SEOをはじめとしたデジタルマーケティング分野のコンサルティングとSaaSを提供する株式会社JADE。SEOのほか、Web広告運用、コンテンツマーケティング、GA4(GoogleAnalytics4)などの分野におけるトッププレイヤーたちが在籍しており、デジタルマーケティング業界でその存在を知らない者はいない企業だ。
本連載では、JADEの代表取締役である伊東周晃氏が同社の会員向けに作成したニュースレター(最新SEO動向レポート)を特別に本サイトで公開する。データの作成には、同社のコンサルタント篠原誠氏にもご協力をいただいている。マーケティング担当者でSEO動向が気になる人はぜひチェックして、SEOのノウハウを身につけよう!
関連記事:【最新SEOマーケ】JADEが提唱する「検索インタラクションモデル」。SEOの未来を見据えたアプローチに迫る
目次
はじめに
こんにちは、JADEの伊東です。
2024年7月の「検索エンジン順位変動まとめ」について振り返ります。
どんな動きがあったのでしょうか?
グラフの見方:
横軸は日付を示しています(直近6ヶ月推移)。縦軸は変動率(Fluctuation Score:前週に対しての計測クエリ全体の順位変化率)、またはビジビリティスコア(Visibility Score:順位に対してスコア付けをして、サイト単位での検索エンジンにおける”見つけられやすさ”を点数化したもの)を示しています。
全体傾向
まず、弊社の計測検索クエリ全体を母数とした全体傾向です。
直近で公式発表のあったアップデートは、2024年6月20日から27日にかけてのスパムアップデートでした(※MarkeTRUNK編集部注:2024年7月時点の執筆のため8月のコアアップデートは含まれていません)。該当期間をグラフ上の帯で示しています。
弊社観測範囲においては、率直に言って「変動はあまりなし」とみております。
業界別
検索クエリを業界別に分類したものですが、グラフの波形がほぼ同じトレンドを辿っておりますので、”押しなべて” 変動は弱めだったように考えています。
関連リンク:【2024年度版】SEOとは?基礎知識と具体的な施策を詳しく解説
スパムアップデートはちょっとややこしいので整理
スパムアップデートは、Googleのスパムポシリーに基づいてそれに違反しているページをインデックスから外したり、順位を落とす対応をするものです。
「クローキング」(編注:ユーザーと検索エンジンに対し異なるコンテンツを表示すること)や「ドアウェイページ」(編注:誘導ページ)「期限切れドメイン濫用」などGoogleのスパムポリシーに定義されているスパム行為や、スパム検出AIシステム「Spam Brain」が検出した新種のスパム行為が対象となります。
一方、
• リンクスパムは別システムで対応するためアップデートの対象外
• サイト評判の不正利用系スパム(Site Reputation Abuse)は今回は対象外(Google発表あり)
• ハッキングスパムも対象外(影響をうけづらい)
など何が対象になっているかわかりづらい面もありますのでご注意ください。
ちなみに「重複コンテンツ」はスパム行為にはあたりません。例えば、ニュースサイトによるYahooニュースへの転載は重複コンテンツを日々大量に生み出していますがスパム行為ではありません。
インターネットのエコシステムにおいて、通常発生しうる現象は想定した上で、Googleは諸々のことを考えているわけですね。
「えっ、重複ってスパムじゃないの?」と思われた方、今一度スパムポリシーをおさらいしておきましょう。
▼Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー
https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies?hl=ja
想定外にHacked Spamで影響が出ている?
ハッキングスパムはスパムアップデートの影響を受けづらいはずです。が、スパムアップデート後にハッキングスパムが行われているドメインのビジビリティ下落が観測されました。アルゴリズムの一部が間接的に影響を与えた、という可能性もあるのかもしれません(憶測です)。
今後の研究対象にしたいと思います。いつか成果報告ができれば!
寄生サイトは動きなし
寄生サイト(編注:大手サイトのサブドメインやサブディレクトリを間借りしたサイト)系は、Googleからのアナウンス通り、今回のスパムアップデート前後では無風でした。
今後に期待。
同一ホストの表示URL数に大幅な変化?
ある検索クエリに対して表示される同一ホストの数が一時期増加傾向でしたが、直近ではその傾向は落ち着きむしろ少し減ってきています。ただ、業界によっては極端な増減が見られるケースがでてきています。ご自身のサイト関連キーワードについてSERP(編注:検索エンジンで検索結果を表示したページ。SERPsとも言う)の状況をご確認されることをお勧めします。
↓縦軸がホスト当たりの平均表示URL数(1クエリ当たり)。直近で落ち着いてきている。
全体傾向
表示URL数減少例
検索クエリに対する最上位ランクページの傾向は変わらないものの、特に2ページ目以降のヒットするURL数が減少傾向です。実際、検索トラフィックへの影響は軽微と思われますが、「説明が難しい微妙な落ち」というのを感じていらっしゃるSEO担当の方はおられるかもしれません。
↓左側の緑と黄のグラフに注目。緑は検索クエリに対する最上位ランクURLのビジビリティ。黄色は、2番目以降のURLのビジビリティ合計。黄が下落しているということは、表示URL数の減少を示唆している。
表示URL数増加例
逆のケースもあります。「何もしてないけど増えた」のパターンかもしれません(笑)。
↓先のグラフを見方は逆。黄色の増加は表示URL数の増加を示唆します。
一般的に、クリックの多くは「最上位URL」で発生しますので、2番目以降の表示URLの減少はグラフの見た目ほどには激しくないものと考えております。
個別トピック:Xのリダイレクト認識が動き始めた?
前回のニュースレターでX(旧Twitter)の奇妙なリダイレクト仕様について少しご紹介しました。経営側(イーロン・マスク)と現場エンジニアの温度感の違いがこの挙動につながっているのかも?といった邪推も述べていたわけですが、その後、少し動きがありました。移転が少し進んだように見えます。
以下は、左側がtwitter.com、右側がx.comです。対数グラフ化していますのでx.com側の変化が大きく表現されています。
現状もステータスコード302のままですが、Googleも恒久移転判断をしはじめているのかもしれません。
ステータスコードの原則(301は恒久的、302は一時的)は変らないものの、302が長期に続いたり、新ドメイン側に急速にリンクが集まったり、などの他のシグナルが影響することでステータスコードに関係なく、処理が変わる可能性があるという良い学習ケースになるかもしれませんね。
関連リンク:404 not found(404エラー)ってなに?今さら聞けない原因と対処法を解説(300番台(リダイレクト)のHTTPステータスコード例)
個別トピック:ドメインパワーは正義。でも改善を怠るとその果実を失う
ドメインを大手企業サイトへ移動させることで大きくビジビリティを向上させている例です。いくつかのケースでご紹介します。
ケース1:企業間アライアンス
編集能力の高いある企業Aと、巨大な顧客基盤をもつ企業Bが相互の強みを生かして新しいブランド(ドメイン)で記事メディアを運営していたました。が、経年での自然検索流入減を受けて企業Bのサービスサイト内にサブドメインを設けてそちら配下へ一斉301リダイレクトしたのでした。
果たして、大幅な自然検索ビジビリティの上昇となりました。実際の自然検索流入もこのケースではかなりあったものと想定します。
企業間同士のまさにアライアンスですね。編集力の高い企業Aは、ある領域のマニアや専門家が揃っていますのでそこにドメインの力が加わることで、予想としてはSEO上の恩恵は比較的長く続くのではないかと考えています。要注目です。
オレンジ:移転前ドメイン、青:移転後ドメイン
ケース2:同一企業グループ内のドメイン集約
本ニュースレターの読者の多くの方がきっとお世話になっているある企業における”ドメイン人事異動的事案”です。
同企業のEコマースプロパティをコーポレートサイトのサブドメインへ移動させた結果の変化が以下です。すさまじい伸びですね。私がこの会社のSEO担当だったら残り半年は有給をいただいてリゾートに行きたいところです。
が、実際にはEコマースの、特にモール型の場合は商品力およびバックオフィスの総合的な魅力が問われますので、これがスタート地点と考え「ユーザー体験の向上」をSEO面、SEO以外の面両方で考えなければ、早晩、この成果を失う恐れもあります。
オレンジ:移転前ドメイン、青:移転後ドメイン
関連リンク:Eコマースとは? 拡大する市場規模とECサイトのメリットとデメリット
ケース3:ドメイン移動だけだと元に戻る
一方、ドメイン移動後、改善を継続しないと元に戻る事例をひとつご紹介します。2022年から2023年にかけての事例でケース1、2と時間軸が異なりますが、移転後に何もしないと移転前水準に戻ってしまうことを以下のグラフは表しています。
上段はビジビリティ、下段は表示url数。青:移転前ドメイン、オレンジ:移転後ドメイン
「移転前/移転後」のグラフの色が逆です。
Googleは、「ドメインの評価」と「ユーザーの満足度(ユーザー行動)」のバランスをチェックして、アンバランスがあった場合、コアアップデートなどの際に調整します。
・「ユーザー行動は良いけど、ドメインの力が足りない」から伸びないのか
・「ユーザー行動も悪くて、ドメインの力も足りない」から伸びないのか
前者であれば、ドメインの力を得ると長期的な成果維持が期待できますが、後者の場合はドメイン移動はまず「スタート地点」と捉えて、そこからデータドリンなSEOを進めて、ユーザーのエンゲージメントを高めていくことが鍵になります。
ドメイン移動したなら、競合とのランク比較をするのはいったんやめましょう。自社の活用可能なファーストパーティデータ群を最大限活用して、他社との比較でどうこうではなく、自社の現状に対して「今年度中に〇〇改善」としていくことが「ユーザーと向き合ったSEO」につながるものと思います。
その他:ユニバーサル検索動向
10 Blue Links以外の差し込み要素(画像、動画、ローカルパック等)の推移です。大きな変動はありません。
その他トピック:強調スニペット動向
今後、AI Overview(編注:AIが生成した要約文を表示する)とのバランスが気になる強調スニペット(編注:検索結果画面の最上部に表示される、端的な概要文とリンク)ですが、大きな変動はありません。
今週はここまで。
では次回の「JADEニュースレター」でお会いしましょう!
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データ作成:株式会社JADE篠原誠
文責:株式会社JADE 代表取締役 伊東周晃
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