2023年1月現在において、無数のSaaSが市場に出回っているうえに、多くの企業でもSaaSの導入が進んでいます。自社でもSaaSを導入したいと考えているものの、SaaSが具体的にどのようなものなのか、あるいは、どのようなメリットが享受できるのかを知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、SaaSの概要や、導入によるメリット・デメリットについて解説するとともに、SaaSと混同されやすいサービスについても解説します。
SaaSの導入を検討している場合は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
SaaSとは?
「SaaS」(Software as a Service:「サース」または「サーズ」)とは、ソフトウェアを利用者(クライアント)側に導入するのではなく、提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウェアを、インターネットなどのネットワークを経由してそれぞれの利用者がアクセスして利用できるサービスのことです。
従来、システムやソフトウェアを使用するためには、デバイスにダウンロードするオンプレミス型で運用するのが一般的でした。オンプレミス型にもメリットはあるものの、同時に複数のデバイスから編集ができなかったり、マルチデバイスに非対応であったりする不便も多いものです。
2020年あたりから急速にテレワークが浸透するなかで、オンプレミス型のシステムを利用するデメリットが浮き彫りになり、SaaSへの移行が活発になりました。
2023年現在においても、多くの企業でSaaSの利用が進んでおり、業務効率化を図るうえでマストのサービスになっていると言えるでしょう。
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SaaSの2つの特徴
SaaSには、大まかに分類すると下記の2つの特徴があります。
● インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも編集できる
● 複数人のチーム(組織)で運用できる
それぞれ順番に解説します。
インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも編集できる
SaaSのソフトウェアは、クライアントそれぞれにアカウントが発行されており、オンライン環境でそのアカウントにログインするだけでソフトウェアを利用できます。オフィスにいなくても、オンライン環境であればどのような場所・デバイスでもソフトウェアを使用できるのです。
そのため、リモートワークやフレックス制の企業であったとしても、業務の効率が下がりにくいというメリットがあると言えるでしょう。
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複数人のチーム(組織)で運用できる
SaaSでは、同時に複数のデバイスからログインできるうえに、複数のユーザーが同時に編集することも可能です。そのため、一つのファイルを共有しながらオンラインで打ち合わせを行いつつ、参加メンバーが直接ファイルを編集することもできます。
また、リンクなどを共有することによって、SaaSツールを所持していない人に対しても、ファイルの中身を簡単に共有することも可能です。
従来のツールでは、1人のユーザーしか編集が行えなかったり、共通のソフトを持っていなければデータの共有ができなかったりすることが非常に多く見られました。SaaSが導入されることによって、よりフレキシブルな運用が可能となり、業務の効率が大幅に向上したと言えるでしょう。
SaaSとその他の言葉の違い
SaaSに似た言葉は非常に多く、それぞれの意味を混同して解釈してしまうケースが非常に多く見られます。
ここからは、SaaSと似た言葉の意味と、SaaSとの違いについて解説します。
PaaSとの違い
「PaaS」は「Platform as a Service」の略で、「パース」と呼びます。PaaSでは、アプリケーションの実行時に使用するプラットフォームを、インターネットを介して使用できます。プラットフォームとしては、サーバーシステム、ネットワーク・OSなどが代表例です。
「PaaS」では、すでに用意されているサーバーシステムなどを活用できるため、開発環境の整備などに時間や労力が取られることはありません。また、ベンダー側でプラットフォームの管理を行ってくれて、セキュリティ面や機能面の担保がある状態で開発を行えるのも強みかもしれません。ですので、システム開発に注力したいという場合に適しています。
PaaSの代表的なサービスとして、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)などが挙げられます。
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SaaSはソフトウェアなどを提供している一方で、PaaSでは、上記のAWSなどのソフトが作動するための開発プラットフォームを提供していると考えておくと良いでしょう。
IaaSとの違い
「IaaS」は「Infrastructure as a Service」の略で、「イアース」または「アイアース」と呼ばれています。
IaaSはソフトウェアを実行するための仮想サーバーやストレージ、ネットワークなどといった基盤を提供するサービスです。ユーザーは提供された仮想サーバーにOSやミドルウェア、アプリケーションソフトウェアなどをインストールし、さらにネットワーク設定などを行って利用します。
IaaSを導入すると、サーバーなどを自社で用意する必要がないことから、ソフトなどをより低コストで運用することが可能です。
IaaSは上述のPaaSと混同されることが多いものですが、IaaSはサーバーやストレージなどの基盤を提供するという点で大きく異なりますので、混同しないようにしましょう。
BaaSとの違い
「BaaS」は「Banking as a Service」の略で、銀行が提供しているサービスをクラウドサービスとして提供されているもののことです。主にECサイトにおける決済機能などで活用されており、銀行などのページへ飛ばずに、そのまま決済が行えるようになっています。
BaaSが登場する前は、ECサイトなどで決済を行う際には、金融機関のページに遷移したうえで実行する必要がありました。そこから、BaaSの技術が確立されたことによって、一般の企業や事業者でも決済システムを使えるようになり、従来のような煩雑なページ遷移がなくなったのです。
BaaSはSaaSなどと大きく異なり、金融系に特化しているという特徴があります。
DaaSとの違い
「DaaS」は「Desktop as a Service」の略であり、クラウド上に仮想デスクトップを構築するサービスの一種のことです。DaaSによって仮想デスクトップを構築することで、デスクトップで行う作業をクラウド上で行えるようになるため、使用するデバイスの性能に依存することなくソフトを使用したり、その他の業務を行ったりすることが可能です。
SaaSのメリット
SaaSが近年注目を集めており、利用者が増えている背景には、下記のようなSaaS独自のメリットがあるからです。
● ランニングコストが安い
● ソフトウェア開発が不要なのでイニシャルコストも安い
それぞれについて順番に解説します。
ランニングコストが安い
ソフトウェアやシステムを使ううえでのランニングコストとして、バージョンの更新やセキュリティ対策にかかるコストの割合は非常に大きなものです。
自社開発やオンプレミス型のソフトウェアの場合、バージョン更新・セキュリティ対策などのメンテナンス業務は、すべてユーザー側の仕事になることから、定期的に利用者がコストを支払い続ける必要があります。
その一方で「SaaS」では、ベンダーが各種のメンテナンスを行うため、サービス利用者が費用を負担する必要がありません。サービス内容も常に更新されるうえに、セキュリティの面でも安全性が高まることから、企業や事業主に重宝されています。
ソフトウェア開発が不要なのでイニシャルコストも安い
ソフトウェアやシステムをオンプレミス型で使用する場合、導入に大きなコストがかかってしまいます。また、導入決定から実際の導入までに、長い期間を要することも珍しくありません。
「SaaS」では、クラウドサーバーのソフトウェアを利用するため、ソフトウェアの開発は必要ありません。ソフトウェアの開発費用を削減できるとともに、開発期間も不要であるため、費用・時間の両方のコストダウンが期待できます。
また、従業員の増減が多い場合でも、アカウントの増減だけで柔軟に対応できることから、可変性に優れているのも大きなメリットと言えるでしょう。
SaaSのデメリット
ここまで、SaaSのメリットについて解説してきましたが、当然ながらメリットだけではありません。SaaSにおけるデメリットとして最も代表的なものは、カスタマイズの自由度が低い点が挙げられます。
先述したとおり、SaaSはベンダーが提供しているサービスであるため、ベンダーが設定した範囲でのカスタマイズしか行えません。そのため、SaaSの利用を開始して自社の業務を行うにあたって機能が不足していた場合、SaaSに合わせる必要が生まれるのです。
業務効率化のために導入したSaaSの機能によって、業務形態などが変わって業務効率が下がってしまっては本末転倒です。自社の業務に適したSaaSが見つからない場合は、オンプレミス型のシステム導入や自社開発を検討することを推奨します。
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SaaSの代表例
SaaSには数々のサービスがありますが、代表的なSaaSとして下記の4つが挙げられます。
● Googleスプレッドシート
● Dropbox
● サイボウズ
● メルカート
それぞれ順番に解説します。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、Googleが提供しているオンラインで編集可能な表計算ソフトのことです。Googleスプレッドシートを使用することで、マルチデバイスでの編集が実現するほか、Web上のCSVを直接シート化することや、他のGoogleサービスとの連携なども簡単に行えます。
簡単な表計算ができることはもちろん、複雑な関数も扱えることから、大きな規模の数値管理も問題なく行えるでしょう。
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Dropbox
Dropboxとは、専用のフォルダへファイルをドラッグ&ドロップすることで、オンラインストレージとローカルにあるコンピューターとの間でデータの共有や同期を行うサービスのことです。
Dropboxを使用することで、ストレージ内にあるファイルの変更履歴をロールバックできるため、運用状態をより明確なものにすることが可能です。また、他のオンラインストレージでは、ファイルを変更するためにはオンライン環境での操作が必須ですが、Dropboxではオフラインでも使用できる点が大きな強みと言えるでしょう。
サイボウズ
サイボウズとは、社内で必要となるシステムの機能を網羅的に備えたSaaSです。企業内におけるファイル管理やメール管理、ToDoリスト作成の機能はもちろんのこと、タイムカード機能なども備わっているため、人事管理やプロジェクト管理がサイボウズ1つで完了できるのです。
1ユーザーあたり月額500円で使用できる点から、中小企業を中心に多くの企業で導入されています。
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メルカート
メルカートは、豊富な実績を持ったECのエキスパートが、EC制作から運用までを一元サポートするSaaSです。ジャンルや規模を問わず、さまざまな企業に導入されており、大きな成果を上げているEC系のSaaSとして知られています。
ECを作成できるサービスはこれまで多く提供されてきたものの、メルカートは2023年1月現在では唯一、分析や改善・マーケティングなども行ってくれるEC系のSaaSです。ECにおける成果を最大化させたい事業者にとって、理想的なSaaSであると言えるでしょう。
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まとめ
本記事では、SaaSの基本的な概要や、SaaSに似た用語との違い、おすすめのSaaSについて解説しました。SaaSを導入することによって、業務の効率化を低コストで行えるというメリットがあります。また、2023年1月現在においても、非常に多くのSaaSが開発されているため、自社に合ったものを探すことが可能です。
ぜひ本記事を参考に、SaaSを有効活用して、事業の拡大を図ってみてはいかがでしょうか。