こんにちは、JADE伊東です。2025年2月の検索順位変動まとめをお届けします。
では、スタート!
グラフの見方:
横軸は日付を示しています(直近6ヶ月推移)。縦軸は変動率(Fluctuation Score:前週に対しての計測クエリ全体の順位変化率)、またはビジビリティスコア(Visibility Score:順位に対してスコア付けをして、サイト単位での検索エンジンにおける”見つけられさ”を点数化したもの)を示しています。
目次
全体傾向
弊社で取得している全検索クエリをもとにした全体傾向から。
前回の検索順位変動まとめ以降はマクロ状況的にはあまり大きな変動は発生しておりません。
グラフ内で色付きの帯表示がある部分は、何かしらのアップデート(主に公式アナウンスされたもの)があったときです。その期間は確かに動きが出ておりましたが、それと比べますと変動幅が小さいです。
業界別
下のグラフは業界別のビジビリティ推移ですが、オレンジ(Weather=天気系クエリ)については前回のまとめでもお伝えしたSERP(編注:検索エンジンで検索結果を表示したページ)自体の変化にともなうもので、この業界サイト内での大きな順位の入れ替えに起因するものでありません。
1月後半から2月中盤にかけては、全体的・業界単位ともに特筆すべき大きな変動は観測されませんでした。
次に、この1ヶ月を個別サイト単位で見たときに、興味深かった事象、今後のサイト運営の参考になりそうな事象についてまとめてみました。
トピック1:リニューアルによるメンテナンス期間が長引くとどうなる?
とあるECサイトの事例です。昨年後半に3週間ほどサイトリニューアルのためにメンテンナンス期間を設けていました。その期間中、ステータスコード(編注:HTTPステータスコード。サーバの情報処理の結果を表す数字3桁の番号)は500系を返すという実装をしておりました。
リニューアル再オープン後の状況は、ビジビリティを観測する限りあまり芳しいものとはなっておらず、直近までの状況でリニューアル前の推移には戻ってきておりません。
一般に、リニューアルなどの理由でサイトを一時閉鎖する場合は、Googlebotに対してステータスコード503を返すことが推奨されています。
Googlebotは、503の期間が短期であればインデックスの更新は行わず、しばらくしてから再クロールしてくれます。長期になると、インデックスに影響が出てくる可能性があります。
▼ウェブサイトを一時停止または無効化する | Google 検索セントラル | ドキュメント | Google for Developers
https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/pause-online-business?hl=ja
今回の事例は3週間の閉鎖ですから、インデックス影響を疑うことは理に適っています。
4つのチャートを用意しました。「ビジビリティ」「検索クエリ数」「ユニークランディングページ数」「ユニークランディングページ当たり検索クエリ数」の4つです。
状況としては、ビジビリティは減少しているものの、「ヒットしている検索クエリ数」以上に「ユニークランディングページ数」の減少が目につきます。結果として1ランディングページ当たりの検索クエリが増えているように見えます。
このことから、メンテナンス期間が長すぎたことの問題以外にもうひとつの可能性も考えられます。すなわち、リニューアルに伴ってコンテンツ整理(ページ削除)を行ったときにいくつかのベストなランディングページを失ってしまった可能性です。そのランディングページが獲得していた検索クエリが、同サイト内の次点のランディングページが受けページとなったものの、適合性が低いために順位が上がり切らないことにつながっているとも捉えられそうです。
リニューアル時は、一気に懸案を解消すべく、検索流入に影響を与える複数の取り組みが含まれることがしばしばあります。その結果、問題発生時の原因切り分けが困難になることもあります。
長期のメンテナンスであれば、再クロール促進を促すだけで大きく改善するかもしれませんが、そうでない場合はコンテンツの見直しが入り、結構厄介ですね……。
関連リンク
・リダイレクトとは?種類や設定方法、htaccessファイルの書き方
・ホームページリニューアルに際して気を付けておきたいこと
トピック2:検索経由ユーザーにアプリ誘導モーダル表示
最近、大手の求人サイトでもいわゆるIndeed型の検索エンジン的な体験を提供するところが出てきております。その中の一つが検索エンジンを含む外部サイトからの流入時にのみモーダル表示でユーザーの体験をロックする事象を見つけました。
モーダル=modalとは、mode(状態)の形容詞形で、「ある状態」にユーザーをとどめること(閉じこめる)ことですので、何かしらのアクションを起こさないと解除できないものです。ユーザー体験の自由度を大きく損なっている点で避けられるべき仕様でしょう。
Googlebotに対しては、モーダル表示のレンダリング(編注:HTMLなどのコードをWebページとして閲覧できる形に変換すること)を行っていないようです。
クローキング(編注:クローラーbotとユーザーに別のページを表示させること)で問題回避を行っている点も問題もさることながら、ユーザー行動面でそもそも良いシグナルをGoogleに送ることが難しくなるため、SEO面での成長を望みづらい状況ではないかと推察しています。現に、求人の人気クエリではほぼヒットしていない状況が続いています。
アプリ誘導を考えるなら、アプリインストールバナーなど、ユーザー体験を阻害しない方法を検討したいところですね。
▼アプリバナーでよりモバイル フレンドリーなウェブページを | Google 検索セントラル ブログ | Google for Developers
https://developers.google.com/search/blog/2015/09/mobile-friendly-web-pages-using-app?hl=ja
トピック3:病院サイトで手動対策の可能性
マクロ状況的には、順位変動は大きくないものの、個別のサイト単位で見てみると変化は見られます。特に寄生サイト(編注:大手サイトのサブドメインやサブディレクトリを間借りしたサイト)関連は不定期に変動が発生しておりますが、今回は病院サイトの事例です。
業界別動向を深堀するなかで病院サイトのビジビリティ下降が見受けられました。
落ちが発生した9サイトを調べてみたところ、見事に9サイトとも寄生サイトを持っている病院ばかりでした。
Googleの検出能力もすさまじい。
「病院」にとって「寄生」は現実世界でも相性の悪い概念のはずです。早く分離したほうが良いですね……。
トピック4:Bingだと上がってしまうコンテンツファーム的アプローチ
Bingでのある情報サイトのビジビリティ推移です。短期で100万をこえるビジビリティ(PVやセッションではないです。あくまでビジビリティ。だけど高い)を記録している記事サイト。
キーワード調査をしていると「AとBの違い」のような検索はいろいろなジャンルのニッチワードとして見つけることができますが、それにフォーカスしたこちらのサイトはBingではしっかりハマっているようです。
Googleでは同じ基準で調べたところ4万程度のビジビリティですので、25分の1です(トラフィックに換算するともっと低いかもしれません)。
Bingの場合、[違い]を含まない一般キーワードでも順位が取れてしまっていますので、いわゆる古のコンテンツファーム(編注:SEO目的で低品質なコンテンツを大量作成する仕組み)的アプローチが効いてしまっています。
▼Official Google Blog: Google search and search engine spam
https://googleblog.blogspot.com/2011/01/google-search-and-search-engine-spam.html
As “pure webspam” has decreased over time, attention has shifted instead to “content farms,” which are sites with shallow or low-quality content. In 2010, we launched two major algorithmic changes focused on low-quality sites.
意訳:純ウェブスパム的なものは減少するにつれて、注目は「コンテンツファーム」、すなわち情報に深さがなく低品質なコンテンツへの対応に移ってきている。2010年、低品質コンテンツに焦点を当てて重要なアルゴリズム変更を行った…。
引用は2011年のGoogle公式ブログですから、この言葉の歴史も古いですね(執筆はマット・カッツ!)。
最近は、コンテンツファーム2.0と言う言葉もあるようです。生成AI活用によるコンテンツ大量生産スパムですね。今回取り上げたサイトもおそらく使っています。
▼MIT Tech Review: 生成AIで増殖する「コンテンツファーム2.0」の新たな波
https://www.technologyreview.jp/s/311094/next-gen-content-farms-are-using-ai-generated-text-to-spin-up-junk-websites/
MITテクノロジーレビューが独占提供を受けたニュースガード(NewsGuard)の新たな報告書によると、人々はオンラインにだぶついているプログラマティック(データに基づく自動取引)広告の金を手にするために、AIを用いてすばやくジャンクサイトを立ち上げているという。つまり優良広告主や大手ブランドは、おそらくはそうとは知らずに、新たに相次いで誕生しているコンテンツファームに実質的に資金を与えている。
個人的にはWelq問題(編注:医療情報サイト「WELQ」において、専門家監修がない医療関連記事が大量に生成され、サイト閉鎖に至った問題)がコンテンツファーム2.0なので、名付けるなら3.0が良いのではないかと思います(笑)。
時折、Google検索で「これ、生成AIじゃね?」と思われるコンテンツに出会うことがありますが、そんなときはGoogleの対処の巧拙を嘆く前に、Bingと比較することで、その性能を冷静に判断するのも一考ですね。
関連記事
・BingのSEOが重宝される理由とは?
・検索アルゴリズムの変遷~歴史から読み解くSEOの未来について
定期ウォッチ:ユニバーサル検索動向
定期ウォッチ系を見てみましょう。まずはユニバーサル検索。
画像、動画系の露出が直近で増えているようです。
定期ウォッチ:強調スニペット
強調スニペット(編注:検索キーワードの答えとなる情報を、検索結果の最上部に表示する仕組み・枠のこと)のモバイルは変動なし。デスクトップのほうは減少傾向のようです。
定期ウォッチ:寄生サイト
寄生サイト(母数:弊社観測)のビジビリティは大きな変動なし。
定期ウォッチ:ハッキングサイト(ccTLDベース)
ハッキング系もあまり変動がないようです。
ということで、マクロでは大きな変動はないものの、虫の目で見てみるといろいろ動いていますね。
以上、2月の変動まとめでした!
JADE X:https://x.com/_jade_kk
データ作成:株式会社JADE Senior Consultant 篠原誠
文責:株式会社JADE 代表取締役 伊東周晃
JADEが発行する最新マーケティング情報が読みたい人は下記をチェック!
JADEニュースレターの購読申し込み – 株式会社JADE