インターネットやスマートフォンの急速な普及とともに、SNSを通じて拡大した「アンバサダー(Ambassador)」や「アンバサダーマーケティング(Ambassador Marketing)」。多くの会社・組織がアンバサダーやアンバサダーマーケティングを戦略的に活用する一方で、「アンバサダーとは自社にとって必要なものなのか」「アンバサダーマーケティングを取り入れる意味はあるのか」など、その効果やメリットをはかりかねている企業担当者も多いようです。
本記事では、アンバサダーとは具体的にどういうものなのか、アンバサダーマーケティングを含めた意味やメリット、企業の事例などを詳しく紹介します。
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目次
アンバサダーとは?意味や概要
近年、インターネットやスマートフォンの普及により「Twitter」や「Facebook」「Instagram」などのSNSは、私たちの生活に欠かせないものになってきました。
多くのユーザーが情報発信やコミュニティーの形成など、あらゆる目的でSNSを活用していますが、中でも注目されているのがアンバサダーの活用です。
● アンバサダーの意味
● アンバサダーの概要
アンバサダーの意味
アンバサダー(ambassador)とは、日本語に訳すと「大使」や「使節」「代表」「代理人」といった意味になります。
ビジネスシーンでのアンバサダーとは、分かりやすくいえば「宣伝大使」です。組織や企業からの依頼を受け、公式に「ブランド」「商品」「サービス」などの広報活動、普及活動を行う人を指しています。
基本的には企業との間に金銭の授受がない契約が多く、好意を持ち応援しているブランドから公式に任命され、商品やサービスについて自ら発信できることに喜びを感じているという人が多いようです。
アンバサダーとは、企業の顔であり、イメージキャラクターとして「広告塔」の意味合いを持つ「応援者」でもあると理解しておきましょう。
アンバサダーの概要
SNSの影響力が拡大している現代において、さまざまな企業がアンバサダーを活用した広告プロモーションを展開していますが、同じように消費者にアプローチする「インフルエンサー」との違いはどこにあるのでしょうか。
インフルエンサーとは、分かりやすくいえば、消費者に強い影響力を持つ「オピニオンリーダー」のような存在です。
たとえば、自身のコミュニティー内の消費者に情報発信できる、拡散力・訴求力の高い「芸能人」「著名人」「ブロガー」「ユーチューバー」「インスタグラマー」などがインフルエンサーとして活躍しています。
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一方、アンバサダーとは企業の「象徴」であり、広告塔としてふさわしいと判断されれば、インフルエンサーのような知名度や影響力の大きさは問わない場合が多いようです。アンバサダーを選出する際には、SNSにおけるフォロワー数の多さよりも、これまでどのような情報発信を行ってきたかなど、投稿の内容や表現の質を評価しているといえるでしょう。
一般的な消費者が、ある商品・サービスのファンになり、自身のSNSでその思いを熱心に発信していたところ、企業担当者の目に留まってアンバサダーに就任したということも少なくありません。
企業はブランドイメージ・商品イメージの向上を目指し、自社に愛着を持つファンを確実に増やすための「長期的なマーケティング戦略」として、一般のアンバサダーを積極的に起用していると考えてよいでしょう。
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アンバサダーマーケティングとは?
アンバサダーマーケティングとは、組織や企業がアンバサダーを採用し、SNSなどを通じて自社ブランドや商品・サービスをPRする宣伝手法です。
基本的に、取り扱う商品やサービスの良さ、知ってもらいたい関連情報などを、アンバサダーから「信頼度の高い口コミ」として発信してもらうプロモーションを意味します。
アンバサダーマーケティングは、従来の広告よりも自然で受け入れやすく、消費者がブランドを身近に感じられることが特徴です。ブランドイメージの確立や消費行動を促す施策として、近年取り入れる企業が増えている注目のマーケティング手法だといえます。
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● アンバサダーマーケティングが広まってきた背景
● アンバサダーマーケティングの実践方法
アンバサダーマーケティングが広まってきた背景
アンバサダーマーケティングが広まってきた背景には「口コミ」を参考にする人が増加していることが挙げられます。つまり、ユーザーが商品やサービスを購入する際に、信頼のおける情報源のひとつとなっているのが「口コミ」なのです。
伊藤忠系シンクタンクから生まれた「マイボイスコム株式会社」が2023年3月に行った「ネット上の口コミ情報に関するアンケート調査(第6回)」において、ほぼ半数に及ぶ47.4%のユーザーが「口コミを参考にする」と回答しています。しかも2013年以降その割合は徐々に増えていっています。
出典:マイボイスコム ネット上の口コミ情報に関するアンケート調査(第6回)
(https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=29608)
そして同じく口コミを参考にするユーザーの年代を消費者庁が調査した結果、若ければ若いほど口コミを参考にする割合が高いことも統計として出ています。
出典:消費者庁 口コミサイト・インフルエンサーマーケティングの動向整理
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/policy_coordination/internet_committee/pdf/internet_committee_180927_0002.pdf)
つまりインターネットやSNSの利用が生活の一部となっているZ世代ほど、もはや広告に記載されている文言などは信用せず、金銭絡みではない同じユーザー同士の本音や素直な感想、率直な意見などを参考にしている傾向が強いといえるのです。
こういった時代の流れによる消費者動向の変化から、アンバサダーマーケティングが広まっているひとつの背景があります。
アンバサダーを引き受ける側は基本的に金銭の授受を目的としていません。自分自身がその商品やサービスの熱狂的ファンであり、好意を持って自発的に活動を行っています。つまり自分が良いと思っているから他人に進めているのです。
こういったアンバサダーの活動は、口コミ同様に信頼がおける情報としてユーザーに受け取ってもらえます。このあたりは金銭目的で動くインフルエンサーとは一線を画すところです。
アンバサダーマーケティングの実践方法
アンバサダーマーケティングは主に以下の手順で行っていきます。
1. 趣旨を明確にする
2. アンバサダーを選考する
3. 選考したアンバサダーは適任かを判断する
4. アンバサダーへ協力要請とメリットの提示を行う
5. 継続的な協力要請を行いコニュニケーションの深化を図る
趣旨を明確にする
まずアンバサダーを活用してどういった宣伝及びPR活動を行うのかアンバサダーを活用する趣旨を明確にします。この基本となるフェーズを明確にせずにアンバサダーを募集しても、起用する際にどのような特徴を活かしたキャラクターを採用して良いのかが分からなくなります。
そういった場合に起こしてしまいがちなミスが「なんとなく決定してしまう」ことです。しかしこれをやってしまうと、以降のフェーズにブレが生じミスキャストや食い違いが発生する原因となってしまいます。一からやり直しとなりますので、まずは趣旨を明確にすることが必要不可欠です。
アンバサダーを選考する
趣旨を明確にしたら、その趣旨に沿う条件でアンバサダーの募集を行い選考していきます。アンバサダーの募集は紹介制度を利用するか、もしくは自社オウンドメディア、自社主催のイベントなどで告知を行っていきます。
アンバサダーを選考する際には、その人が自社商品やサービスをどれくらい愛好してくれているかを確認します。
● 自社商品やサービスに対する知識をどれほど持っているか
● 普段行っている情報発信の頻度はどのくらいか
● 購入回数やリピートはどのくらいか
といった項目から、顧客ロイヤリティがどれくらい高いかを判断していきます。
選考したアンバサダーは適任かを判断する
顧客ロイヤリティが高い人物が見つかったとしても、その人がアンバサダーに適しているかはまだ分かりません。当然、この段階で駄目になる場合もあります。まずはその人の人間性を確認します。
● 責任を持って宣伝、PR活動を行ってくれるのか
● 商品やサービスの魅力を噛み砕いてしっかり伝えられるのか
● ユーザーの反感を買うような言動を起こさないか
といった、アンバサダーに必要な最低限の行動力があるか、そして人間としてのマナーが身についているか、などをチェックしていきます。
アンバサダーへ協力要請とメリットの提示を行う
アンバサダーが適任であると判断できれば、その人に対して協力の要請とアンバサダーになることで得られるメリットなどを提示していきます。
アンバサダーが得られるメリットが大きければ大きいほど熱量が高くなり、意欲的に情報発信を行ってもらえます。基本的にアンバサダーとは金銭の授受は行わないため、金銭以外のメリットを充実させる必要があります。
たとえば、
● 定期的に行う自社主催の有料イベントに無料でご招待
● アンバサダーの活動による成果に応じて自社商品を無料で提供
● 新作を発売する前に無料でお試しが可能
といった、ロイヤルカスタマーであればどれも魅力的で嬉しい条件です。このようにアンバサダーに嬉しいメリットを提示してあげることにより、意欲的に情報発信に取り組んでもらえます。
継続的に協力要請を行いコニュニケーションの深化を図る
アンバサダーとの協力関係ができたら、以降は継続的に情報発信を行ってもらえるようコミュニケーションの深化を図っていく必要があります。アンバサダーになったときには意欲的であっても、その後、意欲が減退することも考えられます。
そうなった場合、もしくはそうならないためにも企業側としてできる限り協力する姿勢を見せる、サポート体制を整えるなどして定期的にコミュニケーションの深化を図っていきます。
アンバサダーマーケティングの事例
アンバサダーとは具体的にどのような存在で、どんな活動をしているのか、企業が募集したアンバサダーマーケティグの事例から確認しましょう。
● ホテルニューオータニ東京
● Xperia(エクスペリア)
● ワークマン
● ネスカフェ
● DHCブランドアンバサダー
● キリン一番搾り
ホテルニューオータニ東京
ホテルニューオータニ東京のアンバサダーは、新装ルームへの試泊や新作スイーツの試食、イベントへの参加体験などをSNSで発信する活動を行っています。
応募方法はInstagramでホテルニューオータニ東京の公式アカウントをフォローし、「#ホテルニューオータニアンバサダー」とハッシュタグをつけて関連する写真を投稿。その後、ホテルニューオータニ東京の公式サイトからエントリーし、選ばれた場合は、関連記事の投稿依頼やイベントへの招待などがあり、正式にアンバサダーとして活動できる仕組みです。
Xperia(エクスペリア)
ソニーのスマートフォンXperiaのアンバサダープロジェクトです。多種多様なジャンルのアンバサダーが「Xperiaの魅力を発信する」というコンセプトのもと、SNSを通じてムービーやショットを投稿しています。
アンバサダーになるには、専用サイト「Xperiaアンバサダー・プログラム」から名前またはニックネーム、メールアドレス、年代、住まい(地域)などの登録が必要です。Xperiaアンバサダーになれば、限定イベントや最新機種の情報をいち早く入手できる特典がついています。
ワークマン
作業服販売の大手ワークマンは、さまざまな肩書を持つアンバサダーの情報発信で、数々のヒット商品を生み出しています。
ワークマンに愛着を持つアンバサダーが、もともと作業用として開発された商品をどのように着こなしているか、分かりやすく紹介していることがポイントです。
アンバサダーとして起用されれば、イベント参加やSNSへの投稿だけでなく、ユーザー代表として商品開発に携わることもあるようです。
ネスカフェ
ネスレ日本が展開する「無料でコーヒーマシンを貸し出す」サービスにおいて、ネスカフェ製品を購入後、「同僚に商品を紹介するオフィス代表者」を募集しています。
その代表者が一定の条件を満たすとアンバサダーとなり、コーヒーを楽しんでいるオフィスの写真を公式掲示板に投稿したり、定期的にアンケートに答えたりする役割を担います。
ネスカフェアンバサダーは応募が殺到したことでも有名なマーケティングの事例です。もともとコーヒー好きの社員がアンバサダーになることで、長期にわたる商品購入や口コミ宣伝、ブランドのイメージアップなどに成功しています。
DHCブランドアンバサダー
DHCブランドアンバサダーはDHC商品を日頃から愛用しているユーザーが、まだDHC商品を詳しく知らない潜在顧客層に向けて、その魅力と素晴らしさを発信していくプログラムです。
アンバサダーにはメリットが多く、展示会やイベントなどへの招待の他、新商品お試しモニター、ポイントの付与など多くの権限が与えられます。
キリン一番搾り
キリン一番搾り生ビールの良さを発信していくプログラムです。クイズの成績が良くアンケートなどの審査に通過すればアンバサダーになれます。アンバサダーにはイベントなどへの招待、アンバサダーバッジの贈呈などのインセンティブがあります。
アンバサダーマーケティングのメリット・デメリット
さまざまな広告手法の中で、企業が積極的にアンバサダーマーケティングを取り入れる意味・メリットには、具体的にどのようなことが挙げられるでしょうか。デメリットもあわせて、以下で確認しましょう。
● アンバサダーマーケティングのメリット
● アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーマーケティングのメリット
アンバサダーとは、消費者目線で商品やサービスを訴求し、企業イメージを高められる宣伝大使です。アンバサダーマーケティングでは、自社のファンや愛着を持っている一般の消費者を起用することが多く、これまで社内で気がつかなかった商品・サービスの「強み」や企業への「ポジティブな口コミ」を発信してくれることに期待が持てます。
また、ビジネス活動を成功に導くためには、自社が設定するターゲット層に興味を持ってもらうアプローチが重要ですが、ターゲット層が身近に感じる属性・感性のアンバサダーを起用し、SNSなどで質の高い情報を発信し続ければ、「リアルに実感できる口コミ」として、効果的な宣伝・PRとなるでしょう。
費用対効果の面からも、アンバサダーマーケティングは有益な広告手法だといえます。企業価値を高めつつ、消費者の購買行動を自然と促せることがポイントです。
アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーを起用する際には、自社のブランドイメージとマッチしているかどうかを検討する必要があります。自社がターゲットとしている消費者の属性・感性と、選出したアンバサダーが大幅にずれている場合は、最終的に目指している結果につながらない場合が多いからです。
また、SNSの上でネガティブな反応が起こりやすい投稿が頻繁にある場合は、アンバサダー起用の意味がなくなってしまいます。ターゲット層の消費者が、アンバサダーの投稿に魅力を感じるか、投稿内容の方向性にずれがないかは、常に意識しなければなりません。
したがって、企業がアンバサダーを探し出したり選出したりするには、ある程度の時間やコストをかける必要があります。企業の象徴、広告塔となる最適なアンバサダーを任命する難易度は比較的高く、慎重に行う必要があると理解しておきましょう。
まとめ
アンバサダーとは、「宣伝大使」や「広告塔」の意味を持ち、公式に企業の広報活動、普及活動を行う人です。
アンバサダーを活用し施策を実行していくアンバサダーマーケティングは、インターネットやスマートフォンの急速な普及により拡大した、注目の宣伝手法となります。
企業の商品・サービスに好意を持つアンバサダーがリアルな口コミを発信し続けることで、消費者の信頼を得ながら、ブランドをより身近に感じる宣伝を行うことができます。
従来のメディアによる広告手法とは異なり、SNSでの新しいコミュニケーションとなるアンバサダーマーケティングの成功には、投稿内容の「質の良さ」が欠かせません。
ポジティブで魅力的な情報発信ができる、最適なアンバサダーを企業が見つけ出せるかどうかが、アンバサダーマーケティング成功の鍵を握っているといえるでしょう。