マーケティングをしていると、ぶつかる壁。
どのように売ったらいいかわからない、なかなか結果がでないと思うのは、誰もがもつ悩みでしょう。思ったより売上が伸びないと焦ってしまうため、マーケターとしての成長の道筋が見えると安心です。
そこで今回は、日本に古くから伝わる「守破離(しゅはり)」の考え方をもとにした、マーケティングの3つのステップを紹介します。
成長の道筋が見えると、自分が今どの段階で、どのように対処したらよいか分かるでしょう。
最後までご覧いただき、マーケティングで悩んだときの参考にしてください。
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目次
守破離とは?ビジネスにおける事例も紹介
そもそも守破離とは、一体どのようなものなのでしょうか。
ここでは守破離についての説明と、ビジネスにおける事例を紹介します。
守破離とは?
守破離とは、主に茶道や芸事の世界で広がった、プロとして成長するまでの考え方のことです。室町時代に端を発し、千利休や世阿弥らが広めたといわれています。
守とは、師匠や、目標とする人を真似ること。学ぶの語源は「真似ぶ」からきているとも言われています。まずは基本の型をしっかり身に付けることが大事だと考えられていました。
破とは、守で身につけた型を、自分流にアレンジすることです。「型破り」の語源にもなっており、基本の型を土台に、他の型を組み合わせたり自分に合うように変えたりすることを意味しています。
離は、新しいジャンルやオリジナルの技を生み出すこと。もはや型の枠を超えて、独創性の高さで勝負できる段階です。
これらのステップを踏むことで、一人の芸術家として大成できる、と考えられていました。
ビジネスとしての守破離
守破離をビジネスに置き換えると、次のようになります。
守:会社の掲げる理念を理解し、ルールやマニュアルなどの型を覚え業務にあたる。
破:型を分析して、マニュアルの改変や自動化を組み込むなど生産性の向上を図る。
離:新たな商品やサービス、プロジェクトを提案する。
どの会社にも、何のためにどのような事業をするのかという会社の理念があり、それに沿ってルールやマニュアルなどの型が作られています。ほとんどの会社が、入社したての時期に研修を設けているのは、型をはやく覚えしっかりと実践させるためです。
ルールやマニュアルどおりに動けるようになれば、よりスムーズに業務をこなすための行動ができるようになります。例えば、エクセルでアンケートを自動集計したり、リストを作成したりするなどです。自動化する。それだけではなく、より自社の強みを活かした商品やサービスの開発、新たなプロジェクトの立ち上げも考えられるようになります。
守破離は芸事のみならず、ビジネスの世界でも通用する考え方なのです。
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守:マーケティングの型であるSTP分析や3C分析、4Pで戦略を立てよう!
守破離の守とは、「先人たちが残した型を真似ること」です。
今回は靴を例に、STP分析や3C分析、4Pという基本の型を紹介します。
基本の型に沿うことで、効率よく効果的にマーケティングの戦略を立てましょう。
STP分析で、狙う市場を絞ろう!
この世に生きるすべての人々が、同じ製品やサービスを欲しているわけではありません。
STP分析では、次の3つのステップで、顧客を絞ることが可能です。
・セグメンテーション(市場を年齢・性別・地域などのグループに分ける)
・ターゲティング(どのグループをターゲットにするか絞る)
・ポジショニング(市場の中での自社の立ち位置を決める)
例えば同じ靴でも、就活中の学生はビジネス用のパンプス、幼稚園児のママはいつでも子どもと遊べる運動靴と、人によって求める形状や機能は変わります。
靴がほしい人という大きな市場を、年齢や性別・趣味嗜好などの細かなグループに分け、どのグループをターゲットにするか絞り、自社の立ち位置を決めるのがSTP分析です。
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3C分析で、商品やサービスの方向性を定めよう!
市場でのターゲット層や自社の立ち位置を決めたら、商品やサービスの方向性を決めましょう。3C分析では、次の3つを分析します。
・Customer(顧客のニーズを想像する)
・Competitor(競合他社を分析する)
・Company(自社の強みを考える)
これを、幼稚園児の子どもをもつママをターゲットに置き換えて考えてみましょう。
・家事や育児に疲れているママたちだって、おしゃれを楽しみたい時があるだろう
・しかし、レディースの運動靴は、機能性を重視したシンプルなデザインのものが多い
・自社はママ向けのライフスタイルアプリのデザインを手がけてきたため、ママに喜ばれそうなデザインの蓄積がある
すると、機能性がありつつも可愛らしいデザインの運動靴、という製品像が浮かび上がってきます。3C分析を通して、顧客のニーズから具体的な製品の方向性を定めることができるのです。
4Pで、商品の売り込み方を決めよう!
売り込む市場を決めたら、4Pで売り方の戦略を立てましょう。4Pとは、次の4つの頭文字です。
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(場所)
・Promotion(プロモーション)
STP分析や3C分析を通してわかった、顧客の求める製品。コストを踏まえたうえで、いくらなら売れそうか、店舗とWebとではどちらの市場のほうが顧客の手に取りやすいか考えます。
今はYouTubeやTwitterなどがあり、SNSによって特性もユーザーの層もさまざま。先ほどのママをターゲットにするなら、20代から30代の女性がメインユーザーであるInstagramを使うことが挙げられるでしょう。
ターゲットにする顧客の層と相性のよいメディアを選ぶことで、商品の売り込み方が決まります。
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破:数字の分析と潜在顧客の獲得で、利益をアップさせよう!
しかし、型どおりに実践しても、必ず大きな収益を上げられるとは限りません。実践した結果から、型を自分なりにアップデートさせていくことが大切です。今回は、守破離の破にあたる、分析のし直しと生産性の向上、潜在顧客の獲得について紹介します。
この破の考え方を使って、利益をアップさせましょう。
売上に関わる数字を分析しよう
売れている商品やサービスはどれか、どの媒体から顧客を獲得できているのか、リピート率は何%かなど、さまざまな視点から分析することが重要です。
分析を通して、「ママ向けのつもりだったけど、学生のほうが売れた」など、STP分析のターゲティングに変化が生まれるかもしれません。
分析の結果、ターゲットを変え、プロモーションする媒体が変わると、売上がアップする可能性もあります。
まずは分析から始めましょう。
経費を見直し、削減できそうなところは削減する
数字の分析は、コストカットにつながることがあります。例えば、広告の媒体としてYouTubeを使っているが、あまり再生されず、商品URLのクリック率もほとんどない、という場合です。
この場合、YouTubeを通して得られる収益よりも、モデルやカメラマンの人件費などのコストのほうが高くなっている可能性があります。収益がまったく見込めなさそうであれば、思いきって経費を削減することで、利益率を上げられるかもしれません。
潜在顧客に届くようなマーケティング戦略を練る
レディースの可愛らしい運動靴が欲しいのは、ママや学生だけではありません。母や祖母にずっと健康で長生きしてほしいと願う家族も、ターゲットの対象になることがあります。
なぜなら、「可愛い運動靴をプレゼントしてウォーキングを促そう」とプロモーションし、贈り物としておすすめできるからです。製品やサービスがどのような価値を生み出し、どのような悩みを解決するかを考えることで、潜在顧客が見つかります。
潜在顧客が見つかると、これまでよりも市場を拡大させることが可能です。
関連記事:代表的なマーケティングの手法とは?デジタル、Webマーケティングの種類など一覧をご紹介
離:新たな場(市場・商品やサービスの開発・事業)にチャレンジする
基本の型に沿う守と、型をアップデートさせる破。これらを繰り返していくと「やはり上手くいかない」ということもあれば、「こうすると上手くいく」と自分なりの型が見つかることもあるでしょう。
ここで得られた経験により、市場を変えたり、既存の顧客への新しい商品を開発したり、新しいビジネスにチャレンジできたりします。
ファイブフォース分析を通して、新たな市場へ
どれだけ手を尽くしても事業が上手くいかない場合、さまざまな原因が考えられます。ファイブフォース分析で、脅威(フォース)となる原因を分析しましょう。
・競合他社
・他社の新規参入
・買い手の問題
・売り手(仕入れ先)の問題
・代替品の登場
例えば、競合他社がほぼ独占している状態の市場では、自社の商品やサービスを売り出すことは難しいでしょう。低コストで始められる事業ほど、他社が新規で入りやすいので、それだけ競争率も上がります。
そのほか、買い手のほうが有利だと値引き交渉が起こりやすい、売り手(仕入れ先)が有利だと販売のコストが高くなりやすい、などが脅威となる原因です。さらに、DVDに代わる動画配信サービスのように、代替品の登場も脅威になります。
これらの脅威の影響を受けていないか分析をし直し、難しいようであれば市場をずらすなども、手段の1つとなるでしょう。
関連記事:ファイブフォース分析とは?定義と目的、戦略を事例とともにご紹介します
既存の顧客への、新しい商品やサービスを開発する
事業が成功すれば、同じ顧客にアプローチした製品の開発も考えられます。例えば、顧客に学生が多い場合、参考書や教科書が入るバッグなどの小物の開発が挙げられるでしょう。
ターゲットを絞れているぶん、ゼロからの状態よりも3C分析などがしやすいです。今の顧客が求めているものから、新たな商品やサービスを開発してみてください。
ノウハウを活かして、まったく別の分野にチャレンジする
基本の型に沿う守と、型をアップデートさせる破を繰り返すと、成功するためのノウハウがたまります。それはいつの間にか、元々の型を大きく超えた、オリジナリティあふれるものになっているかもしれません。ここまで来れば、あなたは一人前のマーケターです。
新しい事業を立ち上げるとき、戸惑うこともあるかもしれません。ですが、顧客のニーズを考えながら分析していくのは、どの事業でも同じことです。これまでの経験に自信をもって、あなただからこそできる新たな分野に踏み出しましょう。
まとめ
日本の芸事や茶道に古くから伝わる守破離。
はじめは上手くいかずとも、型を知って利益を考えながら自分流にアレンジし、新しい分野に挑戦する過程を繰り返すなかで、商品やサービスは洗練されていきます。
なかなか結果が出せず不安に感じたら、守破離を思い出し、一歩ずつステップを踏んでいきましょう。