株式会社JADEの代表取締役である伊東周晃氏が、直近のSEO動向をまとめた最新レポート。業界ごとの傾向や、具体的な事例を、集計グラフなどを用いてわかりやすく解説する。
目次
はじめに
こんにちは、JADE伊東です。
今月も「検索エンジン順位変動まとめ」で、10月の動きを振り返ってみたいと思います。
グラフの見方:
横軸は日付を示しています(直近6ヶ月推移)。縦軸は変動率(Fluctuation Score:前週に対しての計測クエリ全体の順位変化率)、またはビジビリティスコア(Visibility Score:順位に対してスコア付けをして、サイト単位での検索エンジンにおける”見つけられさ”を点数化したもの)を示しています。
全体傾向
まずはいつもの全体傾向から振り返りたいと思います。
弊社の順位変動モニタリングツールを切り替えた関係(後述)で、このコーナーでお見せしている以下の3つのチャートは10月前半の動きのみお見せできている状態です。ご留意ください。
直近の色付き帯の期間は8月のコアアップデート(以下、CU)を示しています。8月CUは小幅であったという見方もありますが、このようにトレンドで見ますとやはりCUでは動きがあったんだなぁと思わせる動向です。
直近は変動率が小幅になっている=先週見たのとほぼ同じ検索結果(ざっくりとした理解)、の状況です。
業界別
「通販系」「ニュース系」「医療系」など業界別に検索クエリをグルーピングしたカテゴリ別の動向です。
全体傾向と同じく、CU後の動向は、CU前のトレンドに近い動向です。
ホスト別平均表示URL傾向
弊社が大きな順位変動のたびにまとめているナレッジレポートでも言及いたしましたが、8月CU後、1検索クエリあたり表示される同一ホスト(≒同じサイト)の数が減少しました。
このトレンドは継続しています。いわゆる検索結果の「多様性」が少し高まっています。
以下グラフでは、オレンジが「指名検索」、青が「非指名検索(一般キーワード)」を示しています。
その他、今回は詳細をとりあげませんがCUで順位下落した記事を中心としたメディア型サイトの別ディレクトリや別サブドメインへの「引越し」がちらほらと散見されます。
これらは引っ越し後の寿命など、事例がたまってきましたらまたご報告させてください。
トピック1: Pinterestのドメイン移動に見る高度なSEO戦略判断
弊社の「月別検索順位変動まとめ」では過去にX(旧Twitter)のリダイレクトのモニタリングなど大規模プラットフォームの目立った動きがあった場合には、サイト運営者の方々にトラフィックへの影響も考えられることから特別に取り上げて確認することがあります。
今回は、Piterest(ピンタレスト)で興味深い動きがありましたので、少しご紹介したいと思います。
ピンタレストは、オンライン上の気になった写真を一種の「アイデア」として収集し、自分用に使ったり他ユーザーと共有することができます。特に「インテリア」や「ヘアスタイル」などビジュアルが重要な領域ではファンも多いサービスです。
そんなピンタレストですが、CU前後で、大規模なドメイン移動を行ったようです。
具体的には、国別ドメイン(www.pinterest.jpなど)がグローバルの共通ドメイン(pinterest.com)のサブドメイン(jp.pinterest.comなど)に移動したようです。
以下のグラフでは、便宜的に旧日本版サイト(www.pinterest.jp)を旧jp(灰色)、グローバルサイト(www.pinterest.com)をwww.com(黄色)、新日本版サイト(jp.pinterest.com)をjp.com(オレンジ)と記載しています。
ご覧いただくと推察できることとして、8月のCUでの下落を受けてのアクションの可能性があります(それ以外のドメイン戦略の可能性も当然あります)。
移転は、旧jpからjp.comへまだ移転中だが、全体のビジビリティが維持できた状態での移転であることが伺えます。移転前後でのユーザー体験面の変化はほとんどない前提で考えると、グローバル展開している.comドメイン側に移すことによる恩恵は、新規サブドメインに移る懸念を越えてプラスに働いていると考えられそうです。
弊社のモニタリングによれば、ドメイン移動前は旧jp, www.com, jp.comはそれぞれCanonical URLの設定が自己参照となっていたようで、今回を気に国別のターゲットクエリに対するLP分散の余地は少し下がった面でも結果としてプラスの取り組みのように見えます。
これはjpだけの傾向ではなく、複数の国別ドメインに対しても同様の措置がなされていますが、その多くはCUの影響があると(外的には)判断できそうな国でした。
逆に、ドイツ、フランスについてはCUの影響を受けておらず、その結果.comドメインへの移動も行われておりません。
関連記事:Pinterest(ピンタレスト)とは?初心者の方でもわかる活用法を解説
なかなか難しいドメイン移動判断
この一連の動きから推察するに、国別のドメインリダイレクト実施有無をある判断基準を設けながら的確に実施されていると思われます。
ドメインを変えることは、サーバ側の設定変更のみならず、アクセスログ集計ほかデータ分析への影響、販促物への記載URLの変更など影響反映が大きいものですが、短期間で実施判断して進めたかと思うとなかなか素早さだと関心します。
Pinterestの採用ページを見ると、ユーザー獲得に関わるデータエンジニアの採用募集のスキル項目に「SEO」の経験も挙げられています。
検索はやはり大事なチャネルなのでしょうね。
ドメインパワーが期待できるwww.comとは言え、新規サブドメインですから、通常は「別サイト扱い」。ただ、メインドメインの一定の恩恵は期待できるので、そこにどれぐらい期待することができるか…?
私だったら、確実に「小規模なテスト」をしますし、進めます。一部のLPを選定して(すでに1位をとれているクエリのLP、1ページ目後半のもの、2ページ目以降のもの)、順位の維持と上昇余地の確認をするでしょう。
おそらく、開発チームの説得と、社内承認、実施、効果検証諸々でスムーズに進んで6ヶ月はかかるような取り組みです。
そう考えると本当に早いですし、高度な判断だと思います。
トピック2:クライアントサイドレンダリングは慎重に
弊社のニュースレターでも何度か取り上げていますが、クライアントサイドレンダリングを行っているサイトに対するGoogleのインデックスがうまくいかないことから、テキストが認識されず順位が落ちてしまう件です。
「何度も」取り上げられるほどに頻発する事故なのですよね。以下のグラフの通りのビジビリティの急落です。
リッチリザルトテストツールでレンダリング状況をエミュレートした結果、画面が真っ白ですね…
今回、titleタグ部分の可変部分もCSRになっていたのは痛いです。titleタグだけでもサーバーサイドにしておけば…もう少し変化は微妙だったかもしれません。
以前、弊社ファウンダーが執筆したクロールバジェットならぬレンダーバジェット論。
最近は、海外のSEO界隈の方にも言及されることがある良記事です。
レンダリングについて、Googleの実際を理解されたい方にはオススメの記事です。
▼レンダーバジェットとは何か、あるいはなぜ私は心配するのをやめてサーバーサイドレンダリングを愛するようになったか
https://blog.ja.dev/entry/blog/2019/08/06/render-budget-ja
トピック3:Google vs. Bing いろいろ比較してみた
冒頭で申し上げました通り、弊社の順位取得ツールが新しいものになりまして、その結果、Bingとの比較をレポートでお示ししやすくなりました。
弊社の検索結果分析チームが喜びながらいくつか比較データを作成してくれたので、ちょこっとご紹介します。以下の画像では3つグラフが並んでいますが、左から順にGoogleスマホ版→GooglePC版→Bingの並びです。
主要ソーシャルメディア
見た目だけで判断すると、Googleでの評価が高くてBingは低い、ということになりますが、クロール・インデックス能力の差が表れているだけと考えたほうが素直でしょう。
サイト内検索機能を用いた一覧ページURL群
これはちょっとユニークな調査軸です。無限スペースの温床という意味であまり好ましくないURL群ですが、検索LPとして用いられることも多い「サイト内検索結果ページURL」自体のビジビリティ比較です。
こちらもソーシャルと同様に「G高B低」(造語:Googleで評価高めでBingで低め。今年のプロ野球の投高打低がふと頭をよぎりました)です。
集計対象には動的パラメータURLも含めて比較していることから、こちらもクロール能力・インデックス能力の差が顕著に表れた結果なのではないかと考えます。
こちらもちょっと興味深い実験的切り口です。上段の公的サイトのビジビリティにおいては、GoogleもBingもともに同じレベルの評価を与えているよう見受けられます。
が、リンクの評価帯別(DRの高さ別)では、Googleは比較的、リンク評価とビジビリティに相関がみられるのに対して、BingではDRの違いによるビジビリティの差が小さい結果となりました。DR自体をGoogleやBingが直接の指標には使っていないということは当然の前提として、おおざっぱな邪推としては、Bingはドメインについては決め打ちでの評価の設定がなにかしらあるのかも…なんて思いました。あくまで邪推ですので、今後データが貯まれば、また別のことを言うかもしれません(笑)。
アルゴリズムについての情報の多いGoogleのレンズを通じて、Bingを見ると、その差分から色々と見えること、感じられることはありますよね。
その他定期ウォッチ:ユニバーサル検索動向
大きな変化はありません。
(左:スマートフォン版、右:PC版)
その他定期ウォッチ:強調スニペット動向
大きな変化はありません。
(左:スマートフォン版、右:PC版)
今週はここまで。
また来月お会いしましょう!
JADE X:https://x.com/_jade_kk
データ作成:株式会社JADE Senior Consultant篠原誠
文責:株式会社JADE 代表取締役 伊東周晃
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