ビジネスやマーケティングの場でよく耳にする「訴求」という言葉。具体的に「訴求」とは何を意味し、どのように使われるのでしょうか。「訴求」の言葉の意味から使い方まで、マーケティングの観点から解説します。
目次
訴求とは
「訴求」は、ビジネスやマーケティングの分野で頻繁に使用される重要な用語です。この言葉は、商品やサービスの魅力を効果的に伝え、消費者の心に響かせる行為を指します。
訴求には、主に2つの意味があります。第一に、「訴えて要求すること」という一般的な意味があります。第二に、マーケティングの文脈では「広告や宣伝を通じて、消費者の欲求に働きかけること」を意味します。
現代のビジネス環境において、訴求は特にマーケティング戦略の中核を成す概念として重要性を増しています。企業は、自社の商品やサービスの特徴や利点を消費者に効果的に伝えるため、様々な訴求手法を駆使しています。
訴求は単なる宣伝や広告とは異なり、消費者の潜在的なニーズや欲求を理解し、それに合わせてメッセージを構築する技術です。成功する訴求は、消費者の心理を深く理解し、彼らの感情や理性に訴えかける力を持っています。
ビジネスパーソンにとって、訴求の概念と技術を理解することは、効果的なマーケティング戦略を立案し実行する上で不可欠です。消費者の心を掴み、行動を促す訴求力は、競争の激しい市場で成功を収めるための重要な要素となっています。
訴求の意味
「訴求」には以下2つの意味があります。
① うったえて要求すること。
② 広告や宣伝を通じて、消費者の欲求に働きかけること。
出典:精選版 日本国語大辞典
訴求は本来、その言葉が示す通り「訴えて」「求める」ことを意味しますが、現在では主にマーケティング用語として使われることが多くなっています。
マーケティングの文脈では、「訴求」は消費者の心に商品やサービスの購入を呼びかける行為を指します。つまり、顧客に対して製品やサービスの魅力を伝え、購買意欲を刺激することを意味します。
この言葉は、企業が自社の商品やサービスの特徴や利点を効果的に伝え、消費者の関心を引き付け、最終的に購入につなげるための重要な概念として位置づけられています。
マーケティングにおける訴求の意味
マーケティングにおいては、「広告や宣伝を用いて、消費者の心に商品やサービスの購入を訴えかける」という意味で使われます。商品やサービスを買ってもらうために消費者にアプローチするということです。つまり、企業が自社の製品やサービスの魅力や価値を効果的に伝え、消費者の購買意欲を刺激し、最終的に購入行動につなげることを目指す活動を指します。この過程では、商品の特徴や利点、他社製品との差別化ポイントなどを明確に伝えることが重要となります。また、消費者のニーズや欲求を深く理解し、それに合わせたメッセージを発信することで、より効果的な訴求が可能となります。
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訴求の使い方
「訴求」という言葉は実際にどのように使われるのか、言葉の意味や使い方、類語も併せて解説します。「訴求」は「訴求する」というように、そのまま使う場合もありますが、以下のように他の言葉と組み合わせた単語で使うことも多くあります。
● 訴求力:消費者の購入意欲に働きかける力
● 訴求効果:消費者の購入意欲を引き出す効果
● 訴求ポイント(訴求点):消費者の購買意欲を刺激する商品の特長やアピールポイント
● 訴求対象:商品やサービスを購入してもらいたい相手(ターゲット)
これらの言葉は、ビジネスやマーケティングの現場でよく使用されるため、覚えておくと便利です。特に「訴求力」や「訴求効果」は、広告やキャンペーンの成果を評価する際によく用いられます。また、「訴求ポイント」は商品開発や販促戦略を立てる際に重要な要素となります。
「訴求対象」を明確に定めることは、効果的なマーケティング活動を行う上で欠かせません。ターゲットを絞り込むことで、より的確な訴求が可能となり、結果として高い費用対効果を得ることができます。
これらの用語を適切に使いこなすことで、ビジネスコミュニケーションがより円滑になり、マーケティング戦略の立案や実行においても有益となるでしょう。
訴求を使った例文
では、実際の会話やビジネスシーンで「訴求」という言葉がどのように使われているか見ていきましょう。
● 新商品がいかに優れているか、消費者に訴求する
● 今期の売上増加目標を達成できなかったため、このCMには訴求力がなかったようだ
● コストは半分にしながら2倍の売上を達成できたので、今回の広告は訴求効果が高かったと言える
● 新聞広告だと、ターゲットである20代女性に対しては訴求性が低いだろう
● この商品は、5年間無料でアフターサービスをつけている点が訴求ポイントです
● 訴求対象が高齢者であるなら、もっと分かりやすいサービスにすべきだ
これらの例文から分かるように、「訴求」という言葉は主にマーケティングや広告の文脈で使用されます。新商品の特徴を消費者に伝える場面や、広告キャンペーンの効果を評価する際によく用いられます。また、ターゲット層に合わせた訴求方法を検討する場面でも使われることがあります。
ビジネスの現場では、このような「訴求」を含む表現を適切に使用することで、より正確かつ専門的なコミュニケーションが可能になります。特に、マーケティング戦略を立案する際や、広告効果を分析する場面では、「訴求」という言葉を用いることで、より具体的かつ明確な議論ができるでしょう。
訴求の類義語
訴求の類義語としては、「アピール」が最も分かりやすく使われやすいでしょう。
マーケティングにおける「訴求」とは、消費者の購買意欲を刺激し、最終的に消費者自らの「購入」という行動を目指す場合に使われる、限定的な言葉です。よって、類義語はあまり多くないため、ビジネスの場では「訴求」という言葉をそのまま使うことが望ましいでしょう。
ただし、状況や文脈によっては、以下のような言葉も類似した意味合いで使用されることがあります。
●宣伝:商品やサービスの情報を広く知らせること
●プロモーション:販売促進活動全般を指す幅広い概念
●PR(パブリックリレーションズ):企業や商品の良いイメージを広める活動
これらの言葉は、「訴求」よりも広い意味を持つ場合が多いため、使用する際は注意が必要です。「訴求」が特に消費者の購買意欲に焦点を当てているのに対し、これらの言葉は必ずしも直接的な購買行動を促すことを目的としていない場合もあります。
訴求の英語表現
訴求の英語表現としては、「appeal」や「promote」が一般的に使用されます。これらの表現は、製品やサービスの魅力を伝え、顧客の関心を引き付けるという意味合いを持っています。
【例】 The new design looks more appealing than the old one.
新しいデザインは前のものより訴求力がありそうだね。
【例】 We want to use this ad to promote our products to families.
この広告で家族層に商品を訴求していきたい。
さらに、マーケティングの文脈では「pitch」という表現も使われることがあります。これは特に商品やアイデアを説得力のある方法で提示する際に用いられます。
【例】 Our sales team needs to improve their pitch to attract more customers.
営業チームは、より多くの顧客を引き付けるために、訴求の仕方を改善する必要があります。
これらの英語表現を適切に使用することで、国際的なビジネス環境においても効果的な訴求を行うことができます。
訴求ポイントを作る際のコツ
効果的な訴求を行うことは、ターゲットとなる消費者に商品やサービスを購入してもらうために不可欠です。そこで、効果的な訴求を行うための重要なポイントについて、ダイエット業界で注目を集めた企業「ライザップ」の事例を交えながら解説します。
訴求の重要なポイントは主に3つあります。1つ目は、自社にしかない強みを訴えること。2つ目は、「その商品・サービスを購入するとどうなるか」を明確に伝えること。そして3つ目は、ターゲットを絞ってアプローチすることです。
これらのポイントを押さえることで、消費者の心に響く訴求が可能となり、購買意欲を高めることができます。ライザップの成功事例からも、これらのポイントの重要性が裏付けられています。
効果的な訴求を行うためには、自社の商品やサービスの特徴を十分に理解し、ターゲット層のニーズや課題を把握することが大切です。そのうえで、これら3つのポイントを意識しながら訴求戦略を立てることで、より効果的なマーケティング活動が実現できるでしょう。
自社にしかない強みを訴える
ポイント1つ目は、自社にしかない強みをアピールすることです。魅力を感じ、買いたいと思うのはどんな商品でしょうか。
どこにでもある商品よりも、他にはない独自の強みや他社には簡単に真似できないような技術・付加価値のある商品のほうが欲しいと思うはずです。プライベートジムの「ライザップ」はこの点の訴求力に長けていたことで成功しました。
ダイエットという多くの人が持っているであろうニーズに対して、「確実に痩せられる」「痩せられなければ全額返金」という、他にはない独自の訴求を行うことで他社との差別化を果たしています。競合がまだ手掛けておらず、それでいて多くの人が抱えていそうなニーズに訴求することがポイントです。
このような独自の強みを持つことで、顧客の心に強く響く訴求が可能となります。自社の製品やサービスが持つ特徴を分析し、競合他社にはない独自性を見出すことが重要です。その独自性こそが、効果的な訴求につながる鍵となるのです。
「その商品・サービスを購入するとどうなるか」を伝える
ポイント2つ目は、購入することによって得られる未来を伝えることです。消費者は、意識せずともその商品・サービスを購入することでどうなれるのかを考えています。
ライザップの例で言えば、ライザップの訴求は「ライザップを3ヶ月利用することで10Kg痩せられる」という、購入した後どうなるかに重きを置いた訴求をしていました。
「徹底した食事指導や科学的なトレーニングを行っています」「この商品は○○です」というサービスの内容ではなく、「この商品を使うと○○になる」のような訴求にすることが重要です。
ちなみに、ライザップはこの観点でテレビCMを打ち出したことにより、さらに訴求力を高めました。一目見て分かるビフォーアフター映像を流すことで、消費者の未来を想像させることができたというわけです。
このような訴求方法は、消費者の心理に直接働きかけるため、非常に効果的です。例えば、ダイエット商品であれば「理想的なボディラインを手に入れられる」、英語学習教材であれば「海外で自信を持ってコミュニケーションが取れるようになる」といった具合に、商品やサービスを使用した後の具体的なイメージを提示することが大切です。
また、数値や具体例を用いることで、より説得力のある訴求となります。「この商品を使うと、1ヶ月で5kg痩せられる」「このサービスを利用すると、売上が30%アップする」といった具体的な数字を示すことで、消費者は自分の状況に当てはめやすくなります。
ターゲットを絞ってアプローチする
ポイント3つ目は、ターゲットを絞ってアプローチをすることです。
失敗する訴求の例として代表的なのは、”万能感”を出してしまった場合です。例えば「どんな症状でも治せる」と訴求した薬よりも、風邪をひいた人には「風邪が治る」、頭痛のある人には「頭痛が治る」と言ったほうが買ってもらえる可能性ははるかに上がります。
ライザップは「結果にコミットする」というコンセプトにも表れている通り、「多少厳しくても確実に痩せたい人」に響く訴求で成功しました。「誰でも痩せられる」というぼんやりとした訴求では、かえって誰にも見向きされていなかったことでしょう。
「何でもできる」と言われるよりも「これだけは誰にも負けない」と言われたほうが、人は魅力を感じやすいのです。このことから、自社の商品やサービスの強みを明確にし、それを最も必要としているターゲット層に絞って訴求することが効果的だと言えます。
ターゲットを絞ることで、そのグループの特性や行動パターン、ニーズをより深く理解することができます。これにより、より適切なメッセージや媒体を選択し、効率的なマーケティング活動を展開することが可能となります。
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訴求ポイントを作る際の注意点
いくら自社商品やサービスの売上を伸ばしたくても、誇大表現や虚偽の表現、過度な煽り表現などを使用してはいけません。商品やサービスの訴求をするための広告に関しては、消費者庁による景品表示法で厳格に表示内容が制限されています。
この制限の範囲を超えた広告は違法となり処罰の対象となることがあります。主に注意するべきポイントは「不当表示の禁止」です。この不当表示には大きく分けて以下の3つがあります。
● 優良誤認表示
● 有利誤認表示
● その他誤認される恐れのある表示
これらの表示は消費者に誤解を与え、不適切な購買行動を引き起こす可能性があるため、避けるべきです。適切な訴求ポイントの作成には、正確で誠実な情報提供が不可欠です。
また、競合他社との比較を行う際にも慎重を期す必要があります。特に、根拠のない比較や誤解を招くような表現は避けるべきです。
訴求ポイントの作成においては、自社製品やサービスの真の価値を正確に伝えることに焦点を当てるべきです。消費者のニーズに合致し、かつ法的・倫理的に問題のない訴求ポイントを作成することが、長期的な成功につながります。
優良誤認表示
「優良誤認表示」は、商品やサービスの品質や規格、内容などに関する不当表示が該当します。例えば、自社商品やサービスを他社のものに比べて、著しく優良であると顧客に誤認させるような表示です。いわゆる誇大表現や誇張表現などが当てはまります。
この種の表示は、消費者に実際以上の期待を抱かせ、購買決定に不当な影響を与える可能性があるため、法律で厳しく規制されています。具体的には、商品の効果や性能を実際以上に誇張したり、根拠のない最上級表現を用いたりすることが禁止されています。
例えば、「世界一の品質」「絶対に失敗しない」「どんな症状でも改善」といった表現は、客観的な根拠がない限り優良誤認表示に該当する可能性が高いです。企業は、自社製品やサービスの特徴を正確かつ公正に伝えることが求められます。
優良誤認表示を避けるためには、商品やサービスの特性を客観的なデータや事実に基づいて説明し、過度な表現や主観的な評価を控えることが重要です。消費者の信頼を得るためにも、誠実で透明性の高い情報提供を心がけることが望ましいでしょう。
有利誤認表示
「有利誤認表示」は、商品やサービスの価格や取引条件などに関する不当表示が該当します。例えば、商品やサービスの価格を表面上のみ著しく安い価格を設定、及び提示するなどして、取引条件が顧客にとって有利に見せかける表示です。
実際には総額で他社よりも高くなるにも関わらず、自社が最も安いと顧客に誤認させる表示などが当てはまります。また、他社の価格を併記して自社の優位性を謳う「二重価格表示」も有利誤認表示の一つに含まれます。
このような表示は、消費者の合理的な選択を妨げる可能性があるため、景品表示法によって規制されています。企業は広告や販促活動を行う際に、価格や取引条件について正確かつ公正な情報を提供する責任があります。
その他誤認される恐れのある表示
「その他誤認される恐れのある表示」は、内閣総理大臣が指定する不当表示が該当します。主に以下の6つの告示が定められています。
1. 無果汁の清涼飲料水等についての表示
2. 商品の原産国に関する不当な表示
3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
4. 不動産のおとり広告に関する表示
5. おとり広告に関する表示
6. 有料老人ホームに関する不当な表示
これらは特に一般消費者に誤認される恐れがあるとして、内閣総理大臣によって特別に指定されています。各告示は消費者保護の観点から設けられており、事業者はこれらの規制を十分に理解し、適切な表示を心がける必要があります。例えば、無果汁飲料を果汁入りと誤解させるような表示や、国産品を外国産と偽って表示するなどの行為は、消費者の購買判断を歪める可能性があるため、厳しく規制されています。
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効果的な8つの訴求軸
効果的な訴求をするために、よく使われる訴求手法を見ていきましょう。これらの手法は、消費者の心理や行動を理解し、適切に活用することで、商品やサービスの魅力を効果的に伝えることができます。以下に、8つの代表的な訴求軸を紹介します。
● 価格訴求
● 限定訴求
● トレンド訴求
● ネガティブ訴求
● 贅沢訴求
● 逃避訴求
● 品質訴求
● 威光訴求
これらの訴求軸は、それぞれ異なる消費者の欲求や動機に働きかけます。例えば、価格訴求は経済性を重視する顧客に、限定訴求は希少性や特別感を求める顧客に効果的です。一方、トレンド訴求は流行に敏感な層に、ネガティブ訴求は問題解決を求める顧客に訴えかけます。
贅沢訴求は高級感や優越感を求める層に、逃避訴求はストレス解消や気分転換を望む顧客に有効です。品質訴求は商品の性能や耐久性を重視する顧客に、威光訴求はブランドや権威を重んじる層に効果があります。
これらの訴求軸を適切に組み合わせることで、より効果的なマーケティング戦略を立てることができます。ただし、ターゲットとする顧客層や商品・サービスの特性に応じて、最適な訴求軸を選択することが重要です。
価格訴求
価格を重視する顧客に対して訴求する手法で、「できるだけ安く買いたい」と考える顧客に有効です。 他社の価格や自社の通常価格と比較して、より安く提供できることをアピールします。
この手法は、コストパフォーマンスを重視する消費者層に特に効果的です。例えば、「他社比30%OFF」や「業界最安値」といった表現を用いることで、顧客の購買意欲を刺激します。
また、価格訴求は次に説明する「限定訴求」と併用することも可能です。例えば、「今年最後の大決算セール!」「今だけ50%オフ!」などです。
■価格訴求フレーズ集
安さをアピール | 激安・格安・特価・超特価・無料・衝撃プライス・スーパープライス・衝撃価格・応援価格・ご奉仕価格・挑戦価格・感謝価格・お値打ち価格・バーゲン価格・リーズナブルな価格・お求めやすい価格・お値段据え置き・地域最安値・◯周年記念特価・◯周年記念価格・オープン記念価格・安さで勝負・とにかく安い・とことん安い・売りつくし・決算 |
セールでアピール | バーゲンセール・特価セール・超特価セール・半額セール・徹底セール期間限定セール・還元セール・売りつくしセール・最終処分セール・大放出セール・タイムセール・◯周年記念セール・オープン記念セール・スーパープライスセール・ご奉仕セール・よりどりセール |
割引率をアピール | 値引き・半額・半額以下・◯%OFF・◯円以下・◯円割引・◯円引き |
これらのフレーズを適切に使用することで、顧客の価格に対する注目を集め、購買行動を促進することができます。ただし、過度な価格訴求は商品の価値を下げる可能性があるため、バランスを考慮して使用することが重要です。
限定訴求
期間や数量を限定することで希少性を強調し、購入の意思決定を早めることを狙った手法です。ターゲット顧客に「早く買わなきゃ!」という気持ちにさせる効果があります。
限定訴求には「期間限定」「数量限定」「地域限定」「対象限定」の4種類があります。それぞれの限定訴求について見ていきましょう。これらの手法を組み合わせることで、より強力な訴求効果を生み出すことができます。例えば、「期間限定・数量限定」や「地域限定・対象限定」などの組み合わせが考えられます。
限定訴求は、消費者心理学の「希少性の原理」に基づいています。この原理によると、人は手に入れにくいものや失う可能性のあるものに対して、より大きな価値を感じる傾向があります。そのため、商品やサービスを限定することで、顧客の購買意欲を高めることができるのです。
ただし、限定訴求を使用する際は、虚偽の表示や過度な煽り表現にならないよう注意が必要です。景品表示法に抵触する可能性があるため、適切な表現と正確な情報提供を心がけましょう。
それでは、それぞれの限定訴求について詳しく見ていきましょう。
限定訴求1:期間限定
商品を販売する期間を限定して、希少性をアピールします。例えば、「期間限定11月30日まで」「クリスマス限定」などです。
期間の限定は、「今だけ」や「本日限定」などのように、限定する時間が短いほど、最終的な購入の意思決定を早めるという調査結果があります。この心理効果を利用して、消費者の購買意欲を刺激し、迅速な行動を促すことができます。
期間限定商品は、季節や特定のイベントに合わせて展開されることも多く、例えば「夏季限定」「バレンタイン限定」といった形で提供されます。これにより、その時期ならではの特別感や urgency(緊急性)を演出し、顧客の興味を引き付けることができます。
限定訴求2:数量限定
商品を販売する量を限定して、希少性をアピールします。例えば、「数量限定100個」「先着10名様限定」などです。
顧客は自分の好きな商品が「数量限定」である場合とそうでない場合では、前者のほうが該当商品に対する魅力度が上昇すると言われています。この効果は、心理学的な観点から「希少性の原理」と呼ばれ、人間の行動に大きな影響を与えることが知られています。
数量限定商品は、その限られた数量ゆえに「手に入れられないかもしれない」という焦りや不安を顧客に与え、購買意欲を刺激します。また、限定品を所有することで得られる特別感や優越感も、顧客の購買動機となります。
ただし、数量限定訴求を行う際は、実際の在庫数と乖離がないよう注意が必要です。虚偽の表示は顧客の信頼を損なう可能性があるため、正確な情報提供が重要です。
限定訴求3:地域限定
商品を販売する場所を限定して、希少性をアピールします。例えば、「沖縄県限定」「関西エリア限定」などです。
食品やお土産によく見られる訴求方法であり、旅先の土産店などでは頻繁に見受けられます。地域だけでなく、「オンライン限定」「店舗限定」「ライブ会場限定」といった限定も可能です。
地域に限らず、販売チャネルを限定することも可能です。「オンライン限定」「店舗限定」「ライブ会場限定」といった訴求も、商品の希少性を高め、顧客の興味を引き付ける効果があります。これらの限定訴求は、顧客に「ここでしか手に入らない」という特別感を与え、購入を促進する強力なツールとなります。
限定訴求4:対象限定
商品を販売する対象を限定して、希少性をアピールします。例えば、「20代女性限定」「会員様限定キャンペーン」などです。
顧客の年齢・性別・職業などの属性や、会員顧客のグレードなどで限定します。対象を限定されることで特別感が生まれ、購入につながりやすくなります。この手法は、特定のターゲット層に絞り込んだマーケティング戦略の一環として効果的です。
例えば、「学生限定割引」や「シニア向け特別プラン」など、年齢や立場に応じた限定商品やサービスを提供することで、該当する顧客層の関心を引き付けることができます。また、「ゴールド会員様限定特典」のように、顧客ランクに応じた限定オファーを設けることで、顧客のロイヤリティ向上にも寄与します。
対象限定の訴求は、顧客に「自分だけのための特別な機会」という印象を与え、購買意欲を高める効果があります。ただし、過度な限定は対象外の顧客の不満を招く可能性もあるため、バランスの取れた活用が求められます。
■限定訴求フレーズ集
期間 | 期間限定・本日限定・初回限定・◯日限定・◯日まで・今週いっぱい限定・今月いっぱい限定・〇〇に一度の・今なら・チャンス・終了迫る |
数量 | 数量限定・在庫限り・現品限り・◯個限定・◯個限り・数に限りがあります |
場所 | 当店限定・地域限定・〇〇エリア限定・店舗限定・オンライン限定・当サイト限定・〇〇会場限定 |
人 | 〇〇様限定・〇〇様だけ・〇〇様に限り・〇〇様のために・〇〇でお悩みの方限定・先着◯名様限定・お一人様◯個限定・〇〇様にピッタリ・〇〇好きにはたまらない・〇〇な人必見・〇〇な皆様へ・〇〇なあなたにうれしい・あなたを応援・早いもの勝ち |
トレンド訴求
流行やトレンドに敏感な顧客に対して、商品の人気度や評判、普及率などをアピールする手法です。
流行っているものが好きな顧客に対して「みんな持っているから私も買わなきゃ!」という気持ちにさせる効果があります。流行に敏感である10~20代の顧客に特に有効です。
また、トレンド訴求は、SNSなどのソーシャルメディアと相性が良く、口コミやシェアによって拡散されやすい特徴があります。そのため、インフルエンサーマーケティングと組み合わせることで、より効果的な訴求が可能になります。
■トレンド訴求フレーズ集
流行 | 〇〇も注目・あの人も注目・世界が注目・今話題の・今おなじみの・〇〇が大人気・〇〇が大ヒット・〇〇が大ブレーク・現在大ヒット中・現在大ブレーク中・現在売れ行き好調・今売れています・〇〇の間で・〇〇のマストアイテム |
状態 | ◯万人が愛用・◯万人が利用中・◯万人突破・◯万個突破・累計売上数◯万・シェアナンバー1・シェア1位・〇〇中1位・実績ナンバー1・ランキング1位・満足度◯%・実積〇千以上・契約者数〇万人以上・激増中・殺到中・大好評・〇〇賞受賞・〇〇達成・〇〇が実感・混み合っております・行列ができています |
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ネガティブ訴求
恐怖・不安・焦り・怒りなど、顧客のネガティブな感情を刺激することで、購買意欲を高める手法です。「この商品を買わなければ損をする」というような負の感情に働きかけます。
あまり多用しすぎると、マイナスイメージを植え付けられてしまう可能性があるため、頻度や程度、表現の仕方には注意が必要です。
■ネガティブ訴求フレーズ集
問いかけ | あなたは大丈夫ですか?・〇〇はできていますか?・〇〇を知っていますか?・なぜ〇〇をしないのでしょうか?・〇〇したらどうなるでしょうか?・このままではまずいですよ? |
ネガティブフィードバック |
もう手遅れかも知れません・このままではまずいのです・〇〇ではいけません・いずれ〇〇となってしまいます・〇〇では損をします・〇〇では後悔します・放置してはダメです |
贅沢訴求
高級志向の顧客に対して、贅沢感や優越感をアピールする手法です。「周りの人に褒められたい」という気持ちに働きかけます。このような顧客層は、以下のような特徴を持つ商品に価値を感じます。
● 希少価値がある
● 知名度がある
● 価格が高い
● 歴史的価値がある
そのため、ある程度ブランド力や知名度のあるものに対して、商品開発までのストーリーやこだわりのポイントなど、付加価値のある商品であることをアピールすると効果的です。
■贅沢訴求フレーズ集
連想ワード | 高級・極上・至極・特別・贅沢・上質・絶品・ロイヤル・プレミアム・ハイクオリティ・ハイグレード・ハイクラス・ラグジュアリー・リッチ・ゴールド・プラチナ |
フレーズ |
優雅なひとときを・優雅な時間を・贅沢なひととき・贅沢なひとときを・贅沢の極み・ワンランク上の・極上の空間・洗練された・有名〇〇も認めた・〇〇でしか味わえない |
逃避訴求
逃避訴求は問題を抱えている顧客に対して、ある商品やサービスを利用することによって問題が解消できることをアピールする訴求軸です。
「これを手に入れれば自分の悩みが解消される」という一刻も早く悩みを解消したい気持ちに訴求していきます。例えば、薄毛で悩んでいる人に対して「医師が推奨するこの育毛剤があれば薄毛が解消できますよ」と訴求すれば、その商品は非常に売れやすくなります。
問題解決後の自分をいかに想像させられるかがポイントとなります。
■逃避訴求フレーズ集
ネガティブフレーズ | 〇〇でお悩みの方・〇〇でお困りの方・〇〇で満足できない方・〇〇では物足りないと感じている方 |
ポジティブフレーズ |
〇〇の強い味方・〇〇で効率アップ・〇〇があれば安心・〇〇で解決・〇〇にさらば |
品質訴求
品質訴求は商品やサービスの特徴や特性、機能性や実用性など「品質」を全面的にアピールしていく訴求軸です。
商品やサービスの品質のみにこだわる価格度外視の顧客に対して効果が期待できます。顧客の購買意識をよく調査することで、購入に結び付けることができます。
■品質訴求フレーズ集
スマートフォンにおける品質訴求ポイント | CPU・高性能カメラ・内蔵メモリ・バッテリー容量・接続端子・充電時間・防水防塵・規格・ディスプレイ解像度・通信速度・対応サービス |
自動車における品質訴求ポイント |
エンジン・駆動方式・排気量・燃費・荷室容量・乗車定員・安全性能・内装・装備品・パーツ・アフターサービス |
威光訴求
威光とは「権威」や「威厳」といった意味で、商品やサービスの持つ実積や信頼性及び知名度などを全面的にアピールしていく訴求軸です。
その商品やサービスを購入しようか迷っている顧客に対して、実積や信頼性及び知名度などを理解してもらえれば、購入に結び付く可能性が高くなります。いかにその商品やサービスが、顧客の信頼を得ているかをうまく伝えられるかがポイントとなります。
■威光訴求フレーズ集
創業◯年・◯年の歴史・歴史ある・◯年の実積・◯年の信頼・〇〇の老舗・〇〇のプロ・プロの技・〇〇のエキスパート・〇〇職人・一部上場・〇〇名物
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まとめ
本記事では、「訴求」という言葉の意味から使い方まで解説してきました。
訴求は、ビジネスやマーケティングにおいて頻繁に使われる言葉です。商品・サービスを消費者に購入してもらうために、「訴求」の意味や手法を正しく理解し実際に使えるようにしておきましょう。