マーケティング用語ターゲティングは「よく目にするけどはっきりと意味がわからない」と思っている人も多いでしょう。
ターゲティングとは、ビジネスにおいて「勝負する市場を選ぶこと」です。マーケティング戦略の流れのなかで行われ、フレームワーク「6R」が有効とされています。
今回は、ターゲティングの意味および戦略的なターゲット設定のフレームワーク「6R」、ターゲティング戦略の成功例についてわかりやすく解説します。
BtoBでゼロから始めるWebマーケティング手引書【企業が取り組むべき4ステップ】
ビジネス環境がオンラインへ移行しつつある中、見込み顧客の購買行動は多様化・複雑化しています。 ユーザーは問い合わせや購買に至るまでに、これまで以上にオンラインで情報収集を活発に行う…
マーケティングの基本「ターゲティング」とは?
それでは最初に、マーケティングの基本である「ターゲティング」の意味と、マーケティング戦略におけるターゲティングの位置づけについて見ていきましょう。
・ターゲティングとは勝負する市場を選ぶこと!
ターゲティングとは、勝負する市場を選ぶことです。市場(=顧客)にはさまざまな層があります。市場のすべてをビジネスの対象としていたのでは、ビジネス戦略を明確にすることができません。
そこでターゲティングを行うことにより勝負する市場を絞り、特定のニーズに応える商品やサービスを提供するための戦略を構築します。
・マーケティング戦略の流れ ~STP分析
マーケティング戦略は、セグメンテーションおよびターゲティング、ポジショニングを一連の流れで行う「STP分析」によって構築されます。
STP分析と、STP分析におけるターゲティングの位置づけは次のようになります。
セグメンテーションとは、市場を細分化することにより市場の構造を把握することです。市場を細分化するための評価軸には、顧客の年齢や趣味嗜好、居住および勤務地域、過去の行動データなどさまざまなものがあります。セグメンテーションは、どのように行うかによってその後のマーケティング戦略が大きく変わってきますので、慎重に行わなければなりません。
2.ターゲティング
セグメンテーションを行った後、細分化された市場のどれを勝負の対象とするのかを決める工程、ターゲティングを行います。ターゲティングを行うに際しては、自社の強みを生かすことができ、競合他社に対して優位に立てることを考慮することが大切です。
3.ポジショニング
ターゲティングは、勝負の対象となる「顧客のニーズ」を選択することでもあります。
選択した顧客のニーズに対し、どのような価値を提供するかを決めるのがポジショニングです。
ポジショニングに当たっては、同種の商品やサービスを提供する競合他社に対し、自社の商品やサービスをどう差別化できるのかを検討することがポイントです。
関連記事
・フレームワークとは?思考を整理しビジネスを進めていくための枠組みを活用シーン別に解説
・第2回 経営戦略とマーケティング戦略って何が違うの?〜良い戦略の要諦とは〜 花王・廣澤連載
戦略的なターゲット設定のフレームワーク「6R」
STP分析の流れのなかでターゲティングを行う際に有効なフレームワークとして「6R」があります。
6Rを念頭に置くことで、ターゲット設定をより戦略的に行うことが可能です。
・1.Realistic Scale …市場規模は適切か
ターゲティングを行うに当たっては、市場の規模を考慮しなくてはなりません。選択する市場の規模は、事業が成り立つのに十分なだけの大きさであることが必要です。
・2.Rate of Growth …成長は見込めるか
ターゲティングによって選択する市場は、ただ大きければ良いというだけのものではありません。
分析を行った時点では十分な大きさがあった市場でも、その後に衰退していくことがあるからです。
したがって、選択する市場の成長が見込めるかは、ターゲティングを行うに当たって重要です。
分析を行った時点では規模が小さな市場でも、その後急激に成長することにより大きな売上が得られることがあります。
・3.Rank/Ripple Effect …顧客の優先順位と波及効果は高いか
提供する商品やサービスの優先度や関心が顧客にとって高いかどうかも重要です。優先度・関心が高いものならSNSによって拡散されるなど、まわりの顧客に対する波及効果が期待できるからです。
・4.Reach …顧客には到達できるか
ターゲティングによって選択する顧客は、たとえば名簿を入手できるなど、ビジネスを行う際に実際に到達できるものでなくてはなりません。
たとえばダイビングショップを、海沿いではなく内陸部で開こうとするなどの場合には、考えなおす必要があるかもしれません。
・5.Rival …競合は激しくないか
一般に、競合他社が市場ですでに大きな地位を占めている場合には、市場の魅力は低いでしょう。
それに対して競合が、それほど激しくない市場で自社をうまく差別化できれば、大きな地位を獲得できる可能性があります。
・6.Response …反応は測定可能か
広告などのアプローチを市場に向けて行った際、その反応や効果が測定できるのかについても、ターゲティングを行うに当たっては念頭に置かなくてはなりません。
■ターゲティング戦略の成功例
・成功例1 ボディローション「シーブリーズ」
資生堂が展開するボディケア製品シーブリーズは、元は「20代~30代の海へ行く男性」をターゲットとし、海辺の日光でほてった肌をひんやりさせるという効果を狙っていました。
ところが海へ行く人が次第に少なくなり、ブランドも高齢化して魅力が低減したために、販売数は低迷していました。
そこで資生堂は、ターゲティング戦略を大きく変更し、「街にいる女子高生」を新たなターゲットとして選び、汗の臭いを抑えるデオドラント効果に訴求ポイントを設定したのです。
それにより、シーブリーズの売上は低迷期の8倍にもなりました。
・成功例2 電動歯ブラシ「ポケットドルツ」
電動歯ブラシは以前には、「高齢者の男性向け」のものが主流となっていました。
製品の印象も、「大きくて音がうるさい」というものが一般的でした。
パナソニックは、「20代~30代の職場で歯磨きをする女性」にターゲットを変更し、
・化粧ポーチに入るコンパクトさと軽さ
・口紅のように見えるかわいらしいデザイン
・充電を毎日する必要がない便利さ
を備えた電動歯ブラシとして「ポケットドルツ」を発売することにより大きなヒットに繋がりました。
■まとめ
・ターゲティングとは勝負する市場を選ぶこと
・STP分析により、セグメンテーションを行った後にターゲティングを行う
・ターゲット設定を戦略的に行うためにはフレームワーク「6R」が有効
・ターゲティング戦略の成功例はシーブリーズやポケットドルツなどがある