日々の暮らしを何かと便利にしてくれるオンライン環境ですが、実はオンライン利用ユーザーに関する、さまざまなデータのトラッキング(特定のユーザーが、サイト内でどこを閲覧しているのかの追跡、分析)が実施されていることをご存知でしょうか。また、トラッキングしたデータは「ターゲティング」に活用され、企業やマーケターは「データターゲティング」によって得たさまざまな情報を基に、自身が提供するビジネスやサービスの向上へ繋げる施策を実施しています。「データターゲティング」はWeb利用ユーザーとの貴重な接点の発掘に貢献し、現代のWebマーケティング市場を支えているともいえるでしょう。
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しかし、近年は個人情報保護の観点から、「データターゲティング」に用いるトラッキングを規制する動きが注目されるようになりました。さまざまなメリットを持つトラッキングでありますが、世間的にネガティブなイメージを持つ人が増えているとも言われています。
本記事では、「データターゲティング」を主体に、機能や特徴に触れながら、今後の「データターゲティング」の変化と対応方法について詳しくご説明していきます。
目次
マーケターが活用する「データターゲティング」
近年はインターネット環境が整備され、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及により、オンラインを利用したビジネスやサービスが年々拡大しています。日々の暮らしの中に、オンライン環境は必要不可欠とも言えるほど、その存在価値は計り知れません。例えば、暮らしの中でちょっとした疑問が生まれた時には、スマートフォンやパソコンを使用し、解決に導く答えを手軽に探し出すことができますね。また、オンラインショッピングを利用するユーザーも年々増加傾向にあります。オンライン環境さえ整っていれば、実店舗に出向くことなく好みの時間に場所を問わず、オンライン上でさまざまな買い物を手軽に楽しむことができ、世界的パンデミックを経験した現代では、非接触型サービスへの注目は高まりを見せている状況でもあります。
さらにSNS市場では、日々さまざまなSNSアプリが登場し利用ユーザーの急激な広がりが見られます。実際に、友人や家族とのコミニケションツールの一環や、自身の趣味趣向の娯楽時間、そしてなにより日常生活における連絡手段の一つとしてSNSを利用しているといったユーザーも多いことでしょう。「1日の生活空間の中でSNSを利用しなかった日はない」という方を、周りから見つけ出す方が難しい時代に突入したといえるのです。
こうして近年のインターネット利用率やスマートフォンの普及により、顧客の行動は複雑化し、より精度が高いマーケティング戦略の設計や、顧客ニーズにあわせたタイミングでのコミュニケーションが求められるようになりました。そこで重要な役割を果たすのが、特定のユーザーが、サイト内でどこを閲覧しているのかを追跡、分析する「トラッキング」です。トラッキングしたデータを企業やマーケターは「データターゲティング」に活用します。そのデータターゲティングにおいて利用が多いのが「Cookie」です。
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データターゲティングに活用される「Cookie」とは
データターゲティングに必要不可欠である機能として「Cookie」が挙げられます。インターネットを使用しWebサイトを観覧していると、Cookieといわれる表示を目にする機会が多くなったのではないでしょうか?実際の表示面はWebページの画面上に、アラート表示に似た形式で画面上に浮かび上がってきます。Cookieの表示と一緒になって表示される文言には、さまざまなパターンが存在しますが、基本的にCookieの有効や同意を求められる文言が表示されます。
そもそもCookieとは、インターネット環境を利用し、ユーザーがWebサイトを訪れた際に、Webサイト側から利用ユーザーの使用するスマートフォンや、PC、タブレット端末などにデータが保存されるという機能を果たします。保存されるデータにはWeb利用ユーザーが使用する各端末内のブラウザを通して蓄積される特徴があり、データの保存内容に関しては、利用日時や場所、Web上で実際に使用するIDやメールアドレス、Webを利用した回数など、Webサイトを利用する上で大切な存在となるサイト訪問者の詳細なデータが蓄積されていきます。例えば、ネットショッピング利用時によく遭遇するログインIDやパスワードの入力を2回目以降から省略する場合が挙げられます。そして、そのWebサイトにログインした際のログイン状態を維持できるなど、Webサイト利用ユーザーにとって便利な機能の使用が可能になります。
また、位置情報サービスにもCookieに蓄積されたデータは活用され、ブラウザ内に保存されたユーザーの位置情報を基に、ユーザーがその場で必要とする最も適した情報の表示が可能となるサービスも存在するのです。
WebこのようにCookieの活用により、Webサイト上ではさまざまなことが便利に機能し、Webサイトを利用するユーザーは多くの恩恵を受けることができる画期的なサービスの実現を可能としました。
Cookieに蓄積されるデータは、サイト訪問者の個人を特定できるような識別子を利用しないことから、ある程度のプライバシーは保護されていました。しかし、このような識別子を他のデータと連携させることで、個人を特定できるデータとしての活用が可能になってしまうことが近年問題視され、個人情報保護などプライバシーの観点から一気に規制が強まりました。
Cookieは2種類存在する
データターゲティングで幅広く活用されるCookieには「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の2種類が存在するため簡単にご説明していきます。
ファーストパーティCookie
ファーストパーティCookieとは、実際にWebサイトを利用するユーザーが、訪問先であるWebサイトのドメインから直接的に発行を受けるCookieのことです。Web利用ユーザーは訪問先のCookieを有効にすることで、サイト内の入力情報や、IPアドレスなどのデータを保存することが可能となります。また、Cookieに蓄積されたデータを用いて、Googleの提供するサービスであるGoogle Analyticsを利用することで、サイト利用者の行動履歴や観覧履歴を把握することができ、ビジネスやサービスの向上に利用する企業も増加しています。
サードパーティCookie
サードパーティCookieとは、Webサイト利用ユーザーが実際に訪問しているWebサイト以外のドメインから発行されているCookieのことを指します。Web広告市場において、広くサードパーティCookieが利用されています。サードパーティCookieを活用することにより、Webサイトをまたいで利用者の追跡が可能となり、リターゲティング機能を使用したWeb広告の実装も可能となるのです。例えば、ある住宅サイトを観覧し、そのWebページを離れたとします。その後、別のWebページを観覧中に住宅に関するWeb広告が表示される場合がありますが、このような時にサードパーティCookieが機能しているのです。
サードパーティCookieはWebページを訪れたユーザーを追跡し、それぞれの興味関心に向けたWeb広告の配信を可能としました。しかし、このサードパーティCookieは、プライバシー保護の観点から、近年では規制や廃止に対する動きが活発化しデータターゲティングにおいて世界的に問題視されています。
データターゲティングにおける規制や廃止について
上記でご説明した通り現在は、世界的にプライバシー保護に対する動きが強まり、データターゲティングで幅広く活用されているサードパーティCookieのあり方に対し、規制や廃止への流れが傾き始めています。Web広告のデータターゲティングにおいて、サードパーティCookieは核となる存在であり、世界的に見ても未だ多くの企業や、マーケターの間ではその画期的な存在に依存している傾向があります。仮に「明日からサードパーティCookieの利用が世界中で完全に廃止されます」といった発表があれば、Web広告業界はもちろんの事、Webを中心にビジネスやサービスを展開する膨大な数の企業にとっては一大事となり得ることでしょう。また、実際にサードパーティCookieの規制や廃止の動きとして現在可視化できる内容については、Webサイトを運営する企業の間でも、サードパーティCookieに対し利用規制の強化を実施する企業が増加してきていることが挙げられます。
そして何より重大なポイントとして、世界最大の検索エンジンを展開するGoogleが、2020年~2022年ににサードパーティCookieを完全に廃止すると発表し、Web市場に衝撃を与え世界的に注目を集めました。世界的に見てもGoogleが提供するサービスを利用し、ビジネスやサービスを展開している企業は計り知れない数であることは間違いないため、会社運営を左右する大きな問題となっています。また、iPhoneなど人気アイテムを取り扱うことで有名なAppleでは、2020年にITP(Intelligent Tracking Prevention)と呼ばれるトラッキング防止機能をOSに搭載することで、サードパーティCookieを完全に廃止したのです。このような流れは今後も世界的に強まりを見せ、徐々にWeb広告のデータターゲティングに用いられていたユーザーシグナルの取得は不可能となっていくでしょう。
今後のデータターゲティングにおける対策
今後は、Cookieに対する規制や廃止の流れがさらに強くなることが予想され、現在のデータターゲティングと同様のトラッキングは機能しなくなるでしょう。そのためデータターゲティングにCookieのトラッキングデータを利用し、ビジネスやサービスを展開する企業やマーケターは早急に対策を講じる必要があります。
企業やマーケターはデータターゲティングにおいてCookieに依存せず、自社で保有する顧客データの管理、把握に関して改めて注力する必要があります。また、更なる規制や廃止の流れが強くなることに対し、オウンドメディアを活用した顧客データの取得や蓄積を具体的な対策案を掲げて各企業やマーケターで強化を図ることが重要視されるでしょう。現状の顧客データに満足することなく、新規顧客の動向にもしっかりと目を向け、Web利用ユーザーのさまざまなシグナルにアンテナを張り巡らし、分析を徹底することが大切となります。
個人情報保護の観点から収集した個人情報を他のデータと紐づけを行い、個人が特定できてしまうような場合においては、事前にユーザーから同意を得る必要があるため注意が必要です。今後は世間的に見てもWeb利用ユーザーがデータターゲティングにおけるCookieや、個人情報保護についてシビアに考えるユーザーは増加するでしょう。事前に同意を得るなどの対応策はありますが、その中で同意に応じるユーザーはリスク回避の観点から結果的に減少する可能性もあります。このようなことからCookie依存の体制からいち早く脱却し、企業独自の魅力溢れる販促企画や、自社のビジネスやサービス内容を有料広告の利用を行わずにWeb利用ユーザーへ届けるパイプの構築など、自社で管理するあらゆるツールのクオリティ向上に努めることも大切となります。
また、上記でご説明致しました、ITP(Intelligent Tracking Prevention)と呼ばれるサードパーティCookieを完全にブロックする機能の対応策として、広告の中でも世界トップシェアを誇るGoogle広告のグローバルサイトタグが重要な役割を果たします。グローバルサイトタグを活用することで、Webサイトを一度訪れたことのあるユーザーに対して、広告を配信する機能であるリマーケティング配信や、コンバージョンの計測が可能となります。規制や廃止の対象となるサードパーティCookieを使用せずに、ファーストパーティCookieに活用できるシステムが導入されることで運用が可能となります。
グローバルサイトタグの設置個所
サードパーティCookieの影響を回避し、リマーケティング配信やコンバージョンの計測において便利に機能するグローバルサイトタグは、基本的に全てのサイトページ内に設置を心がけましょう。リマーケティング実施において、グローバルサイトタグの設置が未設定であるサイトページでは、基本的にリマーケティング配信を行うことはできないので注意が必要です。また、コンバージョンの計測に関して、実際の広告リンク先への設置は必須とし、その他の各広告表示オプションへの設置も並行して実施しましょう。一つ一つの設置作業を徹底することにより、計測漏れを防ぎ正確なデータの取得が可能となります。
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まとめ
「データターゲティング」の機能や特徴に触れ、今後の「データターゲティング」の変化と対応方法についてご説明してきました。今後、世界的に見ても、データターゲティングにおける規制や廃止に対する動きはさらに強まることが予想されます。現時点で無数の対応策が存在すれば、企業やマーケターにとってとても心強いのですが、実際はそうではありません。そのため、現時点で実施可能な対応策を講じ、データターゲティングの変化に対応できるスキルを身に着けておく必要があります。企業やマーケターはさまざまな対応策を事前に準備し、データターゲティングの世界的な動きを日々把握することが大切です。