周りの状況が複雑に絡み合い、将来を予測することが困難になってきた時、歴史にその答えを求めるのはよくある事です。歴史を分析すれば未来がわかる。はたして本当にそうでしょうか?
歴史から学ぶ=分析?
自らの行動のヒントを得るために、歴史小説を読んで、とくに戦国武将の行動を分析して手本にしているという方も多いのではないでしょうか。
先人たちの智慧は間違いなく偉大です。
しかし歴史小説はあくまでも史実をもとにした「小説」です。
ですから物語を楽しめるように、多少なりとも脚色めいたところが含まれていることが多いかと思います。
また、同じ歴史上の事実を描いた作品でも、主人公の設定や史実を捉える粒度によっても物語の印象がだいぶ異なります。
たとえば「信長の偉業」であっても、信長本人の目線での物語なのか、秀吉、家康、光秀の目線で信長をみたものなのか、またはその時代背景から信長をあぶりだしたものなのか、設定やストーリによってだいぶ得られる情報が変わってきてしまうと思われます。
このように一つの史実でも不安定というかさまざまな解釈が行われており、たとえば作者により異なった情報提供がされるものからから導き出されるものを「分析した結果」と言えるのでしょうか?
どちらかというと、「分析」というよりは歴史上の史実から自分に活用できそうな事象を学んだといった方がぴったりです。
「分析」という名の「集計」
話が変わって、マーケティング活動を行うとたくさんの数字に囲まれる事になります。
なにかアクションを起こせば、好むと好まざるとにかかわらず、動いた結果としてどんどん数字が発生してきてしまいます。
しかし、この数字は時に私たちにとって非常に有効なことを教えてくれたりもします。活動から発生する情報を集めて分析するということは、現状も理解する事ができるし、その結果未来予測に役立つこともあります。
しかしたまに、「数字を分析します」と言ってデータを扱う人達の中には、それをグラフや表に綺麗にまとめて「分析しました!」と持ってくる人がいますが残念ながら、それは単なる「集計」ですよね。
現場で求められる「分析」
「分析」というと、市場分析、定量分析、定性分析等々、いろいろな言葉が思い当たります。
しかし、真に現場で必要な「分析」とは一体何なのでしょうか。それは「正しい意思決定のために行う作業」だと考えます。
どんな時でも意思決定を行わないと次のアクションにつなげることができません。なにも判断しなければ進行中のプロジェクトは、そこで止まったままです。
すなわち物事を前に進めるためには意思決定を行わなければいけない。そのために正しい情報を取得し、現状を把握し(集計)、その結果未来を創造するために物事を前に進めるために行う事が「分析」ということになります。
分析の目的化
昨今、マーケティングのデジタル化が進み本当に多くの情報が取れるようになりました。
しかしこの情報も、ただ単に集めただけでは何も語ってはくれないのです。
もちろん「大量の数字を見ていれば、何か答えを導き出せるんじゃないか」と分析自体を目的化する手法もありますが私がこのコーナーで話しているのは「フィールドワークで求められる分析とは」なので。目的化された分析、分析を楽しむための分析とは少し異なります。
まとめ
現場での分析には、正しい意思決定を行い「物事を前に進める」という明確な目的があります。ですので「目的をもって」「必要な情報」を「正確に」集める事が重要です。
なので正しい意思決定を行うためには、次の3つの力が求められると思います。
- 何のための分析をするのかという目的を設定する力
- どのような情報があれば、意思決定のための分析ができるのかを判断する力
- 集計から結論を読み取る力
皆さんも現場を前に進めるために、効率的な分析を行い、自らの迷いを断ち切って、どんどん前に進んでいきましょう。
プロフィール
ProFuture株式会社 マーケティングソリューション部 フェロー
俣野 隆行(またの たかゆき)
2000年10月にオラクル入社。以来17年もの間、マーケティング部門で業務。
長年に渡り各種オラクル製品のキャンペーン担当はもとより、
Oracle OpenWorld Tokyo などの大型イベントやコーポレートイベントを推進。
社内シェアードサービスプログラムの立ち上げや、
マーケケティングプラットフォーム統合プログラムの企画立案、
パートナー企業とのアライアンスマーケティングなど、
社内外のマーケティングの仕組みを策定し展開。
その後、大手ITSlerに努める傍らProFuture株式会社のフェローに就任。