「今使っている旅費申請システムを改修して社員マスタと連携させたい」「新たに社内の業務フローに合わせた受発注システムを導入したい」
上記の様に、社内で新たなシステムを構築したり既存のシステムを改修したりしたいとき、一般的にはシステムベンダーへ開発・改修を依頼することが多いです。
しかし、ベンダーと何度も打ち合わせしたにもかかわらず、なぜかでき上がってきたシステムが希望する仕様とかけ離れたものになっていることも少なくありません。
このような依頼を行う場合は、RFPと呼ばれる様式を用いて、自社の担当者とベンダー担当者との間で起こるミスコミュニケーションをなくし、自社の要望を確実に伝える必要があります。
本記事では、このRFPについての概要やメリット・注意点などを詳しく解説していきます。
ベンダーへ開発を依頼しようと考えている人は、ぜひ本記事を参考にして自社の要望を満たすシステムを作ってもらいましょう。
目次
RFP(Request for Proposal)とは?
RFP(Request for Proposal)は、「提案依頼書」と呼ばれ、企業や組織が新しいプロジェクトやシステムの構築、既存システムの改修などを検討する際に、ベンダーに対して提案を募るための文書のことです。
RFPには、対象システムで実現したいことや、制約事項、予算、スケジュールといった要素を包括的に記載します。
自社の要望に確実に合ったシステムを作るためには、企業内で必要とされるシステムの要件や機能、その他の重要な条件を明確に述べることが求められます。
RFPは誰が作成する?
RFPは、発注元である自社の担当者が作成します。自社の担当者としては、自社のシステム関連部署の担当者の場合もあれば、企画部署の担当者の場合もあり、さまざまです。
しかし、どの部署の担当者であっても、そのシステムを使う業務の人の要望や声を、確実にヒアリングしておくことが大切です。
なぜなら、実際にそのシステムを日々の業務に使用する従業員の視点やニーズを理解し、それに基づいてシステムの要件や機能を設計することが、プロジェクトの成功に不可欠だからです。
どの部署の担当者であっても、システム導入プロジェクトにおいては、業務担当者の声を適切に収集し、要件や設計に反映させることが大切です。
業務担当者の声が反映されたシステムは、実用性や効果が最大限に引き出されるため、企業全体の成果に繋がります。
関連記事:システム思考とは?デザイン思考とともに注目される思考法をわかりやすく解説
RFPを作成する目的とは
RFPの目的は、発注者の意図や要求をシステム開発者に正確に伝え、双方の理解を深めることです。
昔は単に口頭でプロジェクトが進行することもありましたが、近年の情報システムの複雑性によって、プロジェクトの透明性と効果的なコミュニケーションを確保するためにRFPの重要性が高まってきました。
口頭で仕様に関する要望を説明するだけでは不十分だったり、認識違いが発生したりするため、ベンダーへ細かい情報を提供する必要があります。
情報システム導入で失敗する場合、発注者と開発会社の間での認識のずれが原因となっていることも多いです。発注者が望む成果やシステムの要件を的確に伝えない場合、開発中に予期せぬ問題が生じて、プロジェクトが遅延したり、予算超過が発生したりする可能性があります。
このような問題を回避して、開発を円滑に進めていくためには、RFPがとても役に立ちます。発注者自身が要件を整理し、目標を明確にし、システム開発者に対して正確な指針を提供することで、システムの方向性が明確になります。
RFPには、システムの要件、機能、デザイン、スケジュール、予算などが詳細に記載されるため、開発者はこれに基づいて提案を作成し、発注者の期待に応えます。
以上のことから、RFPはシステム開発の成功のために重要なツールで、双方のコミュニケーションと理解を高め、認識のズレを最小限に抑えるための有力な手段となります。
発注者が具体的な要件を整理し、明確なRFPを作成することで、システム導入後の満足度を向上させられます。
関連記事:フローチャート(フロー図)とは?書き方や記号の使い方を解説!
RFPを作成するメリット
RFPには、下記のようなメリットがあります。
● 提案の幅が広がる
● 発注先の選定に失敗するリスクを軽減できる
● 正しい予算感で発注できる
● 納期等も正しく管理できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
提案の幅が広がる
RFPを使うことで、依頼先のシステムベンダーからもらえる提案の幅が広がります。
なぜなら、RFPを通じて、ベンダーは依頼主が求めることを正確に理解でき、最適な提案を考えられるからです。
RFPには、システムを作る目的や、実現したい目標、スケジュール、予算、技術的な要求事項などが詳しく書かれています。
これをもとに、ベンダーはどんな技術やサービスが必要か、どのようなアプローチが適しているかを把握し、それに基づいて独自のアイデアや提案を考えられます。RFPは、ベンダーから最適な提案を引き出すためのツールとしてとても役立ちます。
発注先の選定に失敗するリスクを軽減できる
RPFがあることにより、発注先の選定に失敗するリスクを軽減できます。なぜなら、複数のベンダーから細かい提案がもらえ、詳細に比較・検討できることから、より自社が求めるベンダーを選定できるようになるからです。
もしRFP を作らずにシステム開発を依頼した場合、ベンダーとの意思疎通が難しくなり、比較や評価が難しくなります。その結果、発注先の選定に失敗するリスクが高まります。
RFPを作成し、開発の目標や実現したいことを明確に示すことで、ベンダーとのコミュニケーションが円滑になり、適切な提案が得られます。その上で、各ベンダーが提案する内容を詳細に比較・検討することで、自社に最適な発注先を選定するリスクを軽減できるのです。
正しい予算感で発注できる
RFPを作ってベンダーへ提示することで、システム開発を、正しい予算感で発注できます。
なぜなら、あらかじめRFPの中に、自社が考えている予算を明記してあるため、ベンダー側で予算に合わせた提案を行ってくれるからです。
RFPで予算を提示することで、自社が求める範囲内での提案を受けられ、無駄な交渉や価格の不一致を避けられます。
逆に、RFPを使わずに予算を明示しないまま提案を受ける場合、ベンダー側が自分で予算を想定して提案するため、実際の予算との不一致が生じる可能性があります。
その結果、後々で予算オーバーが発生したり、プロジェクトの途中で予算調整が必要になったりすることもあります。正しい予算感で発注するためには、RFPを通じて予算を明確に提示し、ベンダーとの間で適切な提案を受けることが大切です。
納期等も正しく管理できる
RFPを作成しておけば、納期等も正しく管理できます。なぜなら、RFPにはプロジェクトの要件やスケジュール、納期などが詳細に記載されているからです。
ベンダーはこの情報を基に提案を行うため、RFPを作って提示しておけば、自社の求める納期やスケジュールに合わせた提案を集められます。
また、自社側も提案を受ける際に、納期に関する調整が必要になったときに、早めの対応ができます。
逆に、RFPを作成せずに提案を受ける場合、納期や要件に関する明確な情報が無いため、ベンダーとの間で納期調整やスケジュールの調整が後から複雑になる可能性があります。
また、納期に関する折衝が遅れると、プロジェクト全体の進行に影響が出でしまうこともありえます。RFPを使って納期管理ができれば、開発プロジェクトの計画性や進行管理が円滑に行われ、予定通りリリースできるようになります。
RFPを作成する際の注意点
RFPの概要やメリットについて解説しましたが、どのように書けば理想的なシステムが作れるのかと思う人もいるでしょう。RFPを作成する際の注意点は下記の3つです。
● 予めすべての内容を盛り込むようにする
● システムで実現したい未来を記載する
● 誇張表現をしないようにする
それぞれのポイントについて順番に解説します。
予めすべての内容を盛り込むようにする
RFPに書く内容は、開発依頼にかかわるすべての内容を、予め盛り込むようにしましょう。
なぜなら、ベンダーは、どんなシステムが必要で、どのような課題を解決する必要があるのかを理解することなしに、適切な提案を行うことが難しいからです。
また、予算や工数の目安も示しておかないと、ベンダーは現実的なアイデアを提案できないからです。
RFP作成時には、1人で作成するのではなく、システムを利用する現場の担当者複数名、それも現状のシステムや業務フローに課題を感じているメンバーを選定し、可能な限り多くの意見を拾うようにしましょう。
そうすれば、自分が気付かなかった点もRFPに盛り込めるため、ベンダー側も提案しやすくなり、理想的なシステム開発が可能になります。
どのような小さなことでもいいので、すべての内容をRFPへ盛り込み、課題解決ができるシステムを作ってもらいましょう。
システムで実現したい未来を記載する
RFPには「システムで実現したい未来」を記載しましょう。なぜなら、RFPは単なる仕様書という側面だけでなく、ベンダーへ、自社のビジョンや目標を共有してもらうための重要な手段となるからです。
未来のビジョンを記載することで、ベンダーに対して、自社がどのような方向性を求めているのかを伝えられます。
具体的な要件だけでなく、「システムがどのような価値や効果をもたらすべきなのか」、「どのような改善や革新を期待しているのか」を示すことで、ベンダーも、より具体的な提案を行うことが可能になります。
また、未来のビジョンを共有することで、ベンダーとのコミュニケーションがより深まります。
双方が同じ目標に向かって協力するためには、ビジョンや目標を共有し、ベンダーにも当事者意識を持ってもらうことがとても大切です。この結果、自社のビジョンに沿ったシステム開発が可能になります。
誇張表現をしないようにする
RFPに書く内容は、くれぐれも誇張表現をしないようにしましょう。なぜなら、誇張した表現や過度な期待を示す記述は、ベンダーに対して誤った認識を持たせてしまう可能性があるからです。
もし、ベンダーがRFPで誇張表現された内容を真に受けてしまうと、現実的な提案が出来なかったり、開発過程で問題が発生したりする可能性があります。正確な情報を提供することは、双方にとって透明で建設的な関係を築くために重要です。
実際の課題や要望、予算、スケジュールなどを正直に伝えることで、ベンダーはより適切な提案ができ、自社にとって理想的なシステムをリリースできます。結果的に、RFPには現実的で正確な情報を含めることが信頼性と成果の達成につながるのです。
RFPに記載する内容
前述の注意点を踏まえたうえで、RFPには最低限として下記の内容を記載します。
● 開発を依頼するに至った背景
● 開発を依頼する目的
● 目標や成果
● ターゲット
● スケジュール
● 予算
● 提案してほしい範囲
● 希望する納品物
● システム開発の手法、開発言語
● 具備してほしい機能
● リリース後の運用保守要求
● リリース時の教育研修要求
● ベンダー側のプロジェクト実施体制
● 自社側のプロジェクトの体制
上記で取り上げた項目だけでもかなりありますが、システムの種類によっては他にも項目が必要となります。
そのため、RFP作成にはそれなりの労力がかかります。いきなり細かく作ろうとせず、大まかな部分から徐々に確認しながら作っていくのがRFP作成時のポイントです。
関連記事:WBSとは!プロジェクト管理上で重要な指標の作成手法をご紹介!
RFPを作成するタイミング
RFPを作成するタイミングは、作りたいシステムの規模や種類、希望する納期などによって変わってきますが、一般的には、自社側のプロジェクトの計画段階や提案依頼前に作成します。
なぜなら、必要な要件や、予算、スケジュールといった情報がある程度揃わないとベンダーへ適切な提案依頼ができないからです。
開発依頼の目的や、社員へヒアリングした内容も準備した状態でないと、効果的なRFPを作成することが難しいです。この段階でRFPを作成することで、システム開発のスムーズな進行と期待通りの成果物が得られます。
関連記事:レガシーシステムとは!意味や企業にとっての課題をわかりやすく解説!
まとめ
本記事では、このRFPについての概要やメリット・注意点などを解説しました。RFPを作ることは、非常に手間や稼働がかかる作業です。
しかし、現場の課題や意見、希望予算、納期などを明確にして、ベンダーと意識を共有しておかないと、せっかく依頼したのに見当違いなシステムができあがってしまいます。
そのため、面倒でも、RFPをしっかり作っておいたほうが、最終的には近道となります。
本記事で、RFPの重要性を理解していただき、満足度の高いシステムリリースにつながるRFPを作成しましょう。