近年、多様化する顧客と企業が良好な関係を築いていく上で、欠かせない存在となっている「CRM」。
顧客の情報を管理するシステムとしてシェアが急速に拡大し、マーケティング担当者の戦略的な施策づくりに役立てられていますが、多くの企業がCRMを重視する一方で、「自社に必要なものなのか」と、効果を測りかねている企業も多いでしょう。
CRMとは、具体的にどういったシーンで活用され、導入するとどのようなことが実現できるのでしょうか。
CRMという言葉が持つ意味から基本的な役割まで、また、押さえておきたいSFAとの違いについても、わかりやすく解説します。
関連資料:CMS+MAツール「Switch Plus」がSalesforceと連携開始!営業効率最大化が可能に
目次
CRMとは何か?
企業がマーケティング活動を行う上で重要となる「CRM」。
CRMとは「Customer Relationship Management」の略称で「顧客関係管理」を意味し、企業と顧客がより良い関係を構築していくためのマネジメント全体を指しています。
データ管理だけにとどまらず、集めた顧客情報をもとに「見込み顧客や優良顧客を育てること」「顧客満足度を高めて信頼関係を築くこと」などに役立てられているのが特徴です。
顧客と企業の相互関係の向上を目指す活動自体をCRMと表現することもあれば、CRMシステムというITツールや、そのITツールで実現できることを指す場合もあります。
CRMという言葉には、顧客管理の概念からITシステムまで、幅広い意味があることを理解しておきましょう。
●CRMの歴史
CRMシステムが世界で初めて誕生したのは1990年代。米国でその概念が生まれ、日本にもCRMシステムが提唱されました。
CRM誕生の背景には、情報化社会へ突入し消費者が多様化する中で、これまでと同じ戦略では大きな成果が見込めなくなったこと、顧客視点でニーズに沿った商品を提供する必要に迫られたこと、などが挙げられます。
1990年代後半には、もともとあった顧客管理の概念がいっそう大切なものになり、競合他社に打ち勝つための「One to Oneマーケティング戦略(一人ひとりに合わせたマーケティング戦略)」で、自社が持つ顧客情報をよりいっそう活用していこうという考え方に注目が集まり始めました。
2000年代前半には、日本でも大企業を中心にCRMシステム導入が拡大。この頃から顧客情報を収集・分析・管理して、企業利益の最大化を目指す活動が主流になってきたといえるでしょう。
●CRMシステムの仕組み
CRMシステムとは必要な情報を収集・管理して、効果的な顧客アプローチを分析する仕組みです。
例えば、CRMシステムで顧客の名前・性別・年齢・居住地などの詳細なプロフィール情報を収集。B to Bであれば会社の規模や担当者・決済者・役職などもリスト化し、その消費特性や傾向について分析します。
わかりやすくいえば、どのような顧客が自社の商品を好み、どういったきっかけ・シーンで購入を決定しているかなどを正しく把握するためのシステムです。顧客と企業のあらゆる接点をすべて管理し、動向履歴や営業進捗についてリアルタイムでセグメント化(グループ分け)できることが特徴になります。
具体的には、データを活用して「見込みの高い顧客順にアプローチが行えること」「定期的なアフターフォローや顧客の掘り起こし作業を効率よく行えること」がポイントです。
CRMシステムを活用して最新の情報を共有すれば、顧客からの問い合わせにも組織全体でスムーズに対応でき、ビジネスのタイミングを逃しません。
常に質の高いサービスを提供することができれば、ブランドへの評価も高まり、顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty:ブランドに抱く信頼感や愛着心)の向上にも期待が持てます。自社のブランド力が上がれば、社内にもよりいっそう「顧客満足度を向上させる空気」が生まれやすくなるでしょう。
企業の規模が大きくなればなるほど、ビジネスを顧客単位で捉えることが重要といわれています。多様化する新規顧客を獲得するための活動はもとより、「顧客維持(Customer Retention)」にも注力し、すでに顧客となっている層の「顧客満足度(Customer Satisfaction)」向上を目指すことが大切です。
顧客と常に良好な関係を築くことができれば、同商品の再購入や自社が提供する他商品の購入にも期待が持てます。CRMシステムの顧客情報を活用すれば、企業が長期的に収益を得るための施策を打ち出すことができるでしょう。
関連記事:福田康隆氏に聞くB2B SaaSの最新トレンドと日本企業を成功に導く道筋
CRMで実現できることとは?
CRMとは顧客情報を収集・分析・管理するマネジメントを指し、企業利益の最大化を目指すためのマーケティング手法ですが、実際にITシステムを導入すると、企業ではどのようなことが実現できるのでしょうか。
CRMツールに搭載されている基本機能と活用例は以下になります。
●データベースの管理(顧客情報・案件情報)
CRMツールを活用すれば、集客から見込み顧客のフォロー、セールスのタイミング、購入日や購入商品・金額などの履歴まで、データベースで一元管理することができます。
顧客情報を蓄積するだけでは、自社にどのくらいの見込み顧客がいるのか、正確に把握することができません。営業担当者まかせの活動ではなく、まずはターゲットを絞るために顧客情報をリスト化すること、次にデータに基づいた施策を立ててPDCAを回し、効率よく利益につなげることが大切です。
●プロモーション機能(キャンペーン管理)
CRMツールのプロモーション機能では、適切なタイミング・時間帯・内容でターゲットを絞り込んだメール配信が自動で行えます。配信後のクリック率や開封率も管理・分析が可能です。Webサイト(ホームページ)へのアクセス解析やセミナーなどイベント情報の作成・配信・管理もできます。自社へのファン化を促す施策として、SNSアカウントとの連携機能なども活用しましょう。
●レポート機能(データ分析・作業の効率化)
レポート機能を設定すれば、CRMシステムが蓄積されたデータを抽出し、分析した結果をレポートとして自動作成します。
営業担当者ごとの収益レポートや組織全体の成果レポート、キャンペーンごとの効果を比較したレポートなどでリアルタイムの実績を把握し、必要に応じた施策を打ち出せることがポイントです。
代表的なCRMツールには「Oracle CRM」「Microsoft Dynamics 365」「Salesforce Sales Cloud」「SATORI」「kintone」「Zoho CRM」などが挙げられます。
SFAとの違いは?
CRMとは何かを学ぶ際に、同じく企業が活用するITツールとして耳にすることが多い「SFA」。
SFAとは「Sales Force Automation」の略称で、日本語では「営業支援システム」と訳します。
CRMとSFAはよく比較されますが、押さえておきたい大きな違いは両者の役割です。
CRMシステムが「顧客管理」に特化したツールであるのに比べ、SFAシステムは「営業支援」の方向に特化、セールス部署や担当者の業務を効率化するためのツールとなっています。
以下でSFAの主な機能を見ていきましょう。
●顧客データの管理
顧客情報から商談の内容すべてをSFAデータベースで管理。ツールによっては名刺管理機能で該当の顧客と自社の接触履歴を確認できます。営業担当者の異動や退職後も、顧客情報や過去のトラブルなどをもれなく引き継ぎ、共有できることがポイントです。
●案件ごとの進捗管理
営業活動の内容や数値を可視化。SFAで目標値と現状を比較しながら、適切なタイミングで上司から部下にアドバイスやフォローを行えます。営業成績をリアルタイムで確認し、成功している担当者の活動を参考に、社内で情報交換することも可能です。
●営業活動の支援
SFAのレポート管理機能や売り上げ管理機能などを活用すれば、営業活動の記録(日報)や報告書などの自動作成が行えます。テンプレートの中から最適なレイアウト表示を選べ、部署内でデータを共有したり戦略を練ったりするための資料作りもスムーズです。これまで負担となっていた営業担当者のデスクワークが軽減され、本来の役割に集中しやすくなることがポイントになります。
SFAとはまさに、営業を成功させるためのためのシステムといえるでしょう。
代表的なSFAツールには「Sales Cloud」「Dynamics 365 sales」「cyzen」「eセールスマネージャー」「ちきゅう」などが挙げられます。
CRM導入の注意点とは?
CRMとは顧客情報を収集・分析・管理し、収益拡大を図るマネジメント手法ですが、ITツールを導入するだけでは、自社の収益拡大に結びつきません。
大切なのは、CRMツールで収集・分析したデータを企業がどのように活用していくかということです。これまでの課題をCRMで解消すべく、データに基づいた施策から、顧客との良好な関係を築いていくことがポイントになります。
また、費用をかけてCRMツールを導入しても、すぐに効果が表れるわけではないことを理解しておきましょう。まずは必要なデータを蓄積しながら、徐々に収益を最大化するためのプロセスを分析・実現していくことが重要です。
まとめ
多様化する顧客の情報を一元管理し、より良い関係性を生み出すためのマネジメント手法であるCRM。近年、重要視されている顧客満足度や顧客ロイヤルティを向上させる施策づくりにも、CRMシステムは欠かせない存在となっています。まずはCRMとは何か、また、SFAとの違いはどこにあるのかを理解し、自社に合ったツールを選ぶことが大切です。
企業成長を加速させるためには、「顧客とどのような関係を構築していくのか」というビジョンを明確にする必要があります。そのビジョン実現に向け、CRMで収集・分析したデータを各企業がどのように活用していくかが大きなポイントになるでしょう。