BtoBサイトおいて導入事例はサイト訪問者のどの検討フェーズにあっても有効な汎用性の高いコンテンツです。また、サイトにおける導入事例の効果を最大化するには、ポイントを抑えたページ作成が重要です。
SaaS企業に学ぶ、BtoBサイトの事例ページ作成ポイント【前編】
前編では導入事例の役割とトップページでの作成ポイントを紹介しましたが、後編の今回は事例一覧ページと事例詳細ページの作成ポイントを中心に紹介します。
目次
導入事例の作成ポイント 【事例一覧ページ】
2- ① ファーストビューに導入実績
株式会社WACULが実施した「B2B SaaSサービスを提供する企業における事例紹介ページのCVRを最大化する手法に関する調査」によると、事例一覧ページのファーストビューに実績をアピールしているサイトのCVR倍率は、そうでないサイトに対して高いデータが出ています。
実績をアピールする方法として、導入企業数や業界シェアといった定量的なアピールと、大手企業の事例をカルーセルなどで表示する定性的なアピールが考えられます。
統合業務システム「クラウドERP ZAC」を提供する株式会社オロのサービスサイトでは、事例一覧ページのトップに導入企業数「750社突破!」と大手企業を中心とした企業ロゴが掲載されています。
https://www.oro.com/zac/casestudy/
また、クラウド型経費精算システム「楽楽精算」を提供する株式会社ラクスのサービスサイトでは、グローバルナビゲーション上の「導入事例」にカーソルを当てると、大手企業の導入事例が表示されるようになっています。
2- ② 業種別などの検索機能を設置
検索機能は導入事例コンテンツが多数あるなかで、サイト訪問者が自社に近い導入ケースを探す際に活用されます。検索項目として、業種やニーズ、従業員規模は多くの企業サイトで用いられています。ほかに、利用シーンや効果、製品、地域など様々な項目があります。
WACULの調査では、事例一覧ページの検索機能の有無に関するデータがあります。業種・ニーズ別検索機能のあるサイトとないサイトでは、あるサイトのほうはCVR倍率が高くなることが分かっています。
国内最大級の導入実績を誇るグループウェア「desknet’s NEO」を提供している株式会社ネオジャパンのサイトでは、事例一覧のページに187件の事例コンテンツが掲載されています(2021/4/7時点)。
多数の事例コンテンツの中から、サイト訪問者が自社に類似した導入ケースを探しやすいように、業種、利用規模、機能別、目的・効果、地域別と5つの検索項目があります。
https://www.desknets.com/neo/casestudy/
また、調査内では、事例コンテンツが30以上超えてくると、サイト訪問者が求めている事例を探し出すのが難しくなることもふまえ、特にUI/UX面での改善が効果的であるとまとめています。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供する株式会社カオナビのサイトは、事例一覧ページに「メリット」「条件(従業員規模など)」の検索項目があります。ほかにも、タグでの検索や、新着記事・ランキングが表示されおり、オウンドメディアの特徴を抑えたUI/UXとなっています。
2- ③ CTAに導入事例集を設置
ファーストビューで導入実績をアピールし、検索機能でUI/UXの向上を図ったら、最後に事例一覧ページのCATは何を設置するか検討していきます。
SaaS企業の多くのサイトでは導入事例集のダウンロードを設置されています。既出の株式会社チームスピリットのサイトでは、導入一覧ページのファーストビューに実績と「導入事例集ダウンロード」が掲載されています。
事例一覧ページのCTAは導入事例集が効果的かどうか明らかになっていません。サイト内で導入事例を読むことができるため、資料としてダウンロードさせるためには、事例集を読むためのベネフィットを設計する必要があります。
事例集以外のCTAとして「無料デモ」「資料ダウンロード」「セミナー」などもあり、自社の目的に合わせて検討することがおすすめです。
関連記事:福田康隆氏に聞くB2B SaaSの最新トレンドと日本企業を成功に導く道筋
導入事例の作成ポイント 【事例詳細ページ】
3- ① 導入事例を分かりやすく表現。顧客のサービス理解を促進
ビジネスアプリ作成クラウドである「kintone」を提供するサイボウズ株式会社のサイトでは、事例詳細ページに導入企業のBefore・Afterをイラストで表示しています。
文章のみではイメージしづらい導入効果を視覚的に分かりやすくすることで、サイト訪問者の理解を深めることができます。
https://kintone-sol.cybozu.co.jp/cases/persolcareer.html
また、既出の株式会社ネオジャパンのサイトでは、記事詳細に「特に役立った機能」を表示しています。SaaSサービスは多様な機能がありますが、自社にとって必要な機能がなにか判断することはサイト上では困難です。
導入企業がどのようなシチュエーションで、どの機能を使ってサービスを活用しているのか、具体的にイメージできることは、事例詳細ページでは重要なポイントになります。
https://www.desknets.com/neo/casestudy/10175/
事例詳細ページにテキストと画像の静止ではなく、導入企業のインタビュー動画を掲載する方法もあります。
クラウドセキュリティ「HENNGE One」を提供するHENNGE株式会社のサイトは、導入詳細ページの一部に導入企業インタビュー動画を掲載しています。
https://hennge.com/jp/service/one/case/cityascom.html
3ー② 関連記事や新着記事を掲載し、回遊率を高める
多くのSaaS企業のサイトは事例詳細ページの下部に関連記事を設置し、類似した導入企業の事例を掲載しています。他企業の導入事例へアクセスしやすくなることで、サイト内の回遊率を高めることができます。
また、クラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供する株式会社Sansanのサイトは、記事詳細ページに関連記事だけではなく、新着記事を掲載しています。
https://jp.sansan.com/case/aidem/
3-③ CTAには無料トライアルと資料請求を設置
WACULの調査では、事例詳細ページにおいて企業の導入事例を読んだ後のCTAに、資料請求があるサイトは、無料トライアルだけのサイトに対してCVR倍率が高いことが分かっています。
その理由として、無料トライアルを行うにも、サービスに関する詳細な情報が必要になるためと考察しています。
介護事業者向けSaaS「カイポケ」を提供する株式会社エス・エム・エスのサイトは、導入詳細ページの下部のCTAに無料トライアルと資料請求が並んで設置されています。
無料トライアルがあることを認識しつつ、より詳細な資料が欲しい際には資料請求を行うことができるような設計になっています。
https://ads.kaipoke.biz/user_voice/happy.html
その他
導入事例コンテンツに関し、トップページ、事例一覧ページ、事例詳細ページ、それぞれのページの作成ポイントを紹介しました。これらのページ以外での作成ポイントを最後にご紹介します。
4-① 導入企業一覧ページ
既出のSmartHRのサイトには事例一覧ページとは別に導入企業一覧ページがあります。このページには事例ページに掲載されていない企業のロゴも掲載されており、どんな企業が導入しているのか一目で分かります。
また、事例ページに紹介されている企業については、企業ロゴから事例ページへ遷移しており、興味のある企業の導入事例に簡単にアクセスできます。
https://smarthr.jp/case/list.html
4-② 導入事例とは異なるコンテンツ
導入事例とは異なるコンテンツで訴求する方法もあります。
「Money Forwardクラウド」を提供する株式会社マネーフォワードのサイトは「ストーリー」ページに「お客様のストーリー」の形式で企業の取り組みを紹介しています。
https://biz.moneyforward.com/story/
また、Web解析ツール「User Insight」を提供する株式会社ユーザーローカルのサイトには導入事例とは別に「活用例」を掲載しています。メディアサイト・ECサイト・広告主など、業態別での詳細な活用シーンをそれぞれのページで紹介しています。
https://ui.userlocal.jp/document/casestudy/media/
まとめ
・事例一覧ページにはファーストビューで導入実績をアピールする導入社数や有名企業のロゴを掲載する。また、事例コンテンツが30以上を超える場合には、業種別・企業規模別などの検索機能を設置し、UI/UXでの改善がCVRを高める
・事例詳細ページのCTAには無料トライアルと資料請求を設置すると、CVRを高める
・導入事例コンテンツ以外にも、お客様のストーリーや業態別での活用ケースがある