「ビッグデータ」とは、桁違いの巨大なデータのことです。テキストや音声・ビデオをはじめとする多様な非構造化データを大規模に分析することで、企業の経営や研究開発に大きな利用価値をもたらすと期待されています。
今回は、ビッグデータの定義と分類、企業での活用事例、BtoBマーケティングへの活用法をみていきましょう。
■ビッグデータの定義とは?
ビッグデータの一般的な定義は、「これまで企業が扱ってきた以上に大容量かつ多様なデータの集合のこと」とされ、その特徴3つのVで表されることがあります。
- 大容量(Volume)
- 日々更新される時系列性(Velocity)
- 種別の多様性(Variety)
●大容量
ビッグデータを特徴づけるのは、膨大なデータ容量です。ネットワークの高速化、およびセンサーなどの発達によるIoT機器により、さまざまな事象がデータ化され、流通するようになっています。
これらのデータを扱うためには、データ容量は数テラバイトから数ペタバイトと、既存の一般的な技術では管理できない大きさになるといわれています。
●日々更新され蓄積される時系列性
ビッグデータは、ソーシャルメディアやIoT機器などからは、大量のデータが24時間発生し続けることとなります。
データは日々更新され、蓄積される時系列性を持ちます。ビッグデータを扱うためには大容量のデータをリアルタイムで処理することができる高い処理速度が必要です。
●種別の多様性(Variety)
ビッグデータを大きく特徴づけるものは、データの種別の多様性です。これまで企業の基幹システムで扱ってきたのは、基本的には構造化されたデータでした。
しかしビッグデータが扱うデータは構造化されたものに限りません。
テキストや音声、ビデオ、ログファイル、検索、位置情報、さまざまなIoT機器から発信されたデータなどの非構造化データが取り扱われていくこととなります。
これまで利用されてきたデータより、大規模で多様なデータを高速で処理するビッグデータは、企業の経営や研究開発の資源として、これまでよりも大きな利用価値をもつようになっています。
プロセスやプロダクト、組織、マーケティングのイノベーションなどについての新たな商品やサービスを創造することにより、持続的に需要を創出していくことが期待されています。
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■ビッグデータの分類
総務省による『平成29年版情報通信白書』では、平成29年を「ビッグデータ利活用元年」と呼び、ビッグデータは政府・企業および個人による次の4つに分類されるとしています。
1. 政府:国や地方公共団体が提供するオープンデータ
「官民データ活用推進基本法」を踏まえ、国や地方公共団体が保有する公共情報についてデータとしてのオープン化が強力に推進される。
2. 企業:暗黙知(ノウハウ)をデジタル化したデータ(知のデジタル化)
産業や企業がもつさまざまなノウハウや蓄積がデジタル化される。
3. 企業:M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ
工場などの生産現場に設置されたIoT機器から収集されるデータや、橋梁に設置されたIoT機器から収集される歪みや振動、通行車両の形式・重量などのデータ。
4. 個人:個人の属性にかかわるパーソナルデータ
個人の属性情報や移動・行動・購買履歴、およびウェラブル機器から収集された個人情報などのデータ。
■ビッグデータの企業での活用事例
ビッグデータは、すでに企業で活用され始めています。企業での活用事例にどのようなものがあるのかをみてみましょう。
●パナソニック「ソーシャルメディアなどでのクチコミ分析」
パナソニックのBtoB車載機器事業において、「車内での利用者の困りごと」を「車内」に関する200万件以上のTwitterのツイートから分析。
「ニオイ」に関する困りごとが多数を占めたことにより、同社の空気清浄器を相手先企業に提案し、採用につながった。
●NTTドコモ「モバイル空間設計」
NTTドコモの携帯電話を保有する個人の位置情報などを、個人が特定できないよう非識別化処理を行い、人口統計データとして事業者や地方自治体などに提供。
●トヨタ自動車「テレマティクスサービス」
トヨタ自動車のテレマティクスサービスを通じて収集・蓄積した車両の位置や速度、走行状況などのデータから交通情報をはじめとする統計データとして加工、交通量改善や地図情報の提供、防災対策などに活用できるように情報提供。
●オムロン・ヘルスケア「Wellness LINK」
ウエアラブル端末を装着した個人から、移動距離や睡眠時間、身長、体重などのデータを収集、医療機関への提供などを通じて生活習慣改善サービスを提供
■ビッグデータのBtoBマーケティングへの活用法
ビッグデータは、BtoBマーケティングにも有効に活用されています。
●リターゲティング
自社サイトの訪問者がどのページをどのくらい見ているかの情報から再訪を促進し、コンバージョン率を向上させる。
●ペルソナ設定
ビッグデータを元に分析される自社サイト訪問者の年齢や性別、家族の有無などを、ペルソナ設定のための参考にする。
●バイヤーの個性を分析する
ビッグデータによって分析されるバイヤーのコミュニケーション方法の嗜好から、購買決定力の有無や、どの程度の影響力をもち、どのような情報に影響されやすいかなど、バイヤーの個性を分析する。
●購入がどの段階にあるかを分析する
バイヤーが、購入初期の調査段階から終盤の決定段階までのどの段階にいるのかを分析。その結果により、バイヤーとのコミュニケーションの方法や頻度を調整、あるいは自社のセールス部門とマーケティング部門のパイプを強化などの対策を講じる。
●相手先企業の迷いを分析
企業が商品やサービスを購入する際の、多くの部署に稟議がまわりステップを踏むことにより生じる迷いが、どこで生じているのかを分析。
その迷いを取り去るためのコンテンツを検討するための判断材料とする。
◆ まとめ
◆ ビッグデータとは、これまで企業が扱ってきた以上に大容量かつ多様なデータのこと。
◆ ビッグデータは、国のオープンデータと企業による知のデジタル化、M2Mのストリーミングデータ、および個人のパーソナルデータの4つに分類できる
◆ ビッグデータはBtoBマーケティングにも有効に活用できる