パソコンやスマートフォンが普及した現在、生活者はほしい情報をすぐに入手できるようになり、興味・関心の範囲が著しく広がっています。不特定多数に向けた従来のマスマーケティングだけでは一定の効果が見込めなくなってきたなか、顧客一人ひとりに向けて最適な商品やサービスを提案する「パーソナライゼーション」が注目を集めています。
この記事では、顧客体験価値を高めるパーソナライゼーションについて、身近な活用事例や実施のポイントをご紹介します。
CX向上のカギを握るパーソナライゼーションとは
パーソナライゼーション(Personalization)とは、顧客一人ひとりの好みや関心に適したコンテンツを提供するマーケティング手法をいいます。手元のスマートフォンですぐさま検索したり買い物したりできるようになったことで、ユーザーが日々触れる情報量は膨大なものとなりました。ユーザーはそのなかから情報を取捨選択しているため、興味のないコンテンツが選ばれることはありません。モノや情報があふれる現在においてユーザーに選んでもらうには、そのユーザーの興味・関心をひくコンテンツを発信する必要があるのです。
パーソナライゼーションされたコンテンツは、カスタマーエクスペリエンス(以下CX)を高めます。CXとは顧客(カスタマー)のあらゆる体験を指し、商品やサービスの認識から購入、その後のアフターフォローまですべての体験を意味する言葉です。パソコンやスマートフォンの普及によりほしいものをすぐに入手できるデジタル時代のユーザーにとって、自分が求めるものに対する関連性の高さやプラットフォームの使いやすさといったコンテンツへの期待は非常に高まっています。このようなユーザーの期待に応えるのがパーソナライゼーションであり、パーソナライゼーションを追求することはCXの向上につながります。
また、パーソナライゼーションと混同されがちな言葉に「カスタマイゼーション」がありますが、この2つはまったくの別物です。パーソナライゼーションはサービスやアプリケーション側がユーザーに最適なコンテンツを提供するものですが、カスタマイゼーションはユーザー自身が操作して自分好みに調整するものです。カスタマイゼーションはユーザーに操作を強いるため、エンゲージメントを低下させる可能性があることに注意しなければなりません。
パーソナライゼーションの活用事例
一人ひとりに適したコンテンツを届けるパーソナライゼーションは、私たちが普段使っている身近なものに活用されています。ここでは、パーソナライゼーションの代表的な事例を3つご紹介します。
1. ECサイト(例:Amazon)
ECサイトでは、サイトを訪れたユーザーの閲覧履歴や購入履歴を分析し、そのユーザーが興味・関心を示す商品をおすすめする「レコメンド機能」を提供しています。
2. 検索エンジン(例:Google検索)
検索エンジンにもパーソナライゼーションが活用されており、ログイン時の情報(年齢・性別など)や過去の検索履歴からユーザーの関心が高そうなウェブページを優先表示しています。
3. SNS(例:Facebook)
Facebookには、ユーザーの知り合いと思われる他ユーザーを「知り合いかも?」と表示する機能があります。これは、登録時の情報やインポートした連絡先にもとづいてパーソナライズされています。
パーソナライゼーションでCXを向上させるポイント
パーソナライゼーションを追求してCXを向上させるポイントは、ユーザーに負担をかけないわかりやすいサイト設計を構築することです。その代表例には膨大な規模でパーソナライズしているECサイト・Amazonが挙げられ、サイト内の至るところにユーザーがスムーズに決断できる工夫が施されています。プロダクトカテゴリーやKindle contact、ほしい物リストなどから一人ひとりに最適な商品を提案することで、ユーザーが求める商品を簡単に選べるように設計し、CX向上につなげています。
また、情報はあればあるだけよいということはなく、ユーザーのキャパシティを意識する必要があります。ユーザーが必要な情報をスムーズに入手できるよう、情報量を絞ったり、適切なタイミングでナビゲーションを入れたりと、ユーザー目線での工夫が大切です。
まとめ
◆パーソナライゼーション(Personalization)とは、顧客一人ひとりの好みや関心に適したコンテンツを提供するマーケティング手法である。
◆コンテンツに対するユーザーの期待に応えるのがパーソナライゼーションであり、パーソナライゼーションを追求することはCXの向上につながる。
◆パーソナライゼーションは身近なものに活用されており、主な事例としてはECサイト(例:Amazon)、検索エンジン(例:Google検索)、SNS(例:Facebook)などが挙げられる。
◆パーソナライゼーションを追求しCXを向上させるポイントは、ユーザーに負担をかけないわかりやすいサイトを設計することである。