マーケティング予算の策定は、多くのマーケター責任者の頭を悩ますタスクです。年々、マーケティング施策はデジタル化が進んでおり、ユーザーへの新しいアプローチやマーケティング手法が生まれています。一方で、旧来の施策が効果を発揮しにくくなって、前年と同じ施策で同様の効果が得ることが難しくなっています。
限られたマーケティング予算をどのように配分するかは、その年度の売上貢献にダイレクトに影響するため、選択次第で売上が大きく変化します。1年間の変化を予測しながら、最適な予算配分を検討することは非常に難しいです。
今回はマーケティング予算の決め方とあわせて、最適な配分方法について紹介します
目次
マーケティング予算の決めるステップ
マーケティング予算を策定する際には、5つのステップが必要となります。
①売上目標を確認する
②売上構造を理解する
③データ分析をする
④施策別のリード獲得数と獲得単価を算出
⑤経営層とすり合わせを行い、稟議を得る
①売上目標を確認する
マーケティングの予算を策定する上で最初にしなければならないのは、会社全体で目指す売上目標を把握することです。会社全体の売上目標から逆算し、各部署で設定される目標数値になります。
マーケティング部門は売上目標に合わせて、商談獲得数や新規リード獲得数などが設定されます。企業によっては、商談やリードの獲得単価や、顧客獲得単価(CAC(Customer Acquisition Cost))も目標数値に追加される場合もあります。
また、マーケティング部門単体では売上を作ることはできないため、営業部門へ商談を引き渡す件数や顧客獲得コスト、受注率向上へのアクションといった、売上目標達成のためにどれほど貢献するのか観点を持ちながら、予算を策定しなければいけません。
②売上構造を理解する
売上目標を把握したら、その売上を構成する要素を分解します。一般的には、売上=受注数×平均受注金額です。さらに、受注数=商談獲得数×受注率、商談獲得数=リード獲得数×商談獲得率と分解でき、リード獲得数については施策別の要素で分解していくことができます。
リスティング広告であれば、リード獲得数=クリック数×コンバージョン率、クリック数=インプレッション数×クリック率と分解していきます。
また、平均受注金額は取り扱う製品・サービスの種類や単価、オプションによって構成が変わります。自社の取り扱う製品・サービスの売上がどのように構成されているのか、データで出せるように分析します。
③データ分析をする
売上目標を分解しそれぞれの要素を理解したら、現状のデータを集めて課題を分析します。適切な予算配分を行うためには、現状のマーケティング施策の課題を探ることが必須です。
分析結果によって売上目標達成への貢献が低い施策に対しては予算配分を縮小・削減し、また新たな施策への予算配分を行うなどの取捨選択を行うことができます。
例えば、リスティング広告であれば、コンバージョン数や獲得単価はもちろん、クリック率やコンバージョン率、反応の良かったキーワードや広告文、また、効果の出なかったキーワードや広告文などを洗い出し分析をします。
分析からリスティング広告の課題を抽出し、現状よりも顧客を獲得する余地がまだあるのか、もうすでに刈り取ってしまい余地がないのか、判断していきます。また、獲得余地がないのであれば、獲得単価を改善できないか検討していきます。
売上目標達成への貢献が高く、まだ獲得の余地があれば予算配分を増やしたり、貢献は低く獲得の余地がないのであれば、予算配分を縮小し獲得効率を上げるなど検討していくことができます。
④施策別のリード獲得数と獲得単価を算出
現状のデータから現状のマーケティング施策の課題を抽出したら、施策別のリード獲得数と獲得単価を算出していきます。施策それぞれの課題の状況を鑑みて、目標数値に達成できる獲得数と獲得単価を検討していく形になります。
経営層向けには、リスティング広告、セミナー、Webサイト改善など細かな施策ではなく、「新規リードの集客」「新規リード獲得率改善」「既存リードフォロー」と施策の機能別に分けると予算配分の目的を共有しやすくなります。
【新規リードの集客】
リスティング広告やSNS広告などの各種広告出稿、セミナーや展示会などのイベント出展などリードジェネレーションに該当する施策
【新規リード獲得率改善】
Webサイト改善など獲得率の向上につなげる施策
【既存リードフォロー】
過去商談実績のあるリードや、ホワイトペーパーダウンロードやセミナー申込で獲得したリードなど、見込み顧客にメールを送り商談化につなげる。リードナーチャリングに該当する施策
また、商談獲得数や受注数、商談獲得単価や顧客獲得単価(CAC)も数値化し、売上目標への貢献も見える化することで、予算配分への理解が得やすくなるでしょう。
⑤経営層とすり合わせを行い、稟議を得る
最終的に予算案の形にまとめ、経営層とすり合わせを行い、稟議を得ます。経営層は会社の売上目標達成につながるか、また、中長期の経営戦略に沿った予算配分かという視点で確認・検討していきます。
経営層から質問や指摘があった際には明確に回答できるように、根拠となっているデータやエビデンスも用意しておきます。経営層と合意を取れたら、最終的に確定となります。
関連記事:マーケティングとは?基礎から重要ポイントまで初心者にも分かりやすく解説
マーケティング予算の最適な配分
マーケティング予算の最適な配分は大きく3つあります。
①売上目標達成への貢献
上述の通り、マーケティング部門だけでは売上は作ることができません。ビジネスゴールである売上目標達成に向け、予算の配分がどのように貢献するのか、獲得した商談数や、顧客獲得コストなどの数値化されている状況で策定された予算は、最適な予算配分と言えます。
②適切なタイミング
展示会やセミナーなど開催時期が決まっているイベントは特にですが、昨年実施していたからという理由で予算配分を行うのは、最適な予算配分とは言えません。データ分析から需要のピークや受注タイミングを把握し、注力するべき適切なタイミングを予算配分に反映しましょう。
③固めすぎない
マーケティング予算は期初で決めますが、期初で想定した通りに成果を残すことが出来なかった場合には柔軟に変更できるような体制を作っておくことが重要です。
期初に決められた予算配分の通りに施策を実施するのではなく、それぞれの施策の売上目標に対する貢献を見ながら予算を最適化していくことが、適切な予算配分と言えるでしょう。
まとめ
・マーケティング部門単体では売上を作ることはできないため、売上目標達成のためにどれほど貢献するのか観点を持ちながら、予算を策定する
・マーケティング予算の決めるステップは下記の5つ
①売上目標を確認する ②売上構造を理解する ③データ分析をする
④施策別のリード獲得数と獲得単価を算出 ⑤経営層とすり合わせを行い、稟議を得る
・経営層向けには細かな施策ではなく、「新規リードの集客」「新規リード獲得率改善」「既存リードフォロー」と施策の機能別に分けると予算配分の目的を共有しやすくなる
・マーケティング予算は期初で決めるが、期初で想定した通りに成果を残すことが出来なかった場合には柔軟に変更できるような体制を作っておくことが重要