今回はポジショニングの定義とその事例についてご紹介します。
ポジショニングとは?
ポジショニング(positioning)とは、一般的な意味では「自分の位置を定めること」です。
マーケティングの世界では、「全体や他社との関係で自社の位置を定めること。
競合製品との差別化を行い、顧客に対し自社製品を位置づけること」です。
ポジショニングとは、他社製品との違いを明確にし「この製品は○○だから買いたい」「こんなサービス他にはない」と顧客に思わせることです。
ポジショニングを綿密に行うことにより、
・ライバルとの価格競争になりにくい
・ターゲットが明確なため、マーケティング効率がよい
・スペシャリストとしてのイメージがつく
など、多くのメリットが生まれます。
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ポジショニングはSTP分析の最終工程
ポジショニングは、アメリカの経営学者、フィリップ・コトラーが提唱するマーケティング戦略の基礎的なフレームワークです。
企業が新製品の内容、価格、ターゲットを決める上での枠組みを決めることです。
S:Segmentation セグメンテーション(市場細分化・市場全体をある一定の指標をもとに、共通ニーズをもつ顧客層に分類すること)
T:Targeting ターゲティング (ターゲットとする市場を決定すること)
P: Positioning ポジショニング(セグメントの中で自社の立ち位置を決めること)
セグメンテーションでさまざまな顧客のニーズを把握してグループに分類し、ターゲティングでは、どのニーズに対しターゲットを定めるかを決定します。
そしてSTP分析の最終ステップであるポジショニングで、自社の立ち位置をしっかり定めることがマーケティング戦略を効果的に進めるためには重要です。
ポジショニングの6つの基準とは
コトラーは、優れたポジショニングを導くために以下の6つの基準がポイントであると説いています。
以下の中から自社製品に適した方法を選択して決めていきますが、一つないし複数のこともあります。
1) 特定の製品属性に基づいたポジショニング
「自社製品の特性は何か?」「勝負できるポイントは何か?」
たとえば「低価格」で勝負するのか、「品質や高級感」を売りにするのか、などがあげられます。
2) 製品が提供するベネフィットに基づいたポジショニング
「顧客はその製品に対しどのような期待をしているか」
「顧客が期待するニーズを満たすことができるか」
ベネフィットとは「利益」や「恩恵」であり、顧客によい効果をもたらすものです。
「自社IT部門が自由にカスタマイズできるPC」などです。
製品そのものよりも、その製品を持つことで顧客にメリットを与えることができるもの、ということができます。
3) 製品が使用される機会によるポジショニング
「自社製品はいつどんなシーンで使用されているか」
「期待される使用シーンを実現するには何が必要か」
生活のどの場面、シーン、またどの人が製品を使用されるのかを観察しポジショニングに活用します。
日中か夜か、会社の外か中か、大勢か少数か、男女、大人こどもなどがあげられます。
たとえば「出張の際に持ち運びしやすいPC」「オフィスの休憩室用のお菓子」は使用される機会が明確です。
4) 競合製品との関係性を活用したポジショニング
自社製品と競合製品との関係性から他社と比較し何ができるのかを示します。
たとえば競合製品との対立関係を明確にし、「私たちなら○○ができる」といった内容を広告等で打ち出すプロモーション等を行います。
5) 競合製品と距離をおいたポジショニング
競合製品にはない自社製品の特性を出すことで、顧客に違いを認識してもらう方法です。
ERPの大手Oracleは、競合のSAPとの大きな違いを、同社のクラウドサービスOracle Cloudを基盤として、新しいクラウドサービスのERPをいちはやく導入しました。
6) 製品の種類別のポジショニング
同じ製品でもその用途でポジショニングすることが効果的なことがあります。
有名な例では、料理に使われていた重曹をゴミ箱や冷蔵庫の脱臭剤としてポジショニングした会社があります。
現在重曹は掃除用品としてすっかり定着しています。
自社製品の種類をあらためて見なおすことで、別の種類に分類しポジショニングすることができるかもしれません。
ポジショニングの事例をご紹介!
1. TOTOハイドロテクト
TOTOは衛生陶器・住宅設備機器の一大メーカーです。
TOTO「ハイドロテクト」は、水をまったく弾かない「超親水性」と、汚れや臭いが付きにくくなる「光触媒」の技術が商品に付加されている技術ブランドです。
TOTOは「HYDROTECT」のロゴを商品に表示させることで「汚れが落ちやすく水滴が付かない」ことをアピールし、この新技術により市場での地位を確保し続けています。
2. ギャパン
ブルーとシルバーのパッケーは多くの飲食店のテーブルにみかけますが、現在では一般家庭にも普及しているコショウの「GABAN」。
創業者は、他会社の香辛料が家庭用としてすでに浸透していたため外食産業をメインに展開しようと考えました。
当時のコショウの多くは小麦粉など混ざり物が含まれており、品質重視で「混ざりものがない本物のコショウ」として業務用に特化して販売を始めます。
まず創業者は札幌ラーメン横町を一軒ずつまわり、1缶ずつ販売しました。
また競合他社との味の違いを説明するためレストランのシェフを直接訪れ、缶を開けて香りを確かめてもらい、簡単な料理を作るなどその品質を納得してもらえるよう手を尽くしました。
創業者の地道な努力と、ブラックペッパーとベストマッチな札幌ラーメンのブームと相まって、GABANは広く認知されるようになったのです。
これまで重視されていなかった「コショウの品質」というポジショニングに加え、地道な営業活動、製品の提案や商品に関するサポートといった付帯価値も「業務用コショウといえばGABAN」となる大きな要素になりました。
まとめ
- ポジショニングとは、顧客に自社製品を意識つけるため、他社との差別化を行い自社の位置を明確にすることです。
- ポジショニングはSTP分析の最終ステップ。そのためマーケティング戦略を有効に進めるためには重要です。
- ポジショニングの6つの基準から、他社の成功事例を参考に自社に適したポジショニングを作成しましょう。