第1部 採用オウンドメディアこそ、令和の就活において欠かせない採用ツール!
登壇者:ProFuture株式会社 HR総研 上席コンサルタント 坂東 治忠氏
採用が難しい現代、インターネットを使った情報発信は不可欠!
採用オウンドメディアについて本日はお話しさせていただきたいと思います。
まずオウンドメディアとは何かというと、企業がもつインターネット上のメディアのことを指しています。メディアとしてさまざまなコンテンツを発信することで、継続してアクセスしてきてくれる、いわゆるリピーターや会社のファンを獲得することを目的としています。
それを採用に有効活用するにはどうすればいいのでしょうか? というのが本日のメインテーマです。
そもそも“採用オウンドメディア(オウンドメディアリクルーティング)”とは何なのかといいますと、例えば求人情報専門の検索エンジンを運営しているindeedでは、以下のように定義しています。
オウンドメディアリクルーティングとは、
自社の運営するメディア(採用サイトやSNS・社員)を軸に、
高付加価値人材 に 自社主体 で直接メッセージを発信し、
共感を喚起 することで人材獲得につなげていく
能動的リクルーティングです。
採用オウンドメディアの具体例としては、フリマアプリで有名なメルカリの「メルカン」やお菓子のスタートアップ・ベイクの「THE BAKE MAGAZINE」などがあります。どちらもアクセスしてみると、けっこう面白くて、長い間見ることができます。
では、なぜ今の時代、採用オウンドメディアなのか?
その理由の一つとして、インターンシップを含めた就職活動の長期化があります。
多くの学生は、“大学3年の4~6月”から就職活動を始めようと考えています。少し遅い人で7月からといった回答が多かったですね。
しかし中には、“大学2年”や、早い人だと“大学1年”から始めるといった回答もあります。
そのような学生は当然のことながら、自分たちが卒業する年度の就職ナビがまだ開設されていないため、ほかの手段を使って情報収集を行います。
その際、有効なのが採用オウンドメディアです。
採用オウンドメディアを通じて、企業は本格的な就職活動を始める前の大学生にも、“この仕事は面白そう!”“自分に合った働き方ができそう!”などのメッセージを発信することができます。
採用オウンドメディアにて発信すべきコンテンツとは?
では、実際採用オウンドメディアを利用している企業は、どのようなコンテンツを掲載しているのでしょうか?
私がいろいろな企業の採用オウンドメディアを見て感じることは、“大人が考える「こんなメッセージがいいだろう」と学生たちの思考は必ずしも一致するわけではない”ということです。
例えば、学生に「仕事を選ぶときに何を重視しますか?」というアンケートを文系・理系問わずに実施したところ、「仕事が面白そう」という回答が6割近くを占めていました。
しかし企業の方々に聞いてみると「若いうちから活躍できる」という回答が多かったのです。
でも学生たちは、そんなことは気にしていません。
このようなギャップをなくすためにも、アンケートなどの分析結果を基に、“正しいメッセージ”を発信していくことが大切だと感じています。
採用オウンドメディアを運営していくにあたって、“コンテンツマーケティング”は非常に重要です。
コンテンツマーケティングとは、ユーザーに価値のあるコンテンツを配信することで、企業側にとって利益になるような行動を起こしてもらうマーケティング手法。
コンテンツマーケティングを実施していくうえで意識すべきことの一つが、「いかに検索の上位に表示されるか」です。
近年は、ダイレクトリクルーティングも普及し始めており、逆に学生側が就職ナビなどを通さずに、ダイレクトに企業側にアプローチしてくることもあります。
その際、検索しても表示されなければ採用オウンドメディアの本領は発揮できません。
検索エンジンは私たちだけでなく、学生たちの生活にとっても欠かせないものです。
そこで勝つための知識を得る、またはすでにノウハウや知識を蓄積している企業や団体とタッグを組むことは非常に重要になってきます。
また上位表示されるだけでなく、表示されたコンテンツを学生たちが閲覧・回遊してくれるかどうかも大事です。そのため、データを収集・分析したうえで、学生が興味のある分野を把握し、知りたいことを伝えられるコンテンツをつくる必要があります。
採用オウンドメディアは採用だけじゃない!? 企業全体のイメージアップにも効果的!
次に採用オウンドメディアと採用ブランディングについて、お話しします。
まず“ブランディング”とは、「高級車といえばレクサス」などのイメージを消費者に植え付けること。
同じように採用ブランディングでも“〇〇といったら××”といったイメージをもってもらうことが大事です。
ここで重要になるのが“誰に”“何を”伝えるのかということ。
“誰に”というのは学生です。
“何を”は商品ではなく、企業のイメージになります。
では、学生たちにどのようにして企業のイメージを伝えていけばいいのでしょうか。
先述の「メルカン」や「THE BAKE MAGAZINE」など、実際の採用オウンドメディアを見てみると、一見“採用オウンドメディア”には見えません。
どちらも「採用は関係ない」というフリをしながら、なんとか企業の魅力を理解してもらおうと面白いコンテンツを配信して、学生含めさまざまな人に見てもらうための努力をしています。
採用オウンドメディアは、採用ブランディングといいつつも、実は“採用のみが目的である”という見せ方をしてはいけません。
“企業ブランディング”、“企業オウンドメディア”という意識で臨むことが大切です。
なぜかといいますと、採用オウンドメディアは続けていく中で、採用への効果はもちろん、それ以外にもいろいろな好影響を与えてくれます。
例えば、従業員満足度の向上。採用・企業オウンドメディアでは、自社のポジティブなメッセージを発信していくので、働く人のモチベーションが上がりやすいです。離職率の低下も期待できます。
ほかにも、顧客や市場においては、企業イメージの向上を通じて、プロモーションコストを軽減できたり、売上に貢献したりすることがあります。
こういった付加価値も踏まえたうえで、ぜひ採用オウンドメディアに挑戦していただければと思います。
第2部 採用オウンドメディア構築・運用にあたっての疑問を大解決!
登壇者:ProFuture株式会社 マーケティングソリューション部 営業グループ シニアマネージャー 森塚 信之氏
ここからは、採用オウンドメディアに関する疑問について解説を入れつつ、回答していきます。
Q1)採用オウンドメディアはいつから始めるのがベスト?
近年は、通年採用という考え方が広まりつつあるので、いつのタイミングでもかまわないと思います。
おおむね、採用オウンドメディアの制作には3カ月ほどかかります。
11月に「構築しよう」となったら、3月1日になんとか間に合うかな、といった感じです。
採用オウンドメディアをつくることが決まりましたら、HRプロではお客様の元にうかがい「どのような採用オウンドメディアにしたいか?」「どのようなコンテンツを掲載したいか?」「どのような運用をしたいか?」などヒアリングしていきます。
その後、まずはオープンまでの準備をお手伝いさせていただいております。
Q2)そもそも採用オウンドメディアには何を書けばいいの?
採用オウンドメディアをつくったとしても、どのような情報を発信すればいいのか分からないという方もいると思います。
私が思うのは、皆さんが学生に対して普段行っていることを記事にすればいい、ということです。
就職面接のときも、学生に対して「なぜそれをやったの? 何が課題だったの? その結果、どうだったの?」などと一つの事柄を深堀りしていくと思います。
それと同じです。
HRプロでよく推奨しているのが、一般的ではありますが、社員の声や社内イベントのレポートなど。
実際に社外への取り組みなどを発信していくと、社員からも「人事担当者ってこんなこともしていたんだ」などと言われることがあります。
HRプロといった第三者機関を利用すれば、社員にアンケートをとって、その結果をフィードバックすることもできます。
働き方改革など社内での取り組みなど、いろいろなことをためらいなくどんどん発信していただければと思います。
Q3)学生に伝わりやすい記事の書き方を教えてください
例えば、昨今の学生はインターンシップや選考の間の社員のやりとりなどをよく見ています。
「今の企業へ入社を決めた理由は何ですか?」とアンケートをとると、1番多いのが「仕事内容・事業内容」、で2番目が「会社の利益・福利厚生」です。
でも私自身は、就活生の多くが社員や会社の雰囲気を重視していると感じますし、実際にそこをキーポイントにしていると答える学生も大勢います。
そこで会社の雰囲気を伝えるために、1on1をしているといった記事を書いている企業をよく見かけます。
しかしその記事を読んでみると、「何のために、それをやっているか」といった記述が欠けていることが多いです。
学生たちは「なぜそれをしているのか」といったところまで含め、詳しく知りたいと思っています。
そのため、この場合は「チーム力を最大化するため」などと、かみ砕いて丁寧に説明してあげるといいでしょう。
「採用ホームページでは、そこまで書くスペースがない」と感じている人事担当者もいると思います。
その場合は、採用オウンドメディアを通じて、コラムなどで発信していくことをおすすめします。
Q4)書くネタがすぐに尽きてしまいそうで、不安です……
この場合、HRプロの会員になっていただき、情報収集していただくのも一つの方法です。
HRプロには最新の人事サービスの情報が集まってきます。
例えば、働き方改革をしようと社内で決まっても、まず何から始めればいいのか分からない、ということもあるでしょう。
そんなときはHRプロを通じて、いろいろな会社の取り組み事例や最新のサービスなどを確認すれば、ヒントがつかめるかもしれません。
実際に取り組みやサービスの導入を始めたら、記事として採用オウンドメディアにもアップできます。
またHRプロでは、毎年2000人近くの学生にアンケートをとり、そのデータも配信しています。
そこから感じたこと・気づいたことなどを記事にしてもらうのも良いと思います。
Q5)社内の人間が協力的ではありません
採用オウンドメディアや情報発信をする際、社員との調整が難しいと感じている人事担当者も多いと思います。
私自身、2018年6月末まで某中小企業にて人事部長をしており、採用サイトの作成を始め新卒・中途採用に関わってきましたので、気持ちはよく分かります。
私の経験談ですが、社員間での調整が間に合わなくて、写真撮影の日程が決まらなかったり、「社長ブログでイメージアップを図ろう」と企画しても隣の席にいる社長がなかなか記事を書いてくれなかったりして、新しいコンテンツを生み出せない。
時間や工数ばかりかかって、費用だけかさんでいく。そのような事態が起きていました。
私自身、人事部のときは7割ぐらい調整にかけていたような気がします。
そんなときは、会社が1人の人材を採用すると生涯で3億円稼ぐといわれています。
そこから「3億円の売上を立てるから。3億円を採用しているのだから」といってなんとか社員を説得していました。
Q6)どのような企業に採用オウンドメディアの制作を依頼したらいいでしょうか?
これも私自身の経験談ですが、当時採用サイトを作成していたときは外部に委託していました。
しかし委託先の採用コンサルティング会社が、さらに別のシステム会社に外注。
結果、3~4社で一つのウェブサイトをつくることも少なくなかったです。
そのためか、こちらが指示したワードやニュアンスが伝わりきっておらず、満足いくコンテンツが制作できないことも多々ありました。
改善したいと思いつつも、期限が迫ってくるので、残念ながらも「もういいか」とあきらめるしかない。
その結果、どこの企業も同じだと思いますが、なんら代わり映えのしないサイトになってしまい、後悔することも度々でした。
なぜこのような事態が発生してしまったのか。
理由の一つが、まず人事部について詳しくない方が担当していること。
そして、先述のとおり、外注の連鎖が行われていることです。
それなので採用オウンドメディアは、人事、コンテンツマーケティング、オウンドメディアなどすべてを理解しているプロにお任せいただくのがベストだと感じています。
坂東 治忠氏プロフィール
大手総合商社に入社後、大手外資系日本法人立ち上げに参画。後に外資系企業日本法人代表としての立ち上げや数々の外資系IT /ソフトウェアベンダーにおける要職を歴任。
米国タレントマネジメントソリューションの大手コーナーストーンオンデマンド社の日本法人社長、KPMGコンサルティングの人事コンサルティング部門ディレクターにて、多数のHRトランスフォーメーション支援を行ったのち、日経FTラーニング 日本代表を務め、2019年9月より現職。