顧客を集客するための様々な経路のことをチャネルといい、顧客満足を満たすマーケティング手法としてオムニチャネルが注目されています。有名企業らが早くから採用しているオムニチャネルの意味や戦略のポイントを詳しく解説。これからマーケティングに注力をという企業は、ぜひ戦略対策にお役立てください。
目次
オムニチャネルとは?
オムニチャネルとは、企業と顧客の接点となる様々なチャネル(販売経路)を「連携・統合」させて顧客にアプローチする販売戦略です。店舗やECサイト、SNS、アプリなど、オンライン/オフライン問わずあらゆるチャネルを活用し、売り上げアップを目指す戦略です。
オムニチャネルが注目される背景
オムニチャネルは、時代のニーズを反映した注目のマーケティング戦略です。ここではオムニチャネルが、販売戦略として重視されている背景について解説します。
スマートフォン・SNSの普及
オムニチャネルが注目される一番の理由に、スマートフォンおよびSNSの普及に伴う消費行動の変化が挙げられます。SNSの口コミを検索したり、価格比較から最安値の商品を検索したりと、顧客が様々なチャネルを利用するようになりました。
またインターネット調査会社の調べでは、2020年スマートフォンによるネット通販の利用者は40%を超過。これは7年前の4倍に達しており、ECサイトを利用した買い物はもはや当たり前となりつつあります。
こういった消費行動の変化にあわせた戦略として、複数の販売チャネルを用意して顧客の欲しいタイミングで購入できる仕組み作り(=オムニチャネル化)が必要になっているのです。
IT技術の進化
テクノロジーの進化がオムニチャネル化を加速させた一面もあります。ビッグデータの活用やアクセス解析ツールなどの導入も簡単になり、顧客動向を正確に把握できるようになりました。結果として、用意すべきチャネル、重視すべきチャネル、各チャネルの対策といった判断が容易になり、オムニチャネル化が促進されました。
またECサイトにおいても、プラットフォームのセルフサービス化が進んでいます。これにより、Webサイト、SNS、仲介サイトとの連携、決済、発送のエコシステムなどを簡単に実施できるようになり、誰でも簡単にオンラインビジネス、事業のオンライン化を始められるようになりました。
こうしたIT技術の進化により、オンラインビジネスの導入はもとより、マーケティングの対策も簡略化できるようになりました。
オムニチャネル化のメリット
・顧客のアクセシビリティ・満足度の向上
・マーケティング戦略の最適化による、選択と集中の実現
・顧客接点の創出による、販売機会の増加・機会損失の減少
・工数整理による業務の効率化
マーケティング戦略として、オムニチャネルを採用するのには主に4つのメリットがあります。以下で詳しく解説していきます。
顧客のアクセシビリティ・満足度の向上
実店舗やECサイト、SNSなどあらゆるチャネル連携させることで、顧客が購入したいタイミングを逃さず商品やサービスを提供できます。さらにオンライン上で詳しい情報発信や決済、受取のオプションなど、顧客のアクセシビリティを向上させることで、消費者の購買意欲を促進することができます。スムーズな消費体験により顧客満足度が向上し、リピーターや見込み客の開拓にもつながりやすくなります。
マーケティング戦略の最適化による、選択と集中の実現
実店舗やECサイト、SNSなど媒体となる販売チャネルをオムニチャネル化しておくことで、顧客データや販売傾向などを一元管理することが可能です。統括したデータを分析すれば、顧客のニーズに合ったマーケティング戦略を構築しやすくなり、施策の選択と集中を行うことも可能になります。
顧客接点の創出による、販売機会の増加・機会損失の減少
複数チャネルあることで、消費者が目にする機会の増加から接点の創出につながることも、オムニチャネルの利点といえます。そのため、実店舗とオンラインショップの在庫管理などが連携できていなかったことによる機会消失は回避することができるでしょう。
工数整理による業務の効率化
オムニチャネル化は、在庫管理の連携、受注管理業務の一元化、入荷や検品をはじめ、発送など販売に関する工数を整理し業務を一括したことにより、効率的な運営が可能となります。販売チャネルを統括して管理することで、生産性の向上、オペレーションコストの削減を図り、ひいては顧客の満足度の向上につなげることができます。
オムニチャネル化の成功事例
オムニチャネル化は、今日成功を収めている有名ビジネスが数年前から導入しているマーケティング手法です。代表的なオムニチャネル化の実践について4つの企業事例をご覧いただきます。
ユニクロ
ユニクロは、アパレル業界でも早い時期にオムニチャネルを起用した企業の一つで、実店舗とスマホアプリやECサイトを並行して運営してきました。ユニクロのアプリには、AIのチャットボットによるカスタマーサービスを導入。ITによるコスト削減だけでなく顧客の利便性と満足度を向上しています。
ユニクロは、非接触による読み込みが可能なRFIDタグを採用し、棚卸しが不要なほか、タグの個別識別など、作業の効率化とリアルタイムのデータ共有を実現しました。このようなエコシステムの構築により、新製品が迅速に店頭に並ぶためのサプライチェーンとの連動も、迅速化しています。
無印良品
無印良品がオムニチャネル化で特化しているのが、アプリでの購買体験です。「MUJI Passport」というモバイルアプリは、商品の購入だけでなく、コメントの投稿やレビューの閲覧ができるインタラクティブなインフラになっています。
また、在庫確認やマイレージ獲得などオンラインとオフラインのシームレスな連携により、カスタマーの消費体験を向上させています。
イオングループ
イオングループは、Yahooショッピングへの参入など、販売チャネルの拡大と多様化を促進してきました。イオンのオムニチャネル化で最もユニークな試みは、イオン幕張新都心店で導入されているアプリ「撮って!インフォ」。
店内のポップにカメラをかざすとレシピが表示される仕組みになっています。また店舗で欠品の商品はECサイトで在庫確認をし、店頭で決済を済ませたら自宅に配送されるというシームレスなオムニチャネル化も実現しています。
東急百貨店
東急百貨店では、TwitterやFacebookなどとの紐づけによる百貨店アプリを導入しています。アプリでは、店舗のインフォメーションやフロアを閲覧でき、商品を購入することが可能です。また、SNSを介してクーポン配布も実施。ペーパー配布と比較して4倍以上のコンバージョン率につながったというデータがあり、オムニチャネル化したことで、消費者にリーチしやすくなったマーケティングの成功例といえそうです。
オムニチャネルと他のマーケティング用語との違い
・マルチチャネル
・クロスチャネル
・O2O
・OMO
マーケティング戦略で導入されえいる戦略用語はオムニチャネルだけではありません。ここでは、オムニチャネルとよく比較される4つのマーケティング用語について解説します。
マルチチャネル
マルチチャネルは、集客可能な媒体を複数運用しているという状況です。ECサイト、SNS、メールなど複数の販売チャネルを用意し、顧客にアプローチする戦略として知られています。各チャネルは独立しているため、顧客情報や在庫などは単独で管理されています。
オムニチャネルとマルチャネルの異なるポイント
⇨ それぞれのチャネルが連携・統合されているかどうか
クロスチャネル
クロスチャネルは、複数の媒体を持ち、システムデータが相互的に連携させたインフラのことです。マルチチャネルの進化版ともいえ、管理の連帯性により情報を統括して最適化することが容易になる戦略です。
オムニチャネルとクロスチャネルの異なるポイント
⇨ クロスチャネルをさらに発展させたのがオムニチャネル
O2O
O2O(Online to Offline)は、オンラインからオフライン、あるいはその反対へも消費者を誘導するマーケティング手法です。オンラインでクーポンを発行し、実店舗で使用できるといったフローがO2Oに当たります。
オムニチャネルとO2Oの異なるポイント
⇨ チャネル間の誘導の有無
OMO
OMO (Online Mergers with Offline)は、顧客がオンラインとオフラインをまたがって消費体験するという概念を前提に実施されるマーケティングです。釣り具店の実例では、店舗の商品バーコードをスキャンしてECサイトで決済したり、投稿写真にリアクションが付くとポイントが加算されたりするインセンティブも加味したマーケティングを展開しているところもあります。
オムニチャネルとO2Oの異なるポイント
⇨ オンラインとオフラインの融合により、顧客体験を向上させることを目的としているかどうか
オムニチャネル戦略成功のためのポイント
・導入の道筋をつける
・カスタマージャーニーの策定
・組織内の体制整備と認識統一
・データ連携・システム統合
・PDACサイクルの繰り返し
オムニチャネル化では、導入の成功のために押さえておきたいいくつかのポイントがあります。以下で意識しておくべき5つのポイントを解説します。
導入の道筋をつける
オムニチャネル化をスムーズに導入するために、最初に目標までのスケジュール表、ロードマップを作ることで道筋を明確にします。時系列、オムニチャネル化の目的、最終ゴール設定など明確なプランをカテゴリー別に落とし込んでおきましょう。ロードマップ策定の過程では、自社を取り巻く環境、競合の動向、顧客ニーズ、購入パターンの分析等も重要な判断材料となります。
カスタマージャーニーの策定
対象とするペルソナが商品やサービスを知り、購買に至るまでの行動・思考・感情などを理解するカスタマージャーニーの可視化も重要です。見込み顧客、初回購入、リピーターなど、関係性の深さにあわせて施策を講じるヒントになります。
組織内の体制整備と認識統一
オムニチャネルは、統括されたマーケティング手法です。導入までにチャネル間の意識統一を固めることでスムーズな運用を実践できます。オムニチャネル導入に際し、部署内の管理体制の整備やインフラの再考などあらゆるタッチポイントの整理も行うと効果的です。
データ連携・システム統合
オムニチャネル化に際し、データの統一化と共通が図れるインフラの構築も重要。近年注目されているのが、マーケティングオートメーションシステム、通称「MAツール」と呼ばれるソフトウェアです。ツールやソフトウェアの採用、また根本的なシステムのデジタライズなど、時代のニーズにあわせたインフラの適用を見直す良い機会となります。
PDCAサイクルの繰り返し
チャネル間の連携後は、想定したカスタマージャーニーに照らし合わせた効果測定が必要。改めてP(計画)、D(実行)、C(評価)、A(改善)のPDCAサイクルのデータを集積し、自社のマーケティングに適したオムニチャネルの構築に努めましょう。
オムニチャネル化の注意点
・チャネル間での顧客の奪い合い
・初期コスト
・効果が出るまでの時間
・顧客に認知されるための対策
チャネル間での顧客の奪い合い
オムニチャネル化をすることで、消費者がECサイトに集中し、ひいては実店舗の売り上げが減少するというケースがあります。店舗がショールーム化しないよう、相互的にカスタマーエクスペリエンスを提供できる方法を工夫しましょう。
初期コスト
オムニチャネル化は、初期投資が必要です。とくに新たに販売チャネルを増やす、あるいはチャネルを相互に連携させるためのシステム開発など、インフラ構築で高額になる場合もあります。回収の見込みも含め、どの程度投資が必要かという目安をもって取り組みましょう。
効果が出るまでの時間
オムニチャネル化を採用しても劇的な結果がすぐに表れるというものではありません。オムニチャネルの効果は、顧客満足度やブランドのロイヤリティ向上によって反映されることもあります。目標の達成までは、PDCAサイクルを回し続け、企業のリソースと体力とも照らし合わせながらバランスよく進めていくことが重要です。
顧客に認知されるための対策
オムニチャネル化は、顧客に認知されなければ売り上げにつながりません。オンラインとオフライン両方で情報発信はこまめに行います。実店舗での発信はもとより、SNSでの広告配信、Web検索エンジンを使ったSEO対策など、認知されるための開示方法も工夫してみましょう。
まとめ:オムニチャネル化でよりインタラクティブな消費体験を提供
モバイルの進化により消費者にとってネット上で情報を収集し、ネット上で買い物をすることは当たり前の時代になりました。これは消費体験がシームレスなことが購買意欲を向上させる証明ともいえるムーブメントです。オムニチャネル化を採用して、よりインタラクティブで快適な消費体験を提供し、企業の功績アップを目指しましょう。マーケティングを行いたいが知識や時間、ノウハウがないという方は、ぜひ一度ご相談を。