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世界中で注目のライブコマース コロナの影響でますます加速に

2021.6.11
読了まで約 7

オンラインで物を買うことが、当たり前になった昨今。
コロナ禍の外出自粛で、その流れはさらに加速してきました。
そんな中で、「ライブコマース=ライブ配信でモノ・コトを売る」という新たな潮流が中国を中心に広がっています。わずか1時間の配信で数億円を売り上げる事例も少なくないという、新しいECの形です。
今回はそんなライブコマースについてまとめて参ります。

ライブコマースとは

ライブコマースとは、SNSなどでライブ配信をしながら視聴者と配信者がコミュニケーションでき、ECサイトとライブ配信を融合させた新しい対面型のコミュニケーションツールです。視聴者は芸能人やインフルエンサーによる商品紹介のライブの配信動画を見ながら気になる商品を購入できます。

今までは映像を見ながら買い物をするといえばテレビショッピングが主流でしたが、ライブコマースはわかりやすく言うと、テレビショッピングをインターネット上で配信する形態になります。視聴者はリアルタイムで質問やコメントすることができて、ネットショッピングでありながら実店舗で買い物をするようなリアリティを味わえます。単純にアップロードされた動画を見るだけでは得られない臨場感があり、活用の仕方によっては視聴者の購買意欲を大いに高められる販売手法として非常に注目されている分野です。

ライブコマースは既に海外で人気のある新しい通販の形で、特に発祥の中国では2016年頃から商品販売者や購入者が爆発的に増加しています。市場規模やユーザー数ともに今後も拡大していくと考えられています。
日本においては2017年頃から複数のサービスが始まり、国内に普及されることを期待されました。しかし、2019年までの約2年間でサービスがローンチされましたが、撤退する企業が相次ぐ結果となったことも事実です。

ライブコマースの需要の高まりを受けて参入する企業がある一方、ユーザーの使い勝手や理にかなっていない仕様では市場に定着しづらい反面もあります。

ライブコマースが注目される理由

前述したように、2016年頃から徐々に普及し始めたライブコマースですが、2020年から改めてまた注目されているのはなぜでしょうか。その理由として、2020年においては3つの理由があげられます。

ライブ配信の普及

情報源がテレビや新聞などのマスメディアからインターネットへ移行しつつある昨今、世界中で幅広い世代によってSNSが利用されています。多くのユーザーがいる人気のSNSで開始されたのが、ライブの配信サービスやその機能強化です。
このことにより、多くのユーザーがライブ動画に慣れていて、普及し始めた2016年頃と比較をするとライブコマースが受け入れられやすい環境になってきたと言えます。

5G通信の始まり

日本では2020年の春から国内の大手通信企業4社を筆頭に5G(5th Generation)の商用通信サービスがスタートし、それにより高速、低遅延、同時多数接続を実現しました。通信速度はは4Gの数倍で、家庭やオフィスに普及している光ファイバーに匹敵する速さとも言われています。

膨大なデータ量を必要とするゲームや動画も、どこでも高速でダウンロードが可能となり、5Gという通信システムの進化によって、より一層に動画視聴のハードルが低くなると予想されるでしょう。

巣ごもり消費の拡大

2020年に世界規模で感染が拡大した新型コロナウイルスの影響により、ロックダウンや外出禁止令が発令され、現在でも各国や地域で不要な外出を避けるなど、以前の生活様式に戻る見通しは立っておりません。日本も同様に国からの不要不急の外出自粛の要請に、イベント中止や商業施設の営業時間短縮などが続いております。

外出を控え、在宅化が進むことにより生まれた新らしいトレンドが、家でお金を消費する「巣ごもり消費」です。家で快適に過ごすためにゲームや健康器具、そして動画配信サービスなどのニーズが高まっています。コロナウイルスの影響により、世界中でEコマース市場の売り上げ増加が顕著となり、拡大する需要は想定以上だといえます。

ライブコマースの特徴とは

では、実際にライブコマースを利用すると、どのような購買体験ができるのか、特徴と合わせて見ていきましょう。

インタラクティブ性

従来のEコマースはインターネット上に実店舗があるイメージで、商品の選定から購入までを基本的に自身で行います。
ライブコマースと比較をすると、Eコマースにテレビショッピングとインタラクティブ性を掛け合わせたスタイルになります。配信者と視聴者の双方向のやり取りが発生することで、実店舗で買い物をするような疑似体験やコミュニケーションが存在します。
文字や画像ではわかりにくい情報も、インタラクティブなコミュニケーションが発生することで手軽に伝えることが可能になります。

また、ライブ配信だからこそ味わえるオンタイムの臨場感や、配信者とのやり取りが心地よいほど、選定から購入に至る過程にワクワクや楽しさが加わるでしょう。

インフルエンサーの存在

多くのファンやフォロワーがいる有名タレントや、人気のあるインフルエンサーがライブ配信するによって商品に興味を持ちにくい潜在層の獲得が期待できます。配信者によって興味の度合いは左右されますが、収益性やPRに繋がる効果は高いと言えます。
一方で、課題として配信中に閲覧されなければ意味をなさない等、知名度のある人物の選定や告知等の工夫を模索する時間が必要になるでしょう。

ライブコマースのメリット

ユーザーの疑問にその場で返答できる

ライブコマースでは配信者と、閲覧するユーザーがリアルタイムで双方向にコミュニケーションが可能です。
ユーザーが気軽に配信者に話しかけることができ、そして配信者からもリアルタイムで反応をもらえることがライブ配信のメリットです。視聴者は購入するだけではなく、臨場感や一体感も含めて「体験」も一緒に提供しています。
わかりやすく言えば自宅にいながら実店舗で接客を受けて買い物ができるということです。
また、メリットやデメリットも含めてその場で素朴な疑問に答えることができるので、購入する際の不安の解消にもつながります。商品説明では文字や画像だけでは表現し切れない商品の良さもあわせて伝えられることもメリットの一つです。

購入までの導線がスムーズ

ライブコマースは商品を欲しいと思ってから購入までの導線がスムーズであり、その場で「お金を払う」という行為ができるため、敷居が低くなることもメリットになります。
ユーザーは商品の質や値段で納得していても、支払い時に購入をためらってしまうことがあります。購入時に煩雑な入力や手間がかかる手続きを促してしまうと、面倒と思われ、購買意欲を下がる可能性が高いです。
ライブコマースでは購入まで数回のタップ、クリックと簡単なため、瞬間的に生まれた購買意欲が下がることなく購入に至ります。
ユーザー目線でもストレスなく購入ができるので、ネガティブな印象が残りにくく、ポジティブな体験として記憶されるため、リピーターやファンの獲得に期待できます。

ライブコマースのデメリット

Web上で集客を行う必要がある

ライブコマースは商品を販売するためにWeb上で認知されるように集客を行う必要があります。有名人やインフルエンサーは影響力があるため、集客のために起用されることがよくあります。ですが、有名人やインフルエンサーが見込み顧客の母数を集めることができないと必然的に対象のユーザー数が少なくなります。

そもそもライブ配信の強みはリアルタイムで視聴者と時間を共有することであり、時間の都合が合わない人の購買機会を逃す弱点も抱えています。有名人やインフルエンサーがライブ配信に誘導するためにSNSで自身のアカウントで発信したり、ホームページ上で告知をしなければ販売に繋がる集客は難しいとされています。オンライン上での告知・集客の仕組みづくりが必須となり、幅広く閲覧ユーザーを集めるための工夫が必要となります。

ユーザー体験を損なう可能性

ライブ配信では予期せぬ事態が起こることもあります。例えば、ライブコマースを提供するサーバーやシステムのスペックに影響されて、集客した人数が多すぎることでサーバーが耐えきれず動画が重たくなる、画像が乱れる、最悪のケースだと止まってしまうこともあります。他にも、配信者と閲覧者のインターネットの環境面や、デバイスのスペック差によって同様のトラブルが起きる可能性もあります。さらに、閲覧者が想定よりも多いと、有名人やインフルエンサーとコミュニケーションを目的にライブ配信を見ても、視聴者が多いため質問やコメントを回答されない、または無視されてしまうなどが発生し、関係性が薄くなることもデメリットと言えるでしょう。

注意点として、リアルタイムで時間を共有できること、双方向でコミュニケーションできる強みがある一方で、環境によっては動画の閲覧に問題が起きてしまいユーザー体験を損なう可能性があるので、気を付けましょう。

ライブコマースサービス例

次に、ライブコマースのサービスを紹介します。ライブコマースには、大きく分けてYouTube、Instagram、Facebook、LINE LIVEなどSNSに設定されているライブ配信機能で行うタイプとECサイトから直接動画を見られるようになっているECモールタイプ、自社ECサイトに埋め込んだかたちのSaaS型があります。
サービスの紹介と、支持されているユーザー層などの特徴をまとめます。

Instagram

Instagramは写真や画像、ライブ配信ができる特に女性を中心に人気のあるSNSアプリです。投稿されている商品タグをタップすると、価格や商品名が簡単にチェックできます。
Instagram内でアイテムの検索から支払いまで行うことができるチェックアウト機能は2019年に米国で対応開始となりました。日本では今でもストーリーズやフィード上に商品タグを掲載することは可能なので、商品の詳しい内容やブランドやメーカーとしての情報を発信することができます。
国内で影響力のあるInstagramインフルエンサーも徐々に増えており、多い人で万単位のフォロワーがいるアカウントが存在しています。
既に企業から依頼を受け、商品をPRすることで広告収入を得るインフルエンサーも現れており、新しい働き方の一つとして見受けられるようになってきました。

SHOPROOM

運営はSHOWROOM株式会社。アイドルやアーティストの動画ストリーミングサービスから派生したサービスです。
アプリだけではなくPCでもライブ配信が可能です。主に扱っている商品ジャンルはモデル・タレントに関する有名人のグッズが多く、配信者も芸能人がメインです。時にはドラマで着用した服装を紹介することもあり、他のサイトでは珍しい商品をPRしているのも特徴です。ユーザー層は20~40代で、男性が多い傾向にあります。

C CHANNEL

C CHANNEL株式会社がアプリで商品紹介などの動画配信サービスを展開しています。配信者はモデルやインフルエンサーが多く、ユーザー層としてはF1層が過半数以上、20~30代の女性がメインの傾向にあります。コンテンツも同じ年齢層の知りたい情報を集めたキュレーション型アプリです。

TAGsAPI

株式会社Mofflyが提供する自社ECサイトで簡単にライブコマースを行うことができるクラウド型ライブコマースサービスです。大手百貨店やアパレルでの導入実績があります。2021年3月にはファッション雑誌販売部数でトップクラスの株式会社宝島社と共同で、企業のライブコマース参画をサポートする「LIVE SHOPPING」事業をスタートさせることを発表。

LIVE812

株式会社MyStarが開発及び運営する、2020年5月にグランドオープンしたオンラインストリーミング配信アプリです。サービス名の由来は静岡県焼津市に本社があることから「LIVE812(やいづ)」と名付けられています。
ハンドメイド作家や農家など、個性的なライバーが多いのが特徴です。あまり馴染みのない職業に携わっている配信者から、作品の良さを直接言葉で聞けるという貴重な体験を提供しています。

au PAY マーケット

auが運営するau PAYマーケットは、モール型のECサイトです。以前はau Wowma!というサイト名で愛されていました。30代~40代がメインユーザーとなり、サイトの機能にライブコマースが可能なライブ配信機能が存在します。
auの携帯を利用しているユーザーに加えて、auが提供する関連サービスのユーザーが利用できるECサイトになるため、ライブコマースの課題となる集客にも強いプラットフォームと言えるでしょう。

ライブコマースの活用事例

ここでは、ライブコマースの活用事例を紹介します。

株式会社FiNC Technologiesの活用事例

管理栄養士などが選ぶヘルスケア商品をECサイトで販売、TAGsAPIを導入し、ヘルスケア商品の販売と使用イメージを配信した結果、商品に関する深い知識を顧客と共有できました。商品のイメージを字や画像のみで伝えることに難しさを感じていましたが、ライブコマースの導入によってその課題をクリアすることができました。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスの活用事例

大手百貨店の三越伊勢丹は2018年にライブコマースでお歳暮の商品を紹介、過去最高のECサイト売上となったことから2019年、2020年にもお歳暮、お中元の商品紹介をしており、効果的にライブコマース配信サービスを使っています。

株式会社 資生堂の活用事例

資生堂は中国においてライブコマース配信を使ったサービスを展開し、中国の自社ECサイトの売上アップを実現したことから、2020年7月からは国内でも開始。ビューティーコンサルタント(BC)が化粧品や美容法を紹介するライブ映像を配信し、消費者がリアルタイムにBCとコミュニケーションをしながら商品が購入できる取り組みを始めました。

まとめ

ライブコマースとは新しい商品販売戦略のひとつであり、今後市場が拡大して新規参入企業も増えていくことが予想されています。
消費者となる視聴者はリアルタイムで商品に関する質問が可能となり、提案型の販売ができるなど、メリットが多くあります。失敗の事例もなかには報告がありますが、発展が予想される分野でもあり今後の動向を注視していく必要がありそうです。
ライブコマースはネット上で実店舗のような接客を可能にしていることが強みであり、購入する前のコミュニケーションを楽しむことでユーザー体験を作り出しています。また、ECの利用だけでなく、他にも様々な活用方法があるため、新しいビジネスチャンスの創出にもつながるでしょう。
日本ではまだまだ浸透しているとは言えませんが、今後5Gの普及により当たり前のマーケティング手法と浸透していく可能性もあります。今までの広告手法では得られなかった顧客層や購買層にリーチするため、新しい販売形態や広告手法として、今後より一層ライブコマース導入を検討する企業が増えるでしょう。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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