背景や理由など何の説明もなしに、トップダウンで下りてくる「KGI」。
また、昨年度の項目をそのままコピペした、毎年変わらない「KPI」。
「KGI」や「KPI」には、こうした形骸化現象が起こっていることがあります。
「KPI」「KGI」は、実は使い方によっては事業成功のカギとなります。
しかし残念ながら、事業計画作成期に慌てて前年の数値を見ている企業も実際にあるのです。
今回は、「KPI」「KGI」の違いに触れながら、目標達成するために必要なこととして、2大項目の本来の活用法についてご説明します。
「KPI」と「KGI」は切っても切れない関係
まず「KPI」「「KGI」の用語を説明します。
- 「KPI」と「KGI」の意味
「KGI」とは、「Key Goal Indicator」の頭文字を並べたものです。
日本語では、「重要目標達成指標」といわれ、企業や部門などが掲げる目的が達成したかどうかを測る指標となります。
たとえば企業向けの貸会議室のサービスをサブスクリプションとして行う企業が、次年度の目標を「売上3億円」と設定したとしましょう。
サブスクリプション(定額制、課金制)であるため、次年度の契約企業からの収益部分はあらかじめ見積もることができます。
この見積もった収益が2億円である場合、マーケティング部門では次年度の目標達成のために、あと売上1億円分が必要ということがわかります。
売上1億円に相当する新規顧客数は150社であれば、マーケティング部門の「KGI」は「新規顧客150社の獲得」となります。
最終目標を測る指標が「KGI」なのです。
一方「KPI」とは、「Key Performance Indicator」の頭文字を並べたものです。
日本語では、「重要業績評価指標」といわれ、「KGI」達成のための施策の指標となります。
先ほどの例であれば、新規顧客150社を獲得するために必要なプロセスをすべて洗い出します。
展示会への出展や自社サイトへの集客など、さまざまな選択肢の中からカギとなる施策をいくつか選んで、その具体的な指標を決めるわけです。
指標となるので、具体的な数値を設定するとよいでしょう。
- 「KPI」の達成=「KGI」達成につながることが重要
「KGI」「KPI」を策定する上で重要なことは、「KPI」が達成すれば必ず「KGI」が達成するという関係です。
そのためには、「KGI」から逆算し、一つずつプロセスを分解して、「KPI」を決めていかねばなりません。
実際の手順としては、これまでのデータから算出した確率や割合などを駆使して、「KGI」達成のために必要な「KPI」を作成することになります。
「KPI」を今後の軌道修正が必要なサインとして活用する
「KPI」と「KGI」を効果的に活用するには、「KPI」「KGI」作成後も、1年を通じて常に頭の片隅に2大項目を置いておくことが必要となります。
とくに「KPI」については、ただの業務目標として取り扱ってはいけません。
今後の軌道修正が必要かどうかのサインとして活用することをお勧めします。
具体的には「KPI」が達成できるか、定期的なチェックをルーティンワークにして、日頃から検証することが重要となります。
業種にもよりますが、チェックする頻度は、毎日、もしくは1週間や2週間でもいいでしょう。
日頃の「KPI」の定期的なチェックこそが、「KGI」達成に繋がります。
というのも定期的なチェックにより、このままの状況が続けば「KPI」が達成できないと予想できた時点で、年度末でなくとも「KGI」未達成の結果が判明するからです。
判明した時点で、即時にチームや部門の方針の軌道修正が必要となります。
まずどのような原因で「KPI」が未達成となるのかという分析を行います。
前提としていた外的環境が変化したからなのか、人的ミスも含め内的要因なのかを見極める必要があります。
また分析後は、軌道修正するための対策を考えて、実行することが求められます。
なお「KPI」設定の時点で、未達成の場合に備えて、あらかじめ対策を立てておくとよいでしょう。
軌道修正は時間との勝負です。
「KPI」設定の際に、さまざまな手段や方法を選択肢として検討するので、事前に第二、第三案を用意して上層部の承認を得ておけば、改善策の実行もスムーズに行えるといえます。
「KGI」達成後も、「KPI」をフィードバックして改善に繋げる
第二の活用法としては、「KPI」をフィードバックして、さらなる改善に繋げることです。
そもそも「KPI」が設定できれば、「KGI」が達成できたも同然です。
PDCAサイクルでいえば、「PLAN」ができたわけですから、ただ「DO」となる実行をすればよいだけです。
そのため「KGI」が達成すれば、必然的に「KPI」は正しかったと考えるでしょう。
しかし本当に「KPI」が正しかったのか、検証をすることをお勧めします。
多くの企業では、「KGI」が未達成の場合にはフィードバックが行われても、「達成」の場合には何の検証もされずに終了するという状況が見受けられます。
しかし本来、「KGI」達成の際にも検証が必要です。策定した「KPI」が正しかったのか、それとも外部的要因が絡んでたまたま偶然に「KGI」を達成しただけなのか、この区別が重要といえます。
また次年度に「KPI」を設定する際に、前年度のデータをそのまま鵜呑みにしてもよいのか、ベースとなるデータの内容の検証も行えば、さらに万全でしょう。
「KPI」の基礎となるデータを作成した部署が異なる場合は、使用している言葉の意味がまったく同じとはいえないことを念頭に置かねばなりません。
たとえば「成約」件数を表す数値も、キャンセル件数が含まれているのかどうかで、「KPI」設定のベースとなる「成約率」が微妙に異なります。
社内の共通言語も、所属部署が異なれば、通用しない場合もあることに注意が必要です。
まとめ
◆「KPI」を正しく設定することこそが「KGI」
◆時間を一番費やすべきなのは、「KPI」設定
◆設定後も定期的に「KPI」をチェック
◆「KGI」が達成された場合のフィードバックもセットで行う
◆事業計画作成時期だけでなく、この「KGI」「KPI」をPC画面に貼り付け、1年を通じて、この2つの項目を意識して日常業務を行うことが事業目標達成の秘訣