SaaSビジネスにおける重要な経営指標の1つにチャーンレートがあります。チャーンレートは顧客の解約率を意味し、SaaSやサブスクリプションサービスにおいて事業の収益に直結し、そして、サービスの向上における指標ともなります。
また、チャーンレートはLTVにも深く関連し、ひいては新規獲得にかけるマーケティングコストにも影響します。今回はマーケターが押さえておきたいチャーンレートの種類や重要性について紹介します。
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目次
チャーンレート(Churn rate)とは?
チャーン(Churn)は「解約」という意味になり、チャーンレート(Churn rate)は「解約率」となります。ある期間において、全ユーザーの中での解約、または、無料プランにダウングレードしたユーザーの割合を示し、退会率や顧客離脱率と呼ばれることもあります。。
チャーンレートは企業数だけでなくユーザー数や利用料金、そして、アップセル・クロスセルを含むかどうかによって値に違いがでます。チャーンレートは大きく分けて2つの種類があり、ユーザー数を掛け合わせて計算するカスタマーチャーンレートと、収益で計算するレベニューチャーンレートです。。
①カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートについては顧客単位のチャーンレートとして総称されます。さらにユーザー単位と企業(アカウント)単位によって2つに分かれます。
ユーザー単位のチャーンレートを「カスタマーチャーンレート」、企業(アカウント)単位チャーンレートを「アカウントチャーンレート」と呼びます。
②レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートは収益(レベニュー)単位で見ることのできるチャーンレートで、ダウンセルのみではなく、アップセル・クロスセルを含むかによってさらに2つに分かれます。
解約やダウングレードによる減収を加味したチャーンレートを「グロスレベニューチャーンレート」、解約やダウングレードによる減収とアップセルやクロスセルによる増収を加味して、「ネットレベニューチャーンレート」と呼びます。
チャーンレートの重要性
チャーンレートはSaaSやサブスクリプションサービスにとって重要な経営指標です。その理由としては収益に直結すること、サービス向上の指標の2つが挙げられます。
①収益に直結する
SaaSビジネスは売り切りのビジネスではなく、継続的な利用を前提としたビジネスモデルです。そのため、ユーザーの解約のタイミングによっては、そのユーザーを獲得したコストよりも収益が下回る場合があります。
それが重なって、新規ユーザーの獲得よりも解約が多くなってしまうと、事業として赤字の状態に陥り採算がとれません。そのためチャーンレートは事業としての健全性を判断するためにも重要な指標となります。
また改善が出来ることでSaaSビジネスの成長に大きなインパクトを与えることができます。チャーンレートが2%から1%へ下がるだけで、LTVは2倍になるほどのインパクトとなります。
②サービス向上の指標
チャーンレートは、事業の健全性を測るだけではなく、サービス向上における指標としても重要です。チャーンレートの数値自体は低下を実現するために取り組み目標を決め改善していく必要がある。具体的な施策を継続的に取り組むことが必要となります。
チャーンの要因を探ることで、何らかの理由でユーザーが感じている不満を解消し、ユーザーの満足度を上げることができます。そのため、チャーンレートはユーザーがサービスに満足をしているかどうかを測り、サービス向上のために非常に重要な指標です。
チャーンレートの算出方法と平均値
実際にチャーンレートを算出する方法と平均値を紹介します。
①カスタマーチャーンレートの算出方法
カスタマーチャーンレートは企業単位、ユーザー単位で算出され、料金プランが1つのみの際に用いられます。さらに、BtoBサービスは企業数(アカウントチャーンレート)、BtoCサービスはユーザー数(カスタマーチャーンレート)を用います。
計算式 = 一定期間のうちに解約した企業数(またはユーザー数) ÷ 期間前の企業数(またはユーザー数)
②レベニューチャーンレートの算出方法
レベニューチャーンレートは収益単位で算出されます。複数の料金プランがある際に用いられます。
計算式 = 平均利用単価 × 一定期間のうちに解約した企業数(またはユーザー数) ÷ 一定期間における収益
また、解約やダウングレードによる減収を加味して算出するグロスレベニューチャーンレートは、解約による収益への影響を把握する際に用いられます。アップセル・クロスセルによる増収も加味して算出するネットレベニューチャーンレートは、総収益の把握や売上予測に用いられます。
③チャーンレートの平均的な値
目安とすべき平均的なチャーンレートの値は業種や企業規模によって異なると言われています。下記のサイトでは、BtoB平均が5%、BtoC平均が7%となっており、BtoCのほうが高い傾向です。チャーンレートでKPI化したり目標として設定する際には、どのくらいの目安が適切なのか事前に調べておきましょう。
Subscription churn rate industry benchmarks – Recurly research
チャーンレートは最適なマーケティングコスト算出に必要
LTV(ライフタイムバリュー)はユーザーの継続的なサービスの利用、すなわちユーザーの「購買単価」「購買頻度」「継続期間」が重要となります。そのため、チャーンレートの改善はLTVの向上に大きくインパクトを与えます。
B to Bで重要な顧客分析とは?「LTVの高い顧客の抽出」でマーケティングの精度を向上
また、SaaSビジネスにおいては、チャーンレートを使ってLTVを計算できます。
LTV = サービス単価 × 粗利率 ÷ チャーンレート
そして、チャーンレートから算出したLTVで適切なCPC(顧客獲得単価)を算出することができ、一般的にはLTVがCACの3倍がSaaSビジネスで健全な値と言われています。そこから新規顧客獲得のための最適なマーケティングコストを明確にすることができます。
CAC(顧客獲得単価)ってなに?SaaSビジネスでの適切な獲得単価を算出 | MarkeTRUNK
LTVを算出する計算式からも分かるように、チャーンレートが下がればLTVは大きくなり、適切なCACも大きくなるため、新規のユーザー獲得にかけられるコストが増えます。よって、チャーンレートの改善はより多くの新規ユーザーの獲得が可能になり、マーケティングにおいても良い影響をもたらします。
まとめ
・全ユーザーのうち解約、または、無料プランにダウングレードしたユーザーの割合をチャーンレートを意味し、ユーザーごとのカスタマーチャーンレートと収益ごとのレベニューチャーンレートの大きく2種類ある
・チャーンレートは収益に直結すること、サービス向上の指標となることから、SaaSやサブスクリプションサービスにとって重要な経営指標である
・目安とすべき平均的なチャーンの値は業種や企業規模によって異なると言われているが、BtoB平均が5%、BtoC平均が7%となっており、BtoCのほうが高い傾向にある
・チャーンレートからLTVが算出でき、さらにLTVから適切なCPC(顧客獲得単価)を算出できる。そこから新規顧客獲得のための最適なマーケティングコストを明確になる