年々、AI(人工知能)の開発は世界的規模で活発化され、海外に留まらず国内でもAI開発を積極的に行う企業も増加傾向にあります。時代の流れと共にAIと人間の共存は、私たちの暮らしを豊かにし、生活の中にAIが当たり前のように溶け込む時代に突入しているのです。インターネットやスマートフォンの普及により、Web広告市場にもおいてもAIの導入は大きな影響をもたらしました。
ここでは、AI広告とは何かをわかりやすく解説していきながら、注目のプラットフォームとAIの関係性や活用事例を述べて参ります。
目次
AI広告とは
AIとは(人工知能)を意味し、正式名称はArtificial Intelligence。今日までAIの定義は定まっていませんが、AIには自律性(Autonomy)と適応性(Adaptivity)の大きく2つの特徴があると言われています。
自律性(Autonomy)に関しては、「常に人間の誘導なく作業タスクを実行する能力」を表わし、適応性(Adaptivity)に関しては、「経験から学習を行うことでパフォーマンスを向上させる能力」を表わします。
自立性、適応性これら2点を中心としたAIをマーケティングと掛け合わせる事により、人間の作業領域では時間のかかる工程や不可能であった領域を可能に近づけ、無限の可能性を生み出すツールとして近年注目を集めています。
Web広告におけるAIにはSEO対策のサポートを行うAIや、広告コピーを自動生成するAI、過去学習データや経験を反映させシミュレーションを行い将来の結果を予測するAIなど様々なシーンにおいてAIと広告の掛け合わせの発達により市場のパフォーマンスの底上げに貢献していると言えるでしょう。
現代の広告市場は凄まじい情報量とスピードで日々進化と成長を遂げています。そのためマーケターは膨大な情報量を限られた時間の中で結果へと導かなければなりません。
しかしAI独自の自立性、適応性に基づいたAI広告の発達により、従来の広告作成に費やしていた時間や手間を大幅に短縮することが可能となりました。
経費削減は勿論のこと、今までマーケター自身が気付けなかった部分や発想になかった思考がAI広告の発達により発掘可能となります。また、マーケティングの一部をAI処理に任せる事で作業効率が向上し、人間の想像力や発想力は更に豊かさを増しAI広告との共存により今までにない相乗効果も期待できるでしょう。
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AI広告の事例
AI広告では外せないGoogle社が提供する広告の自動化サービスと、実際に国内大手広告代理店のAI広告事例を紹介していきます。
Google広告自動化
Googleは広告作成において常に自動化を進めています。マーケターのスキルに見合ったサポートを探求し続け、スキルのレベル問わず効果の最大化を図るべく、日々ビジネス拡大と効率化の実現を提案しています。
複雑だった広告コンテンツの作成はAIの導入により大幅に自動化が進み、以前に比べ簡単に広告作成が可能となりました。
あらかじめ設定した目標や予算額に応じて、AIが最適化を提案し結果へと導きます。蓄積データや日々の機械学習により、AIを通じて適切なユーザーに最も適切な広告文やメッセージを設定し無駄なく広告を表示することも可能なため費用対効果にも優れています。
博報堂 「Face Targeting AD」
大手広告代理店の博報堂はAIの導入を一早く検討し形にした企業として知られています。博報堂は2017年にクラウドAIと鏡を組み合わせた画期的なターゲッティング広告配信システム「Face Targeting AD」を発表しました。「Face Targeting AD」とは、鏡の前に立った人の表情を読み取り、その表情を参考にして瞬時に最適な広告を判断し配信する仕組みです。
マイクロソフトが提供した人工知能「Azure AI」というクラウドAIには最新の顔認識や感情認識ができる機能があり、これを活用することで人間の喜怒哀楽を識別し認識することが可能となりました。
実際に鏡に映っている人物の表情が「疲れている」と判断した場合には、エナジードリンクの広告を出したり、「悲しそうにしている」と判断した場合には気持ちを落ち着かせる様な映画の広告を出したりすることが可能となります。
電通「MONALISA」
電通グループは、広告素材の効果を配信前に事前に予測できるツール「MONALISA」を2019年に発表しました。
Web広告において広告素材のクオリティは広告効果に直結する重要な要素となります。それまで広告効果の事前測定手法は存在しなかったため、「MONALISA」は非常に画期的なツールの誕生となり注目を集めました。
Instagram、Facebook、Twitterの動画と静止画広告に対応でき、過去の広告配信データと広告素材の紐づけを行い、ユーザーの動画視聴の割合やバナーをクリックする割合を広告配信前に予測することが可能です。
広告素材の特徴を数値化し、広告配信結果と結びつけたものをAIが機械学習を行います。その後、実際の効果との関係性をAIが再度学習を行い、予測精度を更に高めることが可能です。
サイバーエージェント「AI feed designer Plus」
サイバーエージェントはネット広告にAIを活用している事でも有名です。その中でAIを駆使しダイナミックリターゲティング広告の商品画像の最適化を行う効果予測モデル「AI feed designer Plus」を2020年から提供しています。
ダイナミックリターゲティング広告とは、サイトに一度訪れたことがある人をターゲットに選定して広告を配信する手法です。商品データとターゲットの行動履歴を組み合わせて、ユーザーごとに無駄なく最適な広告の表示が可能です。
AIが広告効果の高い広告を選択して最適なものを表示することから、コンバージョンへのハードルが低くなり費用対効果の向上に繋がる傾向もあります。
YouTube広告とAIの関係
YouTube動画を視聴する前や視聴の途中、TOPページや検索結果ページなどに広告を表示することができるYouTube広告。年々注目が高まり続けるYouTube広告にもAIは欠かせない存在となっています。
YouTube広告はGoogleが保有するデータを基にAIが機械学習を行います。年齢、性別、位置情報などを識別し、動画を視聴しているユーザーの興味や関心、趣味趣向を判断し視聴ユーザーに合わせて表示される広告がカスタマイズされて配信されます。
Facebook広告とAIの関係
Facebookは全世界で月間29億を超えるユーザーが利用し、その数はソーシャル・ネットワーキング・サービスの中で世界最大規模を誇るプラットフォームに成長を遂げています。現在、日本でも月間アクティブユーザー数は2,600万人を誇り、多くの企業でも活用されています。
Facebook広告を活用することで、Facebookをはじめ、Instagram(インスタグラム)やMessenger(メッセンジャー)、Audience Network(オーディエンスネットワーク)といった、4つの掲載先への広告配信が可能となります。そんなFacebook広告もAIを駆使し、最新データを受け取るとAIが自動的に学習を行い、過去の蓄積データや経験を活かしながら広告運用に反映し最適化を行います。
Facebook広告の配信には、AIによる機械学習と広告オークションを使用し、「どこに、だれに、いつ」を決めて配信が可能です。
また、広告の表示を繰り返すことでAIが学習を行い、最適な広告の表示先やタイミング、表示するユーザーを判断して単価を最小限に抑えながら最適化を行い、広告配信パフォーマンスの向上を図る特徴があります。
Google広告とAIの関係
Google広告の特徴でもある自動入札機能。Googleの自動入札機能には高度なAIが活用され、マーケターのサポートを日々行っています。
下記に自動入札機能導入のメリット・デメリットを踏まえ、Google広告の自動入札機能について解説していきます。
Google広告自動入札機能とAI
リスティング広告における自動入札機能とは、Google独自の高度な機械学習を使用し過去の蓄積データを基に、入札単価・クリック単価・コンバージョン獲得率など自動で最適化を行います。
自動入札の効果により、キーワードごとの入札単価調整や広告配信結果の分析など、手動で行っていた細かい作業や設定も減少し、広告制作における工数が大幅に削減されます。
地域、デバイス、検索キーワード、居住地、時間、曜日など多くのユーザーシグナルを基にリアルタイムで入札単価の最適化が行われるため、手動では解析が追い付かない部分の掘り起こしが実現し更に高度なターゲティングが可能となります。
関連記事:Google広告の自動入札機能とは? メリットや注意したいポイント
Google広告自動入札のメリット
自動入札機能を使用することで、広告グループや入札単価調整など細かく複雑な作業が大幅に削減されます。このことから、マーケターはクリエイティブな発想を構築する時間を増やすことが可能となります。
また、過去の経験を活かし膨大な学習データやユーザーシグナルを基に、成果の上がりやすいユーザーにピンポイントで入札単価の調整を行います。無駄な経費の削減をしつつ、設定された目標の中で最大限の効果を発揮しようとするため、広告の成果は高まり費用対効果を向上させるでしょう。
Google広告自動入札のデメリット
AIも人間と同様に失敗や成功を繰り返し、学習を行いながら成長していきます。
そのため広告出稿直後や蓄積データの少ない場合、学習期間内(約2~3週間)においては入札単価が高騰する場合もあります。パフォーマンスを最大限に発揮することは難しい傾向にあるため、マーケター自身で予算管理や日々の経過観察が大切になります。
また、コンバージョン数の最大化を目標に自動入札を行う場合には、過去のコンバージョンデータを基にGoogleが分析を行います。よって、過去のコンバージョン数が少ないと正確な分析ができず、自動入札のパフォーマンスは最大限に発揮されないため注意が必要です。
AI広告の活用
実際、どの様にして広告にAIが活用されているのか、代表例を2点挙げ説明していきます。
広告コピーを自動生成するAI
広告主が宣伝したいサービスや商品の関連キーワードをシステム上に入力するだけで、過去学習データや最新データの情報を基に広告の自動生成を行うソリューションの誕生が始まっています。
広告主の理想に答える完成度の高い広告コピーが生み出される場合もあれば、今まで思想になかったフレーズを生み出し広告主の支援の手助けを行うなど、広告作成時にヒントやひらめきを与えることが可能となっています。
広告クリエイティブを自動生成するAI
広告制作には欠かせない画像や広告素材といった広告クリエイティブをAIが自動生成する取り組みも開始されています。広告の質を左右する広告クリエイティブの作成には工数が多く、膨大な時間と労力が費やされる現実に悩まされることでしょう。
そんな複雑な作業もAIによる学習能力を使用すれば、短時間で無数のクリエイティブの提案が可能となりました。
学習データには過去に制作したクリエイティブの蓄積データが反映されることが多いため、データ処理能力の高いAIほど活躍の場は広がるでしょう。
まとめ
様々な分野においてAI独自の人口知能がもたらす効果をお伝えしてきました。
広告業界はAIの導入により、日々利便性の向上が多様面で見込めます。今後、多くの企業がAI広告市場に参入し、開発に取り組むことが予想されています。
AIの自動化が更に進むことで広告作成作業は便利になる反面、広告代理店やマーケターの仕事がAIの完全自動化により、職業自体が消滅していくのではないかと不安視される声が高まり続けています。
しかしながら、現状広告業界は完全自動化への第一歩を踏み出したばかりであり、AIと協働作業を行うという平行線を辿っている状況です。
完全自動化が現実味を帯びたとしても、最終決定の意思判断や人間の想像を完璧な形にするには、人間にしかできない領域の「人力」が必要不可欠となり得るでしょう。
むしろAIとの協働を強化することで、完全自動化の効果よりも多くのインスピレーションを得ることに繋がるのではないかとも考えられるのです。
重要なのは、人間がどの様にAI広告をコントロールし、最大限のポテンシャルを引きだすために制御するかが重要になるでしょう。
将来、広告業界を激震させるようなAI広告が誕生しても、AI広告と協働が強みである広告代理店や、マーケターへの需要は高まり続けることが想像できます。