多くのビジネスシーンで重要視されている秘密保持契約(NDA)ですが、いまいち概要やどのような内容であるか分からない人もいるのではないでしょうか。秘密保持契約を結んでいない場合、後々大きなトラブルに発展したり、自社が大きな損失を抱えるリスクがあります。
そこで本記事では、秘密保持契約の概要や必要な理由、締結するタイミングを紹介します。また、秘密保持契約を締結するメリットや、記載するべき具体的な条項を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
秘密保持契約(NDA)とは?
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement(NDA))とは、機密情報の共有と保護に関する法的契約のことです。一般的に、NDAは2つ以上の当事者によって締結されるものであり、当事者は「情報提供者」と「情報受取人」であることが多いです。秘密保持契約の主な目的は、機密情報の漏洩を防ぎ、情報提供者の機密を守ることにあります。
締結される取引もさまざまであり、一般的なビジネス取引はもちろん、新商品の開発やサービス提供、パートナーシップの締結などが挙げられます。これらは、重要な機密情報を共有する際に法的に保護する役割を果たし、情報提供者と情報受取人の権利と責任を明確にする非常に重要な締結になります。
秘密保持契約を締結していない場合、どちらか一方の企業が大きな損失を抱えたり、責任の所在が分からくなったりするなど、後々デメリットが生まれる可能性が十分に考えられます。そのため、なんらかの契約や取引を行う際には、必ず秘密保持契約も同時に締結する必要性があることを覚えておきましょう。
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秘密保持契約(NDA)が必要な理由
先ほども少し触れましたが、秘密保持契約(NDA)は企業と契約や取引をする際には必ず締結する必要があります。秘密保持契約が必要な理由はさまざまですが、大きく以下の理由が挙げられます。
1. 機密情報の保護
秘密保持契約は、特定の情報が機密であることを宣言するもので、情報の不正な利用や漏洩を防ぐ役割があります。機密情報はビジネスの競争力を維持するために重要なものであるため、情報提供者はこれらの情報を適切に保護する必要があります。
2. 合法的な保護
秘密保持契約は、法的文書の1つです。契約に違反した場合には法的措置が行われますし、情報受取人が秘密保持契約に違反した場合には、損害賠償を請求することができます。
3. ビジネス関係の明確化
秘密保持契約は、契約の条件や期間を明確に規定する役割も果たします。これにより、情報提供者と情報受取人の権利と義務が明確になるため、ビジネス関係がスムーズに進行しやすくなるメリットがあります。
4. 知的財産権の保護
秘密保持契約は、特許、著作権、商標などの知的財産権を保護するための役割もあります。知的財産権は企業の競争力として働くものであるため、自社の競争力を維持するためにも秘密保持契約を締結する必要があるのです。
このように、秘密保持契約は上記のような理由で必要となります。自社の状況に1つでも当てはまっている場合は、秘密保持契約を締結するように動きましょう。
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秘密保持契約(NDA)を締結するタイミング
結論として、秘密保持契約(NDA)を締結するタイミングはさまざまです。ここでは、秘密保持契約を締結するタイミングの具体例を紹介します。
1. 新しいビジネスパートナーシップ
新しいビジネスパートナーシップを検討している場合は、機密情報の共有が必要な場合があります。この場合、秘密保持契約は新しいパートナーシップが始まる前のタイミングで締結するのが一般的です。
2. 雇用契約
従業員に対して機密情報へのアクセスを許可する場合も、雇用契約書と同時にNDAも締結することがよくあります。仮に秘密保持契約を締結した従業員が会社を辞めたとしても、その後数年間は秘密保持契約が維持されるのが一般的です。
3. 投資や資金調達
新規事業や新しい市場開拓のために、投資家や資金提供者(銀行や金融機関)と交渉している場合も、事前に秘密保持契約を結ぶことがあります。
4. 外部のコンサルタントや特定領域のプロフェッショナル(業務委託)
外部のコンサルタントや特定領域のプロフェッショナルと協力して事業や施策を進める場合、情報漏洩を防ぐために秘密保持契約を締結するのが一般的です。これにより、外部の関係者が自社の重要な情報にアクセスできるものの、競合他社や他の市場に情報が流れることを防ぐことが可能です。
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秘密保持契約(NDA)を締結するメリット
秘密保持契約(NDA)を締結することには、下記のように多くのメリットがあります。
● 秘密情報が流出する可能性が低い
● 損害賠償請求を行える
● 営業秘密の範囲を指定できる
それぞれ順番に見ていきましょう。
秘密情報が流出する可能性が低い
秘密保持契約を締結することで、情報提供者は、機密情報が不正に漏洩する可能性を大幅に低減させることが可能です。締結をしたタイミングから、情報受取人は法的な責任を負うことになるので、万が一でも契約に違反することがないように、機密情報を厳重に保護するようになるのです。
損害賠償請求を行える
秘密保持契約に違反した場合、情報提供者は損害賠償を請求する権利を持つことが可能です。情報提供者は、漏洩された機密情報によって生じる損失や被害を補償するための法的措置を取れるので、当然ながら情報の漏洩を防ぐこともできますし、情報提供者の利益と機密情報の保護が強化されるというメリットがあります。
営業秘密の範囲を指定できる
秘密保持契約では、どの情報が機密情報と見なされ、どの情報が含まれないかを明確に定義することができます。これにより、情報提供者は何が保護の対象であるかを区別することが可能です。また、秘密保持契約は特定のプロジェクトや関係に限定することもできます。
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秘密保持契約(NDA)の条項とは
秘密保持契約(NDA)には、いくつかの条項が必要です。ここでは、秘密保持契約に含まれている一般的な条項を紹介します。
● 秘密情報の定義
● 秘密保持義務
● 秘密情報の返還・破棄
● 損害賠償・差止め
● 有効期間
それぞれ順番に見ていきましょう。
秘密情報の定義・除外事由
秘密保持契約において「秘密情報」が何を指すのかを明確に定義する条項です。秘密情報は、情報提供者側が保護したい情報の範囲が設定されます。また、除外事由も含まれ、一般的な情報や既知の情報は秘密情報から除外されることが特徴です。
秘密保持義務
秘密保持契約は、情報受取人に対して秘密情報の厳格な保持義務を課すという役割があります。秘密保持義務には、情報の機密性を維持するために必要なすべての措置が含まれることも特徴です。
秘密情報の返還・破棄
秘密保持契約には、契約終了時や特定の条件下で、秘密情報の返還または破棄を要求する条項が含まれることもあります。たとえば、情報が不要になった際に、それらの情報を取り戻すというケースが挙げられます。
損害賠償・差止め
万が一秘密保持契約に違反した場合、情報提供者は情報受取人に対して、損害賠償を請求するという条項です。また、場合によっては法的措置(差止め)を取ることもできます。
有効期間・存続条項
秘密保持契約では、有効期間を定めるのが一般的です。また、秘密保持契約の有効期限が切れた後も、特定の機密情報に関する存続条項を含めることもあります。
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秘密保持契約(NDA)のよくある質問
ここまで、秘密保持契約(NDA))の概要や含まれる条項を解説してきました。ここでは、秘密保持契約のよくある質問を紹介します。
● 電子契約でも問題ないのか
● 収入印紙は必要なのか
それぞれ順番に見ていきましょう。
電子契約でも問題ないか?
結論として、電子契約でも秘密保持契約は有効です。日本を含めて、海外でも多くの国で電子署名は法的に認められていますし、秘密保持契約も電子手段を用いて締結することができます。
また、電子契約上でパスワードや権限を適切に設定すれば、関係のない第三者に見られてしまう可能性を低減できますし、より強固に秘密保持契約を管理できるようになるでしょう。
ただし、電子契約には特定の法的要件も存在するので、これらには注意した上で締結することが重要です。
収入印紙は必要?
秘密保持契約の場合、収入印紙は必要ありません。収入印紙は、印紙税の課税文書を作成する場合のみ必要なものであり、課税文書は第1号文書から第20号文書まで存在しますが、秘密保持契約は1号〜20号のどれにも該当しません。したがって、秘密保持契約に収入印紙を貼り付ける必要はないと覚えておきましょう。
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まとめ
本記事では、秘密保持契約(NDA)について解説をしてきました。秘密保持契約とは、特定のビジネスや情報において、情報提供側と情報受取側で締結する秘密情報を保護する契約のことです。万が一秘密保持契約に違反した場合、情報提供側は受け取り側に対して損害賠償を請求できたり、差止めを行ったりできます。これらを行うためには、最低限として秘密保持契約に下記の条項を含めるようにしましょう。
● 秘密情報の定義
● 秘密保持義務
● 秘密情報の返還・破棄
● 損害賠償・差止め
● 有効期間
情報提供側、情報受取側のどちらの立場でも友好的にビジネスを進められるよう、まずは本記事で秘密保持契約に関する理解を深めてみてはいかがでしょうか。