益となる顧客に育てるための道筋と必要なマーケティング施策を自動化します。
ABMツールとは異なり、見込み顧客の育成をメインとするツールです。とはいえ、情報収集という面ではABMと似ているところがります。

SFA

SFAとは、「Sales Force Automation」の略称で、営業支援システムを指します。主に営業部門が利用しています。SFAが行うのは、営業パーソンの行動やコンタクト履歴、商談内容、営業パーソンの行動のプロセス全体を管理します。その管理データによって成約率向上や製薬までの期間を短縮し、営業効率を高めるのが一番のねらいです。また、営業パーソンに必要となる業務である、見積書作成や請求書発行機能などの営業支援機能もあります。
ABMツールとは大きく異なることが分かります。

ABMを実施する際には、一般的に、ABMに特化したツールを活用することが、より効果的にABMを実施していくことができるでしょう。

まとめ

ABMとは「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の略で、企業や団体をベースとしたマーケティング手法を意味する。人ベース、つまり「担当者」ではなく、はじめからアカウントベース、つまり「企業・団体」をベースにターゲットとする。売上が最大化する、“優良顧客となる可能性のある”アカウントを明確にし、ニーズに焦点を当て、戦略的にアプローチをしていく。

ABMとデマンドジェネレーションとの違いは、「1.対象の違い」「2.実践内容の違い」「誰が行うかの違い」の3つがある。

ABMを実践するための手順は、「1.アカウント(企業)の選定」「2.キーパーソン・導入関与者の情報調査」「3.キーパーソンとのコンタクト取得」「4.アプローチ方法を考案する」「5.アプローチを行う」「6.効果測定を行う」となる。

ABMのメリットは、「1.限られたリソースで効率的にマーケティングが実施できる」「2.PDCAの高速化が可能」「3.マーケティング部門と営業部門の連携がしやすくなる」、ABMのデメリットには「1.大企業でなければ実現しにくい」「2.運用開始まで入念な準備が必要」「3.組織全体が同じ方向を向く必要がある」がある。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、
セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら

アクセスランキング

  • 2025.2.14

    X(Twitter)をブラウザ版で開くには?アプリにはない機能も解説

  • 2025.5.14

    Google画像検索のやり方!スマホ(iPhone・android)とPC別に解説

  • 2025.3.18

    URL(ユーアールエル)とは?初心者でも分かるように解説

  • WEBマーケティングカテゴリの
    おすすめ記事

    マーケティングカテゴリの
    おすすめ記事

    SEOカテゴリの
    おすすめ記事

    おすすめ記事

    PAGE TOP
    閉じる

    マーケティング担当者必見!法人リードの獲得・拡大に

    人事・経営層向けメディア「HRプロ」