あなたは「マイクロコンバージョン(MCV)」を知っていますか?「コンバージョン(CV)」を理解している人は多いと思いますが、コンバージョンとは別の考え方になります。マイクロコンバージョンを理解して活用することで、マーケティングにおいて非常に多くのメリットがあるのです。
今回の記事では、マイクロコンバージョンの概要やメリット・デメリット、マイクロコンバージョンの設定方法について解説します。
目次
マイクロコンバージョン(MCV)とは
マイクロコンバージョンとは、最終的なコンバージョンに至るまでの中間地点に設定するコンバージョンで、「中間コンバージョン」とも呼ばれます。まずはマイクロコンバージョンの詳細について解説していきます。
最終的なコンバージョンに至るまでの中間地点に設定するコンバージョン
マイクロコンバージョンとは、Webサイトのユーザーが最終的なコンバージョン(商品購入、お問い合わせ、登録など)に至るまでの、中間地点に設定されるコンバージョンのことを指します。
具体的には、Webサイト内での記事閲覧数や商品ページの滞在時間、カートに商品を追加するなどが挙げられます。これらのマイクロコンバージョンは、最終的なコンバージョンに至る過程で、ユーザーの行動を追跡する上で重要な役割を果たします。
コンバージョンとの違い
マイクロコンバージョンと最終的なコンバージョンの違いは、目的が異なることにあります。最終的なコンバージョンは、Webサイトの目的である、商品購入やお問い合わせなどの行動をユーザーに実行してもらうことが目的です。一方で、マイクロコンバージョンは最終的なコンバージョンに至るまでの過程における、ユーザーの行動を追跡することが目的です。
また、マイクロコンバージョンは、最終的なコンバージョンに至る過程での進捗状況を確認する上でも重要な要素となっています。最終的なコンバージョンの数は、その前段階であるマイクロコンバージョンの数が多いほど、より多くのユーザーがWebサイトにアクセスしていることを示唆しています。
マイクロコンバージョンを設定する重要性
マイクロコンバージョンを設定することによって、最終的なコンバージョンに至る過程でのユーザーの行動を把握することができます。例えば、ユーザーが商品ページにアクセスしてから実際に商品を購入するまでの過程で、どのような商品ページが閲覧され、どのような商品がカートに追加されたかを把握することができます。
さらに、マイクロコンバージョンを設定することによって、Webサイトの改善点を把握することができます。マイクロコンバージョンが少ない場合は、ユーザーの関心を惹くためのコンテンツや、商品が不足している可能性があります。
また、カートに商品を追加するボタンが見つけにくかったり、不具合がある場合はユーザーが商品を購入するまでの過程で離脱してしまったりする可能性があります。このような問題点を把握し、改善することで、ユーザーの行動を促すWebサイトを作ることができます。
さらに、マイクロコンバージョンは、最終的なコンバージョンに至る過程での進捗状況を確認するためにも重要です。例えば、ユーザーが商品ページを閲覧しているが、カートに商品を追加していない場合は、その商品ページの内容が十分に魅力的でない可能性があります。このように、マイクロコンバージョンを確認することによって、最終的なコンバージョンに至る過程での問題点を把握し、改善することができます。
関連記事:コンバージョン(CV)とは? Webマーケティングにおける定義と意味
マイクロコンバージョンを設定する5つのメリット
マイクロコンバージョンを設定することには、Webマーケティングにおいて多くのメリットがあります。以下に、マイクロコンバージョンを設定することで得られる5つのメリットを紹介します。
ユーザー行動を数字で分析できる
マイクロコンバージョンを設定することによって、ユーザーの行動を数字で分析することができます。例えば、ある商品ページにアクセスしたユーザーが、そのページでどの程度スクロールダウンしたか、どの程度時間を費やしたか、といった情報を収集することができます。
また、コンテンツページにおいても、どのようなコンテンツが人気なのか、どの程度の滞在時間があるか、といった情報を収集することができます。これらの情報を分析することで、ユーザーが興味を持ったコンテンツや商品、問題があると思われるページなどを見つけることができます。
Webサイト・コンテンツマーケティングの改善を行うことができる
マイクロコンバージョンを設定することによって、Webサイトやコンテンツマーケティングの改善を行うことができます。上記のように、ユーザーの行動を数字で分析することができるため、改善すべき点を見つけることができます。
例えば、ある商品ページにおいてカートに商品を追加することができるボタンの設置位置を変更することで、カート追加率を向上させることができます。また、コンテンツページにおいては、人気のあるコンテンツをより目立たせたり、問題のあるコンテンツを改善することで、滞在時間やページビュー数の増加などを実現したりすることができます。
広告運用の自動入札に活用することができる
マイクロコンバージョンを設定することで、広告運用の自動入札に活用することができます。自動入札は、ユーザーがWebサイト上でどのような行動をとっているかを基に、広告の入札価格を自動的に調整することができます。
例えば、ある商品ページにアクセスしたユーザーは、その商品を購入する可能性が高いと判断された場合、自動的に入札価格が上昇するように設定することができます。
コンバージョン以外の判断基準となる
マイクロコンバージョンを設定することで、コンバージョン以外の指標に基づいた分析ができるようになります。例えば、Webサイトのページ滞在時間やページビュー数、特定のコンテンツの閲覧数などが考えられます。これらの指標を分析することで、ユーザーの興味関心や嗜好を把握し、Webサイトの改善につなげることができます。
また、マイクロコンバージョンは単純に数値として分析できるだけでなく、どのようなユーザーがどのようなアクションをしているかを詳細に分析することもできます。例えば、ある商品ページでのクリック数をマイクロコンバージョンとして設定することで、どのユーザーがその商品に興味を持ち、どのユーザーがそうでなかったかを把握できます。こうした情報を基に、ターゲットユーザーに向けたマーケティング戦略を立てることができます。
各媒体の機械学習を促進させる
マイクロコンバージョンを設定することで、各媒体の機械学習を促進させることができます。機械学習は、大量のデータを基にモデルを構築し、自動的に最適な広告表示を行う技術です。マイクロコンバージョンは、そのモデルの精度を高めるための重要なデータとなります。
例えば、ある商品の購入がコンバージョンとなる場合、それ以外のユーザー行動に対しては、全く評価されません。しかし、マイクロコンバージョンを設定することで、商品の購入に至らなかった場合でも、ユーザーがどのような行動を取ったかを評価することができます。このように、マイクロコンバージョンは機械学習のモデルを改善するための重要なデータとして位置付けられています。
関連記事:CTA設計・見直しでコンバージョン率を改善する方法
マイクロコンバージョンを設定する3つのデメリット
マイクロコンバージョンを設定することには多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。デメリットも併せて把握した上で、マイクロコンバージョンを活用するようにしましょう。
管理すべきデータが増える
マイクロコンバージョンを設定することにより、コンバージョンに至るまでのユーザーの行動を詳細に把握することができます。しかし、その分管理すべきデータが増えるため、データの整理や分析に時間がかかることがあります。
例えば、ECサイトにおいては、カートに商品を追加したユーザーや商品ページを訪問したユーザーなど、複数のマイクロコンバージョンを設定することができます。しかし、それぞれのコンバージョンに対するデータを個別に管理する必要があるため、膨大なデータを取り扱うことになります。
目標CPA額を再設定する必要がある
マイクロコンバージョンを設定することで、コンバージョンに至るまでのユーザーの行動を把握し、広告配信を最適化することができます。しかし、その分目標CPA額の設定に注意が必要です。
通常、広告運用においては、目標CPA額を設定して、それを達成するための広告予算や配信方法を決定します。しかし、マイクロコンバージョンを設定する場合には、コンバージョンに至るまでの一連の流れを考慮した上で、目標CPA額を再設定する必要があります。
例えば、ECサイトにおいては、商品ページを訪問したユーザーがカートに商品を追加した場合と、直接商品ページを訪問したユーザーがカートに商品を追加した場合とでは、その後のコンバージョン率が異なることがあります。そのため、それぞれのマイクロコンバージョンに対して、目標CPA額を再設定する必要があります。
自動入札への配慮が必要になる
マイクロコンバージョンの設定により、自動入札に活用することができるようになります。自動入札は、広告主が設定した目標を達成するために、自動的に入札単価を変更するシステムです。
しかし、マイクロコンバージョンの設定が不適切である場合、入札単価を調整する際にマイクロコンバージョンが考慮されない場合があります。そのため、マイクロコンバージョンを設定する際には、入札戦略を選択する前に、どのようなマイクロコンバージョンを設定するかを慎重に検討する必要があります。
また、マイクロコンバージョンが設定されている場合、自動入札の精度が高まり、広告主が達成したい目標に合わせた最適な広告表示が行われます。ただし、適切なマイクロコンバージョンが設定されていない場合、自動入札は効果的に機能しない可能性があります。
そのため、広告主はマイクロコンバージョンを設定する際には、自動入札との適合性を考慮し、入札単価を自動調整するための適切なデータが収集されていることを確認する必要があります。
マイクロコンバージョンを設定するポイント
マイクロコンバージョンを設定する場合、以下のポイントに留意することが大切です。
コンバージョンと関連がある指標を設定する
マイクロコンバージョンを設定する上で最も重要なことは、それが本来のコンバージョンにどのように関連しているかを明確にすることです。つまり、コンバージョンが「購入完了」である場合、マイクロコンバージョンは「カートに追加ボタンのクリック」、「商品詳細ページの閲覧」、「価格情報の確認」などといった行動が該当します。
これらの行動は、本来のコンバージョンにつながる可能性があるため、データの収集や改善のためにマイクロコンバージョンとして設定することができます。しかし、単にその行動を収集するだけではなく、その行動に対して改善施策を講じる必要があります。
例えば、「カートに追加ボタンのクリック」がマイクロコンバージョンである場合、それが少ない場合には、そのボタンの位置や色、表示される商品の情報などを改善していくことで、より多くのユーザーにカートに商品を追加してもらえるようになるでしょう。
Webサイトの目的に合わせた設定
マイクロコンバージョンを設定する際には、Webサイトの目的に合わせて設定することが重要です。例えば、ECサイトであれば「購入完了」が最も重要なコンバージョンであり、そのためのマイクロコンバージョンは「カートに追加ボタンのクリック」、「商品詳細ページの閲覧」などが該当します。
一方で、ブログサイトであれば「購入完了」は存在しないため、マイクロコンバージョンの設定も異なってくるでしょう。例えば、記事の閲覧数や読了率、コメント数などがマイクロコンバージョンとして設定されることがあります。
Webサイトの目的に合わせたマイクロコンバージョンの設定は、データの収集や改善につながるだけでなく、Webサイトの方向性を明確にすることにもつながります。
設定されたマイクロコンバージョンの追跡
マイクロコンバージョンを設定した後は、そのコンバージョンの進捗状況を確認し、改善を図っていく必要があります。そのためには、Googleアナリティクスのコンバージョン追跡機能を使用することが重要です。
コンバージョン追跡機能を使えば、設定したマイクロコンバージョンのデータをリアルタイムで確認することができます。Googleアナリティクスにログインし、[コンバージョン] > [目標]にアクセスすることで、マイクロコンバージョンの進捗状況を確認できます。
また、設定したマイクロコンバージョンの数値を元に、マイクロコンバージョンに関連するページやコンテンツの改善を行うことができます。例えば、マイクロコンバージョンが「お問い合わせフォームの送信」である場合、フォームのレイアウトや文章の改善などを行うことで、マイクロコンバージョン数を増やすことができます。
マイクロコンバージョンの進捗状況を確認し、改善を図ることで、最終的なコンバージョンに繋がるユーザー行動を促進することができます。そのためには、定期的なチェックや改善が必要不可欠です。
ボリュームの数が一定量ある階層付近に設定する
マイクロコンバージョンの設定は、Webサイト内の特定のアクションを追跡するためのものであり、アクションが多すぎると管理が煩雑になる上に、アクションが少なすぎると分析の精度が落ちるというデメリットがあります。
マイクロコンバージョンを設定する上で、アクションの数を適切に設定するためには、そのアクションが一定数以上発生する階層付近に設定することが重要です。これにより、アクションの発生数が少なすぎず、多すぎず、適切な数になります。
例えば、ECサイトにおいては、商品ページやカートページにマイクロコンバージョンを設定することが多いです。これは、商品ページでは「商品詳細の閲覧数」や「お気に入りに追加された数」、カートページでは「カートに追加された商品の数」などが設定されることが一般的です。
また、コンテンツサイトにおいては、記事ページやお問い合わせページにマイクロコンバージョンを設定することが多いです。これは、記事ページでは「閲覧数」や「いいね数」、お問い合わせページでは「問い合わせの送信数」などが設定されることが一般的です。
関連記事:コンバージョンの種類とは?KGI・KPIとの関係性や成果を上げるための施策も紹介
マイクロコンバージョンの設定方法
マイクロコンバージョンは、Webサイトの訪問者が行った小さなアクションを追跡するためのツールです。例えば、商品をカートに追加したり、ニュースレターの購読フォームに登録したりするなど、大きなコンバージョンに直接つながらないアクションを記録することができます。これにより、Webサイト上の訪問者の行動をより詳細に把握し、マーケティング戦略の改善に役立てることができます。
ここでは、Google Adsを例にして、マイクロコンバージョンの設定方法について解説します。
コンバージョンアクションのカテゴリを設定
まず、マイクロコンバージョンのカテゴリを設定します。このカテゴリは、Webサイト上の特定のアクションに関連するものです。
例えば、商品購入に関連するマイクロコンバージョンのカテゴリは「購入前アクション」、ニュースレターの購読に関連するカテゴリは「登録アクション」などです。
管理しやすいコンバージョンの名前を設定する
マイクロコンバージョンを設定する際には、その名前を設定する必要があります。この名前は、後からレポートを確認する際に役立ちますので、分かりやすく簡潔なものを設定しましょう。
例えば、取りたいコンバージョンが「購入完了」である場合、マイクロコンバージョンは「カートに追加ボタンのクリック」などといったものになります。この場合、マイクロコンバージョンの名前には「カートに追加」という名前を設定すると分かりやすくなります。
カウントを「初回のみ」にする
マイクロコンバージョンは、同じ人が何度も行う可能性があるため、一人のユーザーが複数回行った場合に複数回カウントされてしまうことがあります。しかし、通常は一人が何度も行うことは稀であるため、カウントを「初回のみ」にすることで、一人のユーザーが一回だけカウントされるようにすることができます。
この設定によって、マイクロコンバージョン数が過大になることを防ぎ、より正確なデータを取得することができます。
コンバージョン列に含めるにチェック
マイクロコンバージョンを追跡するには、コンバージョン列に含めるオプションを有効にする必要があります。これにより、マイクロコンバージョンのデータがコンバージョンレポートに含まれるようになります。
アトリビューションモデルは減衰を採用
アトリビューションモデルは、複数のマーケティングチャネルを使用して、ユーザーがコンバージョンに至るまでのプロセスを追跡するための方法です。Googleアナリティクスでは、最後のクリックモデル、線形モデル、時間減衰モデル、地点減衰モデルなど、様々なアトリビューションモデルが用意されています。
減衰モデルとは、最後のクリックによるアトリビューションではなく、複数のチャネルにわたるユーザーのエンゲージメントに基づくアトリビューションを行う方法です。時間減衰モデルでは、最後のアクションから遡って、過去のアクションが現在のコンバージョンにどの程度影響を与えたかを考慮します。最初のアクションがコンバージョンに最も影響を与え、時間が経つにつれてその影響が減少すると仮定しています。
このような減衰モデルを採用することで、マイクロコンバージョンの影響力を正確に評価することができます。例えば、ユーザーが商品ページを訪問し、カートに商品を追加し、その後、別のマーケティングチャネルから戻って購入を完了した場合、最後のクリックモデルでは購入完了に対してクレジットが与えられます。
しかし、時間減衰モデルを使用すると、カートに追加したマイクロコンバージョンにもクレジットが与えられるため、マイクロコンバージョンが実際の影響力を持つことが分かります。
関連記事:アドワーズ(現Google広告)とは!基本的な知識から始め方まで解説!
まとめ
本記事では、マイクロコンバージョンの概要や設定方法について解説してきました。マイクロコンバージョンとは、ユーザーの行動や意図を追跡し、コンバージョンに至るプロセスを可視化するための指標のことです。マイクロコンバージョンは、最終的なコンバージョンに至るまでのステップを把握し、それぞれのステップでの改善点を見つけるための重要な役割を担っています。
その上で、マイクロコンバージョンの設定においては、以下のポイントに注意する必要があります。
● コンバージョンと関連がある指標を設定する
● Webサイトの目的に合わせた設定を行う
● 設定されたマイクロコンバージョンの追跡を行う
● ボリュームの数が一定量ある階層付近に設定する
マイクロコンバージョンは、Webサイトの改善に欠かせない指標であり、設定方法を理解して正しく活用することで、ユーザーの行動や意図を把握し、コンバージョン率の向上やサイトの改善につなげることができます。是非、今回の記事を参考にして、自社サイトのマイクロコンバージョンの設定を見直してみてください。