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インサイトとは?マーケティングにおける重要性と成功事例3選

2023.5.22
読了まで約 8

企画開発やマーケティング部門で仕事をされている人は、消費者の購買理由を見抜く場面で「インサイト」という言葉をよく耳にすると思います。

場合によっては「ユーザーインサイト」「消費者インサイト」「コンシューマーインサイト」と呼ばれることもあります。

インサイトという言葉は、実際マーケティング用語としてどのような意味を持っているのでしょうか。

わかっているようでなかなか言葉にして説明が難しい、インサイトについてわかりやすく解説します。

インサイトとは、本人も気づかない潜在的な購買欲求のスイッチ

インサイトを直訳すると、「洞察(力)、眼識、見識、識見」(ジーニアス英和辞典第4版)になります。

ただ、これらの意味がそのままマーケティングにおけるインサイトの意味として用いられているわけではありません。

マーケティング用語としてのインサイトは、よく「潜在ニーズ」と表現されることがあります。インサイトは非常に漠然としていて明確な形を持たないため、端的に表現することが難しく、この「潜在ニーズ」という言葉もその一端を切り取って表現されているものと思われます。

しかし潜在ニーズとインサイトは、イコールではありません。インサイトとは、消費者が潜在的に持っているニーズを引き出し、潜在ニーズを購買欲求へと変化させる、いわばスイッチのようなものをいいます。

スイッチとは、直感的に「欲しい!」と思わせるもので、機能であったり、世界観であったり、テクスチャ、外観、香り、あらゆるものが消費者の心を刺激し、思わず買ってしまうような「何か」を指します。

中には購買欲求はあるけれども、同時にネガティブな気持ちがあり、なかなか購買行動に結びつかないものを逆転の発想で購買行動に価値づけをし、動機づけを行うものなどもあります。

インサイトを見つける際に重要なのは、消費者の購買理由を見抜く場面で、どのような潜在ニーズを抱えているかを分析することです。

現代はありとあらゆるモノが溢れ、ほとんどの消費者ニーズは満たされた状態です。しかし、その中から眠っているニーズを探り当てなければなりません。

消費者本人が言葉で表現できる、顕在しているニーズに比べ、潜在ニーズは消費者本人が気づいていない、もしくは表現しにくいものが多いため、それを探り当てるのは非常に難しい作業です。

近年、消費者の購買理由を見抜く場面で、潜在ニーズを引き出すためのさまざまな手法が編み出されています。多くの調査会社が調査・分析を行ったり、企業自体にインサイト関連のマーケティング部署が存在したり、調査・分析自体がひとつの大きな業務として確立されつつあるのです。

高品質なインサイト(ユーザーインサイト)を得るためには、各種のステップを踏む必要があります。ユーザーインサイトを得るために必要なステップについては、下記のコラムをご参考にしてください。

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高品質なユーザーインサイトを得るために必要なステップとは?
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マーケティングでインサイトが注目される理由

インサイトとは、ニーズよりもさらに深い場所にある「購買行動の動機」のことです。

実際のところ、ニーズの高い製品やサービスをつくるだけでは、市場をリードすることはできません。インサイトに注目して、その製品やサービスが必要とされる理由について知ることで、将来的に必要とされるであろう製品やサービスを予測できるのです。

これから必要とされるモノやサービスを生み出せば、他社との差別化が図れます。時代を追うのではなく、時代を創り出す側になるためには、インサイトに注目した消費者の分析が必要なのです。

関連記事:インサイトを徹底的に把握する/マーケターの90%が「不可欠だ」と答えた施策とは

インサイトを追求するメリット

インサイトを追求することには、次のメリットがあります。

● 製品・サービスにイノベーションをもたらす可能性がある
● ビジネスモデルそのものにもイノベーションをもたらす可能性がある
● 消費者との結びつきを強化できる
● シェアを拡大できる

インサイトを分析することで、消費者の購買行動に関する動機が明らかになれば、今までにない製品やサービスの開発が可能になります。販売方法や宣伝方法などにもインサイトの分析を反映すれば、製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルにもイノベーションをもたらすかもしれません。

また、消費者の気持ちを的確に反映した売り方や、製品・サービスを実現することで、消費者に「私たちの気持ちを理解してくれる企業」という印象を与えられます。「この企業の製品・サービスなら間違いない」という信頼を獲得できれば、消費者との結びつきを強化することも可能です。

新しい製品やサービスを販売することで、新たな顧客層もターゲットにできます。順調にシェアを拡大できれば、業界の、あるいは経済界のリーディングカンパニーへ躍進することも夢ではありません。

関連記事:CVを向上させるには?顧客インサイトを把握したファネル戦略/コンバージョン率最適化(CRO施策)の重要性
関連記事:B to Bの顧客インサイトとは何か?知っておきたいメリットや具体的な内容について解説

インサイトを追求する際の注意点

インサイトを重視して製品やサービスを開発する手法は、実践的な手法としてはまだ確立されていません。

インサイトに注目したマーケティングにおいては、「人間の行動はすべて合理的に説明がつく」という立場で進めていきますが、実際の消費者の行動には、合理的に説明がつかないものも多数あるからです。

そこで、インサイトだけでなく、インサイトによらない異なる視点も併用し、製品やサービスを開発する必要があるでしょう。

また、インサイトの分析が誤っている可能性もありますので、現場では実践・検証を繰り返し、今後も活用できるノウハウとして積み上げることが必要です。

インサイトを見つけるための4つのポイント

インサイトを見つけるためには、合理的に消費者の動機を分析することが必要です。次の手順でインサイトを見つけていきましょう。

1. データを集める
2. データを分析する
3. ペルソナ、共感マップを作成する
4. 固定概念を覆し、新しい視点でアプローチする

各手順を説明します。

1.データを集める

まずは消費者の動機を示すデータを集めることから取り組みます。

アンケートの結果や、サイトのアクセス履歴などのトラッキングデータ、ユーザーインタビュー、行動観察なども含め、消費者の思いが表現されているデータを、可能な限り多く集めます。

関連記事:トラッキングってなに?インターネット利便性の向上に寄与している手法とは

2.データを分析する

次に、収集したデータを分析します。

アンケートであれば、結果だけでなく、結果に至った消費者の行動や、行動の理由などに注目することが必要です。

また、ホームページやECサイトなどのトラッキングデータであれば、GA4(Googleアナリティクス4)をはじめとしたアクセス解析ツールなどを使い、集めたデータから見られる傾向や背景を探っていきます。

関連記事
Google Analytics(グーグルアナリティクス)とは?設定方法や使用用途を解説
GA4(Google アナリティクス 4)と旧バージョン(UA/ユニバーサルアナリティクス)の違いとは?

3.ペルソナ、共感マップを作成する

分析した結果から、製品やサービスのターゲットとなるペルソナを割り出していきます。

ペルソナの設定を細かくすればするほど、消費者目線での製品・サービスの開発が可能になります。

また、共感マップの作成も必要です。共感マップとは、ターゲットとなる消費者の考えや感じていること、知っていること、ストレス、望むもの、などを具体的に表示したものです。

ペルソナの設定や共感マップを丁寧に作成することで、インサイトの見える化を実現できます。

関連記事
ペルソナとは?ビジネスにおける重要性や分析手順を解説
マーケティングに欠かせないペルソナの設定 なぜ必要か?どうやるのか?

4.固定概念を覆し、新しい視点でアプローチする

消費者の購買理由を見抜く場面で、消費者の潜在ニーズが判明したとしても、それだけでは何も生み出せません。インサイトにはもうひとつの大切な要素があります。

それは、「固定概念を覆し、新しい視点でアプローチする」ことです。

消費者の購買理由を見抜く場面でインサイトが明確になった段階で、マーケティング部門は、開発製造部門、プロモーション部門などと連携し、新しい発想から新提案や新商品を生み出し、アプローチをしていくのです。

インサイトは、「機能性」「色」「テクスチャ」「香り」「使い心地」「利便性」など、さまざまな消費者の「こういう製品やサービスが欲しい」という総合的な世界観も含みます。

商品開発やサービス開発であったり、広告やプロモーションであったり、実際にどれだけ消費者のインサイトに近づけるかがヒット商品を生み出すマーケティングの鍵となってくるのです。

インサイトからヒット商品やヒットサービスを生み出すためには、今までになかった新しい視点が必要です。新しい視点を得るためには、固定概念を覆すことが重要なのです。

本来こうあるべき、と誰もが思っていることを根底から覆し、消費者のニーズをこれまでにない形で実体化させなければなりません。

たとえば、煙の出ないタバコ、羽のない扇風機、ヘルシーなインスタントラーメンなど、これまでの常識を覆すような新商品がたくさん生まれてきました。これらは、新しい視点で新商品を開発し、消費者の購買行動につながる広告やマーケティングプロモーションを行ったことによるヒットだったのです。

現代はモノに溢れています。固定概念を捨て去り、今まで誰も立ったことのない場所に立ち、その視点からアイデアを出していくのがマーケティングで成功するポイントです。

そこにインサイトが反映されていれば、消費者の購買欲求に触れ、購買行動へと導くことが可能になるのです。

法人間(BtoB)における ビジネス・インサイト とは

インサイトを反映したマーケティングには、消費者のインサイトだけでなく、法人間のビジネス(BtoB)におけるインサイトを対象とした戦略も存在します。

BtoBにおいても、もちろんインサイトは「購買(契約)動機につながるスイッチのようなもの」ではありますが、消費者インサイトと比較すると、アプローチの方法がいくらか異なります。

BtoBでは、購買や契約に関する担当者が複数いることがほとんどです。複数の担当者が何度もミーティングや分析・検討を重ねて、上席者の承認を受けたうえで、購買・契約に向かいます。

BtoBのインサイトを対象としたマーケティングでは、それぞれの企業のインサイトを明確に捉え、複数の担当者の心を掴むアプローチを行う必要があるのです 。

個人の消費者が、いわばインスピレーションのような直感的感覚で購買行動を起こすのと対照的に、BtoBでは製品やサービスの購買・契約がその企業にとってどれだけの有益な結果をもたらすのか、それに支払う対価はバランスがとれているか、などを綿密に分析し、検討を重ねます。対価を支払ってその製品・サービスが欲しいという結論が出されれば、購買・契約の行動へと移るのです。

法人がインサイトから購買・契約に向けた検討に入る時期は、ソリューションを提案する企業にとっては、新たなビジネスが生まれるときでもあります。

ビジネスの世界では、新しいビジネスやマーケティングが決まる背景に、インサイトの時期があると考えられています。

書籍『ビジネス・インサイト: 創造の知とは何か』の中で著者の石井淳蔵氏は、新しいビジネスモデルが生まれるときに働く知を、「ビジネス・インサイト」と呼んでいます。

関連記事:BtoBとは?BtoBマーケティングの特徴、BtoCとの違いをわかりやすく解説

ビジネス・インサイトの例

ビジネス・インサイト(新しいビジネスモデルが生まれるときに働く知)としては、下記の例があげられます。

● 既存製品のバージョンアップよりも、その周辺機器の老朽化、ソフトウェアのサポート期間終了などが製品買い替えの検討に移る可能性が高い

● 契約更新を提案するタイミングは、サポート停止予告と同時に行うのではなく、契約更新時期を踏まえた事前の提案活動で行うのが重要である

● 製品の選定は、合併や再編など、組織・企業の再編のタイミングが重要なきっかけとなることが多い

ビジネス・インサイトに影響を与えるメディアは消費者インサイトと異なる

ビジネス・インサイトの場合、インサイトに影響を与えるメディアが、消費者インサイトとは異なります。

個人のインサイトに対しては、テレビやCM、SNSなどのメディアが大きく影響を与えるのに対し、ビジネス・インサイトでは、専門雑誌やWebサイト、オウンドメディア、展示会、セミナーなどが大きな影響を与えます。

BtoBの購買理由を見抜くためには、インサイトの的確な把握から、反応の出やすいアプローチ方法を選択する必要があると言えるでしょう。

ビジネス・インサイトに影響を与えるサイトについての記事は下記リンクが参考になります。

関連記事:自社ホームページだけではない!「サイトインサイド」のメリットについて

インサイトの成功事例3つ

インサイトを活用した成功事例を3つ紹介します。インサイトを活かしたビジネスを進める際の参考にしてください。

事例1.ライオン株式会社「トップ スーパーNANOX」

ライオン株式会社では、洗濯洗剤に求められる「汚れ落ち」だけでなく、「匂い」に注目した洗剤「トップ スーパーNANOX」を開発し販売しました。

洗濯物の汚れ落ちを確認するために、消費者が行う「洗濯物のにおいを嗅ぐ」という行為に注目し、消費者の潜在ニーズとして「いやな匂いがしない」にインサイトがあると分析したことから「トップ スーパーNANOX」が誕生しました。

実際に洗濯物の匂いを気にする消費者は非常に多く、同商品は衣類用洗剤市場でもかなりのシェアを誇っています。

事例2.日清食品株式会社「カップヌードルリッチ」

シニア向けの食品には、減塩や低カロリーなどの健康志向のものが多い傾向にあります。しかし実際には、健康よりも美食を求めるシニアが多いのではないかという分析から、日清食品株式会社は健康に配慮しつつもフカヒレやすっぽんなどの高級食材を用いた「カップヌードルリッチ」を販売しました。

同商品は通常の商品よりも高価格帯でありながら、食にこだわるアクティブシニアに支持され、見事にヒット商品となりました。

事例3.ユニリーバ「ダヴ」

家庭用品を扱うユニリーバは、あるとき「自分自身を美しいと思うか」というアンケートを実施しました。日本人女性の場合、「はい」と回答したのはわずか2%だったことがわかったそうです。

そこでユニリーバは、自分自身を肯定しにくい消費者のインサイトに注目し、主力商品の「ダブ」を通して、美の多様性を表現するプロモーションを展開しました。このプロモーションは大きな反響を呼び、ユニリーバの企業価値向上にもつながったそうです。

関連記事:マーケティング事例紹介 記事一覧

実現可能なインサイトでなければインサイトとはいえない

顧客の購買理由を見抜くために、調査・分析により判明したインサイトでも、現実問題として顧客の体力に見合ったものでなければ実現は不可能です。

インサイトは、実現してはじめて消費者や企業にプラスの効果をもたらすもので、実現ができないインサイトは、そもそもインサイトと呼べません。

さまざまな調査・分析結果から、顧客に見合った実現可能なインサイトを見抜き、着手することが大切です。

数ある調査・分析結果の中から的確にインサイトを見抜け ないと、その後の業務にまで支障をきたしかねません。

近頃は消費者ニーズ重要視型のマーケットイン(顧客ありきの販売戦略)が主流ですが、これからは潜在ニーズと的確なインサイトの把握が求められます。

またBtoBにおいても、潜在的に眠っているニーズや、ビジネス対象者の本音を的確に捉えることが重要です。

消費者インサイト、ビジネス・インサイトの双方において、顧客の購買理由を見抜く場面で、インサイトを明確に把握することが、企画開発やマーケティングを成功させるカギと言っていいでしょう。

関連記事:戦略と戦術の違いとは?マーケティングの具体例をご紹介

まとめ:インサイトを読み取りマーケティング活動へ繋げよう

消費者の購買理由を見抜く場面で使われるインサイトとは、消費者の潜在的なニーズを引き出し、購買欲求へと変化させるためのスイッチのようなものです。

インサイトを分析することで、新しい商品やサービスを生み出せるだけでなく、新たなニーズを生むことも可能です。

インサイトに注目し、マーケティング活動に活かしていきましょう。

よくあるご質問

インサイトとはどういう意味?

インサイトとは「洞察」を意味する英語ですが、ビジネスの分野では、消費者の潜在的なニーズを引き出す動機を指すことが一般的です。インサイトが消費者の購買欲求を刺激し、直感的に「欲しい」という気持ちを起こさせます。購入の動機や動機づけといった意味でも使われますが、「消費者の気持ちの根底にあるもの」という意味で用いることもあります。

インサイトはなぜ必要なの?

消費者の製品・サービスに対するニーズにいち早く気付くために、インサイトは必要な要素です。インサイトの発見は、消費者の気持ちを反映した製品・サービス、販売方法、宣伝方法などを選択できるようになるため、消費者の共感を得やすく、結びつきを強化するきっかけになることもあります。また、新しい顧客の開拓にも、インサイトは役に立ちます。

インサイトとニーズの違いは?

ニーズは、消費者がすでに自覚している感情をベースにしたもので、「顕在化した欲求」と言えます。一方のインサイトは、消費者自身がまだ自覚していない「潜在的な心理」を指し、欲求までに至っていない感情をあらわします。インサイトを注意深く分析することで、消費者に「なぜ今までなかったんだろう」「まさにこれが欲しかった!」と思わせるような、魅力的な製品やサービスを開発することが可能です。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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