Webマーケティングやブランディング戦略を立てるうえで、非常に重要なのが、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)です。なかでも、日本語で「区分」を意味する「セグメンテーション」は商品を訴求するためのターゲットを選ぶうえで重要とされ、マーケティング戦略の基本です。
今回は、「セグメンテーション」の他、「ターゲティング」、「ポジショニング」それぞれの用語の意味や分類の方法、実際の活用事例についての最新事情を解説します。
関連資料:ポジショニングマップの作り方とパワポテンプレート【×5パターン】
目次
セグメンテーション
セグメンテーションの意味とは
セグメンテーションとは、日本語で「区分」を意味します。特にマーケティングでは「不特定多数の顧客を様々な切り口で分類し、属性ごとに分けること」をいいます。マーケティングで一番重要なのは、商品やサービスのターゲット層を特定することです。商品を訴求するためのターゲットを選ぶうえで、大切なのがセグメンテーションです。
関連記事:セグメントとは。マーケティングだけでなくビジネス全般で使われる用語の意味
セグメンテーションが重要な理由
IT化が進んだ現代では、
・性別
・年齢
・住む場所
・趣味
・興味
・嗜好
・関心事
それぞれが多様化する一方です。
訴求方法も、テレビや検索エンジン、各種ホームページのほか、InstagramなどのSNSからYouTubeなど様々です。そのため、属性を分類し、適切な層を選びとることが、商品を訴求する媒体の選定や、売上を大きく左右します。
必要最小限のマーケティング費用で、最大限の効果を生み出すことにもつながります。
関連記事
・顧客セグメンテーションとは?概要や分類例、実践方法まで解説!
・BtoBで重要視されるセグメンテーションの設定方法とは?STP分析との関連性も紹介
セグメンテーションする際のポイント
セグメンテーションをするにあたっては、漠然と行っても、最終的な成果につながりません。自社商品で勝てるターゲットを発見し、選ぶには、以下の4つのポイントを意識する必要があります。
優先順位(Rank)
各セグメントの特徴を自社の戦略と照らし合わせながら、重要度に応じて、優先順位をつけることをいいます。競合他社との比較も必要です。
規模の有効性(Realistic)
自社商品が、十分な売上や利益を確保できる市場規模があるか確認することをいいます。市場規模が小さすぎると、ターゲットとしては適切でも、参入には不適切です。
到達可能性(Reach)
自社のプロモーションおよび、製品を流通させ、ユーザーに商品を届けられるかの難易度を調べることを指します。
測定可能性(Responce)
「セグメントの規模・特性を明確に測定できるか」「マーケティング後の反応を測定できるか」などをチェックすることです。
セグメンテーションの分類と切り口
各セグメントに分けるための主な基準と切り口には、以下の4種類があります。
人口動態変数
人口動態変数とは、
・年齢
・性別
・家族構成
・所得水準
・職業
・学歴
・宗教
などの人口比によって分類する手法です。
マーケティングで顧客をグループ化する際の基準として、最もよく用いられます。
その理由は、
・年齢、性別、所得水準などの属性が、実際の消費者ニーズや、製品・サービス使用率などと密接に結びつくこと
・国や自治体、その関連団体から公的な調査統計が多く出回っていることの2つがあります。
アパレルや外食、通信業界では、年齢層によって商品に対するニーズが大きく異なります。
そのため、ユーザーの年齢層と、商品が市場に投入されてから消えるまでの製品のライフサイクルを意識する必要があります。
関連記事:プロダクトライフサイクル(PLC)の基本的な意味を解説
また、ファッションやアクセサリー、車、不動産、金融商品などでは、収入や貯蓄別にカテゴリー化して商品を開発します。
地理的変数
地理的変数とは、国、都道府県、市町村の違い、気温が温暖か寒いかの違い、人口密度の違い、主な交通手段の違い、文化的背景の違いなど、地理に関連する条件によって分類する方法です。
具体的には、国内か海外か、東日本か西日本か、関東でも神奈川県なのか埼玉県なのかというように対象を絞っていきます。
気温の影響が大きい家電製品や、食物、衣類などは地理的変数が大きくなります。その一方、インターネットでのネットショップの販売や、オンラインのサービスでは、地理的変数は小さくなります。
心理的変数
心理的変数とは、ユーザーの価値観やライフスタイル、感情など、感性の部分に関係する要素で分類する方法です。サイコグラフィック変数とも呼ばれます。
インターネットやSNS、オンラインでの会話をはじめとする情報量の増加と多様化が、消費者ニーズの多様化をもたらし、心理的変数の重要度が増しています。
アパレル部門で例えると、高級ブランドを好むユーザーと、安く手頃な値段で気軽に購入できるカジュアルブランドを好むユーザーに区分できます。
SNSやネットショップを活用して、個人で商品を販売する動きも増えており、感情的に最先端や個性的を求めるユーザー層にターゲットを絞るニーズも大きくなっています。
行動変数
行動変数とは、曜日や時間、購買環境やその頻度など、ユーザーが購入する要素で分類することをいいます。近年、インターネットやバーコードシステムの充実で、簡単に測定できるため、行動変数に注目が集まっています。
雑誌にたとえると、雑誌を定期購読するユーザー、毎回の雑誌の内容によって購入するユーザー、電子書籍で購入するユーザーまでさまざまです。本屋やコンビニ、駅の売店など購入経路の分析なども含まれます。
セグメンテーションの具体例
ユニクロ
ユニクロは、画期的なセグメンテーションで成功した企業です。ターゲットの細分化が進む一方だったファッション業界において、企画から製造、販売まですべて自社で行う強みがありました。
そこで、「カジュアル、フォーマル、べーショック、トレンド」という4つのシンプルな言葉をもとに、商品でなく自社を大きなセグメントに再定義しました。
その中で自社の強みを分析し、商品を限定し、色とサイズのバリエーションを豊富にし、全世代向けの商品を販売しました。
その結果、フリース、ヒートテックをはじめとする大ヒット商品を世の中に出し続ける企業として成長。「お買い得で着心地の良い」というポジションを確立しました。
スターバックス
スターバックスは、喫煙の有無を活用して、マーケティングのセグメントを成功させました。アメリカでの創業当初から、「コーヒーを五感で感じる」ことがコンセプトのため、禁煙とし、タバコやタバコのにおいが嫌いな人を主なターゲットとしました。1996年に日本に参入した時も、禁煙とし、同業他社との差別化を図りました。その後の躍進は、言わずと知れたところです。
関連記事:スターバックスは4P分析で成功/マーケティングミックス、4P、4Cを事例で解説
JINS
眼鏡メーカーのJINSも、市場セグメントにより成功を収めました。
眼鏡といえば、目が悪い人向けの市場というのが一般的な定義です。そこから、視力はいいけれど「パソコンやスマホを使っている時に目が疲れる」人向けのセグメントを設定しました。そして、そのニーズに答える目や身体への影響を防ぐ機能性のあるブルーライトカット眼鏡を発売し、高いシェアを獲得しています。
セグメンテーションを終えたらターゲティング、ポジショニング(STP分析)を
上記で説明した、セグメンテーションができたら、その中からターゲットを定め(ターゲティング)、ターゲットの中から自社商品を差別化(ポジショニング)して、PRしていきます。
この一連の流れを、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字をとり「STP」といいます。STPはマーケティングの基本となる手法です。セグメンテーションからターゲティング、ポジショニングと一連のSTP分析を行うことで、はじめて成立します。
関連記事:マーケティング初心者がおさえるべき「STP分析」をわかりやすく解説します!
ターゲティングとは
セグメンテーションで分類した区分の中から、自社がターゲットとすべきセグメントを選ぶことをいいます。例えば人を年齢という属性で「30代」「40代」「50代」というように区分したとします。その中から40代に限定して、マーケティングの施策を実施すると決めたとします。これがターゲティングです。実際はここから属性として、性別、居住地、年収などの項目を増やしていきます。
関連記事:BtoBマーケティングの精度向上を狙うターゲティングとは?設定方法や活用媒体も紹介
ポジショニングとは
ポジショニングとは、市場の中での自社の立ち位置を決めることです。競合他社の商品と比較、分析しながら、自社商品が勝てるか慎重に見極めます。ユーザーに対して、自社のみ提供できる価値=差別化できる点であり、これをユーザーに認識してもらうことが重要です。価格や品質、販売チャネルなども絞り込み、勝負可能な自社のポジションを探します。
ポジションを探し見極めるときには、ポジショニングマップを活用するのも手段の1つです。
関連記事:ポジショニングマップの作成方法~マーケティング戦略の競合との差別化
STP分析の3つのメリット
STP分析のメリットは大きく次の3つに分かれます。
①顧客のニーズが整理できる
STP分析により、市場ごとの顧客ニーズを整理・把握できるようになります。市場を細分化する過程で、どのような顧客がどの市場でどのような商品を求めているか整理でき、自社商品のコア層の把握と新商品のマーケティングに役立ちます。
②他社と差別化ができる
STP分析では、ポジショニングにより、他社の商品・サービスと比較ができます。どのような商品なのか、価格や機能などを比べることで、自社商品と差別化ができます。また、他社との競合を避けることにつながり、勝てる市場を選びやすくなることもポイントです。
③自社商品の強みが分かる
自社商品の特徴や強み、アピールポイントが明確になります。社内で共有し、営業力の強化や、効果的なメディア戦略などが、打ち出せます。
STP分析の注意点
①STPの順番は違っても大丈夫
STP分析は、通常、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順序で行われます。しかし、必ずしも順番にこだわる必要はありません。STPはどの順序で分析をしても、連動しているため、結果は大きく変わりません。材料がそろっているなど取り組みやすい順番で分析をはじめましょう。
②収益性についてよく試算する
STP分析により、自社の強みが生かせるマーケットが分かった場合、収益が確保できるか、しっかり検討しましょう。「実は市場が小さい」「現在は市場規模が大きいが、将来の先細りが大きい」など、国内市場は将来の人口減少を踏まえた分析が必要です。
③市場への参入、流通経路を確認する
自社に適している市場がみつかった場合、市場への物流などの参入、法規制などの問題に抵触しないかの調査が必要です。実際市場に参入したとして、顧客にPRでき、認知され、十分な収益が上がるかどうか、マーケティングにかけられる予算や体制を把握し、総合的な判断が必要です。
まとめ
セグメンテーションとは、市場での顧客をさまざまな切り口で分類し、特定の属性ごとに細分化するプロセスです。その方法から具体例、ターゲティング、ポジショニングを含めたSTP分析までの流れを説明してきました。
セグメンテーションを行う際は、以下の4つのポイントを意識して、ターゲティング、ポジショニングにつなげましょう。
・優先順位(Rank)
・規模の有効性(Realistic)
・到達可能性(Reach)
・測定可能性(Responce)
同時に、市場や顧客を分類するため、紹介した変数を活用することも必要です。
・人口動態変数
・地理的変数
・心理的変数
・行動変数
ITの発達による消費者ニーズの多様化の流れのなかで、セグメンテーションの重要性が高まっています。セグメンテーションを行う際は、今回紹介したポイントを参考に、集客や売上向上につながるマーケティングを行いましょう。