CRMやSFAシステムの導入に際して、どのようなシステムを選定しようか迷っていませんか。そのシステムを選ぶ際に、周りの評判を聞きながら良いシステムを選びたいものです。中でもよく候補に上がるSalesforceは、一般的に浸透している一方で様々な意見があり、なかなか活用できてないと言うことを聞くかもしれません。そもそもSalesforce(セールスフォース)とはどのようなシステムなのか、その特徴や、機能を初心者の方でもわかるように解説します。
Salesforceは、クラウドベースのCRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援)システムを提供する世界最大級のプラットフォームです。多くの企業が顧客データの一元管理や営業プロセスの効率化、マーケティング活動の最適化などにSalesforceを活用しています。その豊富な機能と柔軟なカスタマイズ性により、様々な業界や規模の企業に対応可能な総合的なビジネスソリューションとして知られています。
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目次
Salesforce(セールスフォース)とは
Salesforce(セールスフォース)とは、クラウドベースのCRM・SFAサービスを提供しているアメリカに本社を置く企業であり、サービスの総称を指します。
CRMとはCustomer Relationship Managementの頭文字をとったもので、顧客との関係性を管理することができるツールです。SFAとはSales Force Automationの頭文字をとったもので、営業支援システムと訳されます。
CRMの一般的な構造
SalesforceはCustomer 360という営業やカスタマーサービス、マーケティング、EコマースからITまでさまざまな部門が顧客データを中心に仕事を進めることを可能にするサービス群を提供しています。Customer 360には、Salesforce社が持つ大きくマーケティング、セールス、コマース、サービスの4種のカテゴリーの中の様々なシステムを、単一のCRMプラットフォームに統合したものです。
多くの方は、Salesforceといえば、SFAのSales Cloudをイメージする方が多いかもしれません。しかし、Customer 360には例えば、マーケティングオートメーションのMarketing Cloudや、CRMのService Cloudなど多様なシステムを備えています。さらに、Salesforceは常に新しい技術を取り入れ、AIやIoTなどの最新テクノロジーを活用した機能拡張も行っており、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する強力なツールとしても注目されています。
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Salesforceを構成するサービスと機能
SalesforceのCustomer 360を構成するサービスと機能の中でもここでは主要な5つをご紹介します。Salesforceは、クラウドベースのCRMプラットフォームとして、営業、マーケティング、カスタマーサービス、Eコマース、そしてITに至るまで、幅広い業務領域をカバーする統合的なソリューションを提供しています。これらのサービスは、顧客データを中心に据えた一貫性のあるアプローチを可能にし、企業が顧客との関係性を効果的に管理し、ビジネスの成長を促進することを支援します。Salesforceの各サービスは、単独でも強力な機能を持っていますが、それらを組み合わせることで、さらに大きな相乗効果を生み出すことができます。
Sales Cloud
Sales CloudはSFAとして最も有名なツールです。
顧客管理から案件管理、見込み客管理、営業プロセス管理などの管理機能を有し、売上予測やレポート出力といった成果に関わる機能もあります。営業活動において、商談の決定から成約まで、一連の活動の効率化を図り、成約をサポートします。
タスクの自動化機能のほか、集約した情報を使って、お客様の購買を促すインサイトを導き出すことができます。さまざまなチャネルでの顧客接点を最大限に活用します。
Salesforceの主力製品であるSales Cloudは、営業部門の生産性向上に大きく貢献します。リアルタイムでデータを更新・共有できるため、営業チーム全体の情報共有がスムーズになり、より効果的な営業戦略の立案が可能になります。また、AIを活用した予測分析機能により、商談の成約確率を高め、営業パフォーマンスの向上を支援します。
Sales Cloudの基本構造
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Service Cloud
Service Cloudは、SalesforceのCRMツールです。カスタマーサポートを効率化し、顧客満足度の向上を目指します。問い合わせフォームの自動作成機能やチャットボット設置機能などを活用して顧客対応を行います。メール、WEB、SNSなど多数のチャネルに対応しており、これらを活用して顧客との関係性を強化できます。Sales Cloudで獲得した顧客に対して、Service Cloudでより深い関係性を構築し、ロイヤルカスタマーの育成に役立ちます。
Service Cloudの特長として、プロセスの自動化機能があります。これにより、現場の労力を軽減しながら、成果の最大化を目指すことができます。また、AIを活用したパーソナライズ機能により、顧客とのコミュニケーションをより効果的に行うことが可能です。Salesforceのプラットフォーム上で他のクラウドサービスと連携することで、シームレスな顧客体験を提供できるのも大きな利点です。
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Marketing Cloud
Marketing Cloudは、いわゆるマーケティングオートメーション(MA)です。一般的なMAの機能である、リードの創出や分析、セグメンテーション、スコアリング、シナリオの自動作成、メールの自動配信などの機能を網羅しています。
顧客データを活用し、メール、Web、SNS、モバイルアプリなどのさまざまなチャネルを通じて顧客と最適なコミュニケーションを施策として実行していくことができます。顧客とタッチポイントを創出しエンゲージメントを向上させ、長期に渡る信頼関係の構築を実現できます。
自動化することで、メールやWebサイトなどのコンテンツの制作に注力することができるので、より顧客との関係を強化できます。またAIを搭載した分析機能により、顧客のインサイトに合わせた関係構築が可能です。さらに、Salesforceの他のクラウドサービスとシームレスに連携することで、より効果的なマーケティング活動を展開できます。
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Commerce Cloud
Commerce Cloudは、SalesforceのEコマースプラットフォームです。CRMと連携し、顧客情報を駆使してWebサイト、スマートフォン、SNSなどを通じて顧客一人ひとりにとって最適なカスタマーエクスペリエンスを提供します。顧客がECサイトで商品を見つけ、配達が完了するまで、ショッピングの全過程で価値を実感することができます。
グローバル企業を中心に、世界で多数のECサイトで導入されています。
Commerce Cloudでは、大きくB2C Commerce、B2B Commerce、Commerce Cloud Endless Aisleの3つの製品が提供されています。
B2C Commerceは、個人顧客向けです。このツールとECサイトに連携させることで、発注情報や在庫管理情報などがリアルタイムに反映させられます。これにより、できるだけ最新の情報を顧客に提供することができます。
B2B Commerceは、法人顧客向けです。法人顧客との取引をサポートします。手数が少ないスムーズな再注文や関連取引先、契約価格の決定、カスタムカタログなど、BtoBに特化した機能でオンライン購入がシンプルになります。
Commerce Cloud Endless Aisleは、実店舗とオンライン販売の両方を行うのが定着している、いまの時代に適した製品です。実店舗とECサイトで在庫を共有できるので、強力に二つをつなぐことができます。販売機会損失防止につながる上に、顧客満足にもつながるでしょう。
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Salesforce Platform
Salesforce上で動作するアプリケーションの設計や構築、実行や管理などがプラットフォーム上で完結する製品です。プログラミングの知識不要でアプリケーションを開発できる機能が備わっています。Salesforce Platformは、ビジネスニーズに合わせてカスタマイズ可能な柔軟性を提供し、企業独自のワークフローやプロセスを効率的に構築することができます。また、AI機能を活用したインテリジェントな分析や予測機能も搭載されており、データドリブンな意思決定をサポートします。セキュリティ面でも高い信頼性を誇り、企業の重要なデータを安全に管理することができます。
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Salesforceを最大限に活用できそうな企業
Salesforceは、さまざまな機能がそろっていることがわかります。このSalesforceを最大限活用できるであろう企業をご紹介します。Salesforceは特に、顧客データを活用したマーケティングや営業活動を重視する企業に適しています。また、複数の部門や拠点を持つ大規模な組織や、グローバルに展開する企業にとっても、Salesforceの統合的なプラットフォームは大きな価値を提供します。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、顧客体験の向上を目指す企業にとっても、Salesforceは強力なツールとなります。これらの特性を持つ企業は、Salesforceの機能を最大限に活用し、競争力を高めることができるでしょう。
企業規模が大きい
Salesforceは企業規模が大きい場合に特に向いているといえます。Salesforceは社内の一部の人間だけでなく、部署間で広く連携して活用できる特長があるため、その機能を充分に発揮するための環境があれば最適といえます。営業部門やマーケティング部門などの部署がそれぞれ確立されており、さらに連携に課題を感じている場合は有効です。メリットの箇所でもご紹介しますが、Salesforceは複数のツールを部署別に導入し、情報連携するのが得意です。そのため、企業規模が大きく部署連携が意味を成し得る場合には、Salesforceの特長を活かすことができるでしょう。また、Salesforceのような包括的なCRMシステムは、大規模な顧客データベースを効率的に管理し、分析する能力があるため、多くの顧客を抱える大企業にとって特に有益です。
専任担当者を付けることが可能
Salesforceを利用する企業の人数が大きく、専任の運用担当者を複数人用意することができれば、Salesforceを使いこなすことができます。Salesforceの豊富な機能を最大限に活用するためには、システムに精通した担当者が必要不可欠です。専任担当者は、Salesforceの設定やカスタマイズ、データ管理、ユーザーサポートなど、多岐にわたる業務を担当します。また、Salesforceの新機能や最新のベストプラクティスを常に学び、組織全体の業務効率化に貢献することができます。反対に、人員確保がむずかしい場合には、まずは担当者を確保することが成功の秘訣といえます。Salesforceの導入を検討する際は、専任担当者の配置を含めた運用体制の構築を重要な検討事項として考慮することが重要です。
データ一元管理のニーズがある
Salesforceの特徴として、顧客情報や問い合わせ情報、売上予測などのデータを一元管理できるという点があります。データ一元管理のニーズがある場合には、Salesforceは非常に適したソリューションといえます。例えば、営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート部門など、複数の部門で顧客データを共有し、統合的に活用したいという企業にとっては、Salesforceの強みが発揮されます。また、Salesforceのクラウドベースの特性により、リアルタイムでデータを更新・共有できるため、常に最新の顧客情報にアクセスできる環境を整えることができます。もちろん、ただデータ管理できるだけのシステムではないため、他の要素も含めて総合的に検討し、Salesforceを選定条件の一つとするのをおすすめします。
ランニングコストを確保できる場合
Salesforceに限らず、CRMなどは長期に渡って運用します。そのため、ランニングコストが高くなることがあります。Salesforceは業界でも高価という評判もあるため、コストについては充分に検討し、ある程度、予算が長期的に確保できる企業に適しているといえます。特に、企業の成長に伴ってユーザー数が増加する可能性がある場合は、将来的なコスト増加も見込んで計画を立てる必要があります。Salesforceの機能を最大限に活用し、投資対効果を高めるためにも、適切な予算配分と長期的な視点での財務計画が重要です。
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Salesforce導入のメリット
Salesforceを導入することにより、次のようなメリットが期待できます。Salesforceは、企業の営業活動やカスタマーサービス、マーケティングなど、様々な部門における業務効率化と顧客満足度向上を実現する強力なCRMプラットフォームです。その包括的な機能と柔軟なカスタマイズ性により、企業は顧客との関係性を深め、ビジネスの成長を加速させることができます。
Salesforceの導入により、データドリブンな意思決定が可能となり、顧客のニーズをより正確に把握し、適切なタイミングで適切なアプローチを行うことができます。また、クラウドベースのシステムであるため、場所や時間を問わずアクセスが可能で、リモートワークやモバイルセールスにも対応しやすいという利点があります。
さらに、Salesforceのエコシステムを活用することで、サードパーティ製のアプリケーションやツールとの連携も容易になり、より幅広い業務効率化を図ることができます。これらの特徴により、Salesforceは多くの企業にとって、競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要なツールとなっています。
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営業活動の効率化・ノウハウ共有が可能
Salesforceは、営業活動を効率化します。営業部門に導入したいSales Cloudは営業活動における各営業担当者の活動プロセスをすべて可視化し、進捗や重要事項を部門内の誰もが一目で把握できるようになります。すると、どのようなパターンが最も効果を出せているのかを知ることができるため、部門内、チーム内で共有して勝ちパターンや営業ノウハウを踏襲することができます。また、Salesforceの強力なレポート機能を活用することで、営業データの分析や傾向の把握が容易になり、より戦略的な営業アプローチが可能になります。これらの機能を最大限に活用することで、やがて売上、受注率拡大につながるでしょう。
格好の教材になる
Sales Cloudは、営業のノウハウを共有できる特徴をご紹介しましたが、その可視化されたプロセスや勝ちパターンは、格好の新人への教育資料になります。また営業資料などの共有もできるため、資料を準備しなくても新人は自ら学ぶことができる可能性があります。さらに、Salesforceの機能を活用することで、ベテラン社員の営業テクニックや顧客対応のベストプラクティスを効果的に蓄積し、新人教育に活用することができます。これにより、新人の早期戦力化が期待でき、また新人教育に対するコスト削減につながるでしょう。加えて、Salesforceのデータ分析機能を用いることで、成功事例や失敗事例を客観的に分析し、より効果的な教育プログラムの開発にも役立てることができます。
顧客満足度の向上が期待できる
顧客満足度が向上することが期待できます。Salesforceを用いれば、データですべてを管理し、あらゆる顧客の情報を見ながらアプローチできるので、顧客との良好なコミュニケーションを取ることができるでしょう。さらに、Salesforceの Customer 360 プラットフォームを活用することで、顧客のニーズや購買履歴、問い合わせ履歴などを一元管理し、パーソナライズされたサービスを提供することが可能になります。これにより、顧客一人ひとりに対して適切なタイミングで最適な対応を行うことができ、結果として顧客満足度の向上につながります。また、顧客からのフィードバックを迅速に分析し、製品やサービスの改善に活かすことも容易になるため、長期的な顧客ロイヤリティの構築にも貢献します。
部門内、部門同士で連携・情報共有がしやすい
Salesforceは、データによる情報共有が容易です。顧客情報を一元管理し、担当者はもちろん、部門の中の全員の情報共有のほか、部門間でのスムーズな情報共有を実現します。例えば営業部門とマーケティング部門の連携が可能です。また、Salesforceのクラウドベースの特性により、リモートワークなどの場所に縛られない働き方においても、リアルタイムでの情報共有や連携が可能となります。これにより、組織全体の業務効率化やコミュニケーションの円滑化が期待できます。
社員を適正評価できる機能が生きる
Salesforceにある目標管理機能や進捗管理機能などを用いることで、適正な評価につながることがあります。また社員の評価にSalesforceでプロセスが見える化したデータを取り入れることができます。特に、Sales Cloudの営業活動の可視化機能を活用することで、各営業担当者の実績や行動履歴を客観的に把握することが可能になります。これにより、単なる売上実績だけでなく、顧客との接触回数や提案内容の質など、多角的な視点から社員のパフォーマンスを評価できるようになります。結果として、より公平で透明性の高い人事評価システムの構築につながり、社員のモチベーション向上にも寄与する可能性があります。
セキュリティ対応も可能
CRMなどを行いながら、心配になるのが顧客情報の情報漏洩です。その点、Salesforceであれば、拡張機能のSalesforce Shieldを導入すれば、セキュリティ強化が実現でき、顧客情報を保護します。Salesforceは世界中の多くの企業で利用されているため、セキュリティ対策も常に最新の技術が適用されています。例えば、データの暗号化、アクセス制御、監査ログなどの機能により、重要な顧客データを安全に管理することができます。また、Salesforceのクラウドベースの特性上、セキュリティアップデートが自動的に適用されるため、常に最新の保護機能を利用できるというメリットもあります。
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Salesforce導入によって生じるよくある課題
Salesforce導入によって、メリットばかりではありません。次のような課題もあります。
Salesforceは非常に強力なCRMプラットフォームですが、その導入過程では幾つかの課題に直面することがあります。これらの課題を認識し、適切に対処することが、Salesforceを最大限に活用するための鍵となります。
まず、導入後すぐに営業成績が向上するわけではないという点が挙げられます。Salesforceは長期的な視点で見たときに効果を発揮するツールであり、即時的な成果を期待するのは適切ではありません。
次に、入力する項目が多く、データの入力が進みにくいという課題があります。これは特に営業担当者にとって負担となる可能性があり、結果としてシステムの有効活用を妨げる要因となりかねません。
さらに、ランニングコストの高さも多くの企業にとって懸念事項となっています。Salesforceの様々な機能を活用するためには、相応の投資が必要となるため、予算の観点から導入を躊躇する企業も少なくありません。
これらの課題に対しては、適切な導入計画と運用戦略を立てることが重要です。例えば、段階的な導入や、必要最小限の機能からスタートするなど、各企業の状況に応じたアプローチを検討することが有効でしょう。
導入後すぐに営業成績が向上するわけではない
Salesforceは、導入後すぐに営業成績が向上するわけではありません。運用の過程でデータがある程度蓄積されていくまでは成果が出ないのが通例です。そのため、導入すれば1~2ヶ月で営業成績が向上するわけではないのです。導入後に、データが蓄積され、定着すれば、Salesforce導入のメリットが期待できます。
しかし、そのようになかなか導入効果が現れないことで、しびれをきらして「費用対効果がまったく得られない」と判断し、運用を途中で中断してしまうケースも少なくありません。これはSalesforce導入のよくある課題の中でも、特に多い課題といえます。
Salesforceを効果的に活用するためには、長期的な視点を持つことが重要です。導入初期は、主にデータ入力や社内プロセスの調整に時間を要します。この期間中、営業部門や経営陣の理解と忍耐が必要となります。また、Salesforceの機能を段階的に導入し、社内での使用方法を徐々に最適化していくアプローチも効果的です。このように、慎重かつ計画的な導入戦略を立てることで、最終的にSalesforceの真価を発揮し、営業活動の効率化と成果向上につなげることができるのです。
入力する項目が多く、入力されにくい
Salesforceは、システムへの入力の項目が多く、なかなかデータ入力が進まないという課題もあります。また入力はされていても、入力内容が曖昧だったり、入力の方法が人によって異なったりすることもあり、それではチームで運営していく際に情報共有そのものに効果が得られません。これらの課題は、Salesforce導入の成功を妨げる要因となる可能性があります。
入力項目の多さは、詳細な顧客情報を管理できるというSalesforceの強みでもありますが、同時に運用上の障害にもなり得ます。特に営業担当者にとっては、日々の活動記録に時間を取られることで、本来の営業活動に支障をきたす恐れもあります。さらに、入力の質にばらつきがあると、データの信頼性が低下し、CRMシステムとしての価値が損なわれてしまいます。
これらの課題に対処するためには、必要最小限の入力項目に絞り込むこと、入力ルールを明確に定義すること、そして定期的なデータクレンジングを行うことが重要です。また、モバイルアプリの活用や音声入力機能の導入など、入力の手間を軽減する工夫も効果的でしょう。
ランニングコストが高く敬遠される
Salesforceの導入を検討している企業は、ランニングコストが高いことがわかると、足踏みすることもあります。Sales Cloudは、次の価格になっています。(2025年6月現在)
・Enterprise
1ユーザー月額19,800 円(年間契約)
・Unlimited
1ユーザー月額39,600 円(年間契約)
・Einstein 1 Sales
1ユーザー月額60,000 円(年間契約)
1ユーザー当たりの価格が高いと感じる場合は多いようです。特に中小企業にとっては、Salesforceの導入コストが大きな負担となる可能性があります。そのため、導入前に費用対効果を慎重に検討し、自社の予算や規模に見合ったプランを選択することが重要です。また、段階的な導入や必要最小限の機能から始めるなど、コスト最適化の工夫も検討する価値があるでしょう。
Salesforceの導入課題の解決策
Salesforceには導入課題がいくつかあることをご紹介してきました。これらは、次のような対応により解決することが可能です。Salesforce導入の成功には、事前の十分な準備と運用後のフォローアップが重要です。
まず、導入の目的を明確にし、社内で共通認識を持つことが大切です。短期的な成果を求めるのではなく、中長期的な視点で導入効果を評価する姿勢が必要です。また、データ入力の負担を軽減するため、必要最小限の項目に絞ることや、入力ルールを明確にすることが有効です。
ランニングコストについては、自社に本当に必要な機能を見極め、適切なプランを選択することで最適化できます。さらに、Salesforceの活用を支援するパートナー企業と連携し、導入・運用のサポートを受けることで、より効果的な活用が可能になります。
これらの対策を講じることで、Salesforceの導入課題を克服し、その強力な機能を最大限に活用することができるでしょう。
導入の目的を明確にして社内共通認識を持つ
導入後すぐに成果が出ないことは、Salesforce導入の大きな課題の一つです。この課題を解決するためには、導入の目的を明確にし、社内で共通認識を持つことが重要です。Salesforceの導入は単なるツール導入ではなく、業務プロセスの改善や組織の変革を伴うプロジェクトです。そのため、経営層を含めた全社的な取り組みとして位置づけ、導入の目的や期待される効果、必要な期間などを明確にしておく必要があります。例えば「3年後に売上を20%増加させる」といった具体的な目標を設定し、それに向けてSalesforceをどのように活用していくかを検討します。この共通認識があれば、短期的な成果にとらわれず、長期的な視点で粘り強く運用を続けることができるでしょう。また、定期的に進捗を確認し、必要に応じて方針を調整することで、より効果的なSalesforce活用が可能になります。
管理する項目を増やし過ぎない
入力する項目が多く、入力されにくいという課題に対しては、入力を促すだけでなく、そもそも管理する項目を増やし過ぎないという予防策があります。
Salesforceのシステムには、管理ができる項目の種類が豊富にあることが多いのが特徴です。はじめから多く管理しようとして、数多く機能を盛り込んでしまうと、入力項目が増えすぎて入力の手間がかかるようになり、一部の人員にしか入力されなくなります。導入目的を前提に、まずは必要な項目にしぼって管理すると良いでしょう。そして人員が入力に慣れるまでは様子を見るのがおすすめです。
データ分析やデータ活用をしっかり行う
データ入力がきちんとされればまず一つの課題をクリアできますが、その後はデータ分析やデータ活用しっかり行うことが重要です。その上で営業活動やマーケティング活動に活かしていくことができるからです。ただ、データを入力すれば良いというわけではないことはよく理解しておく必要があります。管理者がしっかりとデータ分析を行い、現場にフィードバックすることが大切です。もし改善点があれば伝えていくことで、成果につながりやすくなるでしょう。
無料トライアルで操作感などを試してみる
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Salesforceの基本的な使い方
続いて、Salesforceの基本的な使い方をご紹介します。
1.Sales Cloudの基本的な使い方の流れ
Sales Cloudは、基本的に次の流れで使っていきます。まずデータの「リード」「取引先」「取引先責任者」「商談」などの構造を把握します。そしてリードや取引先責任者の項目にデータを入力し、蓄積していきます。動きが出ればレポートを作成し、ダッシュボードに示します。そしてデータを基に新たな戦略や行動につなげていきます。
Sales Cloudでは、まず見込み客の「リード」にデータを入力していきます。そこから取引が開始されれば、リードの情報を使用して「取引先」と「取引先責任者」が作成され、必要に応じて商談が作成されます。
2.Sales Cloudの開始前に導入目的などを決める
何より使い始めるよりも大切なのは、Sales Cloudの開始前に導入目的などを決めることです。Salesforceのサクセスナビという解説ページでは、「どの部署で、何人が、何をするかを明確にしましょう」と表現されています。
つまり、導入する上で組織として目指すべきゴールを設定する必要があるということです。目指すべきゴールのイメージがないと、社内のメンバーから疑問や不安が生じ、うまくいかないのは目に見えています。その進捗を測る評価指標KPIの設定もうまくいかないでしょう。
まず導入で最終的に達成したい「ゴール」を定め、それを実現するための「目標」を決めます。ここでは今年度に達成したい目標などが該当します。そしてその目標達成のための「戦略」を練ります。戦略は3-6ヶ月で取り組みます。さらに具体的な日々の「活動」内容を決めていきます。
目標、戦略、活動にはそれぞれ、進捗を図るための評価指標KPIを設定します。
Salesforceに API連携してできること
Salesforceの大きな特徴として、他ツールのさまざまなものと連携が容易であることが挙げられます。Salesforceはクラウドシステムであるがゆえに、様々なツールとAPI連携することができます。
APIとは、API(Application Programming Interface)のことで、直訳すれば「アプリケーションとプログラムをつなぐインターフェース」となります。つまり、異なるソフトウェアとソフトウェアをつなぐインターフェースのことを指します。
Salesforceには10種類以上のAPIが存在しており、それぞれ異なる機能があります。そのAPIを介することで外部のアプリケーションや機能を利用できるようになります。
Salesforceだけでは不足している機能や、Salesforceで蓄積した顧客データを他の部門や業務にも使いたい場合に、APIで補えるのがメリットです。
Salesforceに連携する例を挙げると、例えばマーケティングオートメーションの「Marketo」やBIツールの「Motion Board」をつなぐことで、幅広い情報共有と連携が可能になります。電子署名ツール「DocuSign」などとつなげば、電子契約が可能になります。また会計分野でもクラウド会計ソフト「freee」とつなぐことでSalceforceの受注情報を元に、freee会計で見積書や請求書を自動発行したり、Salesforce上での入金ステータスをリアルタイムにfreeeに反映するなどして、営業部門と経理部門とのコミュニケーション効率化につながります。
関連記事:APIとは何か?いまさら聞けない基本的な意味を解説
Salesforceの導入事例
ここで、Salesforceの導入事例を3つご紹介します。
1.電力会社
革新的なサービス開発に強いある電力会社は、顧客サービスの増加や多様化により、情報管理システムに起因する問題が多く発生する事態となっていました。そこでSalesforceを全社展開し、複数のSalesforce製品を組み合わせ、マルチクラウドで各種業務改革を実現しました。
コールセンター・カスタマーサポート向けのクラウドサービスであるService Cloudとコールセンターシステムの連携によって顧客対応の品質向上を実現しました。また営業数値の集計工数を月16時間削減しました。
さらにMarketing Cloudを利用し、マーケティング施策を最適化した結果、メール開封率50%以上となり、新ビジネスも生み出しました。
顧客やパートナー企業と共有できるコミュニケーションツールExperience Cloudを用いてビジネスパートナーとのコミュニケーションの円滑化を実現し、短期間で大きな成果を上げました。
2.老舗メーカーの事例
ある老舗製造メーカーの営業部門では、古い体制で受け身の営業が多く、コンタクトをとっていない顧客が数百件にも及んでいました。他にもさまざまな課題が顕在化し、Sales Cloudを導入しました。その結果、部門を問わずすべてのデータをSales Cloudに入力するようにした結果、営業の行動が完全に可視化されるようになりました。
行動可視化が可能になったことで、営業会議・報告書を全廃することができるようになったのです。営業の行動改革と意識改革により、成約数が3年で3倍以上に伸びました。
3.ゲーム会社
あるゲーム会社は、公式オンラインストアにCommerce Cloudを導入し、リニューアルを行いました。商品がシステムの都合上、同時購入ができなかったり、アクセス集中時には不安定になったりと問題が生じていましたが、Commerce Cloudがそれらをすべて解決し、安定させることができるようになりました。安定性と拡張性を兼ね備えていることが成功要因となりました。
まとめ
・Salesforce(セールスフォース)とは、クラウドベースのCRM・SFAサービスを提供しているアメリカの企業名であり、サービスの総称。Customer 360という営業やカスタマーサービス、マーケティング、EコマースからITまでさまざまな部門が顧客データを中心に仕事を進めることを可能にするサービス群がある。
・Customer 360を構成するサービスと機能には、SFAのSales CloudやCRMのService Cloud、マーケティングオートメーションのMarketing Cloud、EコマースプラットフォームのCommerce Cloud、アプリケーションの設計や構築のSalesforce Platformなどがある。
・Salesforce導入のメリットとして、「営業活動の効率化・ノウハウ共有が可能」「格好の教材になる」「顧客満足度の向上が期待できる」「部門内、部門同士で連携・情報共有がしやすい」「社員を適正評価できる機能が生きる」「セキュリティ対応も可能」などがある。
・Salesforce導入によって生じるよくある課題には、「導入後すぐに営業成績が向上するわけではない」「入力する項目が多く、入力されにくい」「ランニングコストが高く敬遠される」などがある。解決策として、「導入の目的を明確にして社内共通認識を持つ」「管理する項目を増やし過ぎない」「データ分析やデータ活用をしっかり行う」「無料トライアルで操作感などを試してみる」がある。